時を超えた文化の融合!『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助さん、北瀬佳範さんインタビュー

2023年3月4日(土)から4月12日(水)、「ファイナルファンタジー」シリーズ初、そしてゲーム作品初の歌舞伎化となる『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』が、豊洲のIHIステージアラウンド東京にて上演されます。今回は尾上菊之助さん、北瀬佳範さんにお話をお伺いしました。

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『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助さん、北瀬佳範さんインタビュー
『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』尾上菊之助さん、北瀬佳範さんインタビュー 全 17 枚 拡大写真

2023年3月4日(土)から4月12日(水)、「ファイナルファンタジー」シリーズ初、そしてゲーム作品初の歌舞伎化となる『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』が、豊洲のIHIステージアラウンド東京にて上演されます。

2022年7月19日、『ファイナルファンタジーX』(以下、FFX)の21周年記念日でもあるこの日に上演が発表され、各界に衝撃を与えた本作について、企画、演出、そして主人公ティーダ役での主演をつとめる尾上菊之助さんと、原作『FFX』制作当時のプロデューサでもあり、スクウェア・エニックスの取締役で、「ファイナルファンタジー」(以下、FF)シリーズの現ブランドマネージャー、北瀬佳範さんにお話をお聞きする機会をいただきました。
今回はそのゲーム媒体合同取材と、個別インタビューの様子をお届けします。

<取材、執筆、撮影: アネモネ・モーニアン>

合同取材

──『FFX』の歌舞伎化の許諾を、菊之助さんがスクウェア・エニックスさんにビデオレターで依頼されたとお伺いしました。当時の馴れ初めを改めて教えてください。

尾上菊之助さん(以下、菊之助さん)
2020年3月から7月まで、歌舞伎の公演が本格的に中止になってしまいました。
不要不急という言葉のもと、世界的にエンターテインメントがストップして、私も先行きの不安と、今まで当たり前のように劇場でやっていたことがなくなって、非常に落ち込みました。
そんなコロナ禍で、ステイホームの家庭や文化を明るくしてくれたのは、間違いなくゲームの世界だと思いました。

私も幼いころからゲームが好きで、よく遊んでいたのですが、菊之助を襲名してから忙しくなり、少しプレイから離れてしまっていました。コロナ禍になり改めて「ゲームをもう一度やってみよう」と思い立ち、どうせ遊ぶのであれば、以前プレイして感動したゲームで遊ぼうと考えて、辿り着いたのが『FFX』でした。

実際にプレイを開始し、攻略本やシナリオブックを読んで、シンという強大な敵に対して、最初はバラバラでそれぞれが葛藤を抱えていたパーティのメンバーがユウナの元に結集して、一つのチームとして立ち向かう様は大いなる希望だと思ったんです。
コロナ禍において、元気がなくなっている日本やエンターテインメントに対して、光を与えられるようなメッセージ性の強い作品を探していたので、『FFX』は素晴らしい作品だと改めて感じました。
歌舞伎化させていただくにあたり、仲間と共にスクウェア・エニックスさんの門を叩いたのが馴れ初めでした。

──北瀬さんはビデオレターをお受け取りになっていかがでしたか?

北瀬佳範さん(以下、北瀬さん)
びっくりしました。
ビデオレターでオファーいただくなんて初めてで。

菊之助さん
コロナ禍において直接お伺いすることができなかったのですが、気持ちをお伝えしないと何事も進まないと思いまして、ビデオレターを撮影しお送りさせていただきました。

北瀬さん
その後実際に会議室に来ていただいて、直接お話しさせていただき、非常に熱意を感じました。

菊之助さん
許諾をいただくまでのお時間もありましたが、たまたまこの「FF」35周年のタイミングで歌舞伎化させていただけるご縁があったことに感謝しています。

──菊之助さんは結構ゲーマーだとお伺いしております。

菊之助さん
はい、楽しんでプレイしております。

──菊之助さんのゲーマーっぷりをぜひお伺いさせていただき、読者の皆さんにも菊之助さんに親しみを持っていただきたいです。

菊之助さん
私はファミコン時代からのゲーマーで、当時ブラウン管のテレビにケーブルを繋いで、2チャンネルに映して遊んでいた世代です。
「FF」シリーズは『FF1』からずっとプレイしていて、ストーリー性や中世の雰囲気、クリスタルの元に飛空艇や、『FF2』以降はシドやチョコボも登場して、『FF3』はジョブチェンジで遊び……当時は本当に楽しんでプレイしていました。

──完全に我々と同じ「FF」ファンですね。その中でも今回は『FFX』を歌舞伎化される選択をされたわけですが、一番響いたキモとなった要素は何だったのでしょうか?

菊之助さん
『FFX』は、ゲームだということを忘れてしまうくらい、まるで映画を見ているような感覚になりました。オープニングで植松先生の「ザナルカンドにて」が流れていて……あの曲を聴くだけで記憶が蘇りますよね。最後のシーンまで思い出して、曲だけで泣けてきます。CGも美麗で、初めてフルボイスが採用された「FF」作品でもありましたよね。
今までも、自分自身が主人公の目線になり進めていくゲームは多くありましたが、ゲームのキャラクターにここまで感情移入できるゲームはなかなか珍しく、非常に感動した意味も込めて『FFX』は衝撃的でした。

北瀬さん
「ザナルカンドにて」については、植松さんもよく仰っているのですが、本当はオープニングのシーンで使う予定ではなかったんです。いわゆる”ストック曲”だったんですよね。
そこを、今回の歌舞伎でも監修をしていて、オリジナル版開発当時にイベントディレクターをしていた鳥山求が、「この曲をオープニングにあてたらいいんじゃないか?」と提案したんです。
開発者は朝出社してゲームを立ち上げて、必ずオープニングを見ることになるのですが「あ、このオープニングいいね」と反応があり、今の形が生まれたわけです。
もちろん植松さんの曲自体も素晴らしいけど、チームワークを発揮して、奇跡的にベストマッチないいシーンを作り出すことができたんです。今は最初から緻密な計画を立てて制作をするのでそうはいきませんが、当時のゲーム制作のいい点で、狙ったものではなく、途中で思いつきでやって相乗効果を発揮して皆さんの心にも響いたという、あの時だからできた味ですね。

──『FFX』では召喚獣も非常に大きな役割を果たしますよね。召喚獣の擬人化や、歌舞伎役者の演技と映像の融合で世界観を表現しようとしているとのことでしたが、どのように挑戦されているかお伺いさせてください。

菊之助さん
まず、IHIステージアラウンド東京の高さ8mの巨大スクリーン4枚にゲームの映像を投影することで、お客様があたかも『FFX』の世界にいるような体験をしていただきたいと考えています。召喚獣はとても大きな存在なので、その8mのスクリーンに映し出してその存在感を表したいなと思いました。映し出す映像は、実際にゲームで使用されたものを、スクリーンに合わせてトリミングしてブラッシュアップしています。
また、ゲーム内に出てくる擬人化されているものについてですが、歌舞伎では昔から擬人化の表現方法があるので、それを取り入れていきたいと思っています。万物、神羅万象、生きとし生けるものを日本人が大事にしてきたからこそ擬人化の手法が生まれたのだと思います。歌舞伎ではそれをさらに舞踊という形で表してきました。今回も召喚獣という心を通わせて出現したものを、歌舞伎役者がどう舞踊で表現するかなどを探っている最中です。

──歌舞伎に初めて触れるゲームファンに、楽しみ方を伝授いただけますか?また、事前に知っておいた方がいい知識などはありますか?

菊之助さん
新作歌舞伎の『FFX』は、歌舞伎にふれたことがない方でも、親しみやすいように制作しています。古典歌舞伎になるとどうしても言葉が昔の言い回しだったり、一度では聞き取りにくかったりなど、ハードルになる部分もあるかと思います。
今回は言葉を分かりやすい表現にして、そこに歌舞伎ならではの台詞の言い回しや立廻りを取り入れて楽しんでもらえるようにする予定です。今回の『FFX』には「歌舞伎を知らないから分からない」というようなことは全くないと思っております。実際に歌舞伎役者が演じる様を観ていただくことで、作品が持っているテーマや、キャラクターの持っている葛藤がより浮かび上がって見えることを期待しています。ゲームファンの皆さんには『FFX』の世界を楽しんでいただけると思います。

──北瀬さんは歌舞伎に対してどのような印象をお持ちでしたか?

北瀬さん
ゲームは芸能や技術などのエンターテイメントの分野において、最後発のものだと思っているんです。対して歌舞伎は大先輩じゃないですか。なので歌舞伎化に対する第一印象は「恐れ多い」というものでした。
ですが、今こうして歌舞伎の世界の最前線で活躍していらっしゃる方も同じ人間で、ゲームで遊ばれている。そんな方からこのようなお話をいただける時代になったことが非常にうれしい気持ちでした。
ゲームは出始めの頃、サブカル的な扱いだったじゃないですか。そこから10年、20年やってきた中で、他業界で活躍されている方にゲームに興味を持っていただけて、コラボレーションに発展して、こういう時代になったんだなと感動しました。

──宣伝用のナレーションはティーダ役の森田成一さんが担当されていましたね。森田さんの印象はいかがでしたか?また、今回同じくティーダを演じられる菊之助さんと、北瀬さんにとってのティーダ像も教えてください。

菊之助さん
ティーダの語源は沖縄の言葉で”太陽”という意味ですよね。森田さんの「劇場で待ってるッス」というお声を聞いた時に、青空がバーンと広がったような、心が晴れたような感じがしました。
ティーダは太陽のように晴れやかで、エネルギーが弾けるような若者なんだな、ということを森田さんと実際にお会いしてお声を聞いた時に感じました。

歌舞伎役者は役作りをするうえで、ある程度役柄の類型というものがあります。例えばお姫様、町娘、武家の娘、侍、職人、鳶頭(とびがしら)など色々な役柄がある中で、大体このキャラクターはこの役だな、と当てはめていくのですが、ティーダはいわば”江戸の町人の若い鳶頭のような威勢の良さを持っている若者”じゃないかなと思いました。森田さんとコンタクトができたので、色々とお話をお伺いしつつ、役作りができればと思いました。

北瀬さん
ティーダは明るいキャラクターですよね。その前の『FF7』、『FF8』の主人公は比較的にクールなキャラクターだったので、次は明るくしたいという思いがありました。
森田さんにティーダを演じてもらうきっかけですが、森田さんは『FF8』でゼル・ディンのモーションアクターだったんです。当時から役者さんとして表にも出られる方だったので、最終的にお顔の出ないモーションアクターのお仕事は、役者さんとしてどうなんだろう?と非常に気にはなっていたのですが、森田さんは現場の雰囲気を明るくしてくれるくらいハツラツとゼルを演じていたんです。
『FFX』の制作が決まりフルボイス化することになり、ゼルを演じてくれた森田さんに、キャラクターに生き生きと息を吹き込んでくれるような活力を感じたので、ティーダ役をお願いすることにしました。もちろん森田さんは声のお仕事は初挑戦でしたが、森田さんに預けることによって、我々のディレクションの発想だけでは作り得ないティーダの明るいキャラクターを演じ切ってもらえると思ったのでお任せしました。初挑戦でここまでやってくれて非常に素晴らしかったです。ティーダを想像以上に生き生きとした活発なキャラクターに引き上げてくれたのは森田さんだったんですよ。

──ゲーム内では名前変更の関係もあり、ボイスで直接名前を呼ばれることがなかったティーダですが、歌舞伎ではどうなるのでしょうか?(ユウナには”キミ”と呼ばれていました。)

菊之助さん
一番初めの登場シーンで町の人たちにティーダを呼び込んでもらう予定で、そこは名前で呼んでもらおうと考えています。
ユウナがティーダのことを”キミ”と呼ぶことは、お互いに思い合っているけど直接は伝えないという二人の関係の素敵なところだと思うので、その微妙な関係は大事にしていきつつ、マカラーニャの森まで持って行きたいです。

──ティーダの個性的な口癖「~ッス」は歌舞伎化されるとどうなるのでしょうか?

菊之助さん
活かします。全編ではないのですが、ところどころに「~ッス」という語尾が登場します。

北瀬さん
シナリオを横から見させていただいたのですが、言葉遣いも難しくなく、どなたでも分かるような感じで、ところどころ歌舞伎のフレーズが入るのが非常に面白い感じでした。

──キャスティングの見どころについてお伺いさせてください。

菊之助さん
ユウナ役の中村米吉(なかむらよねきち)さんについては、Instagramを見ていただければ一発でご理解いただけると思いますが、めちゃくちゃ可愛いですよ。
前回も『風の谷のナウシカ』でケチャ役を演じてもらい、今は『オンディーヌ』というフランスの戯曲を演じられているのですが、そのビジュアルを見た時「あ、可愛い」と思いました。
ユウナも先日ビジュアルテスト(衣装を着ての撮影)をしたのですが、本当に純粋で惹きつけられる、吸い込まれるようなユウナが完成していたので、乞うご期待していただければと思っております。

──キャスティングは菊之助さんからのオファーだったのでしょうか?

菊之助さん
みなさん古典歌舞伎で色々な役を演じてこられて、小さい頃から一緒にお芝居をして経験を積んできた仲間なので、『FFX』の脚本を読んで、この方にはこの役が合うのではないかと何度も頭の中でイメージを膨らまし、みなさんと演じてきた経験を踏まえて、「この方がいいな」と思った方にお声を掛けさせていただきました。

──キャストさんの中でも『FFX』をプレイされていた方はいらっしゃいますか?

菊之助さん
ルールー役の中村梅枝(なかむらばいし)さんと、ルッツと23代目オオアカ屋役の中村萬太郎(なかむらまんたろう)さんは当時からのプレイヤーです。
ブラスカ役の中村錦之助(なかむらきんのすけ)さん、キマリ役の坂東彦三郎(ばんどうひこさぶろう)さんは稽古開始までにクリアするぞと、今回の歌舞伎に向けてプレイを始められていますね。今ナギ平原まで進んでいるはずです(取材当時)。

──歌舞伎化における『FFX』楽曲の和楽器アレンジについて、植松さんとお話しされたとお伺いしました。

菊之助さん
植松さんは「比較的和楽器にしやすい音階だと思います。違和感なくいけると思いますから、とりあえず作ってみてください」と仰ってくださいました。
『FFX』という作品自体も、服装が着物だったり、オリエンタルな雰囲気を持つ作品なので、歌舞伎との親和性は高いのではと思っています。

北瀬さん
僕も衣裳をちょっと見ましたけど、違和感ないですね。他の「FF」シリーズだと、中世ヨーロッパのような鎧やSFっぽい感じだったりするのですが、『FFX』は結構オリエンタルな感じがあるので、歌舞伎にしてもすごくいいなあと感じました。当時のデザイナー野村哲也も監修はさせていただいていて、途中経過を見ているのですが、進行中のものを見ると、いいものができそうだなという予感がします。

菊之助さん
今、主要パーティメンバーを野村先生に監修していただいている段階です。ジェクトのデザインもご確認いただいているのですが、かなりカッコいいですよ。

──ロンゾ族のキマリは、隈取も工夫なさっているとYouTubeで拝見しました。

菊之助さん
キマリは隈取が似合うと思ったのですが、隈取を強調しすぎるとキマリの味が消えてしまったように感じたので、何度も修正をしました。坂東彦三郎さん、私とメイクの松本慎也さんによって歌舞伎と現代メイクを融合させたようなキマリが完成したので、期待していただけたらと思います。

──『FFX』の長いストーリーをどのように凝縮させるのでしょうか?

菊之助さん
最初に「歌舞伎ではこういう場割になるな」というものを作成し、脚本の八津弘幸さんに見ていただいて、それぞれの場面をどうやって効果的に見せるか、どこを割愛するのか、役の見せ場と時間的な都合に合わせて決めていきました。
パーティメンバー一人一人を立たせたいので、登場するモーメントを多少ずらして前後させるなどをご提案し、鳥山さんに監修していただき、脚本作りをしていきました。

北瀬さん
監修は鳥山が担当していたのですが、僕も最終稿に近いものを見させていただきました。初めて脚本を読んだときに、結構「詰めて省略する」みたいなニュアンスで仰っていましたけれど、そんなことなくて結構入っていますよね。最初のシーンとかも「こんなNPCの子供のセリフまであるんだ!」というノリでした。『FFX』がギュッと凝縮されているように感じます。期待と言っては失礼ですが、僕自身もすごく楽しみです。

ゲームをプレイして、歌舞伎に興味を持った方々が、「このシーンはどうなるのかな?」と想像していらっしゃると思うのですが、期待したシーンはほぼ全てちゃんと含まれていると思います。
ゲームではCGを使用するので、敵や群集を登場させることはできますが、今回は舞台装置はすごいとはいえ、限られた空間と時間の中で表現することになるので、どう翻訳していくのか非常に興味があります。
僕もまだ完成系を見ていないので、どうなるんだろうって楽しみにしています。

──上演時間8時間という長丁場ですが、演者さんの心構えと、お客さんはどう見るべきかご教示お願いします。

菊之助さん
演者の心構えに関しては、IHIステージアラウンド東京は360度回転する劇場で4面ステージがあるので、役者はとにかく裏を走り回らなければならないことと、出入口を間違えないようにしなければならないというところです。「あれ、いない」なんてことのないように気を付けたいと思います(笑)。
あとはこのユウナの元にパーティメンバーが集結してシンに立ち向かっていくという素晴らしい脚本に身を任せます。
パーティも最初バラバラなので、きっと演者たちも最初は手探りで現場に入っていくと思います。作品を作り上げながら、シンを倒すユウナたちのように一座一丸となって『FFX』に向かっていく団結力を培っていきたいと考えています。

お客様は「8時間って大変だな」と思われるかもしれませんが、先ほど脚本のお話しでも出た通り、7人の主要なキャラクターが登場するのですが、それぞれが葛藤を抱えていて、8時間の中で成長していくんです。その成長をぜひ見守っていただきたいです。その気持ちで作品に入ってきていただくと、ユウナたちと一緒に旅をしているように感じていただけるのではないかと思います。


上演時間が8時間あると発表された当初は、編集部でも正直「長いな」と感じたメンバーがいたものの、菊之助さんの思いと北瀬さんのお話しを聞くと、上演時間はあっと言う間に過ぎていきそうな気がしました。
以上が合同取材の内容です。続いてインサイドに向けた特別インタビューのお時間をいただきましたのでお届けいたします。

特別インタビュー

──改めて音楽のお話しを少しお伺いさせてください。今回は全ての楽曲が新規アレンジされるのですよね。『FFX』の楽曲が和楽器アレンジされるのは初めてですが、「素敵だね」はどのようなアレンジになる予定なのでしょうか?

菊之助さん
劇中の「素敵だね」は、歌舞伎と調和するよう歌は入れない予定で、和楽器でのアレンジを楽しんでいただけますと幸いです。信頼できるチームと制作していて、これから録音をするところです。素晴らしい楽曲がどう再現されるかぜひ楽しみにしてください。

──ファンは音楽アルバムの発売も期待していると思います。

北瀬さん
今まで和楽器アレンジはなかったので、そういう意味では楽しみですよね。

──監修の際に印象に残ったコメントなどはありますか?

菊之助さん
鳥山さんに本当に細かく見ていただいて、「ここはこのようにした方がいいのではないでしょうか?」や、「こちらの表現の方がこのキャラクターに合っているかもしれないです」など、ご提案をたくさんいただきました。
特にキャラクターの言い回しの部分で、変更があったセリフに対して「この言葉は言わないと思います」や「ここはこのセリフを大事にしてほしい」と一つ一つ丁寧にコメントをいただき、作中でその言い回しにした意味などを再確認させていただき、助けていただいています。
一言のセリフでキャラクターが持っている感情が浮き立ってくるのがいい脚本だと思います。コメントをいただく度にその通りだと、改めて作品を見つめ直す機会をいただくようで、監修をいただいて作品に対する愛がより深くなっているように感じます。

──お二人が最初に実際にお会いしたのもこの会議室だったのですよね。当時スクウェア・エニックスさんの門を叩いた時の気持ちを思い出されるのではないでしょうか。

菊之助さん
ステイホーム中に文化全体が落ち込んでいる中、私も『FFX』という作品と、キャラクターたちの思いに救われました。
この強いメッセージ性を持った作品を届けたいという気持ちと、歌舞伎を見たことのないゲームファン、また、ゲームで遊んだことのない歌舞伎ファンもいる中、相互文化の発展という意味でも、新しい橋を作らせていただきたいという思いでした。

「FF」シリーズは世界的に人気ですよね。世界と日本との文化交流という意味でも『FFX』は大きなテーマ性を持っている作品だと思います。
その思いを企画書に込めて、スクウェア・エニックスさまにお伺いさせていただきました。検討しますとお伝えいただいた時はうれしかったです。

──「FF」シリーズ35周年のこのタイミングで、『FFX』21周年の日に発表と、タイミングが揃っていますね。

菊之助さん
35周年を狙ったわけではなかったのですが、発表までの間にちょうどタイミングが合い、北瀬さんに教えていただき気付きました。機会に巡り会えたということはありがたいです。

北瀬さん
会社間での調整もあったのですが、僕の心の中では最初にお聞きしたときから「おっ、これはやっていただきたいな」と考えていました。うれしかったですね。一番遠いところにあったゲーム文化と伝統文化がくっつくとどういうものになるんだろうとワクワクします。
ゲームをプレイしている方だと感じると思うのですが、ゲームというフォーマットを使ってドラマを表現しようとするとき、独自の落とし所を探るために知恵を使ったりするのですが、今回は歌舞伎化ですよね。
それぞれ文化が違うものを、どう工夫してフォーマットに落とし込んで再現するのか、しかもただフォーマットを揃えるだけではなく、オリジナルのゲームファンが見ても楽しくなるようなものを作り上げなければいけないという、非常にクリエイティブが発揮される試みだと思います。同じ作り手としてもとても楽しみにしています。

「こう来たか」や「こうするのか」という工夫はもちろん、反対に端折る部分も大事ですよね。プロは省略するのも上手なんですよね。全てをブチ込むのがいいのかと言われるとそうではなくて、大事なところがどこか分かっているからこそその部分を大事にしようとすると、自ずと省略する部分が見えてきますよね。今回の歌舞伎でも『FFX』のストーリーをうまく濃縮していただいていると思いますので、そこも楽しみです。
とはいえ先ほども申し上げた通り、逆に「ここもやってくれるんだ!」という驚きがあったので、「あのシーンがない」とガッカリすることはないとは思います。

──ステイホームが始まったタイミングだと、『FINAL FANTASY VII REMAKE』の発売もありましたね。あえて『FFX』をプレイされたというのも巡り合わせの一つだったかと思います。

菊之助さん
ヒーローとヒロインであるティーダとユウナの絆が次第に深まっていくと同時に、最後にはつらい決断を強いられる様子が本当に切ないんですよね……あれはどうやって考えられたんですか?(北瀬さんに聞く)

北瀬さん
当時の脚本の野島一成さんと鳥山さんが上手に作ってくれました。

菊之助さん
普通のシナリオだとバイアスで逆に考えるものですよ。まさか祈り子によって夢のザナルカンドから……これもすごいなって思いますよ。本当にストーリーに惹かれました。
最初はパーティメンバーも喧嘩をしたり、立場の違いから互いを理解出来なかったりするのですが、物語が進んでいくにつれて段々と一丸となって、7人それぞれが葛藤を成長に変えていく様子も、しっかりと伏線を回収して、キャラクター一人一人に愛情を持ってお作りになっていると感じました。『FFX』は素晴らしいなと思います。

北瀬さん
『FFX』は「FF」シリーズの中でも人気のあるタイトルで、実際にNHKさんの番組『全ファイナルファンタジー大投票』で一位に輝いた作品でもありますので、シリーズの中でも『FFX』に歌舞伎化のお話をいただいたことは意外ではありませんでした。

僕は期待したいことがあるんです。『FFX』は今から21年前の2001年に発売されたタイトルなんですよね。作品内では、ティーダとジェクトの親子の話も語られます。当時子供の視点でストーリーを味わっていた人が、今回の歌舞伎化で改めて作品を観るとき、今度は親の視点で観てくれるかもしれない。自分の息子がティーダの立場だったらどう思うだろうと、ジェクトの気持ちにシンクロして新鮮な気持ちで観てもらえる可能性もあるので、今こうして『FFX』が新しく歌舞伎化されるというのは意味があるのかなと思います。楽しみです。

菊之助さん
そうですよね。私も当時はティーダの気持ちでプレイしていました。父親になってジェクトの気持ちが分かるようになりました。

北瀬さん
見え方も変わりますし、当時の気持ちと逆の視点で楽しまれる方もいらっしゃると思います。親子の絆にフォーカスをあてる魅せ方も楽しみ方も、新鮮ですよね。

菊之助さん
素敵だなあ。

──まさに「素敵だね」ですね。そんな素敵な世界的に人気のある『FFX』ですが、配信や字幕などで海外の方も楽しめる機会はありますでしょうか?

菊之助さん
配信は考えていきたいですね。劇場にいらっしゃることができない方にもメッセージを届けていきたいです。
そして、IHIステージアラウンド東京の元になった劇場がオランダのアムステルダムにあるので、これは夢ですが、いつかオランダでも上演したいなと思っています。

北瀬さん
チケットは海外からは買えないんですか?情報も結構解禁されたし、海外から観にきたい人もいるかもしれません。

スタッフさん
海外からのチケット購入は難しいのですが、日本国内にいらっしゃる方にはご購入いただけるようになっています。
※後日補足:当日会場でも日本語と英語の字幕表示を予定していて、今後海外に向けた映像の配信を予定されているとのことです。これは朗報ですね!

──ちなみにアルベド語にも字幕が付く形になるでしょうか?それとも日本語で演じられるのでしょうか?

菊之助さん
劇中でアルベド語で話してしまうと、お客さんは「何て言ったの?」となってしまう可能性が非常に高いので、そこは日本語で演じる予定です(笑)。

北瀬さん
セリフ覚えるのも大変ですからね!

──(一同笑)


日本が誇る”ゲーム”と”歌舞伎”という異なる文化が交わり、互いに新たな架け橋となるであろう『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』。実際に尾上菊之助さんのお話をお伺いして、作品に対する迸る熱量と愛をビシビシ感じ、素晴らしい作品ができあがるのだろうなという予感でいっぱいです。
歌舞伎ならではの衣装や演出はもちろん、シナリオとセリフの変更点もかなりしっかりと監修が入っていて、菊之助さんとスクウェア・エニックスさんが新たに共に作り上げる『FFX』の世界を、ゲームファンも安心して楽しめることは間違いないでしょう。きっと8時間はあっという間かもしれません。

・ヘアメイク:高草木剛(VANITÉS)
・スタイリスト:カワサキタカフミ

公演概要

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』
日程: 2023年3月4日(土)~4月12日(水)
※休演日:3月8日(水)、15日(水)、22日(水)、29日(水)、4月5日(水)
会場: IHIステージアラウンド東京(豊洲)
一般発売:2022年11月19日(土)

【企画】尾上菊之助【脚本】八津弘幸【演出】金谷かほり 尾上菊之助

【配役】
尾上菊之助/ティーダ
中村獅童/アーロン
尾上松也/シーモア
中村梅枝/ルールー
中村萬太郎/ルッツ、23 代目オオアカ屋
中村米吉/ユウナ
中村橋之助/ワッカ
上村吉太朗/リュック
中村芝のぶ/ユウナレスカ
坂東彦三郎/キマリ
中村錦之助/ブラスカ
坂東彌十郎/ジェクト
中村歌六/シド

主催:『新作歌舞伎 ファイナルファンタジ―X』製作委員会
(TBS/ディスクガレージ/ローソンエンタテインメント/博報堂DYメディアパートナーズ/楽天チケット/TopCoat) 後援:TBS ラジオ/BS-TBS
原作・協力:スクウェア・エニックス
制作協力:松竹
製作:TBS

公式HP: https://ff10-kabuki.com
公式YouTube: https://youtu.be/WIqJuxTvucs
公式Twitter:https://twitter.com/ff10_kabuki
公式Tiktok: https://www.tiktok.com/@ff10_kabuki
公式Instagram: https://www.instagram.com/ff10_kabuki/

IHI Stage Around Tokyo is produced by TBS Television, Inc., Imagine Nation B.V., and The John Gore Organization, Inc.

■物語
大いなる脅威『シン』に人々がおびえて暮らす、死の螺旋にとらわれた世界スピラ。民はエボン寺院に心のよりどころを求め、 召喚士たちは「命と引きかえに発動する究極召喚こそ『シン』を倒す唯一の手段」とする寺院の教えを信じ、スピラに平穏をもたらすべく旅に出る。究極召喚でも『シン』は完全には死なず、一定の期間を経て復活するが、それでも『シン』の出現しない 時期──ナギ節は、人々の心につかの間の安息を与えていた。 ビサイド村の少女ユウナも、ナギ節をもたらそうと決意した召喚士のひとりだった。異世界ザナルカンドからスピラへと迷いこみ彼女と出会った少年ティーダは、見知らぬ世界にとまどいながらも、召喚士を守る「ガード」としてユウナに同行する。『シン』 に 立ち向かう討伐隊の壊滅、明かされる『シン』の正体、そして寺院の裏切り──旅のなか、衝撃の出来事が幾度となくティー ダたちを襲うが、彼らはそれを乗り越え、自分たちの物語をつむごうとする。

■ 『ファイナルファンタジーX』とは
2001年に「ファイナルファンタジー」シリーズの第10弾として、発売された『ファイナルファンタジーX』。
世界累計出荷・DL 販売本数は、2080万本以上(2021年9月末時点)のシリーズ屈指の人気作である。 大いなる脅威『シン』に立ち向かう少年と少女の切ない物語が、シリーズで初めて採用されたキャラクターボイスや状況に応じて表情が変化 するフェイシャルアニメーションの採用により感情豊かに描かれ、その感動的な物語は今なお多くのユーザーに愛され続けている。

■キャストプロフィール
尾上菊之助
1977年8月1日生まれ。1984年2月、歌舞伎座『絵本牛若丸』で六代目尾上丑之助を名乗り初舞台を踏む。1996年、5月には『弁天娘女男白浪』の弁天小僧菊之助ほかで、五代目尾上菊之助を襲名。『伽羅先代萩』の政岡、『摂州合邦辻』の 玉手御前、『義経千本桜』の知盛・権太・忠信、『春興鏡獅子』『京鹿子娘道成寺』など、立役・女方として、時代物、世話物、 舞踊と幅広いジャンルで数々の大役を勤める。発案、主演を務めた、シェイクスピアを歌舞伎に翻案した『NINAGWA 十二 夜』を 2005年に実現させ、2019年には新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』で主人公ナウシカ役を務め、2022 年の再演ではト ルメキア皇女クシャナを演じた。主な TVドラマ出演作品に、TBS日曜劇場『下町ロケット』・『グランメゾン東京』や、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』などがある。

《アネモネ・モーニアン(アニモ)》

アネモネ・モーニアン(アニモ)

ボーカリスト アネモネ・モーニアン(アニモ)

"アニモ"の愛称で親しまれるボーカリスト。カナダで培ったグローバルな感性を駆使した歌唱・音楽制作を得意とする。 その多様性を尊重する精神、そして英語力、また、映像作品・ゲームに対する愛から、時にライター・通訳・翻訳家としても活動している。

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