※この記事は『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』の登場キャラクターについて語るため、一部ゲーム本編についてのネタバレを含みます。

2025年9月30日にいよいよ発売された、『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』。1997年にプレイステーションで発売されてから様々なハードに移植されてきた本作が、今回は28年越しのリメイクとして登場しました。
『タクティクスオウガ』のシステムに『ファイナルファンタジー』シリーズのジョブチェンジが組み合わさったシステムで、非常に秀逸なゲーム性です。また、社会派で濃厚なストーリーで、歴史をなぞっていく展開も高い評価を得ています。
本作は、キャラクターの命名や設定に彼らの運命や役割が緻密に込められていることが、元設定系ライターとして非常に魅力を感じます。
それではメインキャラクターの設定について掘り下げ、その魅力を紹介していきたいと思います。
◆ラムザ・ベオルブ(Ramza Beoulve)
プレイヤーの分身であり、本編の主人公でもあるラムザ。名門貴族のベオルブ家の末弟ですが、妾腹の子として産まれたためか優秀な兄にコンプレックスを感じているというキャラクターです。そのせいか、親友のディリータや妹のアルマをとても大切にしています。


名前はアラビア語の「ramz」ではないかと推測します。「記号」「印」「符号」という意味を持つ男性名です。「喜び」や「幸福」なども意味するようです。
苗字のベオルブは、恐らく「ベオウルフ」「ベーオウルフ」が由来ではないかと思われます。古英語でベオがミツバチ、ウルフがオオカミを意味しており「ミツバチにとってのオオカミ」という意味になります。これは熊を表すケニングで、熊がミツバチの巣を襲う習性からこう表現されるそうです。

序盤の彼は色々な意味で甘い性格で、敵からも罵られる始末でしたが、公式設定では獅子戦争を終結させた影の立役者として描かれています。
◆ディリータ・ハイラル(Delita Heiral)
妹と共にベオルブ家に引き取られた、ラムザの親友です。とある悲しい事件がきっかけで、2人は袂を分かちます。本作においてもう1人の主人公として、戦争終結の立役者として成長していきます。


名前はラテン語の「delicia」に由来していると想像します。「喜び」や「楽しみ」を意味する言葉で、ラムザと同じような意味合いを持っているところがもう1人の主人公らしい、うまい演出だなと思います。
苗字のハイラルは、某大陸を思い出す人も少なくないと思いますが、語源は曖昧です。インド起源の名前「Hiral」が近いかもしれません。「明るい」「光沢のある」というような意味の言葉で、平民から英雄となった彼にふさわしい意味かもしれません。
また、誕生日は太陽暦に換算すると11月25日の射手座。高い理想を目指し向上心を持つ星のもとに産まれています。直感力があり完璧主義、鋭い洞察力を持つ反面、感情的で本心を明かさない性質で、衝動的・短気・無責任という短所も併せ持ちます。坂本龍馬と同じ誕生日というのが面白いところです。

公式設定では獅子戦争を終結させた英雄として描かれています。親友から愛まで利用する立ち振舞いは賛否があるかもしれませんが、一部の業界ではご褒美になる可能性があります。
◆アグリアス・オークス(Agrias Oaks)
みんなだいすきアグリアスです。早いタイミングで合流して最初から命中率100%の範囲攻撃を扱えるため、スタメンでずっと使っていた人も多いはず。王女オヴェリアを守ることを使命と考えており、その行動理念は全て「殿下のため」という一途な人物です。

アグリアスという名前は、ミイロタテハ属の蝶の学名がそのままAgriasです。とはいえ人名ではないため、Agriusの方がイメージに近いかもしれません。古代ギリシャ語で「野生」「獰猛」「野蛮」という意味を持ちます。これだけ聞くと恐ろしい人物像が浮かびますが、ギリシア神話にはアグリオスという名前の人物が複数存在しており、そちらからの引用と考えた方が自然かもしれません。戦闘で活躍するために産まれてきたようなキャラクターです。
苗字のオークスは、古英語で「樫の木」に由来します。樫の木のそばや森に住む人を表し、その丈夫さから耐久・不屈の象徴でもあります。
誕生日は太陽暦で6月22日の蟹座と双子座のカスプ。星座の境目に生まれ、両方の長所と短所を併せ持つという運命です。頼りになる性格である反面、王女のこととなると冷静さを欠く危うい人物像が浮かび上がります。

そんな一途な彼女なので、ラムザの旅路を最後まで、前線を支えてくれました。
……オルランドゥが加入するまでは。
◆アルガス・サダルファス(Argath Thadalfus)

なにかとやんちゃなアルガス君です。没落した貴族の出自で再興を目的としているのですが、その反動か、なにかと問題発言が多いです。平民を家畜だとのたまわり、「家畜に神はいないッ!!」という暴言はもはや、一周回って名言だなと思います。

そんな彼の名前ですがアルガス(Argath)というのはあまりメジャーではなく、恐らくギリシア神話に登場する百の目を持つ巨人アルゴス(Argus)が由来なのかもしれません。用心深く、監視の行き届いた人物を指す比喩でもありますが……あれ? アルガス君にそんなところありましたっけ?
苗字のサダルファスもまたメジャーではないらしく、「FFTの登場キャラクターの名前です」とAIに言われてしまう始末。名前の語源を調べていて、いままで一番手強い相手でした。

そんな彼の誕生日は8月29日、乙女座。長所に発想力がある・創造性がある・成功するなどの良い点も多数あるのですが、それらすべてをぶち壊すのが『短所:思いやりに欠ける・孤立している』です。アルガスくん、本当にね、そういうところだよ。
◆オヴェリア・アトカーシャ(Ovelia Atkascha)
先代国王の養女として迎え入れられたのですが、その直後に男子が誕生したため微妙な立ち位置にいるのが、オヴェリアです。本編のメインテーマでもある獅子戦争を勃発させるために利用された人物でもあります。

修道院で長く生活したせいもあるのか、温厚で穏やかな性格です。籠の鳥属性が大好きな私のツボをピンポイントで貫いてきますね。

そんな彼女は修道院でラムザの妹・アルマと親しかったこともあり、草笛の鳴らし方を教えてもらっていたのですが、アルマが教えた草笛は元々ラムザが教えたもの。ラムザが彼女に鳴らし方を教えて2人で鳴らす……というシーンに感動して、全私が泣いてしまいました。

オヴェリアという名前は、ギリシャ語で『助け』『利益』『恩恵』などを意味する名前だと考えられています。また、『オリーブの木』を意味する言葉に由来するという説も。オリーブの木は『安らぎ』『平和』の象徴と考えられているため、そのあたりもキャラクターの造形に反映されているのかもしれません。
また、アトカーシャという苗字は調べても出てきませんでした。サンスクリット語で五大(地、水、火、風、虚空)を表す「アーカーシャ」という言葉がありますが、あまり関係はなさそうです。
誕生日は5月12日の牡牛座。長所は魅力的・規律正しい・人の能力を伸ばす、といいことづくめ。しかし短所は「風変わり・非協力的・神経過敏」という、ちょっと関わりにくい人だなという感じがします。
まあ最終的に、ナイフであの人をぶっ刺しますしね……。
◆総括
本作のキャラクターは設定が詳細なだけでなく、その名前や生年月日といった基本情報1つ1つが、彼らのたどる運命や、背負うべき「業」を緻密に示唆していることに驚かされます。
「喜び」を意味する名前を持ちながら袂を分かつラムザとディリータ。平和の象徴である「オリーブの木」に由来する名前を持つオヴェリアが、戦争の火種となる皮肉。そして、その業を忠実に体現するアルガスの存在。
これらの設定の深さが、28年経った今もなお、私たちがこの物語から離れられない理由でしょう。
「今さら疑うものか!私はおまえを信じる!」という名台詞とともに、リメイクされたイヴァリースを旅できる『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』。この機会に、ぜひ改めて彼らの運命を追体験してみてください。
『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』は、ニンテンドースイッチ/ニンテンドースイッチ2/PS5/PS4/XBOX SERIES X/S /STEAMにて発売中です。
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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)




