これまで、たくさんの新たなゲームジャンルを普及させてきた『ポケモン』シリーズ。今年の夏には「寝る」ことで新しいゲーム体験を提供する『Pokémon Sleep(以下、ポケモンスリープ)』をリリースします。
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それに先立ち、新潟県三条市にあるキャンプ施設「Snow Peak HEADQUARTERS」で、7月11日から12日にかけて『ポケモンスリープ』のメディア向けの先行体験会が実施されました。
■『ポケモンスリープ』とは
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そもそも、『ポケモンスリープ』とはどんなゲームなのでしょうか。普段寝てばかりのポケモン「カビゴン」が発する「ねむけパワー」によって集まってきたポケモンたちの寝顔を集めていくのが主目的となる本作。カビゴンとプレイヤーそれぞれの睡眠が「睡眠シンクロ装置」によってリンクしており、多くのポケモンの寝顔を集めるためにプレイヤーの睡眠が必要という設定になっています。
スマホ本体を使ってどういう睡眠をしているのか実際に測定するのも本作の特徴です。スマホをマットや布団の上に置き、スマホ本体のモーションセンサーとマイクを通じて、アプリケーション上で計測。そこからプレイヤーがどういう睡眠をしているのかが判別でき、睡眠の深さが「うとうとタイプ」「すやすやタイプ」「ぐっすりタイプ」の3段階で分かるようになっています。
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睡眠時間の長さや状態によって集まってくるポケモンの数や種類が異なるなか、「ポケモン寝顔図鑑」を完成させていくのが最終ミッションとなります。ポケモンの種類はリリース時点で427匹ですが、運営スタッフによると「アップデートにより数を増やしていく」方針とのこと。
■世界設定
ゲームの内容についても紹介しましょう。『ポケモンスリープ』の舞台は、シリーズでおなじみの「カントー地方」や「ジョウト地方」などではなく、カビゴンが生息する小さな島です。
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プレイヤーである主人公は、ポケモン睡眠生態の研究者であるネロリ博士を手伝っています。ちなみに「ネロリ」とは、睡眠リラックス効果が高い精油から名前が取られています。ネロリ博士が開発したカビゴンのねむけパワーを増幅する「睡眠シンクロ装置」によってプレイヤーとカビゴンの睡眠がシンクロすることで、様々なポケモンたちがカビゴンの周りに集まってきます。
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舞台は一箇所の島だけではなく、複数の島でステージ(リサーチフィールド)が構成されており、最初は「ワカクサ本島」から研究がスタートします。島によって生息するカビゴンやポケモンが異なり、マップの追加によってポケモンの数も増えていくものと予想されます。
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主人公やネロリ博士は島にいるカビゴンの近くでテントを張り、キャンプをして研究を続けています。この要素から「Snow Peak HEADQUARTERS」で、今回のテント泊をしての先行プレイ体験という趣旨に繋がりました。
■プレイの流れ
1日におけるゲームの流れとしては、夜はプレイヤーの睡眠を計測し、翌朝集まったポケモンたちの寝顔をリサーチして図鑑に記録。日中は朝昼晩と3食カビゴンに食事を与えることでカビゴンを育てていきます。
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もちろん、シリーズ伝統のポケモンをゲットする要素もあります。翌朝集まってきたポケモンに「ポケサブレ」をあげることで、親密度がマックスになると「おてつだいポケモン」として仲間になります。ポケサブレはノーマルの「ポケサブレ」のほかに「スーパーサブレ」「マスターサブレ」など種類があり、ポケモンシリーズをプレイしている人なら一目で分かる絵柄(ボール柄)がついています。このポケサブレの種類によって親密度の上昇値が異なり、いいポケサブレをあげればその分ポケモンを仲間にしやすくなるのです。
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おてつだいポケモンは5体で1チームという編成で、日中カビゴンの世話をしてくれます。このあたりも本家らしい要素と言えるでしょう。また、「ソーシャルリサーチ」と呼ばれるフレンド機能もあり、自分の睡眠タイプやスコアなど様々な情報を共有することができます。フレンドの研究結果を見ることによる報酬もあります。
睡眠の計測は1週間単位が基本となっており、プレイヤーは月曜日にフィールドを選ぶ形になります。カビゴンのエナジーは1週間かけて蓄積されていくため、曜日が進むと成長します。そのため、週後半の方がより珍しくポケモンに出会いやすくなるのだとか。
■睡眠計測について
スマホで具体的にどのように睡眠が記録されるのか、いまいちイメージが湧かない人も多いと思います。まず、睡眠計測自体はアプリで数タップするだけで簡単に行うことが可能です。睡眠計測中は、いびきなどを感知すれば音声収録も行われます。
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さて、計測にあたっては大きな注意点がふたつあります。計測中はスマホがずっと動作中となるために、スマホを充電したままにしておくことが推奨されています。もうひとつが、ベッドマットや布団の上にスマホを置いたままにしておく必要がある点です。この時に、画面が下になるように置くことで、自動で暗転するので電力の消費が抑えられます。
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特に前者のスマホを充電したままにしておくという点は、大丈夫なのか?と不安に思われる方も少なくないかもしれません。ただ、これについてはバッテリーの消費の問題というよりも、スマホの動作自体の万難を排するため、という印象を受けました。
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作り手側としてもユーザー側としても、今回のようなタイプのアプリケーションで一番起こってはならないのが、「計測したつもりだったものが計測されてなかった」といったケースです。食事であれば1日2~3回ほどチャンスがありますが、睡眠となると多くの人が1日1回しか取らないため、もしそのような事態が起こってしまった場合、ゲームをやめてしまうきっかけにも十分なりえます。
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実際に開発側も未然に防ぎたい思いのようです。『ポケモンスリープ』を製作する株式会社ポケモンの担当者は、「計測の失敗が一番あってはならないこと。枕元に様々な機種のスマホを8台くらい並べたり、様々な材質の寝具や環境を試したりしてデバッグを重ねている」と話しています。デバッカーも基本的に1日1回しかテストする機会がないため、試行錯誤の量がうかがえます。
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筆者も体験会で実際に触ってみましたが、アプリ側のフールプルーフ(人間の操作ミスを未然に防ぐための機能)が徹底されていると言えます。例えば、睡眠計測中にメールの確認やYouTubeの視聴など、別の作業をスマホですることも可能ではありますが、アプリからホーム画面に遷移しただけですぐに「睡眠計測中です 計測ミスを防ぐために、睡眠計測はアプリを開いたまま行ってください」という通知が飛んできます。
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一方、不安に思うであろうスマホのバッテリーの減り自体は、そこまで大したことはありませんでした。キャンプのテントではコンセント環境がないため、モバイルバッテリーに繋いだまま計測しましたが、起床したときにはスマホのバッテリーが100%に満充電されていました。
常にGPSが起動したままになる『ポケモン GO』の方は、ゲーム中はモバイルバッテリー環境だと満充電までされないことが多いです。『ポケモン GO』と比べると消費電力面は優しいと言えそうです。
■実際の睡眠時間だけが計測される
睡眠計測を終了するには、起床して「計測を終了する」ボタンを押します。この時アラームをかけることも可能です。終了すると、睡眠データが送信され、どういう睡眠だったかグラフで表示されます。
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驚くべきは、睡眠計測後から実際に寝入ったタイミングから計測されているという点です。「寝付くまでかかった時間」がレポートには表記されており、睡眠時間もこの実睡眠時間だけが表示されています。
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また、起きてから「計測を終了する」ボタンを押すまで30分ほどスマホを操作していたのですが、この間も睡眠時間が計測されていませんでした。本当に眠りに入っている時間だけをスマホの各種センサーだけで測定しており、こうした睡眠アプリを利用したことがない人にとっては感心させられます。
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そしてこの実睡眠時間のうち、先述の「うとうとタイプ」「すやすやタイプ」「ぐっすりタイプ」の3段階でグラフが表示されます。ショートスリーパーと周りから言われることがある筆者の場合、この日は3時間ほどしか睡眠時間を計測できていなかったなかで、「ぐっすりタイプ」が全体の約8割を占め、眠りの深さを自覚させられました。
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こうしたスマホでできる新たな機能性から、『ポケモン』やゲーム自体にはさほど興味がない人でも、睡眠計測アプリとして試しに使ってみるのもとてもオススメできます。
■「ぐっすり」眠れない人が全種のポケモンを集める方法
先ほど、「うとうとタイプ」「すやすやタイプ」「ぐっすりタイプ」のタイプによって出現するポケモンが異なると書きました。そうすると、様々な理由から深い眠りにつきたくてもつけない人はどうすればいいのかと不安に思う人もいると思います。これについて運営スタッフは、こう説明します。
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「プレイを始めてから最初の4日間は一般平均の睡眠から『うとうとタイプ』『すやすやタイプ』『ぐっすりタイプ』の3段階を判定しますが、5日目以降はプレイヤーの過去の睡眠記録と照らし合わせて判定します。そのため、プレイを続けているうちに、この日は深く眠れたなという時は『ぐっすりタイプ』の判定になり、『ぐっすりタイプ』のポケモンの寝顔を集めることも可能になります」
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誤解がないように補足をすると、『ポケモンスリープ』は睡眠環境を整えるアプリとは言えますが、睡眠品質を改善することが目的の医療用アプリではありません。ただ、睡眠に関する悩みを持つ人は千差万別です。様々な悩みを持つ人々が睡眠を前向きに捉え、楽しめるきっかけになるアプリになっていることは確かだと言えそうです。
■課金要素は?
さて、スマートフォンゲームとして、サービスを続けていく上で欠かせないのが課金要素です。『ポケモンスリープ』での課金要素は大きくふたつあり、ひとつが「プレミアムパス」という、ゲームをお得に楽しめる特典がついたサブスクリプション型のもの。もうひとつが「ダイヤ」というゲーム内通貨を買うものです。
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「プレミアムパス」は1ヶ月プランが980円(税込)、6ヶ月ブランが4900円(税込)となっており、6ヶ月プランでも月あたり約817円(税込)と、やや強気な価格設定とも言えます。
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「プレミアムパス」を契約することで、睡眠データや統計機能が無制限で閲覧可能(無課金だと過去30日間のみ)になり、さらに記録した睡眠データにメモが書けるようになります。ゲーム内アイテムでも恩恵があり、「プレミアムパス」だけしか利用できないアイテムショップが利用できたり、日々もらえるアイテムが上位のものになったり、月や3ヶ月ごとに特典アイテムが入手できたりします。
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「ダイヤ」の販売金額は60個120円(税込)から7000個9800円(税込)となっています。ダイヤを購入することで、ポケモンを仲間にできる「サブレ」、睡眠リサーチで獲得できる経験値やアイテムなどが倍になる「おこう」をはじめとしたアイテムを購入することができます。
■「プラスプラス」はあった方がいい
『ポケモンスリープ』のアプリリリースに先立ち、ゲームプレイ環境を良くするツールが7月14日(金)に発売されます。「Pokemon GO Plus +(ポケモン ゴー プラスプラス)」と呼ばれる製品で、元となった「Pokemon GO Plus」では『ポケモン GO』のプレイ環境を改善するためのデバイスだったのですが、「プラスプラス」となったことで『ポケモンスリープ』の睡眠計測にも使えるツールとなっています。
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『ポケモンスリープ』では睡眠計測時にスマホを枕元に置く必要があるのですが、「プラスプラス」を置くことで、スマホの代わり睡眠を計測してくれる機能が追加されています。入眠するまでにスマホを触っていたかったり、睡眠中は別な場所にスマホを置いておきたかったりする人には必須アイテムと言えるでしょう。
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特に筆者もよくあるのですが、スマホを操作していて気付いたら寝落ち……ということを多くの人が経験したことがあると思います。この時、『ポケモンスリープ』の睡眠計測を開始していても、スマホがマットや布団の上にないと測定できないという事態が起こります。こうした時、常に枕元に「プラスプラス」を置いておけば、計測できない事態をさらに減らせそうです。ゲームを初日からガッツリ遊びたいユーザーにとってはオススメのアイテムと言えます。
■各企業とのコラボが今後どうなるか
前に社会現象となった『ポケモン GO』では、ゲーム内に留まらず、様々なリアル世界とのコラボが展開されました。『ポケモンスリープ』でも、既に「Snow Peak HEADQUARTERS」という、三条市に本社を置く大手キャンプ用品メーカー「スノーピーク」が直営するキャンプ場で体験会が開かれており、企業コラボを匂わせるものでもありました。
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これについて株式会社ポケモンの担当者は、「スノーピークでの開催は『ポケモンスリープ』の世界観に近い場所として、弊社からお声がけさせていただいた。現時点で他に決まっていることはないが、何か今回の機会が次の取り組みのきっかけになれたら嬉しいと思っている」と、前向きに話しています。
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いきなり企業からのイベント開催という形ではなくとも、今回の先行体験会が公式に「スノーピーク」で開催されたことで、『ポケモンファン』がここにキャンプしに来て集って、ファン同士で『ポケモンスリープ』を楽しむ会が開かれてもおかしくはないと考えます。他にも、『ポケモンスリープ』リリースを機に睡眠用具メーカーが新たなグッズ展開をするなどの可能性も十分考えられます。
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『ポケモンスリープ』のリリース日はまだ詳細は決まっていませんが、運営によると「7月中には出したい」との方針です。『ポケモン GO』がウォーキングブームの火付け役となったのと同様、『ポケモンスリープ』が睡眠計測ブームの火付け役となるのか。我々の睡眠に対する意識をどうアップデートしていくのか、今後が楽しみでなりません。
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