
2026年5月17日に千葉・幕張メッセイベントホールで、『学園アイドルマスター』(以下、学マス)の大型ライブイベント「学園アイドルマスター The 2nd Period H.I.F選抜試験(セレクション)」の2日目公演が開催されました。
初星学園の頂点とされる一番星(プリマステラ)の栄冠をめざし、初星学園の生徒たちが競い合うH.I.F(初星アイドルフェスティバル)へ進むための選抜試験──アイドル科に所属する雛鳥たちの激戦が、16日に始まりました。
今回の公演は、『学マス』にとって初となる3DCGキャラクターによるリアルライブという点で注目を集め、初日公演の圧倒的な演出・完成度はSNSで話題を呼び、2日目公演にはより大きな期待が寄せられていました。
そんな2日目のステージに立ったのは、十王星南、雨夜燕、葛城リーリヤ、紫雲清夏、月村手毬、秦谷美鈴、藤田ことねの7人。初日の公演を踏まえ、だれが選抜試験を抜けるのか。インサイドでは少し違った角度から、この2日目公演を掘り下げていきたいと思います。

初日公演のレポートに多くのことを書かせてもらいましたが、このレポートでも今回の公演の特殊性について先に触れたいと思います。
「アイドルマスター」シリーズでは2024年3月から、3DCGを使った「xRライブ」が展開されています。声優がステージに立つ従来のスタイルとは異なり、キャラクター本人の姿や動きを忠実に再現でき、初音ミクを発端とするキャラクターライブの技術的進化の延長線上にあります。
これまで開催されてきた「アイドルマスター」のxRライブシリーズは、作品本編とは多少切り離されたエクストラ的な位置づけのライブが多かったですが、「学園アイドルマスター The 2nd Period H.I.F選抜試験」はそういったライブとは一線を画しています。
これまで同作品では、サービス当初に実装されたシナリオである定期公演「初」、次代を担うアイドルの頂点を決める「NEXT IDOL AUDITION」に出場・優勝を目指すシナリオ「N.I.A」があり、5月16日に公開された新シナリオ「H.I.F」が加わりました。
今回のライブは16日に公開された「H.I.F」に沿ったライブとなっており、ライブの始まりとともに司会役の姫崎莉波、倉本千奈、花海佑芽の3人が、決められた制限時間のなかでステージ上で出演アイドル自身の魅力を表現し、会場を熱狂させることが求められると説明しました。

そんな重要なライブにおいて、トップバッターとして登場したのは、なんと現在の一番星である十王星南。選抜試験という場、それでいて"現在のトップ"であるということを考えれば、彼女の登場はラストまで無いものかと筆者は思っていましたが、昨日のライブを司会として間近で見ていたからこそ、焚き付けられた気持ちがあったのでしょうか。
そんな彼女のライブは、まさに見る者を圧倒せんとするもの。高身長かつ金色のロングヘアー、マカロニ・ウエスタンのようなカウボーイハット、お腹周りを思いっきり露わにし、スパンコールでキラキラと光るフレアズボンにヒールブーツ。抜群のモデル体型に思わず観客の目を奪ってしまう、しかもよく見てみると、腹筋がシックスパックに割れているのが見えます。

そんな彼女が歌唱したのは「Choo Choo Choo」「Our Chant」の2曲で、彼女の強かさが攻撃的かつ荘厳なサウンドで表現され、そのなかで安定したダンスと歌を披露していきます。日食とともに赤く染まった空、朽ちた遺跡といったムービーが流れるなか、激しいダンスはおこなわず、ピンッと背筋が通った立ち姿を強調する振る舞いで、その姿は勇ましく映りました。

オーディション系番組で実力者が早々に現れて高次元のパフォーマンスを見せたことで、比較対象として取り上げられ、その後の試験を受ける者たちを苦しめるという展開がたまに見られます。この日彼女がトップバッターとして登場したのも、「選抜試験へ進むなら、まずわたしを超えなさい」という無言の圧・メッセージにほかならず、その意味を十二分に見せつけるだけのパフォーマンスだったといえるでしょう。

選抜試験がスタートして突然現れた高い壁。2番手に現れてライブをするには誰だって嫌なはず。そんななか、高い壁に対して抗うようにパフォーマンスをみせたのが月村手毬でした。
歌唱した楽曲は「アイヴイ」「Luna say maybe」の2曲。『学マス』楽曲の中でも屈指の人気曲ということで、会場の声援はかなり大きいものでした。

そんな月村ですが、途中で息が続かず息切れしたり、声の大きさがグッと小さくなったりするなど、すこしだけ不安定な歌唱を見せました。歌い終えると「ハァ…ハァ…」と苦しそうな声がマイクに入り、観客の耳にもしっかり伝わるほど。ですが、サビや楽曲ラストでは持ち前のロングトーンをバッチリ決め、なにより懸命に歌を響かせていこうとする姿には、心揺さぶられてしまいます。
初日公演のレポートでも書かせてもらいましたが、本ライブがゲーム内のストーリーに合わせて開催されていることを踏まえれば、単に良い歌・良いダンスを披露するのではなく、「選抜試験に向けた最終局面。緊張する気持ちもありながら、以前よりも明らかに上手になった歌とダンス、なによりその子らしさ溢れるパフォーマンスを披露する」という部分に、テーマが置かれていたと考えられます。

月村の場合、ゲーム内では「フルパワーで歌うがあまり、スタミナが無くなってしまう」ことが弱点としてあげられており、この日のライブではそれがかなり改善していることがうかがい知れる格好となっています。
2番手に出演して"一番星"十王へ食らいつこうという負けん気だけでなく、パフォーマンスの安定性には欠けるがフルパワーで歌えたときには多くの観客を震わせるソウルフルな歌声をもつシンガーとしての姿を、この日集まった観客はしっかりと胸に刻んだはずです。

前半部の十王と月村についてフォーカスして書きましたが、こういったストーリー性・繋がりをも読み解けそうだったのが、この2日目公演の面白さでした。このあとリーリヤ&清夏の幼なじみ2人ユニット・REVERSIが計3曲を歌いましたが、十王の威厳ある空気、対抗する月村という図とは違い、2人の関係性を色濃く感じさせるライブを見せてくれました。
お互いを見合い、背中を合わせながら歌う「ときめきエモーション」は、すれ違いを重ねながら互いに信じ続けてきた2人らしさを感じられました。
その直後に集まった4人。新衣装のお気に入りポイントを質問され、十王のMCに引っ張られて月村も同じポイントをこわばった声でMCをするなど、十王に対して強く意識しているのが感じられました。


後半には、秦谷美鈴、藤田ことね、雨夜燕と三者三様のパフォーマンスを見せます。
激しいEDM~ダブステップ系トラックのなかでダンスし、間(ま)を意のままに操って観客を魅了する秦谷に、自分自身のファンサと「かわいい!」の掛け声を交換するように掛け合い、後半につれて尻上がりにパッション一杯に弾けていった藤田、「あたしは尖ったアイドルだからな」と不遜に言い切り、その言葉通りソリッドなロックサウンドとともにハイトーン&パワフルなボーカルを響かせた雨夜、それぞれに観客を大いに盛り上げました。



この日のライブではボーカルはもちろんのこと、原曲やゲーム中に見せていたダンスとは多少異なっていたり、そして衣装もこれまで見せていない新衣装となっており、いかに特別なライブであるかが感じられます。現地会場との照明とムービー内で見られる照明もバッチリで、観客へ違和感を抱かせることなく、むしろ圧巻のライティングで見ている内にじっくりと彼女たちのパフォーマンスに惹き込まれてしまいます。
ライブ後半には「エキシビジョンライブ」として、この日出演した6人がコラボするステージがスタートします。
「古今東西ちょちょいのちょい」「ENDLESS DANCE」「仮装狂騒曲」「ナイワ」とギターが前面に出たロック曲4連打に、会場が驚きとともに大盛り上がりとなりました。


それぞれのメンバーの身長や体格もしっかりと表現されているので、並んでみると体格の違いは一目瞭然です。さらに、7人が集合してパフォーマンスしてみると、より違いが伝わります。身長が高い雨夜と十王の2人は「ナイワ」でデュエットを見せてくれましたが、十王が余裕ある動きをみせるなか、燕はキビキビとした動きで、好対照にうつりました。


また、バレリーナとしてかつて活動していたという紫雲のダンスは静動がハッキリとしたキレがあり、藤田は飛び上がり跳ねるように踊ってみせます。同じ曲、ダンスや振り付けでこうも違いがある……いや、違いを感じさせてくれるのかと、3DCGによるダンスの描画力・表現性には驚かされます。
1曲歌い終えても間髪入れず次の曲へと続くので、休む暇もないまま、本編ラストの「標」へ。そしてアンコールに新曲「ガラクタロード」を披露し、2日目公演は終幕しました。
初日と2日目のなかで感じた違いは、途中で挟まるMCでよりアニメらしく誇張が効いた会話となっていたことでしょう。ライブ序盤、オープニングムービーが流れ終えた後で登場した花海佑芽が、プロボクシングのリングアナウンサーよろしく「レイディーズ!アーンド!ジェントルメェーン!!」と高らかにコールすると、倉本がステージ横から慌てて走り寄り「リハーサルと全然違いますわ!?」と声をかけ、3年生の先輩である姫崎莉波が微笑みながらゆっくりと姿をあらわす。


こういった出だしでしたが、『学マス』らしさ全開のコミカルな掛け合いで「これは"学マス"のライブなんだ」と強く認識し、普段の声優さんが出演されるライブとすこし毛色が異なると感じた方もいたかもしれません。
今回のライブは、ゲーム内のストーリーラインを技術力・演技性を使って幕張メッセのライブ会場までつなげ表現するというチャレンジだったと筆者は感じており、みごとそのチャレンジに成功したと感じています。
ゲーム本編とは違ったスペシャル性・エクストラ感の強いライブが主だったなか、その日発表したばかりという状況を逆手に取って、新シナリオ「H.I.F」を現実のライブパフォーマンスを通して観客に楽しんでもらう。すこしありきたりな言い回しですが、ゲーム体験を音楽ライブへと拡大化・現実化したイベントだったのではないでしょうか。

セットリスト「学園アイドルマスター The 2nd Period H.I.F選抜試験(セレクション)」2日目公演
01 Choo Choo Choo
02 Our Chant
03 アイヴイ
04 Luna say maybe
05 白線
06 Tame-Lie-One-Step
07 ときめきエモーション
08 ヨルニテ
09 ツキノカメ
10 Yellow Big Bang!
11 世界一可愛い私
12 理論武装して
13 三分半の創世
14 古今東西ちょちょいのちょい
15 ENDLESS DANCE
16 仮装狂騒曲
17 ナイワ
18 標
19 ガラクタロード

