『テイルズ オブ』シリーズは、1作目の『テイルズ オブ ファンタジア』が1995年に発売されて以来、実に30年もの歴史を積み重ねてきました。
その歩みのちょうど折り返し、2011年9月に登場した『テイルズ オブ エクシリア』が2025年10月30日にリマスターされ、『テイルズ オブ エクシリア リマスター(以下、エクシリアR)』として復活。当時PlayStation 3で展開した作品が、ニンテンドースイッチ/PS5/Xbox Series X|S/Steamと現行機で遊べるようになりました。
PS3時代の作品が、リマスターでどのようなプレイ感を現代にもたらすのか。また、オリジナル版からどのような変化と進化を迎えたのか。実体験を通して綴るプレイレポートをお届けします。
■“快適なプレイ”への手厚いサポートが充実

『エクシリアR』はリマスター作品なので、物語やゲームシステムの根幹などはオリジナル版から直接的に引き継がれました。グラフィックも、映えるように見やすくシャープになっていますが、鮮やかさの向上程度に留まっています。
最先端のアニメ調なゲームと比べると、描き込みや繊細さでは及ばず、ビジュアルの総合力としてやや物足りなさを感じる点は否めません。しかし、これは現在のゲームの水準と比べた場合の話で、作品単体としては十分成り立つレベルなのも事実です。
むしろ『エクシリアR』がリマスター化で受けた恩恵は、見た目よりもプレイ体験の方に大きく影響しています。進行面だけを見ても、メインストーリーの目的地がアイコンで誘導されるようになり、移動のストレスを軽減するダッシュモードも実装など、遊びやすさの改善が図られています。

さらに、敵とのエンカウントもON/OFFの切り替えができるため、「フィールドの探索に集中したい」「今はストーリーに集中したい」という時に、不要な戦闘を避けることもできます。ただしイベントバトルは発生するので、適度なタイミングでエンカウントをONにしてレベル上げを行いましょう。
ちなみに、レベル上げの最中に負けてしまい、ゲームオーバーになったとしても、「リトライ」を選択すればそのまま再戦できます。オートセーブも備わっているので、そこまで戻ってのやり直しも可能ですし、サブメニューが開ける場合はいつでもクイックセーブができるため、保険としてのセーブも容易です。

イベントの自動スキップも設定できるほか、ボタン長押しによるスキップ機能も搭載。また街中での会話は、頭上のアイコンで既に会話済みかどうかが分かるし、会話中のキャンセルも可能と至れり尽くせりです。
探索を含めた移動全般からテキスト回りまで、オリジナル版にあった機能だけでなく、より利便性を高めたリマスター。快適なプレイに繋がる改善が数多く施されており、プレイ中に幾度もその効果を強く実感しました。
しかし、ダッシュモードの追加で移動速度が大きく向上した結果、キャラクターの動きが早回しのような状態になるのは、やや残念なところです。とはいえ、移動速度の遅さはストレスに直結しやすいため、速度向上の恩恵を考えれば、キャラモーションも愛嬌の範囲と言えます。
■「グレードショップ」初期開放がもたらすプレイ感の変化

ゲームシステムの改善や機能の追加などが、『エクシリアR』のプレイ感に大きな変化を与えました。中でも特に影響を及ぼしているのが、「グレードショップ」の初期開放です。
グレードショップを簡単に説明すると、本編をクリアした後の周回プレイにおいて、より有利な条件で再スタートができるという仕組みです。アイテムの引き継ぎや獲得経験値の増加などを設定でき、いわゆる“強くてニューゲーム”を楽しめるシステムと言えます。
従来はクリア後の解放となるグレードショップですが、『エクシリアR』では初回プレイの開始前にボーナスを獲得できるのです。オリジナル版のクリア経験者もいるであろうリマスターだからこその施策と思えば、なんら不思議ではありません。もちろん、初プレイのユーザーもグレードショップを利用できます。

初プレイ時にグレードショップで獲得できる効果は、経験値やガルド(作中における通貨)、素材などの増加にはじまり、アイテムドロップ率やクリティカル率の向上、アイテムの販売価格が50%OFFになる、術や技の消費ポイント減少など、内容は多岐にわたります。
経験値の獲得は最大5倍まで伸ばせるため、これを利用すると単純に考えてレベルアップ速度が5倍になります。また、お金やアイテムも稼ぎやすくなり、購入費用も割安なので、金策にかかる時間も短縮。戦闘面で有利になる項目も多く、戦いやすさは段違いです。

特に強力なのが、「ダメージ2倍」の適用です。敵・味方ともに与えるダメージが2倍になるため、戦闘にかかる時間も大幅に短くなります。敵から受けるダメージも増えるものの、“やられる前にやれ”のスタンスで挑めば結果的に被弾も抑えられます。
こうした項目を全て適用して戦うと、1戦闘あたりの時間は概ね一桁台の秒数で終了。言葉を選ばずに伝えるなら「ヌルい」と表現してもいいほどで、文字通り“秒殺”と言えるほど。
また、経験値やガルドの増加のおかげでリターンも多く、レベルアップや装備購入の速度も加速します。

ゲームプレイ自体は、「敵と戦う」→「レベルアップする」→「装備を新しくする」→「より強い敵と戦えるようになる」と一般的なRPGと変わりませんが、労力は少なく得られる成果は大きいため、サイクル自体が非常に早く、目まぐるしいほどです。もちろん、早くレベルアップするのは嬉しいことなので、いい意味で刺激的と言えます。
グレードショップを活用すると、従来のゲームデザインや戦闘バランスが楽しめない、と考える人もいるでしょう。その場合は、グレードショップを利用せずに始めれば問題ありません。

また、項目の多くはプレイ中にON/OFFが可能なので、「レベルアップしたい時だけ経験値を増やそう」「道中は楽に勝ちたいけど、ボスは本来の手ごわさで戦いたい」という希望にも柔軟に対応できます。ただし、OFFに切り替えできない項目も一部あるので、その点はご注意ください。
■プレイヤーごとに好みの手応えで遊べる、今の時代に相応しい『エクシリアR』
快適に遊ぶ機能の数々と、バトルの楽しさを柔軟に変化できるシステムにより、『エクシリアR』のプレイ感はオリジナル版から大きく変化しました。全般的な機能の追加は利便性を上げるものなので、プレイに悪影響を及ぼすものではありません。
グレードショップの効果は人によって“やり過ぎ”と感じるかもしれませんが、プレイヤー側で細かく調整できるため、自分好みの設定を見つければ問題よりも恩恵の方が大きいシステムです。
多くの『テイルズ オブ』シリーズのバトルは、X軸とY軸による2Dアクションから進化・発展しており、操作系統がやや特殊です。また、技や術のショートカット切り替えや、パーティメンバーの編成入れ替えなど、できることが多い分だけ操作も増えて、一般的なアクションバトルと比べて煩雑な印象も受けます。

そのため操作に手間取ることも考えられますし、筆者もシステムを十全に使いこなすのに一苦労しました。この上、バトルが手ごわかったら窮地に追い込まれたことでしょう。その不慣れな期間を、グレードショップの底上げがうまくカバーしてくれたように思います。
また、いくらグレードショップで戦いが有利になったといっても、ボス戦はそれなりに手応えがあり、ボタンを押しているだけで勝てるほど安易ではありません。グレードショップで楽にこそなるものの、しっかりと“ゲームとして楽しい範囲”に収まっている印象でした。

本作はやはり“リマスター”であるため、グラフィックに少し物足りなさを感じたり、一部サブイベントが単なるおつかいになってしまったり、惜しい点があるのも事実です。
しかし、快適なプレイを支える足回りが整っており、バトルの調整も任意で可能と、現代の環境にいるプレイヤーも視野に入れた調整の数々は、良質な施策に他なりません。
当時多くのプレイヤーを魅了した物語の魅力は変わらずに、その体験を底上げしてくれるリマスターと化した『エクシリアR』。タイパ重視の令和時代にも沿いつつ、オリジナル版に近いプレイも選択可能な、誰もが楽しめる幅広いゲーム体験を提供する作品でした。

『テイルズ オブ エクシリア リマスター』は、PS5/Xbox Series X|S/ニンテンドースイッチ/Steamにて発売中です。
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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)




