『フロントミッション』はなぜ今も歓喜される作品なのか? 27年前の背景と活気を振り返る─リメイク版ユーザーよ、“アレ”だけはしないで!

27年前に始まった『フロントミッション』が、令和に華麗な復活を果たしました。これだけの年月を経ても活気を失わない原点は、どのような形で盛り上がったのか。リメイク版発売を記念し、あの時代を振り返ってみます。

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『フロントミッション』はなぜ今も歓喜される作品なのか? 27年前の背景と活気を振り返る─リメイク版ユーザーよ、“アレ”だけはしないで!
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■『フロントミッション』は、“飢えていた”ユーザーを的確に狙い撃ち

『フロントミッション』が成功した鍵のひとつは、当時のゲーム事情にありました。実は、リアル志向のオリジナルロボットものというカテゴリー自体、当時かなり珍しい部類だったのです。

ロボットもの自体はいくつもありましたが、その多くは人気アニメシリーズを原作としたもので、『機動戦士ガンダム』『装甲騎兵ボトムズ』『超時空要塞マクロス』などのゲーム化作品がほとんど。オリジナルロボット作品の代表的な存在である『アーマード・コア』の登場も、1997年まで待たなければなりません。

『スーパーロボット大戦』シリーズは当時から人気を博していましたが、こちらは多数の作品とのクロスオーバーも魅力のひとつなので、系統としては向きが少々異なっています。

リアル傾向のオリジナルロボットゲームは、皆無でこそなかったものの、乏しい状況だったのは間違いありません。一方で、リアルロボット系アニメなどの作品は一定以上の支持を集めており、そんなゲームを遊びたいという潜在的なニーズは確かに存在していました。

求めるユーザーはおり、しかしゲーム市場の数字としてはまだ明確ではなく、需要がどれほど広く、また深いのかも分からない時代。そんな未知の海に堂々と漕ぎだしたのが、『フロントミッション』だったのです。

先駆者として『重装機兵レイノス』や『重装機兵ヴァルケン』もありますが、こちらはアクションゲーム。また難易度も割合高めなので、ゲームの腕前という点で人を選ぶ向きもあります。『フロントミッション』はジャンルの相性こそありますが、ターン制なので焦る必要はなく、反射神経も必要なし。思考するゲーム性が嫌いでなければ、多くのロボット好きにとって間口の広い作品とも言えるでしょう。

アニメや『重装機兵ヴァルケン』などの反響から、リアルロボット系ゲームを求めるユーザーはおり、そして当時まだ珍しかった「リアルロボット+SRPG」という新たなフロンティアに挑んだ『フロントミッション』。その挑戦は、実際にこうしたゲームを求めていたユーザーに刺さり、前述の通り大きな成功を収めました。

もちろん、ニーズにただ応えただけではありません。「ヴァンツァー」をパーツ単位で組み合わせ、編成やパイロットの特性を踏まえた武装を選ぶセットアップは、リアルロボット好きにはたまらない要素です。

また戦闘中のエフェクトや演出も、重火器の迫力や被弾した衝撃、火線に晒されながら肉薄する接近戦など、リアルロボット系だからこその泥臭い臨場感もたまりません。「ヴァンツァー」はパーツ単位で壊れ、例えば左腕が破壊されると、左手に装備した武器と肩にマウントした兵器が使用できなくなります。

ゲーム的には単なる被害で、デメリットを負う状態です。しかし、「あちこちのパーツが破損しつつも戦い続け、敵を屠る」という状況を想像すると、これほど沸き立つシチュエーションもなかなかありません。

カスタマイズや戦略性、演出まで含めたゲームシステム全般がしっかりと作られており、それだけでも十分リアルロボット好きを震え立たせます。そこに、想像力を刺激する上質な戦況展開が加われば、多くのユーザーが酔いしれるのも納得の一言です。

加えて、戦争の重みと愚かさ、それに翻弄されてしまう人々のドラマに真正面から向き合ったシナリオも高く評価されました。ゲームバランスの一部に甘さはあるものの、大きな問題点や不満はなく、ニーズを的確に射抜いた『フロントミッション』。リアルロボット系ゲームを求めていたユーザーの“渇き”を満たした、見事な作品でした。

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《臥待 弦》

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