PlayStation Vitaではさまざまな狩りACTが登場しましたが、その中でも『FREEDOM WARS』は「生きること自体が罪、生まれた瞬間懲役100万年」という独特すぎる世界設定が特徴的でした。
本記事では、なんと10年越しにPS5/PS4/ニンテンドースイッチ/Steamで蘇る『FREEDOM WARS Remastered』の試遊レポートおよびインタビューをお届けします。
独特すぎる狩りACT!
オリジナル版ではソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)が発売元でしたが、今回は開発元でありDimpsと新たな発売元であるバンダイナムコエンターテインメントが本作を蘇らせます。
リマスターにあたってはテクスチャやムービーの高解像度化を行っており、PS5/PCは4K解像度に対応。ニンテンドースイッチを除くプラットフォームでは60FPSでの安定したプレイが可能となっています。UI/UXのブラッシュアップや難易度・敵AIなどの調整に加え、原作ではあまり評判のよくなかった武器の強化・生産機能をオーバーホールし、遊びやすい形で蘇ります。
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冒頭でも述べたとおり、本作は設定が非常に独特です。この世界は資源不足で生きること自体が罪となった世界。それでも繁殖を続ける人類は絶えず、子供は生を受けたその瞬間から100万年もの懲役を科され、監視生活を送らなければなりません。ディストピアものは多々あれど、本作はかなり極端ですよね。
プレイヤーの大きな目標は、この懲役をゼロにすること。といっても100万年生き続けるわけではなく、「ボランティア」と呼ばれるミッションをこなして、その報酬として刑期を減らすことができるのです。
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基本的にはプレイしていれば刑期は減っていきますが、初期状態では、平時に5歩以上歩くのが禁止、5秒以上走るの禁止、異性と話すのも禁止などかなり強い制限がかけられており、違反すると刑期が伸びてしまうため、行動には注意しなければなりません。
ただ、ずっと窮屈なわけではありません。本作には刑期以外にも、恩赦ポイントというシステムがあり、使うことで歩数の制限解除や外出の許可、武器強化機能のアンロックなどが受けられます。今回の試遊ではある程度開いた状態でしたが、ギチギチの制限から次々にいろんなことができるようになる開放感は楽しそうです。
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「ボランティア」は、巨大な敵「アブダクター」の討伐や敵に拐われた市民の奪還などさまざまな種類があります。オンラインマルチプレイはもちろん、1人プレイでAIの味方を連れて行くこともできます。クロスプレイは基本的には不可能ですが、PS4/PS5の世代間ではマルチプレイやランキング共有ができます。
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アクションで特徴的なのは、荊(いばら)を使ったアクション。狙ったところにワイヤーのようなものを出して飛びかかったり、壁に張り付いたりと、立体的なアクションが可能です。
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アブダクターとの戦闘では特に有用で、足に荊を巻き付けて引っ張ることで転ばせて大きな隙を生み出せます。平常時は遠距離から銃で細かくダメージを与えつつ、隙を見て荊でダウン、近づいて斬りまくる!という流れはカタルシスがありました。
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短い試遊時間の中で筆者が気に入ったのは、相棒キャラ「アクセサリ」の存在です。このキャラは常にプレイヤーを監視してくるアンドロイドなのですが、なんとボイスは合成音声。なぜ合成音声なのかといえば、権利解放によって好きなセリフを喋らせることができるようになるためです!
アクセサリは戦闘のお供をしてくれたり、衣装を着せ替えたりできるので、どんどん自分好みにカスタマイズ可能。監視という名目を利用して、最初は冷たいアクセサリをどんどんデレさせていく……なんてプレイ、きっと最高ですね!
『FREEDOM WARS』が復活した理由
ここからは、開発会社であるDimpsのメンバーにインタビューを実施。オリジナル版総監督でリマスターでは責任者を務める塚本高史氏と、リマスター版のディレクターを務める関哲之介氏にインタビューを実施します。
――『FREEDOM WARS』を改めて復活させた理由を教えてください。
塚本高史氏(以下、塚本)オリジナル版の発売以降、続編を含めいろいろと展開させたいと考えていたのですが、なかなかその機会に恵まれませんでした。しかしこのたび、10周年という節目もあってリマスターすることになり、バンダイナムコエンターテインメントさんにプロデュースしてもらう形で実現しました。
――懲役100万年が科せられたり、初期状態だとほとんど歩くこともできなかったりと、ディストピアものとしてもかなり極端な世界設定だと思います。こうした設定はどのような発想の元に生まれたのでしょうか。
塚本オリジナル版開発当時、みんなどこかで監視されていたり、管理されているのではないかということを考えていたのです。管理下に置かれるという窮屈さからどんどん自由を勝ち取っていくという過程をマイル貯めのようにちょっとずつ実現していくのが楽しいのではないかと考えました。
その中で、歩いても懲役、走っても懲役、異性と喋っても懲役……と極端にしていくことで、「自由ってこんなに少ないんだ、自由を勝ち取るってちょっと気持ち良い」という感覚が得られたら良いなと発明した設定でした。
――相棒となる監視者アドロイド・アクセサリのボイスは合成音声が採用されています。無機質な演技ができる声優さんに決まったセリフを喋ってもらうのではなく、合成音声を採用した理由は何でしょうか。
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塚本今ではそれほど珍しくありませんが、10年前に合成音声を採用するのはチャレンジングなことでした。これを採用した理由は好きなことを喋らせることができるのがポイントで、戦闘時のセリフを自分好みに変更できるんです。
最初は監視されているだけですが、徐々に権利を解放して自分だけのセリフを設定できるようになると、監視されているのに愛着が湧いてくるんです。最終的には「俺の嫁!」と自慢できるような新しいプレイフィールを生み、合成音声ならではの成果が出ていたと思います。
――オリジナル版では、ソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)からの発売でした。今回バンダイナムコさんにパブリッシャーが変わった理由は何ですか。
塚本本作は我々Dimpsが始動したプロジェクトなのですが、まずソニー・インタラクティブエンタテインメントさんからライセンスを受けさせていただいています。そして、パブリッシャーさんを探す中で、バンダイナムコさんに手を挙げていただきました。
――オリジナル版と比べて、特に改善した部分はどこでしょうか。
関哲之介氏(以下、関)オリジナル版のプレイヤーさんから挙がっていた第一の不満は、武器の強化周りに運要素が強かったという点です。令和の時代にさすがにこのまま出すのは厳しいだろうということで、プロジェクトのお話をいただいた中で絶対変えることは決めていました。
結果、今回は武器の強化・生産周りを完全にオーバーホールして、アクションRPGとして楽しみやすい形になったと思っています。
――オリジナル版と比べて、AI周りを改善したとお伺いしました。具体的にどのような変更が行われましたか。
関オリジナル版において、人間の敵キャラクターが強すぎるというご意見をいただいていました。確かに、移動しながらプレイヤーをしっかり狙ってくるような通常エネミーにしては高度すぎる動きをしているところもありました。
私としては、通常エネミーはあくまで倒されることが役割かなと思いましたので、プレイヤーが気持ちよく倒せるように調整しました。また、有用なアイテムをドロップするようになったので、メリットも増えていると思います。
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――携帯機から据え置きやPCへの移植となるわけですが、リマスターに当たって苦労した部分はありますか。
関開発期間を考えると10年以上の年月が経過しているので、元のデータがどうなっているのか、当時のことを考えつつ調べるところから始まったのは苦労したポイントです。
――操作周りについてはいかがでしょうか。
関オリジナル版では必要なボタンが足りず、さまざまな操作タイプを用意する形でカバーしていました。一方本作ではボタンが増えたので、一般的なTPSの操作を踏襲する形で対応しています。
オリジナル版の操作に戻すオプションなどはありませんが、設定で自由にカスタマイズできるので、当時のほうが好きな方は適宜調整いただければと思います。
――オリジナル版でやれなかったけど、リマスターで実現できたというような要素はありますか。
塚本今回海外ユーザーさんにも広く遊んでいただきたいと思っていますので、英語ボイスを追加しました。合成音声で喋るアクセサリも英語に対応しています。
――オリジナル版では、世界地図が表示されて、それぞれの地域で戦うというような形のオンラインランキングがありました。今回もワールドワイドなのでしょうか。
塚本本作では世界地図を廃止し、日本地図のみに留めています。海外ユーザーさんも含めて、日本のどこかの県を選んで競っていただく形になります。
――リマスターとして復活した後の展開はいかがでしょうか。
塚本私はずっと続けていきたいと思っていたタイトルなので、今回のリマスター版を皆さんに手に取っていただければ、なにかしらの形で続けられるかもしれません。
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――ストーリーなどはいじっていないのでしょうか。
塚本正直すごくやりたかったのですが、今回はなるべくいじらないことにしました。というのも、次になにか展開できるとき、そこを楽しみにされているのではないかと考えています。チャンスがあればぜひとも次に賭けたいので、今回は原作のままという決断を取りました。
――その他、リマスターにあたって変更した部分などを教えてください。
関大きな追加要素などは基本的にありませんが、オリジナル版のDLCをすべて収録しています。そのため、アクセサリのボイスも合計8パターンから選択できます。たくさんDLCを出していたのですべて揃えた方は少ないと思うのですが、今回ははじめからすべて味わっていただけます。
あとは、ゲーム内の楽曲も増えています。オリジナル版当時、「プロパガンダアイドル」と称したプロモーション展開で楽曲を発表していたのですが、そのアイドルたちの楽曲をゲーム内に収録しています。
――本作が現代のゲーム業界に蘇るにあたり、どのような部分がゲーマーに刺さると考えていますか。
塚本ゲームプレイはもちろんですが、特に世界観に自信を持っています。当時海外版はなかなか売れませんでしたが、今回触れていただくことで100万年の懲役からボランティアという要素まで、海外ユーザーさんに刺さって、驚いてもらえるのではないかと思っています。
現代人にとっても、監視されているという感覚はより身近なものになったと思います。SNSや監視カメラなど、10年前よりもたくさん目にすることが増えました。それをずっと自分についてきて意思疎通もできるアクセサリという存在を通じて感じていただくことで、10年経った今ならより刺さるはずです。
――ありがとうございました!
『FREEDOM WARS Remastered』は、PS5/PS4/ニンテンドースイッチが2025年1月9日、PC(Steam)が2025年1月10日発売予定です。
© Sony Interactive Entertainment Inc. and Dimps Corporation. FREEDOM WARS is a registered trademark of Sony Interactive Entertainment LLC and related companies in the United States and other countries.
Published by Bandai Namco Entertainment Inc.
※画面は開発中のものです。