良い子の『スマブラ』、オトナの『スト6』―「不知火舞」から考える、歴史ある女性キャラの露出問題

デザイン変更はせず、登場させない判断で原作をリスペクトした『スマブラSP』。原作再現に挑んで作り上げた『スト6』。不知火舞というキャラクターにそれぞれの作品が真摯に向き合い、CEROの違いもあって真逆の結論を出しました。

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良い子の『スマブラ』、オトナの『スト6』―「不知火舞」から考える、歴史ある女性キャラの露出問題
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今月2月5日に、「不知火舞」(以下、舞)が『ストリートファイター6』(以下、スト6)に実装されました。ご存じの方も多い通り、彼女は『餓狼伝説』シリーズで活躍する人気キャラのひとり。作品の垣根を超えた熱い対決が、今も各地で繰り広げられていることでしょう。

このクロスオーバーに多くのプレイヤーは、驚きと歓喜を示しました。舞の参戦を喜ぶ人や、その再現度の高さに関心する声などが、SNSなどで飛び交います。

原作再現度が高いことに越したことはありませんが、彼女のようなセクシーなキャラクターが忠実に再現されるのは、ゲーム表現としても非常に重要なポイントのひとつです。

■CEROの壁に阻まれた「不知火舞」

今回は舞の実装が話題となりましたが、かつて「不知火舞が登場しなかった」ことで話題となったゲームがありました。それは、『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(以下、スマブラSP)です。

『スマブラSP』は本編だけでも数多くのファイターが登場しますが、さらにDLCで新たなキャラクターたちも参戦しており、その中には『餓狼伝説』シリーズの「テリー」もいました。そして、彼と関係性の深いゲストキャラクター(総勢20体)もステージ背景に登場し、盛り上がりに花を添えます。

ゲストキャラながら、アンディやジョー、タン・フー・ルーといった『餓狼伝説』でお馴染みの面々も揃っており、心憎いファンサービスとして好評を博します。ただし、このゲストキャラに「不知火舞」の姿はありません。

なぜ「不知火舞」の姿がなかったのか。その理由について、『スマブラSP』ディレクターの桜井政博氏自身が、映像「【スマブラSP】テリーのつかいかた」の中で言及しています。

ゲストキャラに舞がいない点について、桜井氏は「残念ながら『スマブラ』は良い子のCERO Aなので、出すことが出来ませんでした。お許しください」と説明。それ以上の具体的な説明はありませんでしたが、舞のセクシーな装いをCERO Aに収めるのが難しかったのだと思われます。

■クロスオーバーでデザインが一部変更されるケースも

前述の舞は登場が控えられた一件でしたが、登場を果たしたもののデザインが一部変更され、露出が抑えられた例もあります。こちらも『スマブラSP』の出来事ですが、『ゼノブレイド2』の「ホムラ/ヒカリ」が参戦した時、主に脚部の露出度が大きく変わりました。

原作の「ホムラ」は太もも部分が露出していますが、『スマブラSP』版ではタイツらしき衣装をまとっています。その範囲は腰部分まで及んでおり、見た目の印象にも影響を与えています。

また、原作では「ヒカリ」はほぼ生足ですが、『スマブラSP』版だと黒タイツを着用し、下半身全体が覆われて隙のない装いとなりました。元々の肌面積が大きかったためか、「ホムラ」以上に露出が抑えられています。

このほかにも、露出が抑えられた例はいくつもあります。『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』では、『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』の踊り子「マーニャ」が、下半身にスパッツを穿き、胸元も肌着で覆うといったデザイン変更を受けました。

『ドラクエ』系列だと、昨年リリースされたHD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』の女戦士(正確にはルックスB)が、ビキニアーマーの下に肌色系のスパッツを着用するデザインになり、大きな話題となりました。

■『スト6』「不知火舞」の忠実な再現が嬉しい!

好きなキャラの登場は嬉しいものの、デザインの変更は喜ばしい事態とは言えません。時代に合わせて変わらざるを得ない面もありますが、事情を汲んでも感情まで割り切るのは難しい話です。

ただし、CEROなどのゾーニングが必要な側面があるのも確かで、年齢による推奨や制限を前提に可能となる表現も存在します。こうした制約の中で、より豊かな表現を目指す開発陣の苦労と努力には、改めて頭が下がるばかりです。

こうした厳しい状況下で『スト6』に登場した舞は、表現規制による露出変更を受けることなく、自身のアイデンティティを保つ形で実装されました。彼女のようなキャラクターは、ゲーム業界において意味と意義のある存在だと言えるでしょう。

そんな「不知火舞」と『スト6』実装に関わった全ての人たちを賞賛したいと思ったプレイヤーも多いはず。今こそ「よっ、日本一」という言葉を送りたいものです。



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《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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