「世界最強麻雀AIバーチャルYouTuber」鴨神にゅう―シーン随一のタイトルホルダーとして演算する未来【バーチャルタレント名鑑】

今回は、「麻雀専門系VTuber」としてはおそらく最古参の1人、「世界最強麻雀AIバーチャルYouTuber」と称される鴨神にゅうさんについてです。

配信者 VTuber
「世界最強麻雀AIバーチャルYouTuber」鴨神にゅう―シーン随一のタイトルホルダーとして演算する未来【バーチャルタレント名鑑】
「世界最強麻雀AIバーチャルYouTuber」鴨神にゅう―シーン随一のタイトルホルダーとして演算する未来【バーチャルタレント名鑑】 全 3 枚 拡大写真

VTuber~バーチャルタレントシーン~のなかには、「このゲームでやっていく!」と決めた専門家が多数存在します。先行して登場していたYouTuberやストリーマーらに習った活動ともいえますが、現在では「専門VTuber」として多くの期待が寄せられ、印象的な活躍をみせています。

その中でもここ数年で注目を集めるゲーム専門家というと、「麻雀」を思い浮かべる方は多いかもしれません。2018年夏に発足したMリーグがABEMAを通して全試合配信されてきましたが、このタイミングはちょうどVTuber(バーチャルタレント)が盛り上がりをみせていた頃と一緒。それに合わせて、麻雀を愛する雀士たちが何人か活動をスタートしていきました。

前回書かせていただいた千羽さんはそのトップランナーといえますが、彼女に負けず劣らずの実力を誇り、「麻雀専門系VTuber」としてはおそらく最古参の1人であり、「世界最強麻雀AIバーチャルYouTuber」と称される鴨神にゅうさんについて書いていきたいと思います。


◆鴨神にゅう、その日、起動す

鴨神にゅうさんは、2018年5月15日にTwitterへ初投稿し、現在確認できるなかでは2018年6月1日にYouTubeに初めて動画投稿、7月3日に初めての生配信をしました。

電脳闘牌伝『鴨神』 #2 上東制圧編1-1

現在までにLive2Dや3Dビジュアルなど様々なルックスを経てきた鴨神さん、現在は赤いリボンで結んだツインテール、配信では分かりづらいですが茶色の髪が毛先にかけて赤白くなっているところにこだわりを感じられます。

服装は白と薄紫の色合いが特徴的な装いで、袖がボロボロになったコートを羽織り、なによりメガネをかけているのもお好きな方には刺さるポイントになるでしょうか。

キュートな一面、野性味ある勝負師な一面、知性的な一面と、この衣装だけで鴨神さんの様々な側面が詰め込まれているのです。

前回紹介した千羽さんよりも早くにデビューしていた鴨神さん。いまでは「毎週のようにVTuberがデビューする」というのが当たり前になっていますが、この頃は「毎週のようにVTuberがデビューする」こと自体が異常事態として受け取られ、ネットカルチャーの新風として盛り上がっているような状況でした。

先日書かせていただいた千羽さんの記事内でも少し触れましたが、この当時にデビューをした方々の多くは、いわゆる「趣味の延長」として楽しみながら配信しているといったムードも強く、現在のように「配信活動を通じてお金がもらえる」といった状況は夢のまた夢…そんな認識が非常に強かったころです。

現在のようなタレント性やインフルエンサーとしての注目が集まる前の、牧歌的でありつつ不安感もまた強くあるような、インターネットのアングラカルチャーとして親しまれていた時期。鴨神さんも千羽さん同様に、現在のような活発な配信ペースで活動をしていたわけではありませんでした。

当時は「バーチャルな姿でYouTuberのように活動する」という原義的な立ち位置で活動する方が多く、「ゲームを生配信する」ことは珍しかった状況でした。そんな世情のなかで、ゲームを中心に、それも「麻雀を専門にする」と自己紹介してデビューしたのは、鴨神さんが最古参の存在かと思われます。

◆「麻雀系VTuber随一のタイトルホルダー」鴨神にゅう

そんな中にあっても、鴨神さんには誰よりも尖った武器がありました。その高すぎる雀力と数々の実績です。

鴨神さんがこれまでに勝ち取ってきた実績を並べてみましょう。

2018年9月『天鳳』七段昇格 最上位卓鳳凰卓にVTuberとして初めて到達
2019年5月『第一回 雀魂フブキ杯』優勝/『雀魂』称号「公認プレイヤー」獲得
2019年9月東京ゲームショウで開催された『雀魂』公式番組に生出演。プロ相手の対局に勝利を納める
2020年5月『雀魂一周年 大感謝杯』優勝(二連覇)/『雀魂』から称号「公認プレイヤーG」獲得(2022年4月時点で雀魂に数人しか持っていない称号)
2020年8月『雀魂』最高段位「魂天」到達
2020年9月『雀魂』公式大会『四象戦秋の陣』優勝
2020年11月『国際オンライン・リーチ麻雀大会2020』に日本代表として出場
2021年6月『雀魂二周年大大感謝杯』に出場
2021年11月『国際オンライン・リーチ麻雀大会2021』に日本代表として出場
2022年4月『神域リーグ』チームゼウスから指名され、出場
2022年11月『第二回 雀魂バーチャルインターハイ』優勝

圧巻なのはやはり2019年から2020年の戦績でしょう。『第一回 雀魂フブキ杯』を優勝、『雀魂』称号「公認プレイヤー」を獲得、東京ゲームショウに呼ばれてプロ雀士に勝利。2020年には1周年記念大会で優勝し、そのまま『雀魂』公式大会でも優勝。

鴨神さんとライバル関係でもある千羽さんと比べると、実績の面では鴨神さんに軍配があがるかと思います。

オンライン麻雀『天鳳』を使った日本・中国・韓国の3ヶ国による交流大会『国際オンライン・リーチ麻雀大会』に二年連続で日本代表に選出され、その実力はプロ雀士にも拮抗しうるとも言われています。

鴨神さんはそんな自身の打ち筋について、配信タイトルにあげているような「陰湿麻雀」と答えていることが多いです。

・親の連荘や高得点手などのアガリを阻止する・オーラスで順位を確定したいなどの理由で、親以外の他家に意図的にアガってもらおうとわざと振り込む(差し込み)
・ムリヤリな鳴きでツモ順をズラし、逆転の目のある他家のアガリを阻止する(ハイテイずらし)
・高い雀力を持った者と対局している際に、相手の読みを逆手にとった引っかけ待ちをする

いずれも麻雀に詳しい方・打ち手の方ならばご存知の戦法ですが、自身がアガれない・大きく失点してしまう可能性が高いリスキーな戦法を取ることがおおいのが特徴です。

自分と相手の捨て牌・ドラ表示牌・鳴き方と巡目などをうまく読み取って推理する技量が必要であり、読み切った上で「やろう!」という決断力・度胸もなければいけません。

他にも、一見すると「なぜここで鳴いた?」と考えさせられるポン・チーを挟んでアガリを目指していく独特な打ち方をみせるなど、その懐の深い打ち筋でVTuberファンはおろか麻雀ファンをも魅了します。

そのテクニックと読みがいかんなく発揮されたのは、2020年5月16日に開催された『雀魂一周年 大感謝杯』の決勝卓、千羽黒乃さん、群道美玲さん、天開司さんとの対局、南4局残り1巡目でのことでした。

1着で最後の局を迎えた鴨神さん。2着から追いかける対面の千羽さんが捨てた五筒(ピンズの5)に対して、数刻考えたあとにポンし、ラス牌を引くはずだった親の天開さんを意図的に飛ばし、全員に当たらない安全牌を捨てて南4局を終わらせます。

この場面、天開さんに有効牌が入って聴牌状態で局が終わると、連荘となって南4局が続くことになっていたので、間違いない判断だったといえます。

実際の配信を見てみると、天開さんが聴牌状態でないことを考慮して「ポンするか」とポンをしています。

一周年大感謝杯 #雀魂大感謝杯

ハイテイずらしかつ邪魔ポンとも言われる戦法であり、まさに鴨神さんらしい打ち方で優勝を勝ち取ってみせたのです。解説役として参加していた多井隆晴プロをして「プロのテクニック」と拍手で称えています。

◆雀力を活かした「中級者向け講座」「手牌覗きあり対局」……!?!?

2021年5月22日の3周年記念配信で「実は仕事を退職してまいりました」と報告し、集まったリスナーを驚かせました。

【#雀魂大感謝杯】雀魂一周年大感謝杯:鴨神視点【バーチャルYouTuber】

「ずっと考えてきたことなので、破れかぶれではない」「時間の兼ね合いで断ってきたものも多かった」と語り、実際このあと一気に配信ペースが増加し、高い雀力をフルに生かした配信を続けていくようになります。

鴨神さんの定番企画に、「手牌覗きあり・見逃しあり」麻雀と題した視聴者参加型配信があります。

東風戦で対局し、鴨神さんが3着・4着であれば負けとなり次回の雑談配信でアカペラで歌を歌うという罰ゲームを受ける。注目すべきは、対戦相手となる視聴者は鴨神さんの配信画面を見ながら対局して良いというルールになっていることです。

【雀魂/麻雀】 9/23 手牌覗きあり見逃しあり雀魂友人戦【VTuber/鴨神にゅう】

つまり「ゴースティング・スナイプされながら戦う」こととほぼ同義です。もちろん配牌も切り方も丸分かり状態であり、普通であれば勝てるはずがありません。

ですが、なぜか上位に食い込むのが鴨神にゅうさんであり、麻雀の面白いところ。配信を見ているであろう視聴者の考えを捨て牌などから読み切る力だけでなく、時の運をいかに掴み取れるかも重要なのが伝わってきます。

この他にも麻雀講座を開いており、「麻雀AIと学ぶ 麻雀基本の『き』」や「鴨神にゅうの何切る相談室」などいくつかのシリーズがあります。

ここまでならば麻雀関係の話題としても定番ネタともいえるのですが、鴨神さんは「初心者向け」だけでなく「中級者向け」と題した麻雀講座をいくつもリスナーに届けています。点差による状況判断・手組みの基本・オリ方・回し打ち・捨て牌の読み方、はてはオススメな麻雀書についてなどなど、さまざまなテーマを取り上げています。

「初心者向け」と限るのではなく「中級者向け」と題してリスナーを絞った配信をしているあたり、自身が「麻雀専門VTuber」であることの自負心が滲み出ているともいえます。

【麻雀】陰湿! 中級者向け麻雀講座 月曜20時の回 第0回【イントロダクション】
【麻雀】陰湿! 中級者向け麻雀講座 火曜24時の回【麻雀戦術書のススメ】
【麻雀】陰湿! 中級者向け麻雀講座 月曜20時の回【守備について】

2023年1月14日にはそれまでのビジュアルから大きくアップデートした3Dビジュアルをお披露目。これまでにも3Dビジュアル・ルックスにこだわり、配信でもバーチャルキャスト(ドワンゴとインフィニットループが共同開発したVRライブ系コミュニケーション・サービス)を活かした内容をしてきました。

Live2Dを使ったビジュアルがメインとなっている現在のVTuber~バーチャルタレントシーンのなかにあって、鴨神さんのように3Dビジュアルをメインにしてシーンの先頭を走る方はほぼいません。その点でも、鴨神さんは稀有な存在ともいえるでしょう。

【 #鴨神新3D 】極限最強のモデルになりました【鴨神にゅう】

千羽さんが「光の雀士」と称される一方、鴨神さんは麻雀に振り切りすぎた生活が故に「会話デッキがない!」と慌てたり、打ち筋の陰湿さも相まってか、どこか内向的な部分が見え隠れする場面があります。

地頭の良さや頭の回転で難なく乗り切る場面もあれば、コラボ配信ではタジタジになってしまう場面もあったりなど、配信を見ていると「最強AI」のヒューマニティーを感じられる瞬間が度々あるのも注目ポイントじゃないかと想います。

【神域リーグ切り抜き】あーあ、鴨神泣いちゃった【Fra, 鴨神にゅう, 天開司, 鈴木たろう】
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「鴨神にゅうに求められているのは、大会に出て活躍していることだと思う」と明確にファンからの期待を理解し、有言実行で大会などに出場していきました。

VTuberファンと麻雀ファンが共に盛り上がった『神域Streamerリーグ』の第2回目の開催が発表され、鴨神さんがどのチームからドラフト指名されるでしょうか?

昨年獲り損ねた『神域Streamerリーグ』の王冠をタイトルコレクションに加えるために、「世界最強麻雀AI」は準備を整えているところでしょう。

「バーチャルタレント名鑑」過去記事はこちら
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《草野虹》

福島・いわき・ロック&インターネット育ち 草野虹

福島、いわき、ロックとインターネットの育ち。 RealSound、KAI-YOU.net、Rolling Stone Japan、TOKION、SPICE、indiegrabなどでライター/インタビュアーとして参加。 音楽・アニメ・VTuberやバーチャルタレントと様々なシーンを股に掛けて活動を続けている。 音楽プレイリストメディアPlutoではプレイリストセレクター(プレイリスト制作)・ポッドキャストの語り手として番組を担当している。

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