中国で話題を集めた美少女RTS『雪松』βテストをプレイ。ロシアのロックバンド「KINO」から楽曲使用許諾を受けた骨太SFミリタリー

旧ソ連の空気感が漂う新作RTS『雪松』がβテストを実施していたので参加してみました。

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中国で話題を集めた美少女RTS『雪松』βテストをプレイ。ロシアのロックバンド「KINO」から楽曲使用許諾を受けた骨太SFミリタリー
中国で話題を集めた美少女RTS『雪松』βテストをプレイ。ロシアのロックバンド「KINO」から楽曲使用許諾を受けた骨太SFミリタリー 全 23 枚 拡大写真

中国では9月30日~10月10日にかけて、Narodaが開発を行う新作スマートフォンゲーム『雪松』のβテストが実施されていました。

旧ソビエト連邦の社会主義的な空気を滲ませた世界観と、獣耳を持った人ならざる美少女キャラクターの組み合わせが織りなすアンバランスな異質さが、中国国内のゲーマーたちからも注目を集めています。今回はそんな『雪松』のβテストにめでたく当選したので、早速ゲームをプレイしてみました。

なお、『雪松』はロシアの伝説的ロックバンド・KINOの楽曲「Gruppa krovi」をテーマソングとして採用したこともbilibiliで話題となりました。ゲームの楽曲採用についてはbilibili、TapTapで公開中のコンセプトPVの最後にメッセージが記載されています。

メッセージによれば、Naroda側がKINOのボーカルである故・ヴィクトル・ツォイ氏のご子息、アレクサンダー・ツォイ氏と交渉し、無償提供に至ったとのことです。これは筆者の推察ですが、このゲームの世界観を表現する上で、どうしても欠かすことができない楽曲だったのでしょう。ちなみに楽曲は作中でも視聴することができました。

訳:制作チームとツォイ氏の家族との仲介および連絡を手助けしてくださったSerekbole Jalilei氏に感謝します。 また、Alexander Molchanov Tsoi氏の無償の許可に感謝します。多くの中国の方々が彼の父親を知っていると聞き、彼はとても喜んでいました

◆旧ソ連をモチーフとする骨太なSFミリタリー

『雪松』の舞台は、人類が資源を求めて宇宙開拓の末に辿り着いた惑星です。

この惑星には獣耳を持ち「EGO」と呼ばれる特殊な力を操る先住民たちが暮らしていましたが、地球からやってきた開拓者との交流によって彼らの惑星は急速な発展と成長を遂げるようになります。

しかしそんな中で開拓先である惑星の政治的な主導権を握ろうと、地球の2大勢力「連盟」と「協約」は激しい宇宙開発競争を展開していきました。

勢力間の競争はやがて先住民たちの住まう惑星にまで波及していきましたが、連盟側は経済的・政治的な疲弊が重なり瓦解してしまいます。

一方の協約側も競争相手となっていた連盟の崩壊によって実質的な機能不全に陥り、軍事同盟としては今や形骸化しつつある状況です。

2大勢力の疲弊によって結果的に地球から資源の補給が絶たれてしまった惑星では、同盟による統治・管理の体制も維持できない状態にありました。治安はことさらに悪化して内戦まで勃発。人類にとって第2の故郷となり得た希望の惑星は、混沌の星と化してしまいした。

そうした中で崩壊後の連盟に所属していた元兵士の主人公は、かつて連盟が進めていたEGOの研究成果を回収するため、惑星に派遣されてきました。信頼できる獣耳を持った部下たちと共に、連盟再建の鍵を握る戦いへと臨んでいくのです...。

本作最大の特徴は、作中で収録されている全ボイスがロシア語である点でしょう。この手の美少女ゲームにしては、日本人声優&中国人声優を起用しないこだわりようです。

また、脚本や兵器考証など作中の節々でミリタリー作家による監修も行われていとのこと。旧ソ連をモチーフとした時代背景、その思想をゲームの世界観に反映させることで、骨太なミリタリー作品として開発を進めていることが分かります。

そんな『雪松』ですが、実際のゲーム中では3頭身の可愛いデフォルメキャラクターを中心に会話パートが進行していきます。冒頭では主人公たちが不時着したポッドから惑星に降り立ったものの、現地の野盗に襲われてしまい、応戦する場面から物語が幕を開けていきます。

別の場所では本来定刻通りに合流予定だった主人公のかつての部下たちの姿が。あたり一面に雪原が広がる厳しい自然の中で、主人公たちは無事に部下たちと合流できるのでしょうか......?

◆リアルタイムに複数のユニットを采配する小難しさが心地よい

気になるバトルシステムですが、ミリタリー作品にぴったりなRTSジャンルとなっています。ステージでの時間は刻一刻とリアルタイムに進行していくため、自軍ユニットへの指示ミスは許されません

複数体のまとまりで接近する敵ユニットに対し、適切に自軍ユニットの陣形を取り決めて素早く迎撃する。あるいは、掩体で防衛線を築いている敵ユニットを挟撃して攻め落とすなど、一定の工夫を凝らさなければゲーム序盤のステージから苦戦を強いられました。

幾ら優秀なユニットでも真正面から数で勝る敵の小隊と撃ち合えば、たちまち倒されてしまいます。こうした戦闘のバランス感が続いていくため、所有するユニットの武器種から編成を組み替えて攻略に挑むことが一層大切です。

シミュレーションRPGであれば、ある程度キャラクター育成を行うことで、コンテンツ難易度に求められるプレイヤースキル(戦略性)をカバーすることが可能です。しかし、本作では“キャラクターレベルの育成上限=プレイヤーレベル”の仕組みを採用することから、育成における救済措置が機能しづらいように感じています

クリアできるまでリトライを重ねて、自分なりの最適解を見つける。体感としては『ドールズフロントライン』や『アークナイツ』のように、ミッドコア層のプレイヤーたちから支持されるタイプのゲーム性ではないかと思います

本作は複数体のユニットをリアルタイムに行動させるゲーム性ですが、流石にユニット一人ひとりを個別に指示出ししていくというのは、正直難度の高い遊び方です。

ゲーム内ではこれを補うように、ユニットごとの強力なスキルと装甲車のような兵器ユニット、部隊メンバー全員への共通指示、マップ上の設備といった要素が備わっています。これらを活用することにより、本来細部までオペレーションしなければならない戦局でも直感的に打破することが可能となるのです。

特にユニットのスキルは強力ながら全体的に回転率が高めに設定されている印象です。プレイヤーが積極に使用しすることで、有利な状況を作り出しやすい想定なのかもしれません。

基本的なチュートリアルを終えてゲームプレイの感覚が掴めてくると、忙しいリアルタイム采配の中に楽しさが見出せてきます。

装甲車を使って部隊メンバーの半数を別ルートから送り込んだり、四方八方から押し寄せる敵に対処するため、消耗した仲間と後続の仲間を入れ替えるローテーション戦法で前線を維持したり。マップは決して広いわけではありませんが、遊び手側の創意工夫が活きる地形にデザインされており、同じステージでもプレイヤーごとに多彩な解法が生まれる横幅を感じさせます

今回のβテストでプレイした範囲では、強力なユニットを所有しているからといって、それが攻略の難易度に大きく左右するタイプのゲーム性ではないと感じました。高めの難易度設定は開発チームによって意図されたものであり、プレイヤーの挑戦意欲を掻き立てるためのバランスだそうです

RTSは決して大衆ウケの良いジャンルだとは思いませんが、そこに硬派なミリタリー要素とリプレイ性の高いチャンレンジングなゲームバランスを融合させることで、ニッチな層をピンポイントに射止めるゲームに仕上がっていると感じます。

ストレスフリーでいて、カジュアルが志向され続けている昨今のスマートフォンゲームの中に、『雪松』のようにマニアックなゲームがあっても良いと筆者は思います。


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《そりす》

ライター そりす

東京都福生市生まれのゲームライター。そしてお酒と革靴が好物でソロキャンプが趣味のミニマリスト気質おじさん。サ終ゲームのヒロインをAIで復活させてニヤニヤしたり、国語辞典を持ち歩いて山中フラフラしたりしています。ULキャンプに傾倒しているためSNSは大体キャンプの話題が多め。

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