ニンテンドースイッチ2では、一部のタイトルの「スイッチ2版」が販売されているほか、無料アップデートにてスイッチ2に合わせた最適化が行われているタイトルがあります。
『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』も無料アップデートでの対応がなされたタイトルの一つ。もともと初代スイッチでリリースされた本作は、パフォーマンス面での問題をたびたび指摘されていました。
そんな『スカーレット・バイオレット』は、スイッチ2版にて、実際どの程度パフォーマンスが改善されたのでしょうか?今回は、実際に初代スイッチとスイッチ2の両方を起動して、その差を比較してみます。
ようやくコアなゲーマーにも勧められるパフォーマンスに

あらためて初代スイッチにて『スカーレット・バイオレット』を起動してみると、確かにフレームレートが20前後に落ちているように感じられる場所が散見されるほか、単純にジャギーが目立ちます。一通り重かった記憶のある場所を見て回り、「確かにこんなもんだったなあ」と再認識しました。それでは、スイッチ2版も起動してみましょう。

……なんかヌルヌルしてる!!
30fps上限だった初代スイッチ版に対して、スイッチ2版は60fps上限となっているので、やはり感触はかなり異なります。重かった場所を訪れてみても、特にフレームレートが落ちている感じはなく、60fpsで張り付いている様子。確かに安定して遊べそうです。

正直に言うと、筆者は当時『スカーレット・バイオレット』をプレイした時、そこまでパフォーマンスに問題を感じていませんでした。20fps前後にフレームレートが落ちてしまうタイトルというのは初代スイッチではそこまで珍しいものでもありません。PCゲームを20fps前後にしててもグラフィック優先で遊んでいた経験もある筆者にとっては正直本作もぜんぜん「遊べる」レベルでした。本作はアクションではなくターン制のRPGなので気にならなかったという部分もあるかもしれません。
とはいえ、「遊べる」の許容範囲は人によって異なるため、少なくともコアなPCゲーマーの友達などにはなかなか本作をお勧めしづらい部分がありました。今回のスイッチ2版のパフォーマンスならばまったく問題はなさそうです。

筆者の『スカーレット・バイオレット』の思い出の中に、「風車が動いていなかったので無風なのかと思ったら、近づいたら急に動き出した」というものがあります。遠景の動くオブジェクトのフレームレートを落とすのはよくある最適化の手法ですが、原作ではかなり近づかないとほとんど動きすらしなかったのです。「本作の風車は存在を認識されると動き出す“量子風車”だ」と友達と話していたのを思い出します。
そんな量子風車も今回確認しに行ってみました。すると、風車が遠景で止まるどころか、そもそもフレームレートの低下すらみられませんでした。原作でほとんど止まっていた場所まで離れても、おそらく60fpsで回っていそうです。こういう部分の最適化にも手が加わっているのかもしれません。


事前に告知されていた通り、フィールド上のポケモンの表示数や表示距離も向上しています。それに伴って、フィールド上にポケモンが出現するスピードも従来より早まっているので、最初からポケモンがフィールド上にポケモンが暮らしているという感覚が強まっています。本作がオープンワールドになったことの恩恵をより感じられる部分であり、ここはかなり大きな変化と言えそうです。
そのほか、マップ画面を開く時になぜか動作が重かった問題の改善が見られたり、ロード時間の向上によってファストトラベルが一瞬になっていたりと、ストレスになりうる要因もかなり排除されています。

グラフィックの向上には期待しないほうがいい
筆者にとって本作は、パフォーマンスよりもフィールドのグラフィック品質のほうが問題でした。キャラクターのビジュアルやフェイシャルの表現などが前作『ソード・シールド』から向上している一方で、フィールドに関しては率直に「ショボい」と感じるレベルだと思っています。これは同ハードのオープンワールドタイトルである『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』やWiiU向けの『ゼノブレイドクロス』などと比較しても雲泥の差だと感じていました。
初代スイッチ向けにリリースされているオープンワールドタイトルの移植で、本作と同様にグラフィック品質の担保に苦戦しているタイトルは多いですが、『スカーレット・バイオレット』は最初からスイッチ向けに作られているタイトルなので、もう少し頑張ってほしかったというのが正直なところです。

筆者が個人的に『スカーレット・バイオレット』で一番グラフィックに失望した場所である「みだれづきの滝」周辺の竹林を訪れてみました。筆者が思う、『スカーレット・バイオレット』のフィールドの綺麗さをかろうじて保っている要素である平原の「草」が生えていない上、山々に囲まれているために空気遠近などによる空気感の表現もしづらい場所になっています。その上本作のフィールドはアンビエントオクルージョン(AO)による陰影などもないため、場所や時間帯によってはNINTENDO 64時代くらいのレベルに見紛うほどです。

スイッチ2版でも、同様に「みだれづきの滝」周辺を訪れてみます。確かに初代スイッチ版では目立った竹の葉のジャギーがなくなっていますが、正直大きくは変わらない印象です。当然モデルに変化があるわけでもなく、相変わらずAOもないので、正直そんなに前作との差は感じません。お世辞にも綺麗とはいいがたいです。

スイッチ2版では4K60fpsでの出力が可能となっている本作ですが、おそらくグラフィック部分にはほとんど手を加えていないのではないかと思います。テクスチャ解像度の向上なども筆者としてはほとんど感じられず、むしろ4Kになったことでテクスチャの粗さが目立つようになったとも捉えられます。


とはいえ、4K解像度やジャギーの改善によって、本作の魅力であるキャラクターや、ポケモンなどがより鮮明に見られるようになったのは素直に嬉しい部分です。
本作は有料のアップグレードである『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』や『ティアーズ オブ ザ キングダム』のNintendo Switch 2 Editionと違って、無料アップデートとなっているので、それと同等のものを望むのはさすがに高望みかもしれません。



『スカーレット・バイオレット』は、筆者が歴代『ポケモン』シリーズの中で一番ストーリーが良かったと感じており、お気に入りのタイトルの一つです。それだけに、パフォーマンスに問題を抱えているために人にお勧めしづらいのは手痛い問題でした。
今回、パフォーマンスが安定したことで、友達にもだいぶ勧めやすくなりました。メインストーリーはクリアしたけれどDLCにはまだ手をつけていなかったという人も、この機会が始め時かもしれません。