
2026年4月23日にコロプラからスイッチでリリースされる『KAZUMA KANEKO'S ツクヨミ』。コンセプトプランナーの金子一馬氏と開発ディレクターの田岡次郎氏に、作品の魅力から金子氏独自の創作論まで、幅広くお話をうかがいました。ぜひ先行プレイレポート記事とあわせてご覧ください。

金子一馬【かねこ・かずま】かつてアトラスで人気RPG『真・女神転生』シリーズや『ペルソナ』シリーズなどの企画・開発・キャラクターデザイン等を手がけたクリエイター。『KAZUMA KANEKO'S ツクヨミ』ではコンセプトプランナーとして原案・世界観設定・キャラクターデザインを担当した

田岡次郎【たおか・じろう】コロプラ所属のリードクリエイター。コロプラへの入社前は、カプコンで数々のハイエンドゲームの開発に携わった経歴から、コロプラ初のコンソールゲームとなる『KAZUMA KANEKO'S ツクヨミ』では開発ディレクターを務めた
◆物語により没入するためのバランス調整とデジタルノベル
――本作の制作が始まった時期を教えてください。
田岡次郎氏(以下、田岡):スマホゲーム『神魔狩りのツクヨミ(以下『神ツク』)』がまだ開発中だった2025年1月頃に「金子のファンが多いコンソールでもリリースしたいよね」という話が持ち上がったのがきっかけでした。その後、『神ツク』のサービスが始まると、ユーザーのみなさんからも「コンソールでも遊びたい」というお声を多くいただき、後押しになりました。
――『神ツク』サービス開始より早く動き始めていたのですね。タイトルは『シドマイヤーズ シヴィライゼーション』シリーズなど、一部の海外タイトルのようにクリエイターの名前を打ち出したものになっていますが、どのような経緯でこうなったのでしょうか。
田岡:本作は、キャラクターや物語のプロット、ジャンルなど『神ツク』と一部共通する部分もありますが、僕たちは『神ツク』のコンソール版ではなく完全新規タイトルという意気込みで制作しています。タイトルが異なるのは、そうした思いの表れだと思っていただけますと。
金子一馬氏(以下、金子):あとは、僕らの上役が「(こういうタイトルにした方が)かっこいいから」と、鶴のひと声をくれたのもあります(笑)。
――制作時の苦労はどのようなものがありましたか?
田岡:本作はコロプラ初のコンソールゲームですので、コンソールゲームの制作経験を持つ僕からチームのスタッフたちへコンソールゲームの基本的なセオリーを伝えることも多くありました。お互いに、(制作面における)コンソールゲームとスマホゲームの差に関する理解を深められたかなと思います。

――『KAZUMA KANEKO'S ツクヨミ』は新規タイトルという意気込みで制作に臨んだというお話ですが、『神ツク』プレイヤーにも伝わりやすいよう、強化・変更などされたところを教えてください。
田岡:『神ツク』は4人のツクヨミによる4本のストーリーラインがありましたが、本作は1本の長編群像劇として構成し直しています。
金子:「THE HASHIRA(ザ・ハシラ)」と呼ばれるタワーマンションで事件が起きて、ツクヨミと呼ばれるエージェントたちが派遣されてきて……というプロットこそ同じですが、タワマンの中で繰り広げられるドラマやお話の着地点は『神ツク』とは大きく異なるものに変わっています。

金子:僕がコロプラに所属してまず企画を練り始めたのは、それこそコンソールゲームのような1本の長編ストーリーだったんです。その後、『神ツク』として企画を練り込んでいくにあたり、キャラクターを4分割して4本のストーリーを持つゲームへと変わっていきました。
ですので、本作は僕が元々構想していた長編がそのままブラッシュアップされて形になっていると言えます。1本のストーリーになったことで、4人のツクヨミの行動がどのように絡み合ってくるのかが『神ツク』より分かりやすくなっているのではないかと思います。
田岡:本作はこうして練り上げた金子の世界観、ストーリーをより多くのみなさんに堪能していただくため、メインストーリーは『神ツク』よりも遊びやすくなっています。デッキ構築型カードゲームを遊ぶのが初めての方もスッと没入していただけると思います。難度を低くしすぎても楽しさが損なわれますので、匙加減には気を使いました。
――本作はメインストーリーのデジタルノベルが収録されるとのことですが、これも「1人でも多くのプレイヤーに物語を楽しんでもらうため」という意図によるものですか?
田岡:そうですね。『神ツク』では「金子さんの世界観やお話を楽しみたくてプレイを始めたけど、なかなか進めない」というお声もいただいていましたので、そういう思いで買ってくださるみなさんのために、お話をしっかり読んで楽しんでもらえるものを用意しました。
金子:メインストーリーはプレイのテンポを重視してサラッと済ませているところも、デジタルノベルでは「実は誰それがこういうことをしていました」と事細かに書かれています。どちらかだけでなく、両方楽しんでいただけたら嬉しいです。

――ノベルの執筆はシナリオライターの方が担当されているのでしょうか?
田岡:はい。もちろん、細かく金子が監修していますけどね。
金子:キャラのセリフの言い回しや細かい設定の確認のやり取りなどは『神ツク』でやっていたのでスムーズに行えましたが、デジタルノベルはボリュームがあるので結構苦労してしまいました。
田岡:最初は(メインストーリーの)会話シーンのログを見返せるようにしてはという案もありましたが、シナリオライターと話し合ったうえで「1本の小説として読めるものを仕上げてほしい」とお願いしました。
――気が早いかもしれませんが、書籍化も検討してもらえたらうれしいです!
◆『神ツク』の青龍はある意味で“トラップ”だった
――先ほども話題に挙がりましたが、『神ツク』からのバランス調整について教えてください。先行プレイで遊ばせていただいた感じでは、強化すると『神ツク』より強くなる神魔札が多いのかなと。
田岡:僕は『神ツク』の制作にまったく関わっていませんのであくまで1ユーザーとしての感想ですが、『神ツク』を遊んでいて「青龍」の神魔札は「ちょっと“トラップ”になってしまっているな」と感じたんです。『神ツク』の青龍をどう感じましたか?
――プレイ開始当初は気になりませんでしたが、手札が増えてくると追加効果のない単体攻撃なのにコスト(消費オド)が2であるところが「ちょっと重いな」と感じるようになりました。
田岡:そうなんです。そこに気が付いてくださるならよいのですが、デッキ構築型カードゲームに慣れておられない方がずっと手元に置いているかもということを考えると、強化後はもっと強みがあってもいいよね、と。
――本作では強化すると「この攻撃で敵を倒すとHP+30」という効果が追加されますね。十六夜月のツクヨミはHP回復手段が多くはないので、ボスまでの道中での消耗を抑えるために最低1枚は持っておきたい札になりました。

田岡:「ツクヨミたちの特性に合わせて、すべての札を価値あるものにしよう」というコンセプトで効果や数値を見直しています。
金子:僕のファンでいてくださる人はRPGが好きな人が多いと思いますが、RPGはついついリソースをためてしまいがちですよね。MPを極力温存しようとしたり……。
――入手手段が限られた強力な回復アイテムは、苦戦するボス戦でも使わずにためこんでしまったりしますね。
金子:実は、僕もRPGを遊ぶときは同じようなスタイルです(笑)。しかし、『KAZUMA KANEKO'S ツクヨミ』では、不要な札は積極的に処分した方が楽になりやすいです。
田岡:そこに気が付くとデッキ構成がすごく楽しくなるのがこのジャンルです。
――デッキを有用な少数のカードだけで構成すればその分山札がリセットされるタイミングが早まり、有用なカードを使える機会が増えるというわけですね。

◆デザインに関するひらめきは“宇宙から受信”する!?
――かつては悪魔絵師と呼ばれ、今は神魔画家である金子氏に、デザイナーとしてのお話をうかがわせてください。キャラクターなどをデザインされる際に欠かさないようにしていること、気を付けていることはありますか?
金子:(デザインを)言葉で言いやすいことと、それでいて線はなるべく少なくすること、そのうえで、デザインに込めた要素が見た人にきちんと伝わるようにすること……ですね。
例えば本作のツクヨミたちが戦う際にかぶるマスクのデザインは、神社の鳥居の要素が取り入れられています。それを軸に、服装にも着物のような作りを入れている部分もあります。「特徴がわかりやすいこと」「言語化しやすいこと」は常に気を付けています。

――一般論として、デザイン論では足し算(要素を足していく)や引き算(要素を選別し、本当に必要なものだけ残す)という概念が語られますが、金子氏はデザインをどのように行われますか?
金子:最終的には引き算をするのが大切ですが、同じくらいに大切だと考えているのが「モチーフとなるものをデザインにどう取り入れればよいかを見つけること」です。本作で言えば、日本神話や神道をモチーフにすると決めてから延々と考え続け、ある日突然「それなら顔(ツクヨミのマスク)に鳥居を付けちゃえ」とひらめきました。
――ひらめきを得るためにしているルーティンワークなどはありますか?
金子:その時々でまちまちですね。ずっと考え続けてパッとひらめくことがあれば、偶然早起きした日にした散歩がきっかけになることもあります。人の脳はただの受信機で、各人が宇宙からひらめきのようなものを受信している……というような考え方があるそうですが、僕個人は割とその考えに肯定的です。
編注:20世紀の発明家二コラ・テスラは「My brain is only a receiver, in the Universe there is a core from which we obtain knowledge, strength and inspiration. I have not penetrated into the secrets of this core, but I know that it exists.(私の脳は受信機に過ぎず、宇宙には知識、力、インスピレーションを得る源となる“核”が存在する。私はその核の秘密を解き明かしてはいないが、存在することは知っている)」という言葉を残している
――金子氏がデザインするキャラは、男性・女性を問わずシュッとしたスマートなシルエットをしているのも特徴のひとつであるように思えます。こうしたタッチになった理由や経緯のようなものはあるのでしょうか。
金子:登場人物が多い場合は、大柄なキャラ、筋肉質なキャラ、太っているキャラなども用意して差別化しますが、差別化するほどの人数が必要ない作品では、スマートなスタイルが好みです。ハイブランドのモデルを務められそうな感じがかっこいいと思っていますので。
――主人公側でなく敵側のキャラですが、登美のりこはスタイルがよく、立ち方もモデルのようですね。

金子:登美のりこは、(モデル級のスマートなスタイルを好む)僕の嗜好がよく出ていますね。ちなみに彼女がはいているパンプスは、クリスチャン ルブタンというブランドをヒントにしています。ヒールの内側が鮮やかな赤色をしていて、とても目を引くんですよ。あくまでモチーフにしただけですので、クリスチャン ルブタンが実際に白いパンプスを出しているのかまでは把握していませんが……。
――デザインとは異なる話になりますが、キャラクターの名前はどのように考えられるのでしょうか?
金子:僕が大好きな作品のひとつに『魔界都市〈新宿〉(小説家・菊地秀行氏のデビュー作。1988年にはアニメ化もされた)』があるのですが、主人公が十六夜京也という名前なんです。十六夜月のツクヨミという名前はそれにちなんでいます。
――お好きな作品などから、ご自身が生み出すキャラの名前に使いたい“ネタ”をストックされているんですね。
金子:そうですね。ふとしたときに「あんな作品が好きだったなあ」と思いを馳せて、そこからキャラの名前を思いつくこともあります。ちなみに、登美のりこの名前はのりピーから取りました(笑)。
――まさかの(笑)。『KAZUMA KANEKO'S ツクヨミ』で、デザインが特に気に入っているキャラを他に挙げるなら誰になりますか?
金子:マスクのデザインが気に入っているツクヨミのほか、神魔はみんな愛着があります。僕はかわいいのが好きなので、メジェドや張子犬もお気に入りですね。


――時間が迫ってきましたので、あと少しだけ気になることをおうかがいさせてください。本作はカプコンの『デビル メイ クライ 5』とコラボレーションしていますが、この作品をコラボ先に選んだ決め手などは。
田岡:悪魔と人間が対立する構図や、ソロモン72柱(ソロモン王が封印した72体の悪魔)が登場することなどに親和性を感じ、ご相談しました。金子が『デビル メイ クライ 3』でダンテとバージルの魔人のデザインをしたご縁もあり、カプコンさんにはご快諾いただけて感謝しています。ダンテ、バージル、ネロをお借りするにあたっては、彼らのスタイリッシュさや爽快感を『KAZUMA KANEKO'S ツクヨミ』でどのように再現するかには気を使いました。

――有料DLC「画家Kの神筆:真実の顕現セット ~壱~」についても教えてください。公式放送「カズマのゆるチュ~ブ」で金子氏が創成札の中から1枚を選び、リファインされたイラストをあらためてゲーム内に実装するイベント「盈月奉納ノ儀(えいげつほうのうのぎ)」のイラストがセットになっているものですよね?
金子:はい。公式放送はユーザーのみなさんと語り合うことができて、とてもいい経験になりました。AIカネコ(コロプラ入社後の金子氏のイラストのみを学習させた『神ツク』独自のイラスト生成AI)で創成札を作ることもみなさんのゲーム体験のうちだと考えて、当初はイラストをブラッシュアップする程度にとどめていました。しかし、僕がしっかり手を加えた方が喜んでくださる方が多いようで、後半は選んだイラストを完全に描き直ししていましたね。
田岡:「真実の顕現セット」をご購入いただくとイラストだけではなく創成札そのものを入手できますので、ストーリーモードが少し楽になるかもしれません。カード自体はDLCなしで入手できるものですので、あくまで時短になるというだけですが。

――セットに「壱」と名前が付いているということは、今後「弐」も出てくれそうですね。最後に、読者へメッセージをお願いします。
金子:『神ツク』の時から要望をいただいていたコンソールゲームをついに形にできました。ぜひ遊んでいただけると嬉しいです。
田岡:コロプラ初のコンソールゲームとして、満足していただける仕上がりにできたと思います。デッキ構築型カードゲームは“時間泥棒”なので、時間が経つのを忘れて楽しんでいただけたらありがたいです!
◆おまけ:「カズマのゆるチュ~ブ」プチ出張版!
――公式放送で盈月奉納ノ儀を見ていてうらやましくなったので、今日は自分が『神ツク』で作ったお気に入りの札をプリントしてきました。よかったら、ひと言いただけますと!

金子・田岡:おぉ~。
金子:このネフティスは、ポージングがすごくいいですね。ネフティスは盈月奉納ノ儀で僕がリファインした神魔のひとつですが、こちらのデザインもすばらしいと思います。
田岡:AIカネコは動物を描くのが苦手で、馬がヤバいことになるケースが多かったのですが……このエポナは馬をしっかり描けていてよいですね!
金子:緑の意匠は、エポナが馬だけでなく豊穣の神でもある設定を反映しているのかな? うまく絡めてあって、こちらもよい創生成札だと思います。
田岡:『神ツク』のゲーム内で「お手持ちの創生神魔成札が『KAZUMA KANEKO'S ツクヨミ』に採用されました」というようなご連絡お知らせは来ましたか?
――残念ながら、来ませんでした!
田岡:なるほど……。どちらも採用されていてもおかしくない絵だと思いますので、タイミングの問題だったかもしれません。『神ツク』ユーザーの方には、イラストの引継ぎ機能を用意していますので、ぜひ『KAZUMA KANEKO'S ツクヨミ』に引き継ぎをして楽しんでいただけますと。
――この2枚を見て「生成AIもやるなぁ」と思っていたのですが、お二方にも同様の感想をいただけて謎の“してやったり”感に包まれました! ありがとうございました。
©COLOPL, Inc.
©CAPCOM
※記事で使用している画面写真は、すべて開発中のものとなります。




