今どきゲーム事情■中村彰憲:『The Sims』シリーズに長年たずさわってきたティム・レトウノー氏を直撃!〜誕生秘話から開発現場まで徹底追及!〜

今年開催されたエレクトロニック・アーツ(以下、EA)の記者発表会は、EAの主要開発拠点からはじまり、EA傘下にあるBioware、そしてEAと連携のあるValve Software、id Softwareなどのトップが一堂に会し、同社のソフトパワーを改めて示したミーティングとなりました。

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今どきゲーム事情■中村彰憲:『The Sims』シリーズに長年たずさわってきたティム・レトウノー氏を直撃!〜誕生秘話から開発現場まで徹底追及!〜
今どきゲーム事情■中村彰憲:『The Sims』シリーズに長年たずさわってきたティム・レトウノー氏を直撃!〜誕生秘話から開発現場まで徹底追及!〜 全 5 枚 拡大写真

■最新作『ぼくとシムのまち』『キングダム』、そして未来のシリーズは?

中村:『ぼくとシムのまち』(英語名:『My Sims』)では大胆なデザインチェンジが施されましたね。どこから変更を加えたのでしょう?

ティム:『ぼくとシムのまち』は『The Sims』シリーズの開発がはじまってから6年ぐらいまできたところで、新たに企画されました。これまでも言及したように『The Sims』は欧米社会をベースに世界観を展開してきました。当時、いわゆる次世代機と言われていたコンソール機でのゲームを検討しつつ、プレイヤーコミュニティの反応を見ていたんですが、『レボリューション』のコードネームで開発が進んでいた任天堂のハード(現在のWii)にとく注目しました。
この他にもXbox360やPS3があったわけですが、『The Sims』プレイヤーの状況を考え、この作品のプレイヤーがどのゲーム機を購入するか検討した結果、任天堂のハード機で開発することを決定しました。実は『The Sims』開発者の多くが任天堂のファンであったということも、任天堂ハードを選んだ要因であったりもしますが。私自身も任天堂が大好きですしね。更に多くのスタッフはDSのコアユーザーでもありました。プラットフォームとしてもすごいハードですよね。また、「リモートコントローラーでテレビ画面を操れる」機能は他のハードに増して、ユーザーのクリエイティビティを発揮できるものだと感じたんです。

そこで、『ぼくとシム』はWiiおよびDSのみで提供することを決定しました。マルチプラットフォーム戦略を推進するEAとしては異例のことですが…。WiiとDSを独占的なプラットフォームにすると決めた時点で、まずこの作品を誰もが受け入れるようなものにすること、なにより、WiiとDSというプラットフォームに我々の作品がしっかりなじむにはどのようにするべきか考えていきました。これが結果的にキャラクターデザインや世界観選定、そしてゲームデザインのアプローチに影響を与えてきたのです。

まずグラフィックデザインですが、これはリードキャラクターデザイナーであった、トヨナガ・エミさんが担当しました。彼女は沖縄出身で、米国在住歴が長い日本人です。そのとき、私たちは『The Sims』にとって重要なポイント―私たち自身を投影できるコンテンツ(これはどこの誰かのよう、と思わず思ってしまうようなもの)を抑えつつ、これらのキャラクターが任天堂ブランドとフィットするようなものでなければならない―と指示しました。このキャラは任天堂のゲームでも出てきそうだね、と言われてもおかしくない雰囲気のあるキャラクター…任天堂のゲームそのものではないまでも、任天堂的特徴をよくとらえているような…。

このようにして2006年早期からゲーム開発を進めたのですが、同年の2月までにはすでにキャラクターデザインは決まりました。その後、世界中でキャラのテストをして確認をしながら、ブロックを積み重ねてモノを作り上げることで家具や家を生み出すアイデアや、多くの人を街に呼び込めるフィーチャーが企画されました。『The Sims』は社交性が重要ですからね。


『ぼくとシムのまち キングダム』。日本でも海外でも違和感のないキャラクターデザインは秀逸だ


中村:そこからさらに『ぼくとシムのまち キングダム』へと発展するわけですね

ティム:『ぼくとシム』では、街を作り上げ、多くの人たちをその街に移住させるというゲームでした。私たちとしては、もうすでにこのゲームを完成したという思いがあります。しかしプレイヤーからのフィードバックは、よりバラエイティ豊かなことをやりたいというものでした。また、より奥深いストーリーの中でゲームを体験したいという意見もありました。そこで開発を進めたのが『ぼくとシムのまち キングダム』です。今回も『ぼくとシム』同様にブロックで家や家具を作ることができますが、それに加え、橋や階段などを作れるようになりましたし、この力を用いてストーリーそのものも牽引できるんです。島から島へと移動しながら、王の復権を進めるのです。

前作にいた80のキャラクターが『キングダム』には戻ってきます。またあらたなキャラクターもデザインされています。ただ、そのうちのいくつかは、よりストーリー設定に忠実になるように、キャラクター設定も変更されています。トヨナガ氏も前作に引き続きデザインを担当していますし、前作のチームはそのまま今作でも開発に携わっています。

『ぼくとシム』シリーズで注意しているのは、日本的ゲーム感覚を重視するということです。日本のゲーム開発手法にはリスペクトを抱いていますし、あこがれも持っています。我々のチームの多くは任天堂ゲームのファンですし、日本のゲームスタイルや日本文化そのものを好きな人たちもたくさんいます。当然、自分たちのゲームは地域や性別を特定して開発するようなことはしません。しかし、『ぼくとシム』シリーズで達成したことといえば、このゲームが日本の子供によってテストされたとき、誰もアメリカ製だということに気が付かなかったことです。そのときすごく達成感を抱きました。欧米製のゲームには見えなかったってことですからね。ですので、本当に誰もが楽しめるゲームになったと思います。まさに任天堂のゲームですよね。誰もが楽しめるゲームというのが我々の戦略的な狙いだったわけですから。YouTube、ファンサイトなどを見ながら、この「誰もが楽しめる」というコンセプトに近づくことができたと、改めて実感しています。

中村:これからシムワールドはどうなるのでしょう?

ティム:これから何をすべかは、常にコミュニティの動向を見ながら決めていきます。これまでの拡張版がそうですからね。すべてが、コミュニティからのフィードバックにもとづいて作られていますから。『The Sims 2』の拡張版として『Apartment Life』がリリースされます。これまで多くの人たちから「シムをアパートで住ませたい」という要望がありました。自分自身もアパートに住んでいるから、自身でアパートを作り上げ、向かいに人が住むという状況を楽しみたいというのは共感できます。このようにこれまでプレイヤーがやりたいと願ってきたことを実現することに興味を持っています。彼らがどのように『The Sims』をプレイしているのか、何をしたらもっと喜ぶのかを意識しています。フィードバックはどの国のものが重要というわけではなく誰にとっても意義があると思います。ただ重要なのはキャラクターデザインですね。日本でも受け入れられかつ世界でも受け入れられるデザインを進めなければなりません。日本のゲーマーや日本の文化は「カワイイ」タイプのキャラクターが好みのようなので、これからさらにその点も発展させたいと思っています。特に日本市場に対しては。


『ぼくとシムのまち キングダム』。少ないフェイスパーツでも、感情が手に取るようにわかる


■ティム・レトウノー氏のゲームライフ

中村:いまはどんなゲームをプレイしていますか? 

ティム:いま、『キングダム』をめちゃくちゃプレイしていますが、それ以外には、とにかく数多くの任天堂ゲームをプレイしています。大好きですからね! 『スーパーマリオギャラクシー』とかです。DSゲームも大好きですね!最近は『ファイナルファンタジー クリスタルクロニクル リング オブ フェイト』やパズルゲーム全般もプレイしていますね。常に新しいものをプレイしています。あとEA Sportsもプレイしています。これらのタイトルは本当にすごい! もちろん『The Sims』シリーズもよく遊んでいます。

中村:現在気になっているゲームは?

ティム:『Spore』ですね。あとは『Mirror's Edge』ですね。私はあまりFPSが好きではないのですが、今回初めてプレイ映像見てすごいなと改めて思いました。パズル要素が入っているゲームが大好きなんです。なかでも『Portal』は本当によかったと思います。

中村:ありがとうございました!
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《中村彰憲》

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