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「ゲーム&ウォッチ」や「ゲームボーイ」など、携帯して遊ぶゲーム機がたびたび大ヒットを呼び、持ち歩いて楽しむ文化が根付きました。その流れは今、スマホやニンテンドースイッチに受け継がれており、今も継承されています。
しかし、スマホは総合的なデバイスで、ゲーム専用機器ではありません。またスイッチは、良くも悪くも従来の携帯ゲーム機と比べるとサイズが大きく、常に携帯できるほどの手軽さとなると一歩後れを取ります。
そのため、ニンテンドー3DSやPlayStation Vitaなどの後を継ぐ次世代機の登場に期待するゲームファンも一定数いますが、今のところその兆しはありません。
この先、携帯専用のゲーム機が新たに登場する余地はあるのか。先日公開された任天堂の「2025年3月期 第2四半期決算説明会/ 経営方針説明会(オンライン)プレゼンテーション資料」を元に、長く携帯ゲーム機を展開してきた同社の姿勢から、今現在の状況を一考してみます。
■懐かしき携帯ゲーム機の黄金時代
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決算資料を紐解く前に、これまで携帯ゲーム機が歩んだ大まかな歴史を簡単に振り返ってみましょう。「ゲーム&ウォッチ」はファミコン以前にブームを呼んだゲーム機で、この頃は本体とゲームが一体化していました。「ゲームポケコン」などの例外もありますが、ゲームカートリッジを入れ替える」というスタイルが定着したのは、もう少し後のことです。
カートリッジを差し替えて様々なゲームが遊べる「ゲームボーイ」が登場すると、『ポケモン』などの人気作の後押しを受け、多くのユーザーが飛びつきました。ゲームボーイファミリー全体で1億1,869万台もの販売実績を誇り、この数字だけでも支持の厚さが窺えます。
また、ゲームボーイのライバルとして「ゲームギア」や「PCエンジンGT」、「ワンダースワン」に「ネオジオポケット」なども参戦し、競争と切磋琢磨で携帯ゲーム機市場が大いに盛り上がっていきます。
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2000年代中盤に入ると、「ニンテンドーDS」と「PlayStation Portable」が二大巨頭として市場を席捲します。前者は『ポケモン』、後者は『モンハン』といった代表作を持ち、それぞれ社会現象になるほどの影響力と話題性がありました。
2010年代には、後継機となる「ニンテンドー3DS」と「PlayStation Vita」が登場。据置機では、「Wii U」や「PlayStation 4」が台頭していた頃です。このように、ゲームボーイ時代から2010年代まで、据置機と携帯ゲーム機が分かれている状況が長く続きました。
■『ポケモン』『モンハン』などで盛り上がるも、3DS・PS Vitaの後継機は現れず
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『ポケモン』のトレードや対戦、『モンハン』の協力プレイなど、携帯ゲーム機を持ち寄って遊ぶプレイスタイルを多くのユーザーが受け入れ、公園やプレイを許可する商業施設などに集まる光景も珍しいものではありませんでした。
特にDSや3DSは「すれちがい通信」という遊びもあったため、取り出さなくともカバンやバッグに忍ばせ、通勤や通学時に持ち歩く人が相当数いました。
しかし、ゲームはもちろん、通話やメールの送受信、インターネットのブラウジング、SNSを介してのコミュニケーションなど、多機能と手頃なサイズを両立させた「スマートフォン」の普及と反比例し、携帯ゲーム機の影が薄くなっていきます。
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そのため2010年代後半に入っても3DSやPS Vitaの後継機は登場せず、「携帯してゲームを遊ぶ」というスタイルは、ほぼスマホが引き継ぐ形となりました。また、スマホの普及に合わせ、「携帯ゲーム機は今の時代と合わない」「スマホには勝てないから、後継機は出ないだろう」と囁かれることも増えていきます。
実際、スイッチの詳細が発表された当時も、「外出中のゲームはスマホで十分。スイッチが入り込む余地はない」「携帯性は不要」などの指摘が飛び交い、据置機・携帯機の両面を併せ持つスイッチを“多機能”ではなく“中途半端”と論じる声がありました。
UPDATE(2024年11月11日):本文中の誤字を修正しました。