ゲーム音楽の著作権は、なぜ会社のもの?職務著作の仕組みと直面する問題をJASRAC理事と作曲家が徹底解説【CEDEC 2026】

ゲーム音楽の著作権買い取り問題を、職務著作・法人著作・印税の格差・JASRAC活用・海外還流の課題とともに解説。【CEDEC 2026】

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ゲーム音楽の著作権は、なぜ会社のもの?職務著作の仕組みと直面する問題をJASRAC理事と作曲家が徹底解説【CEDEC 2026】
ゲーム音楽の著作権は、なぜ会社のもの?職務著作の仕組みと直面する問題をJASRAC理事と作曲家が徹底解説【CEDEC 2026】 全 10 枚 拡大写真

2026年7月22日から24日にかけて、パシフィコ横浜 ノースにてゲーム技術者やコンピュータエンターテインメントのエンジニアらを対象とした、国内最大級のカンファレンス『CEDEC 2026』が開催されました。

23日には、『「ゲーム音楽の著作権買取」は何が問題なのか?~JASRAC理事と作曲家が正面から語る~』と題したレギュラーセッションが開催されました。

エンドウ氏(JASRAC理事/ミュージシャン・作詞作曲家)と、酒井省吾氏(作曲家)の二人によるパネルディスカッションとして開催され、「音楽業界における著作権の前提」と「ゲーム開発現場における契約・運用実務」について、現在の運用状況、そのリスク、そして改善について、二人が明るく語りました。

二人はまず今回のレギュラーセッションの内容について、

  1. そもそも著作権、著作物とは

  2. ゲームにおける著作権

  3. 著作権買い取りは問題なのか

  4. 現行制度下での選択肢と問題点

この4つの論点を話し、まとめていくとし、レギュラーセッションをスタートさせました。

まず最初の論点「そもそも著作権、著作物とは」について。JASRAC理事であるエンドウ氏は、著作権とは「著作物や著作者を保護するための権利」、著作物とは「思想または感情を創作的に表現したもの」とまとめ、文章、絵画、音楽、コンピューターのプログラム、ダンスの振り付けも著作物であり、「今こうして話しているスピーチも著作物になったりします」と指摘しました。そこに創作性や思想があれば著作権が発生します。人間の創作性や思想が反映されていること、そこに重きが置かれています。

ゲームでは職務著作として扱われ、創作した本人ではなく創作を指揮・監督した雇用主が著作権を持つと捉えられ、この場合はゲーム会社の法人が著作権者になることが多いといいます。

じつは酒井氏、ゲーム業界に携わり30年以上が経ち、約1年ほど前に二人で別のオンラインセミナーでご一緒したときに初めて職務著作・法人著作という概念を知ったといいます。

酒井氏「僕はずっとゲーム音楽の作曲として、会社のサラリーをいただきながらやってきたけれども、あれは僕の権利じゃないんだと初めてそこで認識しました

このように振り返る酒井氏。もしもこの記事を読んでいる読者の中に、「会社勤めとしてクリエイター職に従事している」方がいれば想像してみてください。数十年にわたって自分の手で作り上げてきたさまざまなクリエイションが、自分のものではなく所属する会社に著作権がある、そう知ったときの驚きを。

そういった驚きを経た酒井氏の口から、つぎは「ゲームにおける著作権」について話が進みました。酒井氏は、データイーストやHAL研究所などに勤めていましたが、HAL研究所時代の2000年前後に著作権について整備し、著作権が会社にあると契約書にサインしましたが、それが職務著作という言葉で法律に認められたものだと知ったのは、先ほど記したようにずいぶん最近になってからだといいます。

こういったパターンとは別に、個人のフリーランスが作曲したものは、個人のフリーランスが著作権を持っている状態になっています。教科書を出版するためにフリーのイラストレーターがイラストを描き、納品、発売されたあと、翌年改定で文字を修正してイラストを引き続き使うことになった場合、著作権はフリーのイラストレーター側にある、という形になっていると酒井氏は伝えます。いちど制作費をもらって描いているものの、著作権は出版社のものではないのです。

酒井氏は2023年にフリーランスの作曲家として独立し、著作権などについて勉強していた際、かならずといって「ゲーム音楽の買取問題」がトピックにあがるとし、いったい何が問題なのか?と、第2の論点「ゲームにおける著作権」についてエンドウ氏に問いました。

エンドウ氏は、音楽業界では作詞作曲者と印税という部分で著作権が大きく関わってくるため、業界内でかなり整備されており、そのなかで特殊な取り組みを行なっているため1つのケースとして「ゲーム業界における音楽の取り扱い」が話題になるといいます。

実際ゲーム業界では、ゲーム制作会社側が音楽の著作権を保持している状況が非常に多い業界だと、エンドウ氏はいいます。

そもそも職務著作になるには以下の要件があります。

  1. 法人側の発意であること

  2. 法人所属の従業員が作成したもの

  3. 職務上作成する成果物である

  4. 法人(ゲームメーカー)名義で発表されている

  5. 特約の取り決めがない

これらが職務著作の成立要件であり、著作権を法人(ゲームメーカー)が保持する形になります。この場合、もしも制作した楽曲に似た曲があって訴えられた場合、権利者は法人になるため、訴えは個人ではなく所属している法人に向けて行われることになります。

酒井氏はこの状況について、「フリーランスになってみて、不均衡があるなと思っています」と述べます。

著作権法における氏名表示権や同一性保持権について、「制作物を自分が作ったと言ってはいけない」といった条項が契約に盛り込まれることがゲーム業界では多くあるなかで、フリーランスからゲーム会社が権利を買い取るケースが見られ、しかも支払いは制作費周りのみで終わっているケースがあり、それは個人事業主の視点で見ると問題ではないかと、酒井氏は指摘します。

エンドウ氏は、音楽業界では制作者個人に印税が流れる一方、ゲーム業界に所属する音楽制作者にはゲームメーカーから印税が流れず給料分のみが支払われるという、他業界とのアンバランスさが問題と言われて久しいと言及します。

また、酒井氏が指摘した状況は、外部のフリーランス作曲家を職務著作のような状態にしたいがため、ゲームメーカーが制作されたゲーム音楽を買い取るというケースだといい、自社の社員でなければ職務著作は成立しないと指摘しました。「ゲーム音楽の買取問題」だと二人は共通して話題に上げました。

エンドウ氏は、立場によって良い悪いがあると話しつつ、著作権の中でも買い取れない権利として著作者人格権や同一性保持権があるといい、企業などに譲渡・相続などもできない権利だといいます。それに対し、企業側が契約書に「著作者人格不行使」という項目を入れ、サインをさせるなどの対応を採っているものの、フリーランス新法ではこれが権利を制限しているという向きがあり、効力があるかどうかはケースバイケースだといいます。

現行制度下においては、ゲーム会社が自社でコントロールしたいという側面がある一方、JASRACにお金を払いたくないという側面の2つがあると解説します。

つまりフリーランス作曲者がゲーム音楽を制作し自社で買い取らない場合、該当楽曲がJASRAC管理になってしまう場合があり、JASRACにお金を納めることにつながります。JASRACを通して個人クリエイターへとお金が渡りますが、ゲーム会社としては出ていくお金が増えるのでうまみがない、そのために権利を買い取るという流れになっています。

両者の思惑として、ゲーム会社は余計なお金を払いたくない、クリエイターは印税などがほしい、こういう図式によって問題が生まれているとハッキリと指摘しました。

この図式を回避する方法として、エンドウ氏はJASRACの取り扱いとして「ゲーム委嘱制度」を薦めます。

「ゲーム委嘱制度」とは、そのゲームに関係する利用に限り作家と合意した上で著作権使用料を免除することができるという制度です。この制度を使えば、近年多く開催されているゲーム音楽のコンサートで自身の楽曲が使用された場合、またはYouTubeなどでゲームのプレイ動画が公開された場合に、コンサート主催者やYouTube社がJASRACに使用料を支払った上で、クリエイターへと還元されるという流れになっているといいます。

ですが、この制度は広く浸透しているとはいえないとエンドウ氏はいいます。一本のゲームのなかで1曲だけを外部クリエイターに頼んだ場合、その外部クリエイターが制作した楽曲だけを登録すると、他の音楽を担当した社内スタッフや他部門のスタッフから不公平に見えてしまうため、企業としてなかなか踏み切りづらいのではないかと推察しました。

そんななかで、酒井氏がフリーランスになって気づいた点をもう一つ挙げます。「JASRACに登録しないと海外で使われた印税が日本に還元されない」というのです。

エンドウ氏は、海外でもJASRACのような音楽著作権管理団体が世界中に百何十とあり、各国にそれぞれあるなかで、海外の管理団体がJASRACの登録楽曲のなかに該当する曲がないと判断した場合、「登録されていないので送金しない」という流れがすでに世界の中でできている、といいます。

ゲームコンテンツが海外でも人気を博すことが多い中で、アメリカで再生数を多く稼いでもJASRACに登録していないことで、本来もらえるはずの使用料がもらえないのは非常にもったいないと酒井氏は残念がり、「いまや自動車に次ぐ規模の輸出産業なのだから、JASRACなどの登録も含めて、日本にしっかりと還流したほうが良い」と自身の考えを述べました。

エンドウ氏も、「海外でコンサートが開かれたり、サブスクリプションサービスでゲームミュージックが再生されても、音楽著作権でもいろんなところから収益が得られる。ゲーム音楽というコンテンツが独り歩きしていろんなところで使える。それを実現するためにはJASRACもしくはNextoneのどちらかでちゃんと管理したほうがいいのではないか」と私見を述べたところで、質疑応答へと話題は移行。レギュラーセッション『「ゲーム音楽の著作権買取」は何が問題なのか?~JASRAC理事と作曲家が正面から語る~』を終えました。

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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

《草野虹》

福島・いわき・ロック&インターネット育ち 草野虹

福島、いわき、ロックとインターネットの育ち。 RealSound、KAI-YOU.net、Rolling Stone Japan、TOKION、SPICE、indiegrabなどでライター/インタビュアーとして参加。 音楽・アニメ・VTuberやバーチャルタレントと様々なシーンを股に掛けて活動を続けている。 音楽プレイリストメディアPlutoではプレイリストセレクター(プレイリスト制作)・ポッドキャストの語り手として番組を担当している。

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