【E3 07】本気の注目作品が並んだエレクトロニック・アーツ新作レポート

世界最大のゲームパブリッシャー、エレクトロニックアーツ(EA)。しかし筆者は投資家ではなくゲーマーなので、これまでEAブランドに強く心を揺さぶられることはなかった。ドル箱の「EA SPORTS」や、「ハリー・ポッター」シリーズをはじめとする映画ゲームなど、手堅いが面白みの薄い大作ゲームを連発する会社、という印象が強かったのだ。

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「アーミー・オブ・トゥー」最大の特徴は「2人で協力プレイ」をゲームコンセプトの中核に据えていること。ゲームシステムとしてはサードパーソンビューのシューティングゲームとなる。1人プレイの時はパートナーがAIキャラクターとなるが、これは絶対にオンライン上で協力プレイをした方がおもしろい。それだけゲームのアクションが多彩なのだ。

一人が援護射撃しながら、もう1人が突撃したり、堅牢な敵を十字砲火で攻撃するなどは当たり前。1人が防御盾を持って前進して、もう1人がその後ろで敵を攻撃したり、二人で一つのパラシュートを使って降下しつつ、片方がパラシュートを操作しながら、もう一人がスナイパーライフルで地上の敵をねらい打つ、などのアクションもできる。

また、コミュニケーションをより活性化するため、プレイヤー間のさまざまなアクションも用意されている。敵を殲滅して握手するだけでなく、ヘマをやらかした相手を殴ったり、頭突きしたりといったアクションもあり、これだけでもおもしろい。

Xbox360で大ヒットした「ギアーズ・オブ・ウォー」のマルチプレイモードと考え方は近いが、こちらはより明確に「協力プレイ」を押し出している。映画「ランボー」の原作「一人だけの軍隊」ならぬ「二人だけの軍隊」というところだろうか。

ここで紹介した3本はハードコア向けの、いわゆる「重たいゲーム」であり、それぞれのジャンルで初のアイディアというわけではないが、従来のゲームの良さをうまく生かして、成熟させたタイトルになっている。

「メダルオブオナー:エアボーン」と「バーンアウト パラダイス」のベースになっているのは、「グランセフトオート3」が開拓したオープンフィールド型のゲームデザインだ。「GTA3」の成功後、雨後の竹の子のように登場した同ジャンルのゲームが駆逐された後で、ようやくオープンフィールド型の良さを成熟させたゲームが現れたという印象を受けた。ここでは紹介できなかったが、同じくEAブースで展示されていた「マーセナリーズ2:ワールド・イン・フレームズ」も、同じくオープンフィールド型だ。

「アーミー・オブ・トゥー」も「GoW」の協力プレイという概念をさらに押し進めたもので、同作のヒットが大きな影響を与えているのは間違いないだろう。

これは非難ではなく、1つのジャンルが成熟していく上では不可欠なことだ。安易に真似ているのではなく、きちんと良さを取り込み、新しいゲームとして進化させている点が優れているのだ。

しかも今年のEAが凄かったのは、ここまで「重たい」ゲームを成熟させておきながら、WiiとDSを中心とした「軽い」ゲームに軸足を移そうとしている点だ。詳しくは中村氏の記事「カジュアルゲーム・レボリューション」を参照してほしいが、音楽ゲーム「ロックバンド」をはじめ、カジュアルゲームの展示も充実。特にWiiのタイトル群は、どれも一定のおもしろさが保証されていた。

中でも筆者が引き込まれたのが「プレイグラウンド」だ。ドッジボールをはじめとした簡単なスポーツゲームが何種類か楽しめるもので、どれもWiiリモコンの特製をうまく生かした操作系になっている。中でもバレーボールとサッカーとバスケットボールをうまくミックスした「キックス」は操作感がおもしろく、小粒ながら、開発者なら一回は触ってみた方がいいと思わせるものだった(米国ではWii版とDS版が今秋発売予定)。

「重いゲーム」から「軽いゲーム」へとトレンドが切り替わる。今年のEAブースは、そんな過渡期を迎えた米国市場の象徴だったのかもしれない。
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《小野憲史》

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