ドット絵とミュージカルで紡ぐ、夢見る少女の大冒険!『マール王国の人形姫』はもっともっと知られていい

「マール王国で今も多くの人に親しまれる『人形姫物語』の始まりです」という約束されたハッピーエンド。筆者は重い話も好きですが、こういうほんわかファンタジーも好物です。

ゲーム コラム
ドット絵とミュージカルで紡ぐ、夢見る少女の大冒険!『マール王国の人形姫』はもっともっと知られていい
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さまざまなゲームに登場するヒロインの魅力をあらためて掘り下げる連載「僕たちのゲームヒロイン録」。第26回は1998年に初代PlayStationで発売された『マール王国の人形姫』のコルネット・エスポワールを紹介します。

「いつかきっと夢で出会ったような王子様が…」

マール王国の人形姫』は、ドット絵で描かれたキャラクターたちが、ストーリーの進行に応じてミュージカルのように歌って踊るシーンが特徴のミュージカルRPGです。人形たちの言葉が分かる不思議な力を持つコルネットは、恋に恋する夢見がちな女の子。祖父、そしておしゃべりな人形のクルルと共にオレンジ村の片隅にある人形館で暮らしており、「運命の王子さま」との出会いを夢見る、恋に恋する女の子です。

明るく清楚な美少女・コルネットは、ついに王子さまとの出会いを果たす…
…という、安定の夢オチ。メッセージウィンドウのキャラも表情パターンが豊かで、丁寧な作りです

ちなみにコルネットが人形と会話できるのは村の人たちもよく知るところで、村人たちも彼女を白い目で…見ることはまったくなく、むしろ、みんないつも明るい笑顔を振りまくコルネットが大好きなのです。あったけぇ…。

幼い日のコルネットに、亡き母が遺した不思議なラッパの説明をするクルル。彼女が人形の言葉を理解できるようになったのは、これがきっかけでした

そんなある日、コルネットは採集に出かけた森で魔女のミャオに因縁をふっかけられ、さらにドラゴンをけしかけられて大ピンチ!そんな彼女の窮地を救ったのは「頭がよくて、カッコよくて、優しくて、剣のウデもバツグン」と評判のフェルディナント王子でした。

しかも、近々開催される「ミス・マール王国コンテスト」の優勝者は、そんなフェル王子の婚約者候補になれるというではありませんか。「王子様」との出会いを夢見ていた彼女もさすがに「まさか、本物の王子様に振り向いてもらえるはずがない」と尻込みしますが、クルルに「女は行動力!」とたきつけられてコンテストへの出場を決意しますが……?

「こういうのでいいんだよ」にあふれたハートフルファンタジー

本作はドットで描き込まれたグラフィックや要所で挿入されるミュージカルシーンが大きな魅力ですが、それらに負けない特徴が「ヘイトのたまらないキャラクターたち」だと思っています。

ミス・マール王国コンテストの歌唱審査で思いの丈を歌うコルネット。本作のミュージカルシーンのひとつです

おしゃべり人形のクルルのように、時にはのようにコルネットを見守ります。コルネットの幼なじみである貴族令嬢のエトワールは貴族らしくお高く止まった女の子ですが、フェル王子の心を射止めることには関心がなく、コルネットの恋をそれとなく後押ししてくれます。

フェル王子と2人きりになった(※なってない)コルネットを野次馬…もとい陰から見守るクルルとエトワール。君たちぃー!

そして、とある理由でコルネットと敵対する推定ウン百歳(ただし見かけは若作り)の魔女マージョリーは物語を大きく引っかきまわす「悪役」ですが、肝心なところでツメが甘く、さらに3人の家来にはディスられ放題だったりと、いまいち憎めないキャラクターとして描かれています。

コルネットの冒険にはとある悲しい出来事も待っていますが、それも取ってつけたような「鬱展開」ではなく、むしろ彼女と、彼女を取り巻く人たちの絆の美しさを描くものでした。

本作の前年には『マリーのアトリエ』が発売されていたこともあり、当時の筆者の中では「明るくてバイタリティあふれる女の子を主人公にした、ほんわかファンタジー」が実に熱かったのを覚えています。

街並みもドット絵で描き込まれており、本作ならではのほんわかした雰囲気の演出に一役買っています

今日の日本一ソフトウェアを代表する『魔界戦記ディスガイア』のシリーズ第1作は2003年発売だったこともあり、当時の同社はまだブランドとしての顔やイメージが固まっていない頃だったといえます(『炎の料理人クッキングファイター好』はものすごい異彩を放っていましたが)。

そんな折にリリースされた『マール王国の人形姫』は、魅力的なキャラクターやストーリー、類を見ないミュージカル風の演出、かねて『エメラルドドラゴン』などで知られていた佐藤天平氏によるサウンドで、同社のイメージを定着させた渾身のタイトルであったと思います。

本作は2006年からゲームアーカイブスで配信されていますが、2022年8月にSteamでも配信が始まりました。フルスクリーンに対応しているほか、「CRT」「Smooth」などの画面フィルターがあるなど、丁寧な作りであると感じます(本記事の画面写真は、すべてSteam版を「CRT」フィルターでプレイしたときのものです)。

20年以上前のゲームであるだけに、要求されるPCのスペックも決して高いものではありません。ぜひ、初代PSの古き良きRPGを楽しんでみてはいかがでしょうか。

そしてシリーズ2作目の『リトルプリンセス マール王国の人形姫2』、3作目の『天使のプレゼント マール王国物語』もSteamで配信されないかなと願うばかりです。

美少年好きのおばさ…魔女マージョリーがフェル王子の誕生パーティーを襲撃!ここからコルネットの大冒険が始まります
人形たちとパーティーを組んで行う戦闘はちょっとしたシミュレーションゲーム風味。ワンボタンで移動~攻撃までをオートで行えるほか、本作には難度設定もあるので、わずらわしさはありません

《蚩尤》

汎用性あるザク系ライター(が目標) 蚩尤

1979年生まれのファミコン直撃世代。スマホゲームもインディーズも大型タイトルも遊びますが、自分と組ませてしまって申し訳ないという気持ちやエイミングのドヘタさなどからチーム制のPvPやFPS、バトロワが不得手です。寄る年波…! ゲームの紹介記事に企画記事・ビジネス寄りの記事のほか、アニメなど他業種の記事もやれそうだと判断した案件はなんでも請けています。任天堂『ガールズモード』シリーズの新作待機勢。

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