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筆者注:1996年に発表された永瀬麗子のキャラクター設定を尊重する意図で、本稿では「レースクイーン」という呼称を使用しています。
「こんなギャルゲーみたいな展開…アリだな!」
『R4』プレイ時、筆者のテンションは上がりに上がりました。永瀬麗子はナムコのレースゲーム「リッジレーサー」シリーズにレースクイーンとして登場するイメージキャラで、1996年に初代PlayStationでリリースされたシリーズ3作目『レイジレーサー』で初登場を果たしました。『エースコンバット』シリーズの多くにも"ナガセ"という女性キャラがよく登場するので、そちらをご存知の方もいるかもしれませんね。
シリーズ4作目となる『R4 -RIDGE RACER TYPE 4-』は1998年にリリースされました。永瀬麗子は『レイジ』と同様にオープニングムービーで登場するほか、ゲーム中でもメインのモードであるグランプリモードの決勝トーナメントでレースクイーンとして登場します。
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そして彼女は、プレイ中にある条件を満たすとより一層その魅力を味わえるキャラでした。イメージキャラというだけに留まらず、いわば隠しヒロイン的な要素も持っていたのです。
『R4』はレースゲームとしてはめずらしく、グランプリモードにストーリーが用意されていました。プレイヤーは若き日本人ドライバーとなって4つのレーシングチームから1つを選んで契約し、日米で開催される架空のグランプリ「Real Racing Roots」を戦い抜くというものです。
そして、4つのチームのうち「Pac Racing Club(通称PRC)」と契約し、「一次予選2レース、二次予選2レース、決勝第1レースまでの全5レースをノーコンティニューかつすべて1位で勝ち抜く」と、永瀬麗子から応援のFAXが届くというちょっとした隠し要素がありました。
「PRCの皆様へ。突然のFAXお許しくださいね。もう居ても立ってもいられなくなってしまい、応援のお便りをしてみました。きっと新チームのPRCがこんなにすごいチームだなんて、誰も思ってもみなかったんですね。何だがすごい盛り上がりで、どこに行っても「PRC」「JAPAN」って、きっと日本でも今頃大騒ぎで…。
とにかく、これって感動ですね。立場上、PRCだけを応援してはいけないそうなので、このFAXのことは内緒にしておいてください。それでは、ガンバレ!PRC!」
読み終えると、ほどなく決勝の第2レースに。永瀬麗子はここでも、スタート直前のコースに華を添えるレースクイーンとして登場します。「贔屓をしてはいけないみたいだから」と言いつつコッソリと自分を応援してくれていると思うと、グリップを握る手に力が入るというものです。気分が高揚するというものです。もしかしたら、一瞬目が合ってウインクとかしてくれていたかもしれません。ゲームでは描かれていないだけで。
レースゲームにはめずらしいストーリーモードを用意し、だらだらと長引かせないほどよいボリュームの物語や、そこで描かれるさまざまな人間ドラマが高評価の一翼を担った『R4』。初登場作品ではないにせよ、永瀬麗子が輝いたのはこの作品だったなぁと感じます。
本作と同じナムコによる「エースコンバット」シリーズは『4』が高く評価されている1本ですが、その理由の1つには「エースパイロットである主人公(プレイヤー)を気分よく持ち上げてくれる無線会話」が挙げられると思います。
そうした手法は『R4』でも存分に発揮されていました。本作は上記のFAXにかぎらず、レース結果に応じてチームの監督たちの反応がバリエーション豊かに変わります。コンティニューしながらもギリギリで勝利すれば「苦戦続きだったが、よくやってくれた」となりますし、逆に無敗で勝ち上がり続ければ「オマエは間違いなく天才だ! 最終的にどんな順位になろうとこの評価はもう揺るがない」と持ち上げてくれるのです。この応援FAXはその極めつけともいえるでしょう。