■値上げという異例の事態

PS5が時代の逆風を受けたのは、供給不足だけではありません。PSシリーズはこれまで、一定期間後にモデルチェンジを行い、当初よりも低価格な新バージョンを展開することで普及を後押ししました。
そうした戦略がPS5でも行われるだろうと期待していた人も多かったことでしょう。しかしPS5は、コストダウンによる値下げどころか、定期的に値上げをする事態となりました。
例えば、ディスクドライブ版は最初期54,978円でしたが、ここから60,478円、66,980円、79,980円と段階的に価格が上がっていきます(いずれも税込価格)。最初期と比べると、現時点では約25,000円もの値上がりとなりました。
ゲーム史を紐解くと、ゲーム機の価格はほぼ変わらずに横ばいか、モデルチェンジや廉価版の登場で手が出しやすくなるのが一般的です。そのため、PS5がここまで値上げしたのは文字通り異例の事態と言えるほどです。
このPS5の値上げにも、世界的な情勢が大きく影響しています。急速に進んだ円安や物価高騰による製造コストの急増など、当初の予想を超える事態が重くのしかかったため、値上げに踏み切らざるを得ませんでした。
■6桁の大台に突入したPS5 Pro
PS5の値上げは、上位機種となるPS5 Proの価格にも影響しました。PS5 ProはPS5よりも性能が良いため、価格が上回るのも当然の話ですが、それを踏まえた上でも119,980円(税込)という価格は衝撃的でした。
ゲーム機の価格は、時代の流れに合わせて右肩上がりになっています。任天堂であっても、スイッチ2は国内専用版でも49,980円(税込)と、歴代の価格帯を大きく超える展開を行いました。高性能を目指したPS5 Proの価格も、その性能を踏まえれば納得の範囲ではあります。
しかし、こうした理解とは別に、ゲーム機が約12万円という状況には驚きが隠せません。一般層ではなく一部のゲーマー層を狙った高性能機とはいえ、家庭用ゲーム機の標準的な範疇を大きく超えています。もう少し足せば、ゲーミングPCにも手が届くほどの価格帯です。
■逆風に抗ったPS5、待望の値下げも発表
オンライン縛りとも言える予約に抽選販売、コロナ禍の影響で伸び悩む生産台数、円安と物価高による異例の値上げ、その流れを受けたPS5 Proの価格など、時代の逆風に晒されたPS5。この5年間は、翻弄され続けた歩みでもありました。
しかし、そうした苦難に屈すことはなく、今現在もPS5は活躍を続けています。複数の事情により普及への足かせを受けながらも、2025年9月30日時点における世界累計販売台数は8,400万台を超えており、逆風を跳ねのける結果を叩き出しました。
また、国内専用モデルの「PS5 デジタル・エディション 日本語専用」が本日(2025年11月12日)発表されましたが、その価格はなんと55,000円(税込)。現在販売中のデジタル・エディション(72,980円)と比べると、約18,000円もの価格差です。しかも、別売りのドライブ(11,980円 税込)の装着が可能なので、実質的な値下げと言ってもいいでしょう。
逆境を乗り越えつつあるPS5は、ここからさらなる飛躍を見せるのかもしれません。6年目に突入したPS5の動向から、今後も目が離せません。



