9月19日と20日の二日間、今年もポップカルチャーの祭典「京都国際マンガ・アニメフェア2026」が開催されました。
「京まふ」の愛称でも知られる本イベントは、京都市勧業館みやこめっせやロームシアター京都周辺を会場とした、西日本最大級のコンテンツ見本市。例年多くのマンガやアニメ作品が出展され、多くのファンで賑わいました。
そんな「京まふ」ですが、今年のSNS上、とりわけXのタイムラインを眺めていて際立って目立っていたのが、VTuberグループ「にじさんじ」にまつわる投稿の数々でした。とりわけ、竜胆尊さんや加賀美ハヤトさんといった人気ライバーたちが発信したポストには、瞬く間に膨大なリアクションが寄せられました。
タイムライン上には現地からのレポートや限定コラボグッズ、趣向を凝らしたステージイベントに歓喜するファンの熱烈な声が溢れ返り、今年は久々に「にじさんじ」界隈の熱気が京都の地で再び拡大している」と強く実感させられる光景が広がっていました。
この「京まふ」ではかつて、樋口楓さんや本間ひまわりさんが「おこしやす大使」に任命されていたり、コラボカフェの出展、ステージイベントの開催などでファンの話題を呼んだ実績があります。今年は、そんな様々な過去のコラボレーション企画が思い起こされ、感慨深さに浸ったファンも決して少なくないのではないでしょうか。
■加賀美インダストリアル×京都の伝統工芸

「京まふ2026」の会場内でもひときわ熱い視線を集めていたのが、伝統工芸体験ブース「箔彩機関」にて披露された、にじさんじ所属のVTuber・加賀美ハヤトさんと京都の伝統工芸職人たちによるコラボレーション展示です。加賀美さん自身が事前に自身の公式SNSで「弊社とのコラボ作品を展示して頂く事になりました」と代表取締役らしい言葉で発信したこともあり、会場には多くのファンが期待を胸に駆けつけました。
今回の展示で披露されたのは、有限会社箔沌房や田中金彩工芸をはじめとする京都の職人たちが手掛けた、確かな技術と情熱の結晶とも呼べる3つの特製作品です。
まず来場者の目を奪ったのは、加賀美インダストリアルの象徴である巨大ロボットをモチーフにした「ダイカガミを刻んだ木彫看板」です。熟練の木彫技術で立体的に彫り出されたダイカガミの姿に、漆と箔押しが巧みに施されており、まるで実在する一流企業の社屋に掲げられているかのような重厚な風格を放っていました。
続いて、加賀美さんへの贈り物として仕立てられた「加賀美ハヤト楽屋暖簾」は、衣桁に掛けられた優美な姿で展示されました。上部には会社ロゴが格式高い家紋のように配され、文字やロゴ部分で箔の色を使い分けたりと繊細な模様加工が施されており、光の加減で優雅に輝く職人技の極みが表現されていました。


そして3点目の「拭き漆金彩コースター」は、箔沌房と田中金彩工芸の技術が融合した逸品。木目を美しく引き立てる拭き漆の深い味わいに華やかな金彩の意匠が重なり、手のひらサイズの中に職人の細やかなこだわりが凝縮されていました。
単なるコラボグッズの枠を大きく超え、何百年と受け継がれてきた伝統技術と現代のVTuberカルチャーが見事に調和した今回の展示は、若い世代へ京都の職人技の魅力を伝える素晴らしい架け橋となっていました。コンテンツへの深い敬意と職人の魂が交差した空間は、多くの来場者の心に強く刻まれる展示となりました。
■鬼の女王×京都・日本酒文化トークステージ

今年から新設されたクリエイティブステージでは、「VTuberにじさんじの竜胆尊と巡る!京都の日本酒文化トークショー」が開催。大のお酒好きである竜胆尊さんが日本酒の奥深い魅力を語りました。
ステージでは客席との乾杯を皮切りに、日本酒の良さについて「米の旨味を感じられ、何より飯に合う点」と熱弁し、料理と合わせることで口いっぱいに広がる旨味の魅力を力説しました。普段よく嗜む種類にはフルーティーな香りが特徴の「吟醸酒」を挙げ、白ワインのようにチーズなどと合わせる探求の楽しさについても紹介しました。
「京都の人に聞いた 日本酒に合うおつまみランキング TOP10」の予想企画では、竜胆さんが3位に「イカの塩辛」、2位に「おでん」、1位に「刺身」を選んだものの、実際の順位は1位が「しめ鯖」、2位が「焼き鳥」、3位が「おでん」となり、予想した刺身は4位、塩辛は5位という結果に。魚料理やおでんといった上位候補を的確に見極めて会場を沸かせました。

質問コーナー「教えて!京都大好き 竜胆さん!」では、京都の文化や街への愛着が語られました。千年以上続く街並みの中で「五重塔や寺社仏閣など、大切に残されてきた建物全般に感銘を受ける」と述べ、住むなら落ち着いてお酒を楽しめる「伏見」や「御所周辺」が良いと明かしました。また、お酒が進む景色として新緑の美しい瑠璃光院を挙げた一方、実は暑さが一番苦手という意外な一面も見せました。
さらに、もし京都を治める鬼の女王になったら「文化を守る手入れのために観光地が休める日を作る法律を制定したい」と語り、1日限定のお店を出すなら甘味処や料理屋、酒場を融合した3階建ての「美味しい屋さん」を開きたいと話しました。
最後のコーナーでは「もし観光大使としてのキャッチコピーを考えるなら?」との質問に、「時を魅せる街 京都」という案を発表。時代の流れを見て感じて楽しめるという意味を込めたクールなキャッチコピーに会場からは大きな拍手が巻き起こりました。
■Vtuberはポップカルチャーの定番に
こうしたVTuberたちの熱狂的な盛り上がりを目の当たりにしたとき、私たちはふと、ある重要な変化に思い至ります。それは、2012年の第1回開催から数えて記念すべき15周年の節目を迎えた「京まふ」というイベントそのものの大きな進化です。
思い返せば、発足当初の京まふは、その名が示す通り「マンガ」と「アニメ」の振興や関西圏における情報発信を主軸に置いた見本市としてスタートしました。出版社やアニメ制作会社がブースを連ね、紙のコミック原画の展示やテレビアニメの最新情報発表、声優陣によるトークステージなどがイベントの華々しい主役を務めていたのです。
ところが、この15年間でポップカルチャーを取り巻く環境は激変しました。スマートフォンの普及に伴いソーシャルゲームが一大勢力となり、近年ではインディーゲームの存在感も急速に高まっています。そして何より、2次元と3次元の境界を軽やかに飛び越えるVTuberをはじめとするバーチャルタレントや配信カルチャーが、若年層を中心に爆発的な支持を集めるようになりました。
そうした時代の波を柔軟に受け止め、京まふは自らの枠組みを鮮やかに拡張し続けてきました。15周年を迎えた2026年の会場を見渡せば、伝統的なマンガやアニメ作品と並び、最先端のゲームタイトルやVTuberの巨大ブースが当たり前のように肩を並べ、互いのファンを惹きつけ合っています。かつて「マンガ・アニメのイベント」として始まった場所は、今やデジタルとアナログ、二次元と三次元が交差する総合エンターテインメントの交差点へと変貌を遂げていたのです。


