■キャラデザの魅力に惹かれた『ファリア 封印の剣』
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ファミコンブームの頃、書店には様々なゲーム雑誌が並んでいました。「ウソ技」で当時のファミコンキッズを翻弄した「ファミリーコンピュータMagazine」、今も活躍を続ける「ファミコン通信」(現在は「ファミ通」)など、覚えている人も多いことでしょう。
そうしたゲーム雑誌のひとつ「ハイスコア」が、当時ゲームの企画・開発に携わったことがありました。その第1弾として注目を集めた『ゾンビハンター』……は、マイナーと言えばマイナーですが、その成り立ちで話題になった面もあります。また、ファミコン40周年記念の国民投票 第2回の「ハイスコアといえば?」で堂々の第2位に輝いており、今回取り上げるほどのマイナー度合いとまでは言えません。
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ですが、「ハイスコア」による第2弾のゲーム作品『ファリア 封印の剣』は、かなりマイナーな部類に入る作品でしょう。当時『ゾンビハンター』を知っていても、『ファリア 封印の剣』まで把握している友達は周囲にいませんでした。
『ファリア 封印の剣』もアクションRPGですが、ステージ選択式だった『グランド マスター』とは違い、広域フィールドを移動しつつ、敵とエンカウントするとアクションバトルに切り替わるタイプでした。ただし、画面構成は同じく見下ろし型です。
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本作の特徴的なポイントのひとつは、多数の漫画作品やキャラクターデザインを手がけたあさりよしとお氏が、本作のキャラデザを担当している点です。あさり氏の魅力的なデザインが主人公や敵キャラに落とし込まれており、本作独自の味わいとなっています。
特に、街の住人はキャラクタービジュアルが大きく表示されるため、その魅力が一際はっきりと伝わります。また敵キャラの中には、あさり氏が後年デザインした「第三使徒 サキエル」(新世紀エヴァンゲリオン)を連想させるケースもあり、あさり氏のデザイン性が当時から際立っていたことが窺えます。
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ただし、敵の動きが全体的に素早いなど、ゲームバランスにいくつかの問題があり、難易度は総じて高め。そのため周囲にも勧めにくく、知名度が上がらなかった一因に繋がったのかもしれません。
当時は、雑誌と口コミが主な情報伝達の場でした。そして発売後は、よほど人気のあるゲーム以外は雑誌で取り扱われる機会はまずありません。そのため、口コミによる広がりが期待できない場合、マイナー路線を辿るのは必然とも言えます。
あさり氏を起用した判断は素晴らしかったものの、『ファリア 封印の剣』はその名を轟かすには至りませんでした。