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ゲームの販売形式は時代と共に新たな選択肢が加わり、昨今では店頭や通販によるパッケージ販売と、インターネット回線を介するダウンロード販売が主流です。
ダウンロード専売でリリースされるタイトルもかなり数が多く、ニンテンドースイッチやPS5/PS4、そしてPC向けも合わせれば、その全てを把握するのは困難と言えるレベルに達しています。
自分の好みに合いそうなゲームが、知らないうちに配信されていた……と後になって気づくケースも少なくありません。また、気づくことなくそのゲームと出会えず、そのままになってしまう場合も多いことでしょう。
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だからこそ、知らなかったゲームとの出会いは大事にしたいもの。筆者もそうした考え方を持つゲームファンのひとりですが、同じような姿勢を持つ方に向け、今年行われた東京ゲームショウで縁があったタイトルを今回紹介したいと思います。
その作品の名前は、今年の9月に発売された『ダイスレガシー』。既にご存じでしたら申し訳ないばかりですが、お恥ずかしいことに完全にノーマークの作品でした。しかも、一見しただけではゲーム性が分かりづらいので、その点でもやや損をしているかもしれません。
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先に結論を述べますと、幅広いユーザーが楽しめるような万人向けの内容ではなく、相性が合う方にはハマり、ついついプレイしてしまう一作になる可能性を秘めています。
■ダイスが開拓の鍵を握る! 運に左右される出目は、アドリブ力で切り抜けろ
この『ダイスレガシー』がどんなゲームなのか。それを一言で表すのもかなり難しく、商品紹介のページには「サバイバルシティビルダー」とありますが、この説明だけでピンと来る方は少数でしょう。
ゲーム時間はリアルタイムに進行しますが、任意でターンを進めるような一面もあり、リソースの管理も重要。また、ストラテジー要素もあり、逐一変わる状況に対処するアドリブ性はある意味ローグライクを彷彿とさせます。
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また、本作を語る上で重要な要素になるのが、タイトルにもある「ダイス」。そのため、ボードゲーム的な第一印象を持つ方も少なからずいますが、出た目に応じてマスを進める……みたいなゲームとは全く異なります。
未知なる大陸の海岸に流れ着いた主人公は、この地に住む人々と協力しながら集落を大きくし、新たな土地を開拓していくシミュレーションゲーム。ゲーム内時間は刻一刻と流れており、春夏秋冬もあります。なので、厳しい冬に備えて蓄えたり、時期に合わせて作物を育てたりと、季節の変化に合わせた計画性も必要です。
開拓や資源の収拾などの行動は労働者が行い、それは全て「ダイス」という形で表現されます。ボードゲームなどでは、ダイスの面に書かれた数字でマスを進みますが、本作のダイスには「資源の収集」や「建物の建築」といったアイコンが各面にそれぞれ描かれており、出た目=アイコンと一致した場所で行動に移すことができます。
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ゲームを開始すると、まず手持ちのダイス全てが転がされ、出目が決定。その結果、出た面のアイコンに合わせて活用し、農作物を育てたり有用な施設を建設する──これが本作における基本的な流れです。ちなみに、ダイスが行動に入ると完遂までしばらく時間がかかるので、その点も留意しておきましょう。
完遂すれば、資源が獲得できたり施設が完成するといった恩恵を受けられます。そして、一度使ったダイスは色がくすみ、使えなくなります。また、ダイスには耐久度が存在し、使うごとに1つずつ減り、0になるとそのダイスは消滅。耐久度は、施設のひとつ「調理場」で回復させることも可能なので、施設の充実も賢い開拓に欠かせません。
そしてダイスを運用していくと、特に序盤はすぐに使い切ってしまいます。ですが、ダイスを再び転がすと、再び使用可能に。もちろん出目はその都度変化していくので、出たアイコンに合わせて開拓計画をうまく調整していく柔軟性が大事なポイントです。
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ちなみに、ダイスを転がしても耐久度が減るので、「都合のいい面が出るまで振り続ける」という考えは、その後のフォローや立て直しまで視野に入れておかないと、自殺行為になります。というのも、実際に筆者がこのミスを犯していまい、非常に厳しい初プレイを味わう羽目になりました。
ゲームを進めていけば、使えるダイスの個数は増えていきますが、序盤の持ち数はごくわずか。自分が進めたい出目が出るとは限りません。そのため、「建築したいから、出るまで振り続けるか」と安易に転がしまくり、大した成果も得られないまま耐久度だけ減っていくという、最悪の統治ぶりでスタート。
しばらくしてからこの失策に気づき、急いで「調理場」を建設──するにはまず材料が必要。慌ててかき集めて建設までこぎ着けて「調理場」を作るも、食料も要ることが分かり、急いで人手を派遣して……と、後手後手の連鎖。開拓計画どころの騒ぎではありません。
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また、無駄に遠回りをしている間にも、時間はリアルタイムに進行。季節が移り変わり、冬が近づいてきました。冬は農地が凍るので作物が育たず、「調理場」での回復もままならなくなります。
しかも、「蒸気発生器にくべる木材を確保しておきましょう」などのゲーム内アナウンスも飛び出しましたが、こちらとしては「木材なんて確保してないよ! そもそも蒸気発生器がないから!!」と焦るばかり。後手後手に更なる後手が追加され、厳しい大自然に打ちのめされます。
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こんなプレイをしているにも関わらず、地域住民は(今のところ)見捨てるそぶりはなく、評議会から新たな法律が提案されました。その内容は「農民地区が火災に遭わなくなる」や「即座に農民ダイスを得る」といったもので、ゲーム的に言えばちょっとしたボーナスがもらえるようです。
当面の問題解決を図るか、今後の開拓計画に有用なものを選ぶか、どちらも悩ましいところですが、どれを選ぶかその判断力も統治に必要な手腕なのでしょう。
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いよいよ冬を迎えると、今度はダイスの「凍結」といったピンチも訪れます。気温が低いほど凍結のリスクが高まり、凍結したダイスはしばらく使えなくなるので、なかなか厄介です。「なるほど、だから蒸気発生器を使って凍結を防ぐのか!」と、今更ながらにその重要性を思い知ります。
その後も、厳しい冬をかろうじて乗り越えたと思ったら、開拓地を襲撃する輩が登場。物資を盗むだけではなく、たいまつを使って施設が放火されることも。こうした襲撃者を撃退する「傭兵」もダイスの出目のひとつなので、これを予測してストックしておくか、ダイスを転がして新たに引かなければなりません。
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ちなみに筆者は、襲撃が発生した時に「傭兵」の出目がなく、ダイスの耐久力も不安だったので、指を加えて見ている始末。燃え盛る施設を見つめつつ、最初の躓きを改めて痛感させられました。
筆者のプレイは反面教師にしていただくとして、ダイスが生み出すランダム性に振り回されながら、それを制御するアドリブ力がリアルタイムに問われる『ダイスレガシー』は、冒頭で述べた通り様々なジャンルの要素が組み合わさった、非常に個性的な一作でした。
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ダイスの出目に翻弄されますが、それを乗り越えた時は達成感は満点。運を味方につけるか、悪運をはね除ける立ち回りを目指すか。「個性作の発掘」と「地域の発展」、その両方の意味で開拓精神に溢れる方は、ぜひチャレンジを! なお、『ダイスレガシー』はニンテンドースイッチとSteam向けに配信中です。