
2025年12月4日に発売された『オクトパストラベラー0』を、3週間前に『オクトラ』シリーズに触れたばかりの初心者視点から、PC版を30時間ほどプレイした感想をお届けいたします。
※記事の制作にあたり、スクウェア・エニックスよりSteam版キーの提供を受けています。
初代『オクトパストラベラー』は2018年7月にリリースされました。8人の主人公それぞれが織り成す「群像劇」、メリハリのある戦闘の「ブレイクシステム」、そして「HD-2D」によるグラフィックが特徴の作品です。
2020年10月には初代『オクトラ』の数年前を舞台にしたスマートフォン版『OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者』がリリースされ、その物語をコンソール向けに再構築したのが本作です。開発スタジオは過去作を手掛けたアクワイアではなく、『大陸の覇者』を開発しているドキドキグルーヴワークスが担当しています。
筆者は元々『オクトラ』シリーズは未プレイでした。先月スイッチ2版の『オクトラ0』体験版をプレイしたところ、古き良きJRPG体験に魅了され購入を決意。『オクトラ0』と初代『オクトラ』が同じ舞台であることは体験版プレイ後に知ったので、ちょうどGame Pass版の『オクトラ』と『オクトラ2』が12月1日まで配信されていたので全力でプレイしました。
このときは『オクトラ0』の記事が書けるとは思っていなかったため、純粋に一人のゲーマーとして楽しみつつ、両作の隠しボスを倒すところまでやり込みタイトル画面に王冠がつきました。
8人の群像劇から無口な主人公への没入スタイルへ
『オクトラ0』の大きな特徴は、過去作で採用されていた8人の群像劇から、一人の無口な主人公と総勢30人以上の仲間キャラたちと悪役が織りなす一本道王道RPGへと変貌した点です。

主人公が暮らす町“ウィッシュベール”が「富」「権力」「名声」に取り憑かれた悪役3人によって焼き払われ、家族や住人たちも惨殺され散り散りになります。そこから幼馴染のスティアと共にウィッシュベールの復興と、ヴィラン3人への復讐が本作のストーリーの始まりとなります。

これまでは8人それぞれの物語を描き、ときには明るく、時にはダークなストーリーを描いていましたが、今作では欲望に飲み込まれた悪役達が中心となって繰り広げられるストーリーは、さらにダークなテイストとなり、人間の罪深さがどこまでも心を抉ってきます。
『オクトラ0』はクリアまでに80時間程度という大ボリュームです。筆者は記事執筆時点では最初の3章と続く新たな章をクリアした時点で止まっており、まだ折り返し地点に差し掛かったかなという程度です。この先はさらにダークな展開が広がっていくのだろうという不穏さしか残っていません。
復興パートは超重要!再建させてより快適なゲームプレイが楽しめるぞ!
ここまでダークな話が続くと食傷気味になりそうですが、そこで息抜きになるのがウィッシュベール復興パートです。散り散りになった元住民たちを探して町を復興します。生き残った人々もそれぞれが苦しい思いを抱えていて、こちらもダークな展開が続きますが、町の復興に尽くすという明るい希望も見えているのでちょうどいい塩梅となっています。
復興パートはストーリーだけでなく、ゲームシステムにも大きな影響を与えます。町の復興は『オクトラ』シリーズ初の試みの“タウンビルド”として実装されました。
最初は小さな小屋しか建てられませんが、町を復興していくとタウンレベルが上昇し、商店や訓練所、博物館や魔物闘技場など、設置可能な施設が増加します。また、元住民NPC以外に新たな住民として誘えるNPCがたくさんいます。味方キャラも町に配置できます。
各NPCにはアイテムや素材集め、訓練所の経験値上昇といったバフ要素もあります。町を発展させるほど自分自身のゲームプレイにもメリットが生まれるので、さらにタウンレベルを上げようというモチベーションに繋がります。

ちなみに、タウンビルドでは建物を好きに配置できますが、町でのムービーシーンにそのまま反映されるので、この手のビルド系にセンスがない筆者による壊滅的なデザインの町がたびたび映り込んでしまい、今後は少し勉強しようと思いました……(笑)
8人パーティーによる戦闘が楽しすぎる!
『オクトラ0』の目玉要素は、従来の戦闘システムを継承しつつ、戦闘に参加できる人数を4人から8人に倍増させた点です。

『オクトラ』の戦闘は敵に「シールド」と「弱点」が設定されています。弱点を攻撃してシールドを破壊すると「ブレイク」が発生し大ダメージに繋がります。ブレイク中は敵の行動を封じられるため、敵の強力な攻撃をキャンセルして一斉攻撃のチャンスです。
プレイヤーは毎ターン補充されるBPを消費して、強化された攻撃や、攻撃回数を増やす「ブースト」ができます。サポート役がブーストで攻撃回数を増やし、DPS役がブーストした強力な攻撃を叩き込むのが定番の戦い方です。過去作ではブレイク直後のラッシュでBPが空になり、数ターン我慢の時間がありましたが、今作は8人もいるのでラッシュ後のガス欠がありません。
戦闘には前衛4人、後衛4人が参加します。前衛4人をコマンド操作して戦い、後衛4名は毎ターンHPとSPが回復し、敵からの攻撃が届かないので安心して回復できます。前衛と後衛はボタン1つでターン消費なしで入れ替えられます。敵との相性や前衛のHPが不安なら後衛とバトンタッチしたり、シールド削り役を前衛に、DPS役を後衛に配置するなど、これまでのシリーズ以上に戦略的な立ち回りが可能となりました。
敵の強さは序盤のボスが8人あわせてシールドがちょっと増えた程度にしか変わっていないのに、こちらはこれまでより2倍の手数による数の暴力ができるようになりました。これがもう楽しくて楽しくて戦闘がやめられません。

この楽しい戦闘を彩ってくれるのが素晴らしいBGMの数々です。特に通常バトル曲の「バトル0」は盛り上がります。ブレイクしてこれからラッシュするぞというタイミングで疾走感溢れるパートがかかると、毎回テンションが上がります!これが実に気持ちいい! サントラ配信はいつですか?????
ジョブシステム変更でビルドの自由度がアップ
『オクトラ』シリーズの大きな特徴の「ジョブ」制度にも変更が加えられました。これまでは8人それぞれに「ベースジョブ」と「バトルジョブ」の2つを組み合わせてビルドを構築していました。
本作ではバトルジョブは廃止され一本に絞られました。主人公のみジョブを自由に替えられますが、その他のキャラは全員ジョブが固定です。そのかわりに全てのアビリティを習得したあとは、JPを消費してアビリティを“極意化”することで、他キャラクターもそのアビリティを装備できるようになりました。

そのため、過去作よりも自由なビルドを組めるようになっています。 つけられるアビリティの数には上限があるので、悩みどころも増えてビルドの試行錯誤が楽しいです。各キャラクターは、それぞれ極意化できるアビリティと、そのキャラ固有の極意化できないアビリティがあり、キャラごとに特徴が異なるので、みんなそれぞれに持ち味があります。

筆者お気に入りのアビリティを紹介!
筆者は、主人公が商人のときに使える“神秘の矢”と“幸運の矢”を量産して8人中3人に付けていますが、これらはSP回復とJP稼ぎを両立する強力なアビリティです。

神秘の矢は敵全員を弓矢で攻撃し、与えた合計ダメージの2%分を前衛全員のSPが回復するというもの。これにより、前衛がSPを気にすることなくアビリティを連発できます。強力な武器を手に入れたあとは、単体に攻撃しても十分な量を回復できるようになります。
幸運の矢は単体に大ダメージを与えるアビリティです。追加効果で与えたダメージに応じてJPが貰えるというものです。本作は極意化したいアビリティが数多くあり、JPはいくらあっても足りません。そこで、幸運の矢を複数人で撃つことでJP取得量を劇的に増やせます。ダメージも大きいのでブレイク時にうってつけ! まさに神アビリティ!

各キャラには均等にJPが割り振られます。途中加入したキャラのレベルはパーティと同じに合わせてくれますが、加入時のJPはほぼ最低限の量しか所有していません。そのため、主人公と他の弓キャラにはひたすらに幸運の矢を撃たせています。戦闘に参加していないキャラは、拠点の訓練所に配置すると戦闘経験値とJPが共有されるので育成も簡単です。
UI/UXの進化が快適すぎる
『オクトラ0』の隠れた目玉要素がUI/UXの進化です。

これまでの『オクトラ』はキャラ間の装備を付け替える際、まずは元のキャラの装備を外す必要がありました。小さなことですが、パーティやジョブ切り替えによる装備変更が多いゲームなので積もると大きくなる小さな手間でした。ところが本作では装備したままのアイテムも移し替えられるので、この一手間が減ることは快適さに大きく貢献しています。
ミニマップも全体表示ができるようになりましたし、近くの宝箱が表示されるので見やすいです。タウンレベルを上げて特定の条件を満たすと、ミニマップに強敵(シンボルエンカウント制)がどこにいるかも表示されるようになるので便利です。この敵を倒すことで施設をアップグレードできる素材がドロップします。

さらに、特定の条件を満たすとダンジョンにもファストトラベルできるようなります。これまでは町にしかファストトラベルできなかったので大きな進化です。まさに令和ゲーらしい仕様といえます。
序盤のパーティ入れ替えは旧来と同じ酒場経由ですが、ウィッシュベールが復興するとメニューから直接入れ替えられるのも嬉しい点。装備も変えられます。訓練所では、パーティを入れ替えて補欠入りしたキャラを訓練させるには、直接訓練所に戻って設定しなくてはいけません。正直メニューから直接操作したいと思っていましたが、訓練所をアップグレードするとできるようになりました。
ゲームをプレイしていくうちに不満を募らせ、町を復興させることでその不満を解消して達成感を味わわせてくれる絶妙なゲームデザインには脱帽です!制作陣の掌で転がされました。
ちょっと気になった点
本作をプレイしていて大きな不満点はありませんが、少し気になったのが画質です。 HD-2Dによる美麗なグラフィックが売りですが、ベースになったアセットが初代『オクトラ』にあわせたからか、ドットの粗さが気になりました。

特に、『オクトラ2』をプレイし終えた直後に『オクトラ0』を始めたのでグラフィックの差を顕著に感じました。 筆者は主に27インチのモニターで1440pでプレイしていますが、75インチの4Kテレビで表示したときは、やはり粗さが気になってしまいました。 ただ、一度慣れてしまえば忘れてしまうのも事実なので、これだけで評価が下がることはありません。
シリーズ未経験者でも楽しめる完成度のJRPG!
筆者はシリーズ初心者ですが、『オクトラ0』はHD-2Dで描かれるダークで熱い復讐劇と、物語の清涼剤となる奥深いタウンビルド要素で、プレイのモチベーションを途切れさせません。進化した8人戦闘システムと、かゆいところに手が届くUI/UX改善は、過去作のファンも大満足できるポイントだと思います。80時間という大ボリュームで遊び尽くせるJRPGとしておすすめします!


