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「同じモチーフのキャラクターを何度も描き分けられるのはオイシイなあ」と、つくづく思うのです。
1986年発売の『ゼルダの伝説』以来、シリーズの大半の作品で主人公リンクの前に立ち塞がるガノン(ガノンドロフ)。1作目ではオープニングデモで「力のトライフォースを盗んだ闇の王子(Ganon, prince of darkness, stole the Triforce of power.)」と語られるものの、ゲーム内でそれ以上の描写はされませんでした。豚を思わせる顔と巨大な体躯を持つ魔獣として現れたのみです。
その後、1991年『神々のトライフォース』と1998年『時のオカリナ』では、そんな"魔獣"となる前の設定や姿が「力のみを信ずる、野心あふれる盗賊ガノンドロフ」として描かれました。特に『時のオカリナ』での描写のインパクトは大きく、今日も『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズや『ゼルダ無双』に登場するガノンドロフの姿はこの作品がベースになっています。
さらに2002年『風のタクト』では悪の心と野望はそのままに落ち着きと威厳を持った壮年を思わせる姿で描かれたり、2017年『ブレス オブ ザ ワイルド』では長い長い時の果てに怨霊じみた厄災そのものと化していたりと、ガノンは作品によってその姿を大きく変えてきました。
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それでもキャラクターがまったくブレずに見えるのは、どの作品も3つのトライフォースが象徴する「知恵と勇気が悪しき力を祓う」という物語の基本的構造がしっかり定められているからでしょう。
シンプル、しかしそれゆえに普遍的ともいえるテーマが土台にあるからこそ、ガノンというキャラクターはそれを軸足として一層魅力的なラスボスとなり続けているのです。
そんなガノンをご存知のみなさんは、どの姿が印象に残っていますか? やはり『スマブラ』の印象も強い『時のオカリナ』版でしょうか。筆者は、1987年にファミリーコンピュータ ディスクシステムで発売されたシリーズ2作目『リンクの冒険』のガノンが脳裏にこびりついてしまっています。
『リンクの冒険』ではガノンは作中に一切登場しませんが、ゲームオーバーになると「息絶えたリンクの血を浴びて灰から復活したガノンの雄たけび」が黒バックの画面に響きわたる演出が用意されています。
筆者はこのゲームを小学生のときに遊びましたが、一度だけディスクが読み込みに失敗して「雄たけびがいつまでも響きわたる」状態になったことがあり、心底震え上がってしまいました。難度が高いゲームだったことも手伝って、恐怖のあまり一度はプレイをやめてしまったほどです(しばらくたった後、リベンジしてクリアしましたが)。
世界中に数多のファンを抱える『ゼルダの伝説』シリーズですが、こんなヘンな理由でガノンが怖いという人はなかなかいないのではないでしょうか? もちろん、いばれるような話ではないですけどね!
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