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『FF16』は簡単すぎる。そんな疑問を投げかけたのは海外の人気ストリーマーでした。Maximilian Dood氏が『FINAL FANTASY XVI(ファイナルファンタジー16)』の難易度が低すぎることを訴えたことをきっかけに、本作の難易度についてはSNSなどで様々な議論を呼んでいるようです。
筆者も本作をプレイしていく中で、難易度については考えるところのあるひとりです。本作では、ストーリーフォーカス、アクションフォーカスといった難易度設定の他に、主人公が装備するサポートアクセサリによって、アクションそのものの難易度を下げることができます。自動で攻撃を避けてくれたり、ボタン連打だけでコンボを決めたりもしてくれます。
アクションが苦手な人でも遊べる工夫は、基本的には歓迎されるべきでしょう。しかし、本作には「誰でもクリアさせる」という強い意志を感じ、それは時に行き過ぎて、ゲーム体験を阻害している場面もあるかもしれないと感じました。
RPGとして長く愛された『ファイナルファンタジー』シリーズが、本格的なアクションを取り入れることで、非常に難しい難易度の舵取りを迫られた結果、どうなっているのか考えてみたいと思います。また、『FF16』をめいいっぱい楽しむためにぜひお伝えしたい、プレイヤーによる難易度調整の話についても、最後にお伝えします。
◆自動で下がる難易度
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本作がゲームの難易度調整をどのように考えているのか、とても象徴的なのはリトライの仕様です。本作のボス戦では、主人公が倒されてゲームオーバーになると、「リトライ」もしくは「タイトル画面へ戻る」を選ぶことになります。
このリトライが曲者で、リトライをするといってもボス戦の最初から始まるわけではありません。ボスの体力がある程度減った状態から始まるほか、もちろん主人公の体力は最大になり、ポーションなどの回復アイテムなども補充された状態でスタートします。
ボスの体力が減った状態からスタートするので、実質的に難易度が下げられた形になります。
すると、何が起こるのでしょうか。ボスをちゃんと攻略できていないし、よくわかっていない攻撃はあったりするけれど、なんとなく押し切れてしまった、ということが起こります。もちろん、何度もリトライするのは大変だから難易度が下がって嬉しいという人もいるでしょう。しかし筆者は、自分の力で困難を乗り越えた手ごたえがなく、モヤモヤしました。物語と演出はこれ以上なく盛り上がるなか、ゲーム部分はなんだかわからないけど進めてしまった、クリアさせられた感が残りました。
さらに言えばバトル中は、武器防具やアビリティの変更を行うことができないため、リトライする限り、敵に合わせてアビリティを付け替えるといった試行錯誤はできなくなっています。
◆おもてなしか、過保護か
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ひとつお断りをしておくと、プレイヤー側でリトライを拒否することで、難易度調整は可能です。つまり、一度タイトルに戻り、ボス戦前のセーブデータを選んでやり直せば良いのです。実は筆者は、最終的にリトライをしないでタイトルに戻ることで、意図せず難易度が下がらないようにして遊んでいました。しかしこれは、ある種の縛りプレイによるプレイヤー側の難易度調整であり、ゲーム側が積極的に提供している遊び方ではないように思います。
また、サブクエスト的な扱いで強敵と戦うリスキーモブでは、途中からのリトライが無いなど、攻略の面白さを優先させたコンテンツも存在します。
ただし、ゲーム本編をクリアしていく過程においては、重厚な物語を迫力ある演出で体験することこそが最も優先され、その障害となり得る、ゲーム的なストレスは極力排除しようとしているように思われます。
それは、長年のRPGファンが困ることのないように丁寧におもてなしをした結果であると言えますが、結果的にはプレイヤーの達成感を奪ってしまう場合もあったように思います。
◆『FF16』を最大限楽しむために
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『ファイナルファンタジー』シリーズという看板を掲げながら本格的なアクションRPGを作るというチャレンジは、難易度の面で非常に難しかったことがうかがえます。筆者の周りでも、ちょうど良かったという人もいれば、やはり簡単すぎた、単調だったと感じる人もいたようです。
では筆者はどうだったかというと、とても楽しめました。というのも、自分なりに楽しむ方針を決めたからです。最後にこれから遊ぶ人はぜひ自分で難易度や楽しみ方を決めて遊んで欲しいという話をしたいと思います。
筆者はどのように遊んだかというと、自分の中でルールを決めて、ボス戦でゲームオーバーになったらリトライはせずタイトルに戻る、ただし、サポートアクセサリはオートスローの指輪をつけることにしました。オートスローの指輪を使うと敵の攻撃が当たる直前で時間がゆっくりになり、簡単に回避行動などをとることができます。当然難易度は劇的に下がってほとんど負けるようなことはなくなりました。アクションゲームとしてみた場合には簡単すぎるぐらいかもしれません。
これはあくまで筆者がそう感じたという一例ですが、なんだかうまく敵の攻撃もかわせていないのにリトライで相手の体力が減った状態からクリアしても、物語の盛り上がりに対して自分の中の高揚感が足りませんでした。倒すには倒したけど、グダグダ感が拭えないのです。
一方で、オートスローの指輪をつけると、まるで自分がすごくうまくなったかのように錯覚して、華麗に戦うことができます。ボス戦はかなり時間がかかり、何度も何度も最初からやり直すのは大変そうだということも考慮に入れ、オートスローで華麗にかわす主人公気分を最大に味わうことにしたわけです。試行錯誤の面白さはあまりないかもしれませんが、ド迫力の演出の中、華麗に攻撃をかわし続ける自分、これはなかなか気分爽快です。
もちろん、オートスローの指輪を付けたら簡単すぎる、という人もいるでしょう。とにかくアクションはいいから物語をどんどん体験したい人もいるはずです。しかし、自分にあわない遊び方をするとなかなか楽しめません。筆者も最初、サポートアクセサリは一切つけず、リトライをしながら進めていったところ、まったくピンときませんでした。それはとてももったいないことです。
難易度調整の部分でやや癖がある本作ですが、グラフィックや演出面は間違いなく超一流、物語も重厚で深みのあるものになっています。ぜひ、自分のスタイルに合わせてヴァリスゼアの旅を最大限楽しんでもらえればと思います。