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「推しのVTuberとハイタッチしたい!」
そう思ったことはありませんか?
今回は、そんなニーズに応える研究を取材すべく、2023年8月に開催されたCEDEC2023のインタラクティブセッションに参加しました。
「VTuberに投げ銭をしたら、握手やハイタッチができた」
そんな未来がやってくるかもしれません。
<講演者情報>
高見 太基 氏
電気通信大学 情報理工学研究科 情報学専攻
大学院生<セッションの内容>
本セッションでは、特にバーチャルアバターを用いたライブ配信における新しいインタラクションの手法および触覚エンタテインメントを紹介します。具体的には、スマートフォン側面部電気刺激による配信者との触れ合いを実現するLivEdgeシステムについて説明し、(仮の)Vライバーに触られる体験ができる実演展示を行います。引用元:https://cedec.cesa.or.jp/2023/session/detail/s63ffb6f8b1363
◆実際に体験してみた
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そもそも、VTuberに触られるとはどういうことなのでしょうか。会場で体験してみました。
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開発者の高見氏は、このような基板を装着したスマホケースを今回の展示会で用意していました。
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細い金具部分がスマートフォンの側面に装着されています(親指側にもついています)。重さや手触りの違和感はありません。
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スマホ内のキャラクターが画面の右上に触れると、手に持っているスマホも同じところ(私の親指の部分)にモゾモゾという感じの感触がありました。
最初は、初めての感覚で驚きました。振動とはまた違った、微量の電気による、ちょっとチクチクとする刺激です。
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刺激の強さは変えられます。弱めると、誰かにソフトタッチされているような、こそばゆい感覚になりました。
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大きな画面を見てみると、スマホ内のキャラクターが触っている箇所は黄色、ユーザーが触っている箇所は緑色で表示されているのがわかります。今月に開催された、SIGGRAPH2023(※1)でも発表したとのことで、これからますます注目が集まるアイデアでしょう。
※1:SIGGRAPHとは、2008年から開催されている、アメリカコンピュータ学会におけるコンピュータグラフィックス を扱う分科会
このアイデアは具体的にどのようなことに使えるのか、講演者に聞いてみました。
◆講演者に聞いてみた
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ーーこちらの展示はどういったものなのでしょうか。
私たちはバイブレーションとは異なった、電気触覚というものを研究していて、手に電気を流す技術を応用して新しい触覚体験を生み出そうとしています。今回は、それをVTuberと組み合わせました。
VTuberは普通のアイドルと違って、(リアルな空間には存在しないので)握手みたいな強いインタラクションがありませんが、この技術を応用して触覚を持たせることで、実体として存在してるかのようなインタラクションが再現できると考えました。
今回開発したアプリケーションは、電気触覚とバイブレーションを組み合わせていて、例えば、画面内のキャラクターが画面の縁に頭をガツンとすると、衝撃みたいな感覚がバイブレーションで表現されます。
ーー画面の中のVTuberやライバーが、視聴者に触覚で反応を返すことができるんですね。実装されるとなると、スーパーチャットがされたときに、その視聴者のスマホだけが、触れ合うモードに切り替わって、Vtuberと握手ができるということになるのでしょうか。
おっしゃる通りです。今までビジュアルと聴覚でしか見てこなかった、“推し”がついに自分を触ってくれるようになる。VTuber側もスーパーチャットに対するリアクションの方法が増えるので、スーパーチャットしてくれたら、放送中に触ってくれるとか、そういう新しいプランを用意できるでしょう。
今まで見ていただけの“推し”に触ってもらえるのは唯一無二な体験になるんじゃないかと。この触覚体験自体は既存のVTuberと同じように1対Nで配信できるので、この触覚センサー付きのデバイスを持っているユーザーにたいしては、同じようは触覚を配信できるんです。
そうなるとファンとのコミュニケーションがより密になりますよね。こういう新しいコミュニケーションで、VTuberとファンの方々がより親密になってくれたら私は嬉しいなと思います。
ーー面白いですね。確かに現状、配信における特別感を得る体験というのは、少し多様性に欠けるといいますか、配信者が「○○さんありがとう!」みたいな感じで名前を呼んでくれたら「あ!認知されている」と少しは嬉しくなりますが、そこに触覚での物理的な体験が加わると忘れられない体験になりそうです。このアイデアに至った経緯やきっかけを教えてください。
まずこのスマートフォンと触覚を組み合わせた研究をしたきっかけは、私が触覚の提示が好きだからです。なので触覚提示の感動を皆さんにも味わってほしいと思っているのですが、触覚を体験する機械って、大きいものになりがちなんです。そんな大規模なものは限られた展示会場にしか搬入できず、限られた人間にしか知ってもらえない。
私自身、この研究を万人に普及をしたいという想いがあるので、どうやって万人に普及するか考えた時に「そうだみんなスマホ持ってるじゃん」という思考に至りました。
そういったところからこの研究は始まり、とりあえずスマートフォンに注目してどういう触覚がいいのかなと思った時に、バイブレーションだけだと物足りないので、電気触覚の方が安価にできて低電力で多様な触覚を作れるとわかったので、この機器を作ったんです。
最初的にVTuberに辿り着いたのは、ニュースでVTuberの盛り上がりを知ってときです。VTuberは、視覚と聴覚だけで癒しを与えているコンテンツなので握手がないと気づいたんです。私は“触れる”というのは、人間のコミュニケーションとしてかなり重要な要素だと考えています。触れることが親密度を表していることもあれば、アイドルと握手できると「これからも頑張ってほしい」「これからも推したい」という気持ちが湧いてきます。
なので、実在しないキャラクターたちにも触覚提示があったらより親密になれる新しい世界があるんじゃないかなと思い、組み合わせてみました。実はこれまでも触覚提示については、デジタルペットとの組み合わせも試したのですが、VTuberと組み合わせたことで多くの反響をいただいています。
ーーありがとうございました!