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プロデューサー 坂本俊博 氏(エンターブレイン)「キミキス」オリジナル版ではディレクションを担当し、『エビコレ+ キミキス』では企画からの立ち上げを担当。当初は多少の修正を加えたベスト版として発売する予定だったが、ファンの要望に積極的に応えたいという想いから、追加機能の搭載や操作性の向上などを盛り込んだ『エビコレ+ キミキス』として発売。 | ![]() |
メインプログラマー 石川誠 氏(ビッツラボラトリー) 「キミキス」オリジナル版から一貫してプログラムを担当。プレイステーションやセガサターン時代からさまざまなゲーム開発に携わり、「CRI ADX」や「CRI Sofdec」の存在はその頃から知っていたが、実際に使うのは今回が初めてとのこと。 | ![]() |
デバッグ管理 赤坂正義 氏(エンターブレイン)『エビコレ+ キミキス』から開発に参加。オリジナル版では主にデバッグを担当したが、今回は品質面の管理を担当。 | ![]() |
※上記イラストは、「キミキス」オフィシャルガイドなどで使用されている画像です。(エンターブレインさまご提供)
―――今回、改良廉価版から「CRI ADX」をご採用いただいた珍しいケースなのですが、導入のきっかけはどのような理由だったのでしょうか?
石川: オリジナル版では、ファイルシステム部分はすでに手元にあったコードを参考に作っていました。ただ、パフォーマンスが出なかったり、複数音声の再生やファイルへの同時アクセスができなかったりといった点に悩んでいました。ゲーム中にウェイトが掛かるといった、ユーザビリティが下がってしまうような問題が実際に起きており、改善が必要でした。
そこで、このような問題点を解決するために「ADX」を使ってみようということになりました。ハードウェアを直接叩くライブラリ(ミドルウェア)というものは、枯れた(=バグが収束して安定した)技術の方が良いと思ったからです。その点で、「ADX」はセガサターン時代から存在を知っていたミドルウェアだったので安心して使えました。
実際に組み込んだところ問題もなく、パフォーマンスも向上しゲームのレスポンスも良くなったので、正しい選択でしたね。
―――「ADX」は具体的にどのような部分に使われたのでしょうか?
石川: ファイルアクセスまわりはもちろんですが、音声コーデック※としても使っています。「ADXコーデック」はエンディング曲などに使用し、「AHXコーデック」は声優のセリフに使用しました。BGMや効果音などはMIDIを使っています。 もともとオリジナル版ではステレオ再生に対応しているライブラリが手元に無く、エンディング曲も実はモノラルで流していましたが、『エビコレ+ キミキス』では「ADX」を使って、ようやくステレオで流すことができました。ネットの書き込みなどを見ていると、ファンの方々もそれに気づいてくれているようで嬉しいですね。
※「CRI ADX」ではADX、AHXという2種類のコーデックを用意しています。ADXはステレオ、BGM向きで圧縮率が約1/4、AHXはモノラル、セリフ向きで圧縮率が約1/6〜1/10です。用途や目的に合わせて使い分けができる、ディスク容量にも配慮した設計となっています。
―――「ADX」の音質にはご満足いただけましたか?
石川: はい、もともとディスク容量には余裕があったので、音質を重視して低圧縮でエンコードしたのですが、それでもオリジナル版と比べて半分程度の容量まで削減できました。結果的には音質を最大限維持したままデータ容量を削減できたので、データの取り回しも楽になって助かりましたね。
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―――「ADX」の導入は順調でしたか?
石川: ゲームのコア部分のシステム構造もだいぶ入れ替わっていますので、開発にはトータルで半年くらい掛かっています。「ADX」導入という意味では、初めて使ったので勉強の期間を含めて2ヶ月くらいでしょうか。とてもスムーズでしたよ。
赤坂: システムがごっそり入れ替わっているという意味で、デバッグを1からやりなおすという感じでしたね。でも、オリジナル版のときと比べるとだいぶバグは少なくなったので、結果として楽でした。
―――なぜミドルウェアを使おうと考えたのでしょうか?
石川: やはりコスト面が一番大きいですね。ファイルシステムなどを自前で作ることを考えると、ミドルウェアを使った方が断然コストが安く上がると思います。もし本当に自社で完結しようとすると、専任の担当者を置かなければならなくなります。そうするとその分、他の作業が後回しになってしまいます。ミドルウェアを導入することで、ゲームを面白くする部分に多くの時間が割けるようになるのは本当にありがたいですね。
―――ミドルウェアに対するご意見、ご要望などをお聞かせください。
石川: ミドルウェアって一般的には規模が大きく、それ自体がゲームエンジンのようになっているものが多いので、細かい部分の調整などが難しかったり、開発のために大規模なミドルウェアを丸ごと導入しなければならなかったりと融通が利きづらい部分があります。
CRIのミドルウェアは個別に欲しい機能をチョイスして使えるので便利ですね。ライブラリもシンプルで扱いやすいと思います。
―――他に欲しいミドルウェアや技術はありますか?
石川: 「C-TST※」は、PS2版があれば今後のアドベンチャーゲームなどでぜひ使ってみたいです。セリフの再生速度を上げて、早回しに物語を進めるといったような、アドベンチャーならではの演出が可能になります。
※「C-TST(CRI Time Stretch Technology)」・・・声質を変えずにセリフの再生速度を自在に制御できるCRIの独自技術。現在は「救声主」のパワーアップモジュールとして、ニンテンドーDS向けに提供中(2008年4月現在)。
坂本: 今回、ファンの方々の要望を受けて、『エビコレ+ キミキス』ではセリフの表示速度を変更可能にしましたが、「セリフそのものの再生速度を変更できる」という機能が追加できればファンの皆様に喜んで頂けるもしれませんね。
―――今後の「キミキス」の展開について教えてください
石川: 今回「ADX」をいろいろ勉強できたので、今後の開発では音声の同時再生などの機能を使っていきたいです。「ADX」を積極的に使って、BGMや効果音にも波形データをストリーミングで使いたいですね。また、ファイルシステムもミドルウェアで良いものがあれば使っていきたいと思っています。
坂本: 次回作については現時点で多くは語れませんが、ミドルウェアについての経験も含め、今までに溜めたノウハウを上手に利用して、より良い作品づくりを進めていきたいと思います。
―――ありがとうございました
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