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2023年6月28日(水)、新作RPG『takt op.(タクトオーパス)運命は真紅き旋律の街を』がDeNAからリリースされました。
本作は2021年ごろに発表されたメディアミックスプロジェクトで『サクラ大戦』『天外魔境』シリーズを手がけてきた広井王子氏を原作とする、「クラシック音楽」の力を宿した少女たちが戦うスマートフォン向けアプリゲームです。
2021年には前日譚を描いたTVアニメ『takt op.Destiny』が放映されており、MAPPAとMADHOUSEが共同でアニメーション製作を行う作品としても話題に。また、放映されたTVアニメの大きな反響を受けて、完成済みのα版を見直すクオリティーアップのため、度重なる延期を行なってきたタイトルでもあります。
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そんな本作はゲームが配信されるや否や、僅か2日で100万ダウンロードを突破!さらにサービス開始前日の事前ダウンロードの時点で、同日に正式リリースを迎えた大型タイトル『ハリー:ポッター:魔法の覚醒』を抑え、App Store無料ランキング1位を獲得しました。
本稿では昨年行われたクローズドβテストの先行プレイレポートとは異なる切り口で、『タクトオーパス』を改めてプレイレポート。既に課金しまくり、ゲームの世界にどっぷり浸かってしまった筆者が正式版ならではの魅力をお伝えしていきます。
なお本稿ではクローズドβテストでメディア公開可能とされていた、メインストーリー第5章までのスクリーンショットを交えてご紹介させていただきます。
◆ クラシック音楽の力を宿す少女たちと過酷な世界をアニメのように紡ぐ
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ゲームの世界は、“音楽”を嫌う人類の敵が蔓延る近未来の地球が舞台。この世界では「ムジカート」と呼ばれるクラシック音楽の力を宿した音奏兵器の少女たちが、人間に変わって敵と戦い続けています。
プレイヤーが操作する主人公は記憶を喪失していますが、TVアニメの主人公と同一人物の青年「朝雛タクト」。
タクトはムジカートたちの力を引き出すことができる「指揮者(コンダクター)」として、共に前線に立ち、彼女たちをサポートしていくことになります。
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ムジカートたちは皆が元人間で、戦う力と引き換えに人間だった頃の記憶や人格を消失。人類の敵と対峙するために自ら戦闘兵器になる道を選んでいきました。
物語で描かれるのは、そういった世界観の中核を担う設定部分の掘り下げや戦いの日常、そして“全ての人間を平等に救えるとは限らない”といった、常に付きまとうシビアな問題の数々です。
記憶を失ったタクトはタクトで、人間とかけ離れた思考を持ち合わせるムジカートたちや、大義のためなら犠牲もいとわない所属組織のやり方に四苦八苦する日々を送ることになっていきます。
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本作のメインストーリーでは章ごとにそれぞれテーマのようなものがあり、まるでTVアニメをRPG作品にしたような感触です。脚本を担当しているのは「PSYCHO-PASS サイコパス」「魔法使いの嫁」など、人気TVアニメの脚本を手がけた高羽彩氏なので、“TVアニメ”という表現も案外的外れではないのです。
また、1つの章を終えると次章の次回予告まで挿入されるアニメ感満載の作り。この演出は実に広井王子氏の作品らしいと言えましょう。氏の代表作の1つ『サクラ大戦』シリーズを彷彿とさせます。『サクラ大戦』も同様にTVアニメを意識した作りの物語構成で、各話の最後には次回予告が挿入されていることが知られていますね。
本作の物語はややスロースターター気味ですが、6章以降から加速度的に展開が進み始めていきます。そこまで行くとグイグイ世界観に引き込まれること請け合いですので、ぜひともじっくり進めてほしいものです。
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◆ バフ&デバフ以上に“ポジション”が重要なコマンドバトル
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「コマンドバトル」を採用した一般的なRPGのバトルシステムは、突き詰めていけばバフ&デバフが主体の戦闘になりがち。
本作においてもこれらは確かに重要な要素ですが、それ以上に大切なのは「ポジション」の概念でしょう。ポジションは文字通りキャラクターの配置を指しており、前衛後衛2名ずつの各陣4マスの位置どりが重要になります。
いくら強力なスキルを持つアタッカーを編成に入れていても、敵のポジションとこちらの攻撃可能エリアが噛み合わなければそのスキルを活かすことはできません。バトルでは敵のポジションを動かしたり、味方の位置を交代したりといった、テクニカルなシステムが重要になります。
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また、編成にはムジカートがそれぞれ得意とする役割「ロール」を加味した戦略性も問われてきます。
他にもムジカートが個々で持つスキルの効果、装備アイテム「音源楽装」とムジカートのシナジー、そのバトル中における特殊条件など、様々な要素が複雑に絡まり合うので、かなり奥深い設計です。強敵との戦いも手応えを感じられる戦闘バランスに仕上がっていました。
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ムジカートに用意された必殺技も非常に重要な要素の1つ。戦闘中に発動するムジカートのスキルによってコストが溜まっていき、それらを消費することで必殺技「ミュージカルエフェクト」が発動可能になります。
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この必殺技用のコストは「赤」「青」「黄緑」の3色にタイプ分けされ、ムジカートごとに必要なコストの色と数は異なります。つまり、バトルで必殺技を発動するためには、“戦闘中どの色のコストをどれだけ溜めていくか”がプレイヤーの判断に委ねられています。
本作のバトルシステムは伝統的なターン制コマンドバトルですが、ロールプレイの要素が強めな上に、ボス敵や上級モンスターとはギリギリの戦いが繰り広げられていきます。育成もレベルキャップが施され、戦闘のバランス感は特に意識されているのでしょう。
それなりに頭を使う戦略性が軸になるので、初めからオートバトルのサクサクプレイを期待しているユーザーには向かないかもしれません。好みの差はあれど、筆者的にはだいぶ遊び応えが感じられて、素直に楽しいバトルだと体感しています。
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◆ ソロプレイ寄りのゲームデザイン
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現在『タクトオーパス』にはプロフィール機能こそ備わっているものの、フレンド同士で遊ぶのようなマルチ系コンテンツがありません。
「メインストーリー」や育成、ムジカートとの交流要素「ティーブレイク」、毎週更新されるローグライト系コンテンツの「遠征」など、統合的に見てもソロプレイ寄りのゲームデザインです。
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さらに、リリース時点では全10章ものストーリーが実装されており、中々バラエティーに富んだ展開を見せてくれることでしょう。
本作のようにソロプレイでのゲーム体験に秀でたアプリゲームと言えば、Wright Flyer Studios × Keyの人気作『ヘブンバーンズレッド(ヘブバン)』が挙げられますね。同作は麻枝准氏の切ないストーリーとキャッチーな音楽性、1人で没頭できる作りもあって異例の大ヒットを飛ばしています。
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『タクトオーパス』はアニメやコミックスなど、多角的な展開を見せるメディアミックスプロジェクトという切り口ですが、まさしくその『ヘブバン』を彷彿とさせるソロプレイに舵を切った作り込みです。
スマートフォン向けのRPGでありながら、時間をかけてゆっくり遊べるタイトルになっており、“第2の『ヘブバン』”だなんて呼ばれる瞬間も、案外間近に迫ってきているのかもしれません。
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『ヘブバン』と明確に違うのは初動からグローバル展開され、海外においても早い段階で注目されている点です。また、日本国内の公式Twitterフォロワー数は、ゲームのリリースから徐々に伸びてきて、記事執筆時点では30万人を突破しました。
普遍的な芸術の「クラシック音楽」をテーマに据えたアプリゲーム...そんな新鮮さもウケているのか、国内のDiscordファンコミュニティには、クラシック有識者たちが多く集まってきたようでもあります。
ジワリジワリと口コミで好評が広まりつつある感触は、どこか『ヘブバン』らしいと言えばらしいでしょう。筆者は『ヘブバン』も大好きですが、本作も同じくらい魅力的なIPだと思います。
何せあちこちでふと流れるクラシック音楽を聞くということは、推しムジカートの成分を浴びることに他ならないからです。それはあまりにも画期的過ぎる推し活のカタチだと言えないでしょうか......。
◆ TVアニメ『takt op.Destiny』コラボも決定!
2023年7月5日(水)より、TVアニメ『takt op.Destiny』とのコラボイベント開催が決定しています。
何を書いてもネタバレになってしまいそうなので詳細については避けますが、やはりTVアニメに登場するキャラクターがどのようにゲーム本編で活躍するのかは見どころでしょう。
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公式YouTubeチャンネルでは、今回のコラボイベントを意識していたのか、2023年7月18日(火)まで『takt op.Destiny』が無料公開中です。
これからゲームに触れる方も本作を初めて知ったという方も、この機会にアニメと合わせてゲームに触れて頂ければ、クラシック音楽をもっと身近に感じ取れることでしょう。
ぜひ、ゲームクリエイター・広井王子氏の新たな世界を存分に楽しんでみてください。
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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)