
かつてGame*Sparkでは「ギャルゲー百人百景」という特集記事が連載されていた。それは、ギャルゲーのヒロインを百人攻略するという妄執に取り憑かれた男による魂の連載だった……。しかし様々な理由があり、連載が休止されて幾星霜……。ここに「ギャルゲー百人百景」は帰ってきたのである。「特別編」という姿で……。
と、いうわけでお久しぶりです。はじめましての人ははじめまして。かつてここで「ギャルゲー百人百景」という連載をしていた者です。先ほど確認したところによると最後の「ギャルゲー百人百景」の記事更新は2019年とのことなので、6年ぶりの新規記事ということになる。「ギャルゲー百人百景」通称「ギャル百」はギャルゲーの各ヒロインを攻略し1ヒロインについて1記事をしたためる、という試みの連載だった。
連載当時、友人に誘われゲームライターを始めたての自分だったわけだが、今「ギャル百」を自分で読み返すと、精一杯見様見真似で面白ライターっぽい文章を書いており面白い。特に「第一景」はかなり楽しい記事となっているため、おすすめだ。6年の間、さまざまなことがあった。当時から下火だったギャルゲージャンルは現代ではさらに元気がなくなったようにも感じられるが、中国の実写ギャルゲーシーンなど見るべきものも増えている(もしこの記事の評判がよく「ギャル百」をまたやってくれ、ということになったらそういうものを取り上げたい)。
今まで何回か「復活してほしい」という要望があったがそのたびにさまざまな都合があり実現できないでいた「ギャル百」だが、今回、伝説的な美少女ゲーム『D.C. ~ダ・カーポ~』のフルリメイク作である『D.C. Re:tune ~ダ・カーポ~ リチューン』が発売されるにあたっていよいよ復活、ということに相成った次第である。この記事で始めて「ギャルゲー百人百景」に触れるという人は、もしよかったらバックナンバーを読んでみてほしい。

『D.C. ~ダ・カーポ~』は2002年に発売された美少女ゲームで、現在では『D.C.5 ~ダ・カーポ5~』が発売されているなど今に至るまで非常に高い人気を誇っている。筆者はシリーズをつぶさに追いかけているわけではないが、それでも初代は当時(といっても発売からは数年後じゃなかろうか、正確な年度はわからない)にプレイした記憶がある。「主人公が無から和菓子を生み出す超能力を持っている」ということだけ覚えていて、ほかのことは何一つ覚えていないので、みなし初見プレイだと言えるんじゃなかろうか?
個人的には真ん中のピンク髪の子が好きだったような覚えがあるのですが、いまやその記憶すら定かではない。23年も経ってるってのはそういうことだよね。
今回、発売前に『D.C. Re:tune ~ダ・カーポ~ リチューン』のロムを提供してもらい遊んでいるため、リメイク作とはいえストーリーの核心部分については話せない。具体的には作中で「3月6日」までに判明している情報のことまでしか書けないため、そのあたりはご容赦いただきたい。

前置きが長くなったが今回攻略していくのはタイトル画像での比率がもっとも大きかったリボンがほっそいヒロインこと「朝倉音夢」だ。おそらく今作の「メインヒロイン」を担う存在かと思われる。メインヒロインとは、その名のとおり作品の看板となるヒロインのことだ。ゲームによってその作品のメインストーリーと深く関係しているものがあったり、メインヒロインだからといって他のヒロインとの比重はあんまりかわらないものがあったり様々である。
当時は何の疑問もなく使っていた「メインヒロイン」という用語だが、ライターとなった今となってはやや誤解を招きかねない表現な気もするので「カバーヒロイン」(カバーアートでの取り扱い面積が広いヒロイン)という呼び方を提唱していきたい。今思いついたので積極的に使っていく。

音夢は主人公である朝倉純一の妹であり、なんかどうやら義理の妹であるっぽい。主人公たち兄妹はどうやら二人で暮らしてるっぽく、なんか親は遠くにいるっぽい。音夢はなんか体調に問題を抱えてるっぽく、主人公は音夢の熱をおでこを合わせて測ることが日課となっている。すべてが匂わされるだけで結論は言及可能範囲ではわからないため、奥歯に物が挟まったような物言いになってしまっている。
今回記事を執筆するにあたって色々ネットで調べたのだが、朝倉音夢には単独でWikipediaのページが存在する。というか本作のヒロインは全員単独ページがあって、おそらくめちゃくちゃ本作に対して情熱がある人が編集している。ただ、Wikipediaには作品の決定的なネタバレも含め記述されているため、何の知識もなく本作をプレイしたい人は見ないのがおすすめだ。リンクも省略させていただく。

音夢は妹キャラという割にはロリータ感が薄く、ちょっと抜けているところはあれど基本的にはしっかりもので、自分の意思がはっきりと示せるタイプだ。冒頭部から兄である主人公とはかなり仲良く、屋外で結構強めのスキンシップをしていてびっくりした。ずっと同居していることもあってストーリー開始前から関係性がほとんど完成しており心理的にも肉体的にも距離感が近い。周囲にはどう見られているのだろうか。



今回の攻略対象ではないためサラッとした言及に留めるが、登場が劇的な学園のヒロインや口調が異常な幼馴染、屋上で鍋をしている異常な姉妹など、インパクトが強い他ヒロインたちの中で、音夢は(少なくとも言及できる範囲まででは)かなり普通の性格の持ち主だ。メインヒロインもといカバーヒロインの余裕というものなのだろうか。

音夢は家の中でも敬語で喋っていることが多く、主人公の面倒をいつも見てくれるまるで親のような存在だ。どうやら料理が下手っぽいが、触った範囲では言及されるのみで実際の料理が登場することはなかった。わりと強烈なキャラ付けが行われるギャルゲーというものの中ではかなり常識人と言えるのではないだろうか。実際、(少なくともプレイした範囲では)その普通さ、変じゃなさはこの人の魅力の一つだ。

音夢のシナリオからは少々離れるが、主人公が無から和菓子を生み出す不思議な力を持っている、という筆者唯一の本作についての記憶について言及されるシーンもあった。ちなみに主人公は「他人の夢を見ることができる」という超能力も持っているのだが、そのことについては一切覚えていなかった。言及可能範囲内ではどちらの能力も匂わされるだけなのだが、たぶんシナリオに深く関わってくるんだろうと思う。

言及した通り、主人公と音夢二人の兄妹はゲーム開始時点からわりと距離が近い。それだけではなく主人公は音夢に対してよからぬ感情があることがわりと早い段階でほのめかされるし、音夢は音夢で指輪をねだったり理由をつけて抱きついたり主人公の着古しのシャツを奪ったりとかなりよからぬ感じを出している。っていうか最初からかなりいちゃついているようにしか見えない。
先ほど「常識人」と書いたが、兄との距離の近さはやや常識的でないと思われる。でも他人が口出しすることじゃないよね……!

シナリオは主人公たちが「附属」を卒業する日で今回の言及可能範囲はひとまず終わりだ。ここまでかなり展開は穏やかであったため、ここからどのようなドラマチックなことが起こるのだろうか……。
『D.C. Re:tune ~ダ・カーポ~ リチューン』はNintendo SwitchとPC(Steam/Windows)で発売予定。筆者としても美少女ゲームの人気作と再度出会えたことは楽しい経験だったし、普通に今新作として遊んでも面白いだろう。ストーリーの続きはぜひ、読者諸君が本作を実際に手にとって確かめてみてほしい。