ゲームのレーティングに関して、“CERO”という名称を聞いたことがあると思います。基本的には日本のゲームはこのCEROのレーティングによって審査されて、対象年齢などが決められますし、CEROの審査を通らなければ販売できません。
しかし実は、オンラインダウンロード販売に限って、CEROではない別のレーティングが採用されるケースがあります。それが“IARC”です。任天堂やマイクロソフトは以前から国内のオンラインストアでIARCを採用していましたが、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが運営する国内のPlayStation Storeでも、IARCが採用できることが分かりました。
IARCの採用は、ゲーム業界やユーザーにどんな影響があるのか、解説したいと思います。
■レーティング機構の問題点とインディータイトル
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この話をするには、そもそもレーティングというものについて少しお話をしておく必要があります。日本のゲームにおけるレーティングは、特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構、通称CEROによって審査され、ゲームの表現内容によって推奨年齢を指定しています。任天堂やSIEなどのプラットフォームホルダーが国内で販売するゲームに対して義務づけているため、ソフトウェアメーカーはCEROの審査を通らなければゲームを発売することができません。
海外のゲームが日本でゲームを発売する場合、それぞれの国のレーティング機構ですでに審査を受けていたとしても、CEROによる審査を受けなおす必要があります。CEROの審査には時間も費用もかかるため、大手のビッグタイトルであれば問題はなくとも、インディーメーカーの小規模タイトルにとっては、参入障壁になることがしばしばありました。
■IARCで審査することで世界中で発売できる
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そこで大きな役割を果たすのがIARCです。IARCはThe International Age Rating Coalitionの頭文字をとったもので、日本語訳すると国際年齢評価連合。国際的なレーティングの連合という名の通り、北米のESRB、ヨーロッパのPEGIなど、世界各国のレーティング機構と連携しています。ゲームパブリッシャーはIARCでさえ審査してしまえば、それを各地域のレーティング機構の基準に変換して、世界中でゲームを販売することができます。
しかも、審査料は無料、手続きも簡単ということで、インディーメーカーにとっては大変心強い存在です。ただし、CEROはIARCに加盟していないため、日本では、IARCの審査を受けていても、CEROの基準に変換することができません。
この状況に対し、マイクロソフトはIARCを日本国内で販売する際に使うレーティング機構として認める形でいち早く対応し、CEROの審査を受けていないゲームでも、IARCのレーティングを表示して販売が可能になっていました。任天堂は2020年10月よりIARCを国内ニンテンドーeショップに採用、そしてソニー・インタラクティブエンタテインメントのPlayStation陣営も2社に続いた恰好となりました。
■洋ゲーやインディーゲームがもっともりあがるかも!
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CEROが設立されたのは2002年。PlayStation2の時代です。まだ、ダウンロード販売なんてしていませんし、そもそもPlayStation2をオンラインに接続していません、もちろんPlayStation Storeもありません。インディーゲームなんて言葉すら聞くことが無かった時代です。
今やインディーゲームはゲーム業界にとって重要な存在で、規模こそ小さくても、思いもよらない発想で作られたゲームがヒットを飛ばすことは少なくありません。マイクロソフト、任天堂、ソニー・インタラクティブエンタテインメントのプラットフォーマー3社がIARCに対応したことは、そんな時代の変化を感じさせます。
そして、海外のインディーメーカーは、日本市場でのダウンロード販売の障壁が1つ無くなり、より多くのゲームが今後販売されるきっかけになるかもしれません。ユーザーとしては、さらなるインディーゲームの盛り上がりに期待したいですね。