【Wii発売記念】 巨大昆虫島を生き抜け『ネクロネシア』インタビュー

株式会社スパイクより12月2日に任天堂Wiiと同時発売となる『ネクロネシア』、今回そのディレクターである元木伸泰氏にお話を伺う機会を得ることが出来ました。

任天堂 Wii
ネクロネシア
ネクロネシア 全 24 枚 拡大写真

株式会社スパイクより12月2日に任天堂Wiiと同時発売となる『ネクロネシア』、今回そのディレクターである元木伸泰氏にお話を伺う機会を得ることが出来ました。

『ネクロネシア』のゲーム内容に関しては以下の記事をご参照下さい。
プレビュー




―――本日はお時間と機会を頂きありがとうございます。まずはNintendoINSIDE読者への簡単な自己紹介をお願いできますか?

『ネクロネシア』のディレクションを行った元木です。『ネクロネシア』では作品の世界観とシナリオと全体の制作を担当しています。

―――過去に携わったソフトなどはありますか?

任天堂ハードですとニンテンドーDSの『研修医 天堂独太』の立ち上げと、あとは『研修医 天堂独太2〜命の天秤〜』でシナリオとディレクションをやっていました。

―――『ネクロネシア』がWii本体と同時発売なのと同様に、『研修医 天堂独太』もニンテンドーDS本体と同時発売でしたね。




―――まずは『ネクロネシア』にいきつくまでの経緯を聞かせていただけますか?

当初はホラーものをやろうという話がありまして、どうしても最近のホラーゲームといいますと人がメインと言うか、ゾンビが出てくるようなものが主流だったので、そういったものとはちょっと毛色の変わったものを出してみようというのがまずありました。

そんな中、2005年の暮れに「キングコング」(*1)という映画の劇中で、ジャングルの中で巨大な虫が出てくるシーンがありまして。

―――ありましたね。大きなコオロギやムカデのような昆虫が主人公に襲いかかってくるシーンですよね。

そうです。あれを見て「あーこれは気持ち悪い。ここだけ抜き取るとホラー映画だよね。」と、これがゲームにできないだろうかと考えました。私自身が元々、それよりもかなり前の段階で虫が大群でワラワラと迫ってくるゲームがあったら怖いのではないか、と思っていたというのもあります。

それら、虫の大群のイメージ・キングコングに出ていた巨大な虫・ホラーゲームという三つの要素が組み合わさって今回ような企画に至りました。

―――なるほど。実は私も頂いた資料や公開されているゲーム画像を見させていただいた時に「キングコング」のあのシーンを連想したんですよ。

今回、『ネクロネシア』のゲーム中にはキングコングのような巨大な敵も出てきます。

―――それは楽しみですね。ところでなぜWiiでのリリースとなったのでしょう?

そうですね、一番の要素としてはゲームの企画が出たタイミングとWiiが出ますという発表のタイミングが合ったというのが大きいです。当然Wiiという新しいハードですので、どういった形で遊べるようにするのかが纏まったのが、2006年の頭ぐらいでそこから制作を開始しました。なによりもタイミングですね。

あとはやはりプランナーが「新しいハードでやりたい!」というモチベーションの高さもありまして、今回はWiiでやろうという形になりました。

―――新しいハードという事で、開発において苦労した部分などはありますか?

ゲーム機のデバイスでリモコンを振るという感覚が初めての物なので、どの位が適切なのかというサンプルが無い所から始めなくてはいけない。製作の初期のころはリモコンをこう(大きく)振った感覚が良いよね、って感じで作っていたのですけども、それが製作の後期になるとこれは疲れるよね?と。でも余りリモコンを細かく振るようにするのか良いのか、それとも大きく振れたほうがいいのか、そのバランスどりが結構難しかったですね。特に前半は中々いいバランスが見えてこなかったですね。

更に実際にプレイヤーがリモコンを振った物に対して、キャラクターのモーションを合わせる。今度はモーションのバランスと実際にリモコンを振ったバランスとで、何を基準に考えれば良いのかっていうのも、非常に悩みの種でもありました。

―――過去のノウハウがないリモコンの扱いには確かに苦労しそうですね。

リモコンも最初の開発機の状態から現状のこの形になるまで色々バージョンが変わっているんです。最終的なバージョンで感じたのは、一番最初のものに比べ
てずっしりとした重みがあるんですね。それによってデバイスの操作の感覚が当初企画していたときと変わってきたというのもあります。

―――そういえば『ネクロネシア』というタイトルの意味・由来などはありますか?

もともと『ネクロネシア』という単語があったのを持って来たのではなくて、完全な造語ですね。

ストーリーの中に登場するミシェルというヒロインのキャラクターが「ネクロ・ノーツ」というタイトルの本を持っている。これが様々な生物の進化について記してある本なんです。始めはタイトルも「ネクロ・ノーツ」にしようかと思っていたのですが、ちょっとピンとこない。そこで、もうひとひねりないかと考案しまして、大陸とか島という意味を持つ「ネシア」という言葉があって。「ネクロ・ノーツ」に書かれている昆虫が住んでいる島という意味で、二つを組み合わせて『ネクロネシア』という名前になりました。

―――任天堂のハードというと子供向けとか家庭向けのイメージがありますが、『ネクロネシア』の主なターゲットは?

B級ホラーが好きな人たちがやはりメイン、例えばパブリシティの方で起用しております日野日出志さん(*2)を知っているような方ですね。

最近ですとB級ホラーというものがあまり作られなくなったので、そういう意味でも20代後半~30代の方を中心に楽しんでいただけると思います。それとCEROのレーティングも15歳以上向け(C)で操作もある程度難しいので、大学生や若いサラリーマンの方・じっくり遊ぶゲーマーであったりですかね。

見てのとおりWiiのタイトルの中でも異色ですが、興味を引くタイトルであると思っています。ゲーム自体は1人プレイですが、周りの人達とどのように攻略するか相談しなが
らワイワイガヤガヤ遊んでも面白いのではないでしょうか。

―――敵が出たときにBGMが変化したりするのが、ホラー的で怖いですよね。どこから来てるのか判らないから回りをキョロキョロしちゃいました。携帯ライトも怖さを演出していて効果的でした。

実はライトは付けないと、視野は狭くなりますが虫には気づかれにくいんです。

―――となるとライト無しでクリアするユーザーとかも出てきそうですね。先ほどプレイさせて頂きましたが、虫嫌いの私には巨大な虫が怖かったですね。

ビクビクしながらプレイされていましたね(笑)

―――ゲームの主目的とクリアまで大体のプレイ時間は?

目的は「巨大昆虫島脱出アドベンチャー」というジャンルのとおり、恋人・ミシェルを見つけて最終的には島を脱出することです。

やりこみ要素を抜くと、始めてのプレイで12時間くらいだと思います。それとストーリー上ゲームを2周する構成になってますので、2周合わせての時間です。

―――アドベンチャーゲームとしてはちょうどいい時間だと思います。2周目というのはデジャヴシナリオの事ですね。このシステムは面白いなぁ、と思っていました。エンディングも変わってくるのですか?

1周目のストーリーと2周目のストーリーが被りながらも少しずれていきます。1周目はエンディングまでいけないのですが、2周目でやっとたどり着ける。1周目でやれなかった事を、2周目でこなして行くという形です。例えば、ボスキャラクターが登場するのですが、そこで助けられなかった仲間を助けたりって部分ですね。2周目のデジャヴシナリオでないと行けないステージもあったりします。

―――プレイヤー自身が1周目で学んだことを2周目に生かしていくようになるのですね。先ほどやり込み要素という話がありましたが?

貴重なアイテム入手のために敵を沢山倒したり、あとは洞窟。不思議のダンジョンみたいな洞窟も用意されているので、アイテム入手の為に何回もその洞窟入るなどしていると結構時間はかかりますね。

―――不思議のダンジョンというと、それは自動生成マップの?

そうです。自動生成マップですね。

―――ステージはどのくらい用意されているのでしょうか?

島の中が舞台となります。NintendoWorld2006会場の体験版で遊べた森のステージの他に、川、つり橋、寺院であったりとか、港、泳げる沼、洞窟など多彩です。

―――体験版では判らなかったのですがキャラクターボイスはあるのでしょうか?

ゲーム中に全部で40分程度のイベントシーンがあって、セリフを言うシーンではボイス付で喋ります。キャラクターはアメリカ人なんですけど、日本語で喋りますよ。そのほか、シナリオを進めていく為の「スピークモード」というものもあり、そこではテキストを読んでいく形になります。

―――海外での展開は予定されているのでしょうか?

USと欧州でも来年の発売を予定しています。海外からの反響も結構凄いんですよ。
海外サイトのアクセスも多いし、先日のNintendoWorld2006では、多くの海外の記者やユーザーにも興味持っていただけました。海外の方にとってもインパクトがある内容なのではないでしょうかね。




―――12月2日のWiiの発売をもって次世代期と言われていたWii、Xbox360とPlayStation3(以下PS3)がついにが揃った事になります。まずはWiiにはどのような印象を受けましたか?

僕の場合は開発機が最初の出会いになるんですけども、開発機の前に「こういうものがでます」と任天堂さんからアナウンスがあった時には久しぶりに凄くわくわくしましたね。
コントローラを振って操作するって今までになかったじゃないですか。その前にもニンテンドーDSのタッチスクリーンとタッチペンで遊ぶというのも「あぁ思い切ったなぁ」と思いました。

それ(ニンテンドーDS)で開発している最中にWiiの話が出て、ニンテンドーDSはWiiの伏線だったのかなぁ、と(笑

―――それは思いましたね。発表前にもWiiのインターフェイスについては様々な憶測がされてました。

ニンテンドーDSでユーザーがちょっと変わったインターフェイスに慣れてから、Wiiでさらに新しいインターフェイスってことで。

任天堂さんのWiiのソフトですと『Wii Sports』のテニスを一番最初に遊んだのですけど、あのリモコンを振った通りにゲーム中で動く感覚は凄いなぁと思いました。

―――あれは本当に楽しそうですね。元木さんは今後またWii向けのソフトを手がけたいという気持ちはありますか?

どうでしょう(笑)何せ『ネクロネシア』がマスターアップしたばかりですからね。でも、いずれ次の企画とかも出てくるでしょうね。

今回一本やってみてリモコンの扱いも判ってきたので、次にまたWiiでやるのであればより操作感を大切にしたものを作れればいいなと思っています。

今回の『ネクロネシア』では「Wiiで出来ることは全部やろう」というのが開発サイドでありましたので、出来ることを色々やってみたのですけども、初めてのユーザーにとっては操作面でちょっと難しいかも。例えばさっきのテニスをやって本当に思ったのですけど、シンプルだけどいろいろできるって、それがWiiの面白さ・良さだと実感してますので、そういうソフトをやりたいですね。

―――次世代期の残りの二つ、Xbox360とPlayStation3(以下PS3)それぞれについてどのような印象をお持ちですか?

難しい質問ですね。開発者サイドにとってはXbox360もPS3もビジュアル・性能重視ですよね。開発に時間と費用はかかるけど、表現したいことを表現しやすいかなと思うんですよ。

特に僕の場合はどちらかというとストーリーとか世界観を大事にしたい質なので、そういう意味ではキャラクターに関しても役者に演技させたいんです。

そうしたら、ちゃんとポリゴンのキャラクターが表情が作れるとか演技をしてくれるかとか、世界観と空気がわかるとか、物が物として存在して見えるという部分ですね。

開発サイドとしてはメモリの制限とかテクスチャが多く利用できるとか、Xbox360とPS3は表現がしやすい、そういう意味での魅力はとても感じますね。

―――最後にNintendoINSIDE読者やユーザーへコメントをお願いいたします。

今回ジャンルが「巨大昆虫島脱出アドベンチャー」という一見胡散臭く聞こえるジャンルになっているのですが(笑)、その胡散臭さに違わずとてもB級感の強い作品になっています。

15歳以上の方向けになるのですが、最近少なくなってきいたジャンルでもあるので、いろいろな人にB級ホラーという世界があるということを判っていただくためにも、『ネクロネシア』を楽しんでいただければと思います。

巨大な虫などはちょっと気持ち悪いですが、倒せばカタルシスが感じられるので虫嫌いな方でも是非遊んでみてください。

―――本日はありがとうございました。


【注釈】



  • *1 「キングコング」: 2005年冬に公開されたピーター・ジャクソン監督によるアメリカ映画。今回インタビューを行ったDecorsもお気に入りの映画である。

  • *2 日野日出志さん:日本のホラー漫画家。代表作に「地獄の子守唄」など。『ネクロネシア』ではWebサイトのデジタルコミックや雑誌広告でイラストが起用されている。


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