
『女神転生』シリーズを手がけたことでも知られるゲームクリエイター・金子一馬氏が、コロプラに入社してから贈るスマートフォン/PC(Steam)向けの完全新作『神魔狩りのツクヨミ』が、2025年5月7日(水)に正式リリースを迎えます。
同作は『project MASK』の名称で開発が進められていたタイトルです。ローグライクなダンジョン探索とカードバトル要素、そして生成AIによるカード生成システムを融合した、新感覚の「カード創造ローグライク」となっています。
ゲームの正式リリースを間近に控え、コロプラはメディアを対象とした配信開始直前イベントを実施。イベントでは神魔画家 兼 『神魔狩りのツクヨミ』コンセプトプランナー・金子一馬氏と、開発プロデューサー・齋藤ケビン雄輔氏によるトークが披露されました。本稿ではそんなイベントの様子をお届けしていきます。
◆「難しいけどやってしまうぐらいのバランス」を目指していく

イベント冒頭では2週間限定で配信された先行体験版について、金子氏と齋藤氏が振り返ります。最初のアンケートで注目ポイントとして挙げられたのは、本作の魅力でもある金子氏の神魔デザインでした。
そして、次に挙げられたのがゲームのキモとなる「創成機能」です。この機能は、金子氏のイラストを学習した生成AIこと「AIカネコ」がオリジナルカードである神魔札を生成するというもの。本作『神魔狩りのツクヨミ』における最大の特徴となっています。

ゲームの難易度については「やや難しい」とする声がもっとも多く見られました。この結果について齋藤氏は、「難しいけどやってしまうぐらいのバランス」を目指していくと明かしています。
特にダンジョンの中層でつまづくプレイヤーが多い傾向にあり、金子氏もプレイ中に詰まったそうです。最終的にはこの難所を突破することができたそうですが、ゲームのローンチタイミングでは難易度が調整される方向で話が進んでいると、齋藤氏は明かしました。


続いて各プレイアブルキャラクターの性能と紹介に加え、金子氏が描いた神魔のデザイン意図など、ゲーム内では明かされていない未公開情報のトークに。ちなみにゲーム内に初期デッキの手札として登場するカードイラストは、生成AIを用いたものではなく金子氏が描き下ろしたデザインになります。
神魔のデザインについて金子氏は、自分の絵柄を学習したAIが奇抜なデザインを生成すると予想し、自身はできるだけ神話に忠実な神魔を描こうと意識したそうです。たとえば最初に紹介された「フィン・マックール」ついては、ケルト神話に登場する英雄が元ネタですが、名前の由来に合わせた色白な肌や、指をなめて知恵を得るエピソードなど、神話の要素を盛り込んだデザインとして描き上げられています。

次に紹介されたのは先行体験版でも登場したキャラクターの「新月」。ダンジョンの中層で敵として出現し、多くのプレイヤーたちを苦しめた人物です。ここで話題になったのは、彼女の手札にいる神魔「加藤段蔵」でした。“飛加藤”の名でも知られているこのキャラクターには、金子氏なりの解釈が強く反映されているそうです。
加藤段蔵は、手裏剣を使って高い壁や広い堀を飛び越えるといった逸話などから、「加藤の手裏剣ってもしかしてロケットなんじゃねえの」と金子氏が連想していき、現在の手裏剣のようなロケットを背負う忍者にデザインが決まったようです。
しかし、実際にロケットを背負わせてみたところ、「スター・ウォーズ」に登場するマンダロリアンっぽさが出てきたためか、いっそカラーリングも人気キャラクターの「ボバ・フェット」のような色合いに合わせたのだと言います。


イベントでは神魔以外にも、こうした具合で登場キャラクターのデザインや設定の裏話などが続々と明かされていきました。そして話題の矛先はキャラクターや神魔の元ネタとなる神話繋がりで、かつて金子氏が関わった『女神転生』の“ミシャグジさま都市伝説”にまで波及。
ゲームの開発中にミシャグジさまを呼び捨てにしたことで、事故が起きたという都市伝説が『女神転生』ファンの間で知られていますが、金子氏は「それ嘘です。最初から“様”付いてましたんで(笑)」とバッサリ切り捨てました。コロプラのスタッフも思わずドキドキするような余談が飛び出すトークセッションになりました。




イベントでは、正式サービス開始後のエンドコンテンツやゲーム内の課金要素についても明かされています。先行体験版で探索できるダンジョンは低層、中層、高層の途中まででしたが、製品版では高層クリア後に“超高難易度のダンジョン”が開放されるとのことです。
このダンジョンでしか入手できない、世界観をより深く知るための「メモリーカード」といったアイテムなどが獲得できるようです。

ゲーム内における課金要素としては、主に「ツクヨミ神授」「パックとパス販売」「創成神魔札の追加生成」の3つが中心となります。
「ツクヨミ神授」はダンジョン攻略を有利に進められる永続的なパワーアップ効果で、ゲームプレイを続けることで、全てが解放可能。ただし、課金することでパワーアップ効果を即時解放できるようになるため、ダンジョン攻略がよりスムーズに楽しめます。さらに金子氏描き下ろしの神魔札も登場することが判明しています。
「パックとパス販売」では、有料アイテムなどをお得に入手できる一般的なもので、パックについてはプレイアブルキャラクターごとに購入できます。「創成神魔札の追加生成」は、ゲーム中にプレイヤーだけのオリジナルカードを生成する際、追加で生成することが可能です。納得がいくカードデザインを追い求めるユーザー向けと言えるでしょう。




◆ユーザーが生成したAIカネコの神魔札をリファインして正式実装!
イベント後半では、ゲーム最大の特徴であるAIカネコによる神魔札の生成要素について改めて紹介されました。本作ではダンジョン内でさまざまなランダムイベントが発生し、プレイヤーはそのイベントにおいてどのような行動を選択したのかがログとして記録されていきます。
ある段階まで記録が溜まると「オオカミ」とのイベントが発生し、プレイヤーの行動内容を元にしたオリジナルの神魔札が生成されるといったシステムです。生成されるモチーフ元は同じであったとしても、プレイヤーによって全く異なるデザインの神魔札が生成されるユニークな仕組みです。



正式サービス開始後は、このシステムを使った運営イベント「盈月奉納ノ儀」が予定されており、プレイヤーからの支持が高かった神魔札を金子氏と運営チームが選定し、そのイラストをリファインした上でゲーム内に正式実装する予定です。
イベントでは先行体験版をプレイした各メディアのイラストを、実際に金子氏と齋藤氏がその場で批評するデモンストレーション「盈月奉納ノ儀 特別編」が実施。今回、2人のクリエイターの心を掴んだ神魔札は「ディオニュソス」となりました。このキャラクターがどのようにリファインされて、ゲームに実装されるのかが楽しみなところです。




サービス開始後はプレイアブルキャラクター「満月」「半月」が開放されるほか、アップデートを通して生成画像のクオリティ向上も行われます。
また、先行体験版を通してユーザーから受けたフィードバックや、ゲームの改善については、順次アップデートしていくとしていました。これらの更新は公式Discord、あるいはゲーム内のお知らせで告知されていきます。

最後は質疑応答の時間で、事前に寄せられていた質問に対して金子氏と齋藤氏らが回答していくコーナーでした。最初の質問では発表からこれまでのSNSでの反響や手応えについてが問われます。
金子氏は、これまで手がけてきたロールプレイングジャンルと異なるゲームジャンルのため、当初はSNSで難しいと感じる意見や、戸惑う声などを目にしていたと言います。しかし、「コツを掴めば面白い」「こんな方法でクリアしました」など、中には狙い通りに遊んでくれたユーザーの反応も見られ、そこに手応えを感じていた様子でした。






まだまだゲーム内だけで語り切ることができない世界観や要素が多いと齋藤氏は語ります。本作の原案を手がけた金子氏としても、将来的には続編やキャラクターのグッズ展開、2.5次元ミュージカル、アニメ作品といったものまで、ゲームだけに留まらないIP展開に意欲を見せてました。
金子氏がコロプラに入社してから初となる完全新作は、生成AIとゲーム業界のどのような風を吹き込むのでしょうか。
