疲れてゲームも遊べない日には・・・『99のなみだ』開発スタッフインタビュー

6月5日に発売されるニンテンドーDS向け『99のなみだ』は、感動する物語を読んで涙を流し、日々の疲れを癒してみようという一風変わったコンセプトのソフトです。インサイドではそんな気になるソフトの開発者をインタビュー。プロデューサーの石田実緒さん、そして企画からソフトを支えてきた、青木奈津子さん、磯桂子さんの3人にお話を聞くことができました。

任天堂 DS
疲れてゲームも遊べない日には・・・『99のなみだ』開発スタッフインタビュー
疲れてゲームも遊べない日には・・・『99のなみだ』開発スタッフインタビュー 全 11 枚 拡大写真


―――DS版に先行して書籍版も出されましたね

石田: 2人が発案してくれたソフトですが、良さを伝えるのは難しそうだなあというのがパブリッシング・プロデューサーサイドの悩みとしてあって、女性のユーザーというのは元々バンダイナムコゲームスが得意としているユーザー層とも少し違います。ゲーム媒体さんに記事を書いてもらうだけじゃ恐らく届かないだろうと思って、色々悩みました。考えた末に、このソフトのユーザーさんはゲーム売り場よりも書店に馴染みが深いだろうということで、良さを知っていただく上でも書籍版を、DS版の2ヶ月前に先行発売しました。

書籍版には12篇の物語を収録しているのですが、うち8篇はDS版にも入ってるもので、4本はオリジナルです。DS版に収録されている物語は原稿用紙4枚程度でコンパクトなのですが、書籍ではそれを原稿用紙30枚程度に引き伸ばす形でリライトして収録しています。文学作品として別のものになっていますので、DS版と書籍版、両方楽しんで貰えると思います。

(※ちなみに14万部を突破して、大ヒットだということです!)

■ゲーム周辺もこだわり

―――主題歌はmoumoon(ムームーン)さん、パッケージには女優の入山法子さんを起用されていますが、理由などあったら聞かせてください

石田: moumoonさんは、有線で歌を聴く機会があって、声の透明感、一本芯の通った、凛とした感じと優しい曲調が、『99のみなだ』で打ち出したいイメージで近いという印象を受けました。ちょうどエイベックスさんからデビューされるというのを聞いて、多面展開する上でパートナーとしても心強いということで、お願いすることになりました。

石田: パッケージに関しては、磯がいくつか案を作ってくれていて、ナミダノモトをイメージしたボトルをあしらったもの、普通のイラストを使ったもの、、、色々とあって、その中に女性の泣き顔の写真を使ったものがありました。それがとても印象的で、ゲームのコンセプトも伝わるし、ゲームのパッケージで女性の写真のアップを使ったものはないので、インパクトもあるだろうということもあったので、決めました。最初は一般の綺麗な方という案もありましたが、CMにも起用できるだろうというのもあったので、モデルさんや女優さんを探して、透明感とピュアな感じ、ご本人のお人柄を含めて製品のイメージにあった方、ということで入山さんが浮上しました。一年前のNDS『のだめカンタービレ』のCMに出演していただいたというご縁もあって、お願いしました。後で知ったのですが、実は演技で涙を流すのも得意だそうです。

―――今後こんなものを作ってみたいというものがあったら教えてください

磯: あまり「ゲーム」と呼ばれるものを作りたいという気持ちはなくて、もっとお客様に近い仕事をしたいと思ってます。家庭用ゲーム機ってお客様に遠いという思いがあって、家に上がりこんで後ろで見てるわけにはいかないですし、お客様に買っていただくところまでが限界なので、もうちょっとお客様に近づいた、実生活に役に立つものを作りたいです。今回の『99のなみだ』はプレイヤーの想像力や思い出と一緒になって初めて意味のある、プレイヤーと一緒にやることで初めて成立する製品です。そういった、お客様に近づいている感じを味わえる商品をこれからも作っていきたいですね。

青木: 磯が言ったことに似てますが、ゲームの枠を超えて、人の身近にあるもの、あって当たり前、必要とされるものを作れれば嬉しいです。別に今あるゲームが嫌いというわけではなくて、どういうものか具体的には言えませんが、それが結果ゲームになる可能性もありますし、施設的なものになるかもしれませんし、分かりませんが、そういうものを考えていきたいと思います。

石田: 私は二人と違って事業カンパニー側のスタッフで、そもそもゲームを発案する側ではなくて、私はクリエイターが0から1を生み出して種を撒いたものを、10に育てていくようなことが好きで仕事をしてます。なので、続編やキャラクター関連タイトルといった既に確立したものよりは、ネタとして面白いけど、どうやって育てる? どう売る? といったものを、一緒に育てていくような仕事が出来ればと思ってます。それは施設かもしれないし、ゲームかもしれないし、何でもいいのかなと思ってます。

青木: 誰一人として、こんなゲーム、って言わないね(笑)。

磯: 今回、作り手も売り手も、色々なアイデアをたくさん出し合って、やっとこうしてお客様の手に届くところまで来ることができました。新しいコンセプトの製品が出ることは、業界としてもいいことですよね。こういうチャレンジができたのも、バンダイナムコゲームスならではかなとも少し思います。

―――それでは最後に期待している読者に一言コメントをください。インサイドは男性の読者が多いので・・・

石田: なるほど(笑)。じゃあ磯から、、、

磯: いいんです、外では強がってても。私もそうです。でも、家に帰ったら素直になって欲しいし、男泣きとかしてリフレッシュして欲しいです。思い出は誰しもそれぞれあると思うし、嬉しい経験も悲しい経験もあると思います。上手く行った経験もあれば、とても人には言えないような、恥ずかしくて、情けなくて、泣きたくなるような経験も。外では言えなくても、家に帰って一人だったらそんな思い出も振り返ったって良いと思います。そっと泣いて元気をとり戻したら、翌日には「泣くとか自分には関係ない」とか言っていつも通りの顔するような、そんな使い方もアリだと思いますね。

青木: 無理してでも泣いてみると意外とスッキリします。文献の中に、泣きマネをすると泣ける、というのがありました。ほんとに辛い時はそのくらいしてもいいと思います。泣くということでなくても、ちょっと思い出を振り返ることでもいいし、恋愛だけじゃなくて、家族のことや、今までの自分、未来の自分……色々考えたり感じたりする時間は大切だと思うので、このソフトでそういう時間を持って貰えればと思います。女性視点で書かれた物語が多めではあるのですが、お父さん視点や息子視点など男性ならではの気持ちが見える作品もあるので、男性のユーザーにも楽しみにしていただければと思います。

石田: ゲームは楽しいものだと思うので、元気なときは、みんなで『マリオカート』をするのもいいし、『Wii Fit』もいいと思います。でも辛くて『マリオカート』すらやりたくない日もあると思うんです。そんな時はリビングから引きこもって、自分の部屋でDSを持って、おもむろに電源を入れてもらえるといいのかなと。ちょっとだけ涙の力を信じて、それに甘えて、泣いてみると、翌日はまた『マリオカート』ができると思います。そんな使い方でもいいと思いますので、辛い日はこれを手に取ってもらえると嬉しいです。

―――ありがとうございました

左から石田さん、青木さん、磯さん(バンダイナムコゲームス未来研究所にて)
  1. «
  2. 1
  3. 2
  4. 3

《土本学》

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]

関連ニュース