■和やかなトークタイムを挟みつつ、夏イベントや新春を盛り上げた楽曲も
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セットリストはまだ1/4を消化したに過ぎませんが、音楽による攻勢が序盤から容赦なく、ここで挟まったトークタイムで一息をつくことができました。
ここでは、開発ディレクターのユ・ヒョンソク氏と、サウンドディレクターのチュ・ジョンヒョン氏が、『勝利の女神:NIKKE』への想いや出来事などを語ります。
子供の頃からゲームを遊んでいたと明かすユ・ヒョンソク氏は、自分が関わったゲームのコンサートについて「夢のようだ」と話し、来場者と一緒に体験できたことを嬉しく思っていると述べました。
またチュ・ジョンヒョン氏は、レッドフードに関連する楽曲を作っている際、彼女がこの曲を聞いたらどんな感情になるのかと想像してしまい、泣きながらメロディーを作っていたとのこと。楽曲作りのちょっとした制作裏話も飛び出しました。
このトークタイムを引き継いだ5曲目は、2023年夏のストーリーイベント「SEA, YOU, AGAIN」の主題歌「SO PLAYFUL」。先んじて行われたもうひとつの夏イベントではアニスの出番がほとんどなく、「SEA, YOU, AGAIN」で無事リベンジを果たしたのも、忘れられない思い出のひとつです。
夏らしく明るくポップな曲調の後は、終わってしまったかつての悲劇を振り返ったイベント「NEW YEAR, NEW SWORD」を彩った主題歌「Camellia」が、来場者の耳に染みわたります。
今では明るく飄々とふるまう紅蓮ですが、心底慕っていた姉との別離と対決は、今も彼女の心に深く残り続けていることでしょう。
■1周年の「RED ASH」を飾った名楽曲が会場を揺らす
続いて、「GODDESS SQUAD READY」に「Hold you tight」、「THE REDHOOD」といった楽曲が立て続けに放たれます。いずれも、1周年イベント「RED ASH」やレッドフードを思い起こさせるナンバーです。
「Hold you tight」の切ない旋律を聞いていると、「古いものほど、いいもんなんだ」という彼女の台詞が聞こえてくるかのよう。また、「RED ASH」の主題歌「THE RED HOOD」のパワフルさが、血潮を大いにかき立ててくれます。
「OVER ZONE」関連曲に区切りがつくと演奏はここで小休止を挟み、ニケたちの会話劇が再び始まりました。今回登場したのは、スノーホワイトとドロシー。そして場面は、なんと「OVER ZONE」の真っ只中でした。
■オケコンにも訪れた激重展開、これぞ『勝利の女神:NIKKE』
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防衛の合間、時間に余裕があったのか、見張りを続けるスノーホワイトのもとにドロシーが差し入れを持ってきました。食には遠慮のないスノーホワイトは、差し入れとして差し出されたティラミスに手を伸ばします。
ただしティラミスといっても、厳しい戦いの中で材料が足りず、それに似せた風の食べ物とのこと。また、このティラミスは「ピナと一緒に作りました」とドロシーが告げました。
彼女の発言に、しかしスノーホワイトは沈黙をもって返します。「OVER ZONE」経験済みのプレイヤーなら予想済みかと思いますが、スノーホワイトの反応から察するに、おそらくピナが既に亡くなっている時間軸のようです。
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それでもスノーホワイトは、ティラミスに手を伸ばして食べ尽くします。「美味しい、どんどん食べたくなる」と率直な食の感想を述べつつ、ピナについては一切触れません。
そのかわりに、「RED ASH」から「OVER ZONE」の合間に思考転換を起こしていたスノーホワイトは、その作用で「以前の記憶は朧気で思い出せない」と切り出しました。ドロシーが、思い出す方法を探しますかと訊ねると、「探さなくていい」と返答し、その理由も付け加えます。
過去の記憶が自分を苦しめるから忘れたのだろう、とこぼすスノーホワイト。そして、「前に進むには、諦めないといけないものがある」「捨てられるものは捨てろ」とドロシーに告げました。それは、未だにピナがいるように振る舞うドロシーへの、彼女なりの思いやりだったのかもしれません。
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この時、ドロシーが覚醒します。ここまでのやりとりは、夢による回想だった模様です。スノーホワイトの言葉を思い出したドロシーは、しかし「残念ながら私は、捨てられませんでした」と独白し、会話劇が終わりを告げます。
ドロシーが過去から抜け出せていないのは、作中でも直接および間接的に語られていますが、まさか今回のコンサートで深掘りするとは思わず、予期していなかったサプライズプレゼントとなりました。願わくば、彼女に救いがあらんことを。