去る2025年9月4日(Steam版は9月5日)、バンダイナムコエンターテインメントより発売された『みんなのGOLF WORLD』。言わずと知れたゴルフゲームの金字塔『みんなのGOLF』シリーズ最新作は、取り巻く環境が激変した作品でもありました。

まず、大きなトピックは、PlayStation 5、ニンテンドースイッチ、Steamと複数のプラットフォームに対応したこと。
シリーズは長年に渡り、販売は現ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)、開発がクラップハンズというタッグで展開されてきましたが、本作では、販売はバンダイナムコエンターテインメント、開発をハイドが担当するなど(SIEはライセンスの貸与という形)、タイトル周囲の様々な部分に動きがみられた作品です。
筆者は元『みんGOL』ファーかつ、リアルゴルファーでもあります。青春の中に刻まれているタイトルのひとつですし、とくに『みんなのGOLF 4』は、自身のゲーム歴の中でもとくにやりこんだ作品です。
学校帰りにゴルフ練習場、帰ったら『みんGOL』なんて生活もしていました。なので、発表当時から本当に楽しみにしていましたし、Steam版を先行予約して、発売日が来るのを楽しみに待つ日々を送っていました。

そんな経歴(?)を買われ、タンクトップおじさんこと、株式会社イードのゲームメディア及びアニメメディア事業責任者、宮崎氏と先行プレイ体験会に伺い、Game*Sparkさんで先行プレイ記事を、2本お届けしました。あの時はライターとして、ひとりのシリーズファンとして、その時に書ける最大限のことを書いたつもりです。それを後悔はしていません。
ですが、当時はバグや不具合にも遭遇しなかったとはいえ、今になって振り返ると、形容しがたい、もどかしい思いを強く感じています。「体験会の時と話が違くない…?」と感じる自分もいますが、それ以上に、先の2本の記事を読んで「大丈夫そうだ」と思い、悩みながらも購入に踏み切った読者の方がひとりくらいはいるのだろうと考えると、自責の念を覚えます。
くわえて、現在はアップデートが施されて改善されていますが、発売当初のニンテンドースイッチ版で発生していた「ジャストインパクトできない問題」については本当に怒りを覚えました。Steam版は1日遅れだったのでSNSを遮断し、いざプレイを始めて、「みんな楽しんでるんだろうな」と思って見れば阿鼻叫喚。どうなっているんだ……?と。

せっかく、ニンテンドースイッチという新しいプラットフォームに展開し、より広い客層へリーチしているわけです。率直に「本当に何やってるんだよ」という思いを抱いてしまいました。発売後、すくにアップデートで直せばいいという問題ではありません。ゲームの根幹も根幹。一番大事な部分ですからね。
その他のバグやストレス要素な点も含め、「先行プレイの時に気づかなかったんですか?隠してたんですか?」と疑問を持たれるかと思います。「どうしてあの記事になったのか」という点も含め、当時を改めて振り返りつつ、執筆時点の(2025年9月21日)、Steam版プレイレポをお届けしたいと思います。
■先行プレイの振り返りと戸惑い
まずは、先に掲載された先行プレイ記事2本について、お話をしなくてはなりません。
筆者、宮崎氏の2名で伺った国内媒体合同の先行プレイ体験会では、PS5版、Steam版の試遊機が用意されており、約2時間ほどのプレイ時間が確保されていました(もちろん途中には記事化に伴う素材の撮影や確認などもあり、すべてを純粋なプレイ時間に割り当てられるわけではありませんが)。

リリース後に多くのフィードバックが寄せられていたSwitch版の展示はあったものの、参考展示という扱いであったこともお伝えしておきます。
我々がプレイしたのは、開発中と前置きされたテストビルドのPS5版であり、筆者を中心に、途中途中で宮崎氏に交代しながら、読者の皆さんへ紹介するためのテストを行っていました。プレイモード等に制限はありましたが、データはマスターキーと呼べるようなもので、すべてのキャラクターの愛着度が最初から最高値であったり、すべてのギアが試せたりといった、円滑にテストを行えるものでした。
この最中には、本作から導入された新タイプの操作方法を含むシステム面を確かめたり、キャラクター、ギア(クラブ・ボール)をチェックしたりしましたが、メインとなるのはラウンド(コースを回ること)です。複数のモードやコースで回数を重ねつつ、キャラクターの使用感やプレイフィールを確認しました。

本稿を読まれている方であれば、リリース後、SNS上を中心に報告されている致命的なバグの数々をご存じかもしれません。単にプレイヤーのストレスになったり、回避可能なバグ・仕様ではなく、特定条件下で強制的にアンプレヤブル・OBになってしまうといった、ゴルフゲームとしてのクオリティが担保されていないタイプのバグです。
これらの「ゴルフゲームとしてダメ」なバグは現状、筆者は製品版(Steam版)のプレイ中にも遭遇していないのですが、テスト中にも遭遇しませんでした(そのため本現象の画像を掲載できていません。申し訳ないです)。限られた特定条件下で発生すると思われるので、プレイヤー個人の戦略傾向が影響している可能性も否定できませんが……。
コース上で謎のおっさんが乱入してくることに代表される、ギャラリーの挙動がおかしくなるといったタイプのバグも、テスト中、製品版プレイ中ともに遭遇していません。

テスト当時、発売以降に報告された、バグが発生する可能性のあるシチュエーションをすべて体験していないというのもありますが(特定条件下のワールドツアーで再現性のあるフリーズ、キャディーのサポート効果が発動した場合にフリーズの可能性など)、先行プレイ時には致命的なもの、軽微なものに関わらず、筆者や宮崎氏も、バグには遭遇しませんでした。
……と、ここまで述べたように、先行プレイを経た筆者、宮崎氏ともに「どうしてこうなった?」と、首を傾げてしまったのが実情です。
ただ、今になって録画を見返した場合、キャディのフックとスライスを逆に発言してしまうバグに関しては、筆者のパットタイミングが早く、どれも該当セリフへ入る前に打ってしまっていたので、気づける余地があったのも事実です。こちらは限られた時間の中で、少しでも読者の方へ多くのコンテンツをお届けしようと、テンポよくプレイしすぎた筆者のミスでした。

もちろん、開発側にもスケジュールはあります。労働規定だってあります。様々な事情もありますし、日頃からゲームクリエイターの方々に携わらせていただく筆者は、それらを身をもって理解しています。面白くないゲームを作ろうなんてクリエイターはいませんし、皆さんプレイヤーに喜んでもらおうと、必死に制作へ取り組まれています。先行プレイの時間を確保するのも大変だったはずです。
ですが、久方ぶりの『みんなのGOLF』を復活させるんです。累計1400万本以上の売り上げを誇るゴルフゲームの金字塔を、しかも、マルチプラットフォームで。
ローンチ日をワクワクしながら待っている、ベテランやビギナー、年齢も問わない大勢のプレイヤーがいます。こんなことを商業メディアで書いていいのか分かりませんが、一人のシリーズファンとして、その人たちを裏切ってほしくありませんでした。
アップデートで良くなるタイトルは多々ありますし、ローンチ時と落ち着いた後で、評価が逆転するタイトルも多くあります。ですが、初動で離脱してしまった人の何割が、公式サイトやXアカウントのアップデート情報を見てくれるのか。熱心に情報を追い続けてくれるプレイヤーはどれくらいいるのか。
発信者の誤解も含め、SNS、動画サイトであらゆる情報が一瞬で拡散される世の中です。そんな情勢下で、本作はお世辞にも「成功」とは言えないスタートを切りました。
ですが、そうしたバグや、ストレスを感じる要素を除けば、モダナイズされて楽しみが増えた、新生『みんなのGOLF』ということも、また事実。製品版に話題を移し、そちらの面もお伝えしようと思います。
ゲーム自体は面白い。そりゃ『みんGOL』だもの
まず、『みんなのGOLF 2』から『みんなのGOLF 6』までのキャラクターや、アレンジを含めたコースが復活。これは大きなトピックじゃないでしょうか。
筆者もめちゃくちゃ嬉しかったですし、シリーズおなじみの「グロリア」はもちろん、「クーガー」「ローズ」の復活は泣きました。解除条件も分かりませんでしたが、ガムシャラにプレイしてなんとかアンロックしたほど。



一部のリバイバルキャラクターでは声優さんの変更が行われていますが、セリフやモーションも過去作を調べたんだなと感じさせてくれるものが多く、長い時を経てキャラクターが成長したような感触を覚えることもあり、とても嬉しかった。“良い”ではなく“嬉しい”です。『みんGOL』らしい頭身の、キャラクターデザインもかわいいですよね。

キャラクターを深堀りするストーリー仕立ての「ワールドツアー」モードも、後述する大きな問題を抱えつつ、取り組み自体は素晴らしいものだと思います。「ゴルフゲーにしてキャラゲー」でもある『みんなのGOLF』において、明確にシリーズのモダナイズを感じる部分でした。これらキャラクターへの取り組みについては、開発側も重点的に意識を置いていたことが伺えます。


もちろん、中には登場できなかったキャラクターもいますが、一部のギアには、そうしたキャラクターたちのエッセンスを感じられる説明が入っていたりも。



全体的なテキストのトーンも、モダナイズしつつも『みんGOL』らしいし、BGMも“らしさ”がある。こういった箇所の雰囲気作りは上手です。

また、各キャラクターのスペシャルショットもぶっ飛んでいて、ボールが強制的にカップを狙う、障害物を無視して飛ぶ、ショット時の傾斜を無視するなどヤバいものばかり。キャラクターを成長させる要素や、天候や時間、環境の影響を活用する新登場ギアの数々など、本来であれば「こういうところが話題になったのではないか?」と感じさせる、楽しい新機軸も多くあります。

キャラクターのカスタマイズも面白く、ゲーム内での一定条件と手順を踏む必要はありますが、同じ性別同士のキャラクターであれば、他キャラクターやオリジナルのコスチュームを着ることもできます(一部例外あり)。グロリア(姉)のコスチュームを着るシルビア(妹)とかも可能であり、カラーチェンジとあわせてめちゃくちゃ楽しいです。



そして、何より「問題点を除けば、基本的に面白い」という点。ゴルフとゲーム性を融合させた『みんGOL』であることは間違いなく、筆者は後述する文句を垂れ流しつつも、ここまで致命的なバグには一度も遭遇せず、割と普通に楽しんでいます。
硬い印象を受けるグリーンの感覚、現状のサイドスピンの仕様など(これに関しては筆者も極端すぎると感じています。この影響で、ドロー・フェード持ちが扱いにくいのも難点です)、好き嫌いが分かれそうな部分はありますが、ベースの部分自体は『みんなのGOLF』なのです。

拍手モーションはないし全員腕を組んでいますが、ハリボテのギャラリーも筆者個人としては“らしくて”好き。ただしボールが飛んできても逃げないキャディ、お前はダメだ。ちゃんと過去作から学んで来い!
次に、プレイフィールに影響してくる問題点(バグ・ストレス要素など)。そこそこ長時間プレイした今になって感じる個人的なものと、先行プレイ時には体験できなかった部分を含めてのものなので、まとめて概要のみ掲載します。
ネタバレになる要素も含まれているので、気になる方はブラウザバックしてください。

ショット前のカメラ操作が少々モッサリしている。
「一定時間、同じ方向にカメラを動かし続けると加速する」といった機能があっていい現状のサイドスピン仕様を含め、ジャストインパクトの重要性が極めて高い。
インパクトエリアの恩恵が小さく感じると同時に、ジャストインパクトエリアを増加させるギアの存在感が大きくなっているジャストインパクト時の演出に、ランダムで時が止まるような演出が入る。
とくに難易度が高いコースであればあるほど、飛んで行くボールが見たいのでオフにしたい明らかに難易度詐欺なリメイクコース「セントラルホークゴルフコース」がチャレンジモード中盤で登場。
本作はチャレンジモードの難易度を変更可能とはいえ、登場時期のレベルデザインを間違えたとしか思えません
(クリアだけならまだしも、本コースを楽しみながらプレイできるのは、シリーズ経験者やそれなりに腕前が立つ人に限られるでしょう)コース上でのライ表記。
プレイ画面に表示されているステータスと、実際の数値が異なっているのでは?と感じることが稀に発生します従来作品に存在したコースの俯瞰カメラがなく、コース全体がイラストでの表記になっている。
難易度が高いコースだと木々を迂回する場合も多くあるが、イラストだと感覚をつかみにくいグリーン上で動き回るキャラクターが邪魔になり、もっとも大事なライングリッドが読みにくい。
現状も半透明にできるボタンこそあるが、今のままならデフォルトが半透明でもいいはずショット前に対戦キャラが煽ってくる。
現実のゴルフではなくゲームなので煽ってきてもいいと思うけど、発言までの時間を伸ばしてほしい。風速14mなんてそう簡単に読めません
(先のテストではプレイしたコース環境はコンディションが悪くなかったため、テンポよくショットでき、気づけなかった部分でした)ワールドツアーの特定エピソード。異様に時間を浪費させられ、そのうちの大半がCPUの操作をスキップしているだけとなりがち。
CPUと交互打ちする場合もあるが、CPU操作があまりにポンコツ。勝てるものも勝てなかったりとストレス要素になってしまっているワールドツアーでそこそこ見られる「スピンショットを使用しない」というチャレンジ。
厳しいコースになる場合もあるので、せめて「バックスピンを使用しない」とかにしてほしかったワールドツアーでの特定エピソードにて、チャレンジ達成条件を満たしたのに、満たしていないことになるバグも数件確認。
総じて、せっかくのワールドツアーがテンポの悪い作業ゲーになってしまい、ストレス要素に突然、CPUの挙動が狂ってしまう(バグなのか仕様なのか判別がつきにくい)。
前方に問題なくショットできるのに、なぜか後方にショットするなどの奇行が稀に発生するキャラ解放のために、正直、あまり興味のないキャラクターでのプレイを強制される。
自分の好きなキャラクターを使えずにプレイすることになるので、ひたすら苦痛な作業時間と感じてしまうキャラクターの強化システムで、どのキャラクターも最大345ヤードまでは素で飛ばせるようになる。
スピンやコントロール、インパクトの性能が上がるのはともかく、様々なコースをラウンドした今となっては、さすがに飛ばし屋すぎでは…?という印象スピン能力最大のスーパーバックスピンは、予想を遥かに超える狂気レベルにバックし、止まらずに転がり続けてしまう。
そこまで傾斜のないグリーンに乗ったのに、カラーやフェアウェイに余裕で戻ってくるほどです。流石に効きすぎ…?強化したキャラクターのリセット機能がない。前述した内容で強化状態をリセットしたいと思うことは多々あります
スペシャルショットの開放やバックスピンホーミング解禁、上位ギアの装備可能化など、非常に重要なキャラクターの愛着度。
時間がかかるが、ひたすらプレイで上げるしかない。レアアイテムで愛着度を上げられるなど、モダナイズと同時にテコ入れされてもいい部分だったと感じるゲームの進め方によっては、エンディングにまったく知らない隠しキャラクターの名前が出てきてしまい、堂々とネタバレを食らう。だ、誰…?
(筆者も食らいましたが、先行テストで事前に知っていたという経緯で回避しました)チャレンジモードのクリア報酬ギアが偏りすぎており、バリエーションに欠ける。新しく追加されたギアを使ってもらいたいのは分かるけど、いろいろな種類から選ぶ楽しさも序盤から感じさせてほしい。
現在、なんとかローズを開放し、チャレンジのプラチナまでを制覇して、残りのワールドツアーを進めているところですが、未だに★1すら見ていないギアがありますラウンド開始前などに挟まるワイプの文字が潰れて読めないものも。
ゲームプレイに直接かかわるものではないですが、本作は2025年発売のゲームです初期キャラ2人は少ない。4人までのマルチプレイに対応してるんだから、せめて最初から4人いていいのでは
(友人2人を招いてプレイしたのですが、先に何人か開放しておいてよかったと心から思いました)「シンプルかつ頼れるプロキャディ」といったキャラクター性の、男性キャディがいないのはやっぱり悲しい。
3人のうち2人が執事属性でかぶっており、イケメン執事かイケオジ執事という…。残る1人は少年。そうじゃねぇだろ!
などなど…。最後は単なる愚痴になってしまいましたが、長時間プレイしてみると気づくバグや不具合、ストレス要素というのも多々あります。プレイヤー側から「デバックをやったのか」「開発はゴルフをやったことがあるのか」と言われても、仕方がない内容のものも多くあります。
先のテストでは「開発版です」と前置きされていたため、当時は開発チームへのフィードバックに留めた例(グリーン上のキャラクターの動きなど)もいくつかありますが、上記の要素をテスト時に確認できていれば、先の2記事にもしっかりと書いていました(編集部注:本作に関して一切広告等の金銭の授受はありません)。
くわえて、Steam版固有の要望になるかと思いますが、マルチディスプレイ環境下での使用モニターを選択する設定がない点は明確に不満です。ゲームを起動する際にどのモニターで起動するかが安定せず、サブディスプレイで起動するパターンがあります。ウィンドウ表示にして移動させて再びフルウィンドウに……と、めちゃくちゃ面倒なのです。

また、機器側のシステムでアプリケーションの切り替えや終了が簡単にできるコンシューマー機と異なり、システム設定の欄にアクセスしないとゲームを終了できないのも面倒です。Steamのランチャー画面に切り替えてゲームを終了するか、ホーム画面→システム設定にアクセスして終了するか、タスクマネージャーから終了させる必要があります。ホーム画面から終了させてくれてもよくない……?

さんざん文句を垂れてしまいましたが、最後に、少なくとも筆者の環境では、ストレスを感じる節はありつつも、“意外と普通に”楽しく遊べているということもお伝えしたいです。個人の好みにかかわらず改善すべきポイントは多くありますが、良い点も多くあります。
基礎がダメダメで遊ぶこともできないゲームではないので、しっかりと問題点を改善すれば、多くの人が楽しめる良いゲームとなるポテンシャルはあると信じています。問題点以外はしっかりと『みんなのGOLF』ですから、これらが改善されれば楽しい『みんなのGOLF』になるはずです。だからこそ、しっかりとアップデートで挽回してほしい。「してほしい」ではなく、「してください」ですね。
ラウンドスタートはナイスショットとは言えませんでしたが、『みんなのGOLF』の最新作として、すべての『みんGOL』ファーが気持ちよくナイスショットができるようになるための、ナイスリカバリーを重ねてほしい。筆者の願いはそれだけです。