「Wiiのある新しい生活」・・・岩田聡講演から見たWii
Wii発表のまとめを書こうとしていたら、Wiiの設計思想、みたいな文章になってしまいました。以下は私が社長講演を見たり聞いたりしながら、まとめたものなので、本当に任天堂の言わんとしていることとは違うかもしれません。許してください。
任天堂
Wii
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ちょうど3年前の東京ゲームショウで行われた岩田聡社長の基調講演「ファミコンから20年: ゲーム産業の今とこれから」にて任天堂は「ゲーム離れ」への強い危機感を示しました。そこから3年、ゲーム人口拡大への最初の一手であるニンテンドーDSは爆発的なブームを巻き起こし、今までゲームをしてこなかったユーザーを多く引き入れ、ゲーム市場は久しぶりに明るい話題に沸いています。今回の岩田氏の講演は、世帯当たりのユーザー層がDSでは3に達し、据え置き型のこれまでの平均である2.2〜2.8や、これまでの携帯機の平均2を大きく引き離すというデータなどを引用し、一定の成果を挙げていることをまず強調しました。
しかし、と岩田氏は言います。ニンテンドーDSは確かに爆発しました。電車内でDSをプレイする人の姿も珍しくありません。いつでもどこでもちょっとした時間で遊べる携帯機の魅力です。しかしWiiはテレビの前で遊ぶ事を強いられる据え置き型ゲーム機です。ニンテンドーDSでゲーム人口の拡大に成功したからといって、Wiiで同じ事ができるという保証にはなりません。では、任天堂はいかにしてWiiでも、家庭内や友人内の非ゲーマーを巻き込んでいくのか、その1つの答えが今回の講演のテーマです。
1世帯当たりのユーザー数を増やしていくためには
岩田氏はWiiは「1世帯あたりのユーザー数をいかに増やしていくか」を考え抜いて開発したハードと説明しました。その基本コンセプトは、家族の誰にも敵視されない、年齢・性別・ゲーム経験の有無を問わない、家族全員にとって自分に関係のある存在になる、毎日電源を入れてもらう、ということです。
まずDSのようにゲームの定義を引き続き拡大していくことが必要です。Wiiでも「Touch!Generations」を展開し、更に幅広い意味での実用性を持ったインタラクティブエンターテインメントを展開していくと岩田氏は述べました。
しかしゲーム機という存在は、ゲームをしない人にとっては全く関係ない、という存在です。家族の中を見渡しても、ゲームをしない人は当然コントローラーを握ることもないわけで、そういう人への入り口は非常に限られています。遊んでいる姿を見て興味を持つ可能性は当然ありますが、それでは不十分であったというのが改めてゲーム人口増加を目指さなくてはならない現状を生み出していると言えます。任天堂は、そういう人たちには周辺から段階的にWiiを触っていって貰う戦略を立てています。
テレビにチャンネルを増やすマシン
その戦略の中心となるのが今回新たに発表された「Wii Channel」というコンセプトです。「毎日新しい」「リモコン」「誰もが触れる」「常に電源」Wiiのキーワードを拾っていくと、非常にテレビを意識していることが分かりますが、「Wii Channel」は正にテレビです。そして入り口を増やすというのは「いつもNHKニュースしかチェックしないお父さんもたまにはフジのドラマを見ることがあるかもしれない」簡単に言ってしまえばこういう考え方です。
具体的に「Wii Channel」とは、512MBの内臓Flashメモリに記録されたソフトの事です。例えばDSには『ピクトチャット』という内臓ソフトがありましたが、複数の内臓ソフトの1つ1つを「チャンネル」と呼びます。
「チャンネル」には初期段階でゲームを起動する「ディスクドライブチャンネル」、ゲームで使用する似顔絵(Miiと呼ばれる)を作成できる「似顔絵チャンネル」、SDカードに保存した写真を閲覧できる「写真チャンネル」、バーチャルコンソールの購入に使う「Wiiショッピングチャンネル」、天気予報を確認できる「お天気チャンネル」、ニュースを確認できる「ニュースチャンネル」が存在します。Wiiの本体を起動すると、チャンネルの一覧画面が開きます。
写真ではテレビの大画面で皆で写真を閲覧できます。ニュースや天気は「WiiConnect24」によって電源をつけると常に最新の情報が確認できます。非常に早いスピードで起動するハードですから、ふと気になった時にさっと確認できて便利です。もちろん操作はWiiリモコンの直感的な操作です。
家庭内の非ゲームユーザーがいきなりマリオやゼルダを遊び始めるにはハードルが高すぎます。しかし、Wiiでニュースや天気を見る程度なら可能でしょう。テレビのザッピングと同じで「Wii Channel」には、色々見ていたら様々なチャンネルがあります。普段はWiiでは天気予報で洗濯をどうしようかと考えるくらいだったお母さんも、時にはバーチャルコンソールで過去のシンプルかつ良質のゲームに\"なんとなく\"触れてみたいと思う機会があることでしょう。ニュースや天気予報をWiiで見る人がいくら増えたとしてもゲーム人口を拡大したことにはなりませんが、非ゲームユーザーへの入り口にはなります。そこからステップアップしていって、いつかはマリオやゼルダに触れて欲しいというのが任天堂の願いです。
Wiiのある新しい生活
講演の最後で岩田氏は「Wiiのある新しい生活」を提案し、「家族全員が毎日触ることを当たり前にしていくことで、私達は、ゲーム人口拡大の第二のステップを踏み出します」と述べています。ハードのデザインから、提供されるサービス、『WiiSports』のようなゲームまで、Wiiは一環してリビングに存在し、家族全体の生活の一部となるべく設計がされています。そしてそれが実現されるかどうかは、入り口を増やす戦略が起動に乗るか、そして家族全員の参加を促す『WiiSports』のような提案がどれだけできるかにかかっていそうです。