令和に新作ファミコンカセットを自作!その知られざるテクニック&80年代カルチャーを「桃井はるこ」「なぞなぞ鈴木」らが語る【インタビュー】

「むっく」さん、「なぞなぞ鈴木」さん、「桃井はるこ」さん、「永野希」さんにインタビュー!オリジナル新作ファミコンゲームを、カセット込みで自作するという、驚きのプロジェクトの内容のみならず、ファミコンゲーム開発の意外な難しさやノウハウにも迫ります!

ゲームビジネス インディ
(C)ちょみぱ
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――自作されたファミコンカセットはすべて市販の部品で作ったとお聞きしましたが、当然、部品は違うわけですよね。

むっく違いますね。当時はロムを使っていたところを、今はフラッシュメモリを使っていたりします。

――ひとつ疑問なのは、同じ「自作カセット」でも『ぽるんちゃんのおにぎり大好き』と『ちょうみりょうぱーてぃー』では部品の配置が異なるんですよ。てっきり「ファミコン用の回路」という共通の規格があるものだと思っていました。

▲自作ファミコンの裏側は、内部が見えるスケルトン仕様。上段が『ちょうみりょうぱーてぃー(通常版)』、下段左が『ちょうみりょうぱーてぃー(金メッキ版)』、下段右が『ぽるんちゃんのおにぎり大好き』。

むっくそこはゲームによって違いますね。違うチップを搭載してメモリを増設することもありますし、今回は『ちょうみりょうぱーてぃー』に適した形で基板を設計しました。

鈴木コナミの『ラグランジュポイント』や『魍魎戦記MADARA』では、FM音源のチップを搭載して音のクオリティーを上げていましたね。

むっくファミコンのおもしろいところはまさにそこで、好きに拡張できるんですよ。ファミコン本体に高価なチップなどを搭載するとゲームソフト側の自由度が下がったり、本体自体のコストが上がったりしてしまうからだと思うんです。本体は必要最小限に、ソフトは拡張前提に、ですね。

――そういえば当時は、「これだけメモリが増えました!」という宣伝文句をよく見かけました。同じ「ファミコン」でもソフト単位で進化できたからおもしろかったんでしょうね。DVDやBlu-rayでは本体が進化しない限り、それ以上のスペックにはなり得ませんし。

むっくメモリの話で言えば、初期のファミコンカセットと後期のファミコンカセットでは驚くほど容量がアップしていますよ。そこがおもしろいですよね。

桃井 ソフトと言いつつ、一部ハードを兼ねてたってことですよね。

――パスワードでゲームが中断できた時も感動しましたが、バッテリーバックアップにはとんでもなく驚かされたものです。

むっくバッテリーバックアップは、基本的なメモリとは別に作業領域用のメモリを増設していて、電源を切ってもデータが消えないよう、内蔵電池で電源が入っている状態を保持していたんです。僕が持ってる『星のカービィ』は今でも現役ですよ(笑)。

桃井 子供の頃、ファミコンの何に惹かれたかと言うと、カセットの中にものすごくいいものが入っていた気がしたんです。例えばファミコン雑誌にウソの裏技が載っていたりして夢がありましたよね。ファミコンという世界には、自分の知らない“無限の世界”が入っていると思わせてくれるのが魅力でした。それに表現が少なく物語も描写が限られているので想像の余地があり、まるで小説を読んでいるような楽しさがあったんです。今でもファミコンのゲームが好きな人って、作る側も買う側もみなさんそういう思いなのでしょうね。

永野番組ではメンバー3人が実機プレイしているのですが、コーナー初回は実際にカセットを入れるところからはじめたんですよ。すると、本体がちょっと動いただけで「ピー」って鳴って画面が止まってしまったりして「あの時のまんまだ!」って(笑)。

――“ファミコンあるある“ですね(笑)。

鈴木ところでカセットが手に入ったとして、皆さん本体はどうされているんですか?

永野『ちょうみりょうぱーてぃー』のカセットについてはエミュレーターでは動かず互換機かオリジナルの本体です。

桃井 でもエミュレーターだと、特殊なことをしているので出力されるものが少し違うんですよ。それこそ鈴木さんが担当されたコナミのゲームは出ない音が多いです。それにどうせプレイするなら昔のブラウン管テレビでやりたいですよね。ドット絵って今のテレビではキレイに見えすぎてしまいますけど、ブラウン管の「色のにじみ」だといい感じになるんです。

――ファミコンの音って特別ですよね。桃井さんも参加された「ファミソン8BIT」の音楽アルバムシリーズでは、わざわざファミコン本体を持ってきてそれを直接鳴らしたという話を聞いたことがあります。

桃井 今はどんなゲームも録音されたものが流れますけど、ファミコンは本体自体がシンセサイザーのような役割になって直接音を鳴らしているんですよ。私がファミコンに魅力を感じる理由のひとつがそれで、ファミコン自体が演奏してくれるのがいいんです。

鈴木ファミコンの音はCD化した時にどんな音より強いんですよ。なぜ強いかというと、ノイズが乗っていてきれいじゃないからなんです。ノイズが乗っている分、倍音が多く音を太くするんです。反対に、きれいな音になればなるほど圧力は減ります。

桃井 そういえば鈴木さんにお聞きしたいんですけど、初期のゲーム開発現場って当時は少数精鋭だったんですか?

鈴木グラフィック担当が2人、音は作曲担当とSE担当、プログラムも2人くらいかな?間に合わない時はサポートが入ったりしますが、そういうチームが何個かあって、それぞれ別のゲームを作っていました。

――鈴木さんがコナミにいらっしゃった時はおそらくファミコン黄金期で、ファミコンだけでだいたい年間150タイトル、そこへPCエンジンやメガドライブといった他のハードも加わって、家庭用ゲーム機の戦国時代に突入したような時代でしたね。

鈴木黄金期でしたね。開発陣は名刺をまったく持てない時代でした。スカウト阻止もあったかと思います。本名を出せないので、みんな「なぞなぞ鈴木」とか……ヘンテコな名前を貰っていました(笑)。

桃井 鈴木さんは私にとって『エスパードリーム』の人というイメージでしたよ。

鈴木CMで歌ってましたからね。仮歌で歌ったら宣伝の人が「鈴木さんお願いします」って。

桃井 「エスパードリーム♪はじめまして、やってみようよエスパードリーム♪」って(笑)。

鈴木なんで歌詞覚えてるの!?

桃井 覚えてますよ(笑)。ファミコン時代は今ほど情報があるわけではないので、小さな子供がゲームの内容を知りたいと思っても、気軽にアクセスできるのがパッケージの絵、チラシ、あとCMしかなかったんです。そういったパーツを一個一個集めて世界観を感じるみたいなところがあった気がしますね。だからCMもよく覚えているんだと思います。

――ところで昔のゲーム業界は今みたいに専門学校があったりしなかったと思うのですが、鈴木さんはどういった経緯でコナミに入社したのですか?

鈴木もともとレコード会社の全国オーディションで2位になったバンドのメインボーカルとギターを担当していました。そこからステージや録音の仕事、CMの楽曲制作などをしてプラプラ生活していました(笑)。

天皇陛下(昭和)の病気療養から御崩御で日本中のエンタメ系が自粛をし、その時に仕事がなくなり……カタギになる決心をしました。つまりやっと大人になったのです(笑)。

でも……ファミコンから自分の音楽が流れたら素敵だなってことで。縁があったのがコナミでした。入社の時、アーケードとファミコンどちらがやりたいかを聞かれ、迷わず「ファミコン」と答えました(笑)。

――当時の現場はいかがでしたか?

鈴木「もっと良いメロディー書けるけど」みたいな多少の驕りがありましたね(笑)。でも担当の先輩に「普通の音楽を作るつもりなら違いますよ」と言われ、その意味を理解しないまま曲を作ってはNGにされ、また作ってはNGにされ……。同期の人間がひとり、あまりの辛さに音信不通になりましたよ。でもそれで鍛えられましたね。それからは自由に曲を作らせてもらえるようになり、作品に参加したり、プロデューサーを担当したりで自分なりの音作りを学びました。楽しかったですよ。

――コナミのサウンドチームで「コナミ矩形波倶楽部」というバンドを結成して活躍されていましたね。

鈴木コナミは神戸がスタートの会社ですからメンバーも全員関西人でした。東京のコナミの開発から矩形波倶楽部に絡んだのは初めてだったかと思います。僕はオマケみたいなものでした(笑)。でもCD制作にも携わったりで(NAZO2プロジェクト他)充実してました。何の不満も無かったのですが、色んな状況が重なりコナミを離れてトレジャーに参加しました。

――トレジャーでセガのゲームを作っていた頃はいかがでしたか?

鈴木トレジャーが汎用ドライバを使っていたんです。でも他社とは差をつけたかったし、研ぎ澄まされた音をどうにか作りたくて、始発まで会社で汎用ドライバをいじっていました。当時、イギリスのロックバンド「スクリッティ・ポリッティ」が流行っていたので、メガドライブの音源でどこまで再現できるかチャレンジしましたね。あの頃は制約にチャレンジするのが楽しかったです。

――音楽面で一目置いていたメーカーはどこだったのですか?

鈴木エニックスさん(現スクウェア・エニックス)かな。エニックスといえば『ドラクエ』ですが、RPGという長時間プレイが前提のゲームなので、飽きない楽曲を作るのがうまいです。それに「ワンポートエコー」と呼ばれる、ひとつのトラック内でメロディーとエコーをかけられる技術をいち早く導入していました。我々も研究していましたよ。

――なるほど。

鈴木セガサターンの時代になるとCD音源がそのまま流せるようになり、スタジオで収録するスタイルに変わっていきました。音の表現としては自由度がかなり上がりましたけど、反対にクリエイターとしての興味が急速に失せてしまい、それで音楽ディレクターやプロデューサーとしてアーティストに関わったり、アニメ主題歌の作曲をしたりと、ゲーム会社就職以前のスタイルに戻りました。

――なぜ桃井さんの事務所の社長をされているか不思議に思っていたのですが、そのような経緯があったのですね。それでは最後に、『ちょみぱ』を代表して永野さんより読者へメッセージをお願いします。

永野なりちゃんや茜ちゃんも一緒にインタビューできたら良かったのですが、代表してお伝えします。この『ちょうみりょうぱーてぃー』という番組は、メンバー3人とスタッフ、そして今回はむっく先生、なぞなぞ鈴木さん、モモーイと関わって本当に色々な挑戦をさせてもらっている番組です。その中でファミコンを作ってもらえるのはすごいことではありますが、まだまだメンバー3人やりたいことが尽きません。皆さんの応援がありましたら次のゲーム化企画だったり、まったく別の展開だったり、そういった楽しいことが色々あると思いますので、これからも皆さん、応援よろしくお願いします!

<取材・執筆:気賀沢昌志/編集・撮影:矢尾新之介>


【桃井はるこ 最新情報】

■tokyo toricoレーベルより発売中の楽曲を各配信サイトにて配信中。

→アーティストページへは、ここをクリック

■FM NACK5にて「THE WORKS」出演中。

毎週日曜後 24:00から(姉妹番組「THE WORKSせず」も響ラジオステーションにて配信中)

→番組ページはここをクリック。

■新曲「転売ヤーをぶっとばせ!」公開中(『ちょみぱ』ボーナスステージ曲の原曲)。

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【永野希 最新情報】

■WALLOP放送局にて「のぞみ家の一族」出演中。

毎月第1土曜日15:30から(公開生放送)

→番組ページはここをクリック。

■『第17回ROBO太祭り~温故知新~』出演。

6月20日 会場:初台DOORS 13:00 開場/13:30 開演

→イベントページはこちらをクリック。

■新曲「Hello Days」公開中(Little Non./リトルノン)。

その他、最新情報はライト・ゲージ公式ツイッターにて。

→公式ツイッターはこちらをクリック。


【なぞなぞ鈴木 CD情報】

■音楽アルバム『松・鈴・桃―初号盤―』

モモーイ×Nazo2 Unit(桃井はるこ、なぞなぞ鈴木、松武秀樹)

2400円/発売中/徳間ジャパンコミュニケーションズ

→Amazon商品ページはここをクリック。


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※本製品は声優番組『ちょうみりょうぱーてぃー』およびMOOK-TVの著作物です。任天堂のライセンス製品ではありません。

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《気賀沢昌志》

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