「ジークアクス」が終わって寂しい! 他におもしろいガンダムはないのか!? そんなあなたへ贈る「マンガでしか楽しめないクセ強系ガンダム」を特集【手作り・忍者・魔法少女・アッガイ・秘話】

これまでの『ガンダム』アニメシリーズにはない切り口で毎週驚かせ、視聴者を阿鼻叫喚させた最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』。しかしコミックスの世界には破天荒で個性的なガンダム作品がまだこんなにもあった!

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「ジークアクス」が終わって寂しい! 他におもしろいガンダムはないのか!? そんなあなたへ贈る「マンガでしか楽しめないクセ強系ガンダム」を特集【手作り・忍者・魔法少女・アッガイ・秘話】
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予想の斜め上を行く展開とテンポのいいストーリーで、毎週あれこれと感想を語り合うのが楽しかった『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』(以下『ジークアクス』)。これまでの『ガンダム』アニメシリーズにはなかったノリと世界観は、他では味わえない唯一無二の楽しみでありお祭り騒ぎでした。

それだけに最終回を迎えてしまって寂しすぎる! ……ということで本稿では、ちょっぴり風変わりかつクセが強めの「おすすめガンダム作品」をセレクト。作家性が色濃く出るコミック媒体から、1巻で完結している作品で、なおかつ濃いめのガンダムファンなら誰でも知っているであろう5作品をお届けしたいと思います。

そのキーワードは「手作り」「忍者」「魔法少女」「アッガイ」「秘話」!


◆ガンプラ化を果たした「手作りガンダム」

「うしだゆうじ」氏が描く『ダブルフェイク アンダー・ザ・ガンダム』は1988年に誕生した作品。玩具店で扱われていたバンダイの模型専門・小冊子「エムジェイ(模型情報)」で連載されていたもので、宇宙世紀0090を舞台にした物語でした。

※『機動戦士ガンダムZZ』と『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の間に起きた出来事。

コロニー公社の下請け作業員として働く青年「ダニエル・ガンズ」(通称ガンダム・ダリー)が主人公なのですが、大のガンダム好きということで、なんと廃パーツからオリジナルのガンダムを建造。放棄されたコロニーを再建する作業を、自作のガンダムでおこなうという名物作業員でした。そんな彼がゲリラ部隊「カラード」との紛争に巻き込まれ、そのまま地球連邦軍に組み込まれる形で戦火に身を投じます。

クセが強いのはその作風と独特のノリ。ただしストーリーはしっかりしており、人類の第2の故郷であり生活の基盤であるスペースコロニーを再建・守るという、作業員として決してブレない信念のもと、好きな人たちを不幸にしないために奮闘します。

とくにあれだけ憧れていたガンダムが戦闘用に改修されるシーンでは「なんか違う」と漏らし、戦闘をしたいわけではない気持ちを覗かせます。彼にとって愛機のガンダムはあくまで作業用。コロニーを再建し、守るためのものです。地球連邦軍によって“本物のガンダム”に生まれ変わっても、それは彼が望んだ姿ではないという“ガンダムおたく”ならではのこだわりと信念を見せてくれました。コロニーまわりの解説も多く「その視点があったか」と膝を打つ隠れた名作でもあります。

◆アイエエエ!? ニンジャ!? ニンジャナンデ!?

「こやま基夫」氏が描いた『Gの影忍』は、1989年にサイバーコミックスに掲載されていた外伝マンガ。忍者がモビルスーツのパイロットになり、忍者仕様のモビルスーツで人間離れしたバトルを展開する……。シチュエーションは一見ギャグテイストでありながら、ストーリーは意外と熱く、ギャグとシリアスのバランスがちょうどいい不思議な作風となっています。

主人公は忍者の青年「リョウガ」。『機動戦士ガンダム』から『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』までの時系列を舞台に、忍者仕様のガンダム、忍者仕様のキュベレイ、忍者仕様のハンブラビなどが歴史の陰で壮絶な戦いを繰り広げていたという、正式に組み込まれた設定ではないもののおもしろいifを描いていました。

「畳み返し」ならぬ「隔壁がえし」や、忍法「ミノフスキー隠れの術」などの解釈がまさに本作の真骨頂。格好よくデザインされた漆黒のガンダムとともに根強く支持される理由となっています。『機動武闘伝Gガンダム』に通じるものがありますね。なにより「闇に生き、闇に死す忍者たち」にロマンがあり、ガンダムの皮をかぶっているものの本格的な忍者マンガとして楽しめるのがポイントです。

当時のガンダムキッズといえば、アニメメディアはもちろんのこと、コミックメディアで展開されるガンダムにも夢中になっていた世代です。前述した「エムジェイ」と、『Gの影忍』が掲載されたアンソロジーコミック「サイバーコミック」がその双璧で、今なお懐かしく思っている人も多いはず。続いて紹介する『魔法の少尉ブラスターマリ』もまたサイバーコミックス出身の作品です。

◆仮面の少佐がくれた“魔法のステッキ”

『魔法の少尉ブラスターマリ』は「池田恵」氏によるパロディマンガ。こちらもやはり1年戦争を背景に、サイド3に住む少女マリコ・スターマインの活躍を描きます。

※サイド3はジオン公国の首都「ズムシティ」があるコロニー。

『魔法の少尉ブラスターマリ』が執筆された80年代といえば、アニメスタジオの「ぴえろ」が制作した『魔法の天使クリィミーマミ』『魔法の妖精ペルシャ』『魔法のスターマジカルエミ』『魔法のアイドルパステルユーミ』が人気だった頃。今でこそ魔法少女と言えば戦うヒロインですが、当時は少女向けに制作されており、魔法のステッキで大人に変身するのが定番でした。そのため本作も、マリコがジオンの女性士官「ブラスターマリ」に変身するという、ガンダムと魔法少女が悪魔合体した楽しいパロディマンガとして異彩を放っていました。

ちなみに本作でマリコに魔法のステッキならぬ「魔法の布団叩き」を手渡したのは、ジオンのあの有名エースパイロット! その人物は『Gの影忍』にも登場していましたが、『ジークアクス』と通じる“便利な使われ方”をしており大変興味深いです。

物語は「母を早くに亡くしたマリコが一家の母親役として奮闘する」というシナリオで、パロディ満載ではあるものの、ハートウォーミングで意外な展開もある、決して侮れない内容でした。(母親代わりなので「魔法の布団叩き」)

◆アッガイ愛が溢れすぎて大洪水!

「曽野由大」氏が描いた『アイアンアッガイ』は、厳密に言えばガンダムマンガではありません。ガンプラ作りをする少年がある日アッガイのプラモデルに目覚め、やがて自分がアッガイになろうとする。それは最初、ハリボテのコスプレスーツでしたが、こだわりにこだわりを重ねるうち、やがて「本物のアッガイスーツ」を制作・身にまとうようになるのです。

掲載誌はKADOKAWAの「ガンダムエース」。考証がそれっぽくなっており、「本当にアイアンマンスーツ……いやアッガイスーツを作るとどうなるか?」という部分を掘り下げているため、ただのパロディで終わらずSF作品として楽しめるかと思います。

魅力はなんといっても進化するアッガイスーツ。失敗に失敗を重ね、それでも諦めずに前へ進もうとする姿が熱く、どんどんと本格的になっていく姿は感動さえしました。

なお作者の「曽野由大」氏はほかにも『機動戦士ガンダム アッガイ北米横断2250マイル』や『アッガイ博士』といった作品も執筆しており、アッガイへの溢れんばかりの愛情がうかがえる作家でもあります。

◆マンガで紡ぐF世代の「秘話」

クセ強なガンダムマンガを紹介するつもりの本稿でしたが、やはりオーソドックスなガンダムにも触れたい! ということでピックアップしたのが最後に紹介する『機動戦士ガンダムF90』です。

これまで紹介したタイトルが各作家のオリジナル作品だったのに対し、「中原れい」氏と「山口宏」氏が紡いだ本作は、同時期に発売したオリジナルのプラモデル展開の販売促進、および公開を控えていた映画『機動戦士ガンダムF91』を盛り上げるために企画されたコミック作品となります。

『機動戦士ガンダムF90』は比較的重要なポジションにある作品ながら、これまでアニメ化されておらず、その意味でも貴重なマンガ作品でしょう。

それまで連邦はアナハイム・エレクトロニクスで開発したモビルスーツを採用していましたが、『機動戦士ガンダムF91』をきっかけにサナリィに鞍替えをすることに。F90はF91へと繋がるサナリィ製ガンダムの試作機であり、ハードポイントと呼ばれる機構を使うことで「接近戦仕様」「長距離侵攻仕様」「長距離支援仕様」など様々な戦況に対応しうる装備に換装します。

ちなみにその後のガンダム史は、続編である『シルエットフォーミュラ』(こちらもプラモデルとコミカライズで展開)、映画『機動戦士ガンダムF91』ときて、再びコミック展開へ戻っていきます。「長谷川裕一」氏による『機動戦士クロスボーン・ガンダム』のシリーズがまさにそれ。アムロとシャアがいない時代の物語を「長谷川裕一」氏が紡いでいくことになります。

※一部『機動戦士Vガンダム』の時代と重なる作品もあります。

なお『機動戦士クロスボーン・ガンダム』はアニメ化されていないものの、数々のゲーム作品に登場したりガンプラ化したりしているガンダム史の大切な1ページです。同作に登場する“海賊ガンダム”ことクロスボーン・ガンダムのみならず、続く作品では全身緑の「ファントムガンダム」など、そちらも商品化を果たしたクセ強なガンダムが登場しているので、そちらでもマンガならではのガンダムをぜひお楽しみください。


探せば山ほど出てくるコミックオリジナルのガンダム作品。『ジークアクス』だけではなく様々な外伝やパロディを内包する、本当に器が大きな作品だと感じさせてくれます。


アッガイ博士(1) (角川コミックス・エース)
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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

《気賀沢昌志》

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