【開発者インタビュー】ゲームの魅力を徹底解剖!『A列車で行こうDS』ディレクターに聞きました

ついに『A列車で行こうDS』が発売された。初めての携帯ゲーム機版であり、14年ぶりにバスとトラックの要素が復活。さらに新要素がいくつも追加されるなど、A列車ファンの期待も高まっている。そこで、『A列車で行こうDS』ディレクターである飯塚正樹氏に、新作の魅力を伺った。飯塚氏はA列車シリーズの出世作『A列車で行こう3』のPCエンジン版でプログラミングを担当され、その後、プレイステーション版の『A4エボリューション』のディレクションを担当した。他の主な代表作には「カルネージハート」シリーズがある。

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【開発者インタビュー】ゲームの魅力を徹底解剖!『A列車で行こうDS』ディレクターに聞きました
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■鉄道の要素もたっぷり楽しめる

―――ここまでは鉄道の要素よりも経営と街作りというお話しでした。でも「車両開発」については鉄道ファンの琴線をくすぐると思います。というのは、鉄道会社のリアリティを考えると、他社の最新型車両を気軽に買えるなんて、嬉しいけどウソですよね。

ほう……。

―――鉄道模型の世界ではフリーランス、ネットでは仮想鉄道という遊びがあって、自分の鉄道にふさわしいオリジナル車両を作ったり描いたりする人は多いんです。

ああ、そうですね。鉄道好きな人にもいろいろなタイプの人がいますから、鉄道ファンの方でもたっぷり楽しめると思います。

―――列車開発についてもうすこし詳しく教えてください。

とても簡単です。開発ポイントを速度や定員などの要素に割り振っていくだけです。序盤はポイントが少ないので、スピードは我慢してまずは定員を増やそうとか、開発ポイントが増えてきたら、最高速度の特急車両を作ろうとか。最後に名前と色を設定して、という感じで。

―――「特急型」「通勤型」というテンプレートはあるんですか?

いえ、速いものを作ったら特急にしよう、とか、ユーザーさんが設定していただくと。本当は形も選ばせてあげたかったんですが、今回のグラフィックでは何を作っても箱形になってしまうので……。

―――色は変えられるんですね。

屋根と、サイドライン3本ぶんを設定できます。

―――車両名も設定できると。

はい。車両名は運行開始後も変更できます。「○○系−○○線」という感じで。

悩みに悩める車両特性へのポイント割り振り合った名前をつけて思い入れアップ


―――鉄道は知らないと言いながら、飯塚さんは鉄道ファンの気持ちがよくわかっていそうですよ。

いえいえ、要望が強い案件を反映させただけですよ(笑)。バスもトラックも鉄道車両と同じように性能や色を変更できます。設計図は旅客列車が20、貨物列車が10、バスが10、トラックが5つまで保存できます。列車は1〜5両編成までの長さで、最大50本配置できます。

―――それだけ配置できると、鉄道ファンとしてはダイヤ設定が気になります。いままでのお話しだと、そこもバッサリと切り捨てられていそうで……。ただ、過去に携帯電話版もあったので、携帯ゲーム機版で詳細なダイヤ設定を期待するユーザーはいないかもしれませんが。が……今までは朝8時に発車するとお客さんが多いとか、その程度は残して頂けたらと思っていました。

ダイヤに関しては、いままでのA列車シリーズでいろいろな設定方法がありました。今回はA4の基本パッケージで使えたダイヤ設定はほとんど使えるようにしています。さすがに1分ごとの設定は厳しかったので、10分ごとになっていますが。

―――10分刻みで設定できるなら充分ですね。

「到着待ち」とかのロジック的な設定できますよ。

―――おお、これで単線のすれ違いもスムーズにできる。もっと機能が省略されてしまうと思っていました。安心しました。

新しく追加した要素としては、運行時間という概念ですね。24時間走りっぱなしではなくて、運行休止時間帯を設定します。夜間など指定した時刻を過ぎると、最寄りの駅まで行って、運行開始時間まで待機します。

―――経営上、嬉しいですね。走りっぱなしにすれば設定要らずで楽ですけど、夜間だけは停めたいですよね。コスト削減のために。

列車の運行という意味では改善したところもあります。例えば、いままでユーザーさんの疑問として、「なんで隣の駅に到着するとお客さんがみんな降りちゃうんだろう」と。あれは私も同感でしたから(笑)。なんでだよっと。だから、乗客の流動に関しては、実は上手いことやってるんですよ。

―――あの……貨物列車が折り返すときの機関車はそのままですか。

……そのままです。そこのツッコミが多いんですよね。A列車は(笑)。

―――いやー、ここは聞いておかないとファンに怒られそうで(笑)。でもやっぱり機関車の向きは変わらないんですね。なぜですか?

だって、終点で列車がひっくり返ったらおかしいじゃありませんか。

―――うーん、それはそうなんですが、それこそ脳内補完でゴニョゴニョ……。

ただし、機関車が後ろから押す場合はスピードが遅くなると言う話は反映させています。

―――機関車の向きにこだわる人は線路でリバースさせるわけですね。そのテクニックが活かせると。

■DS版ならではの要素

―――正直に申し上げると、PCゲームでいろんな機能が追加されたゲームをDS版にすると、いろいろな機能が差し引かれていくと思っていました。ところが引き算の要素は実は少なくて、足し算がいっぱいですね。

頑張りました。

―――DSならではの面白さという要素はありますか。ハードのボタンを有効活用するとか。

タッチペンの線路敷設は歴代A列車ではもっともやりやすいのではないかと自負しています。通過点を8つまで指定できて思い通りに敷けます。A列車で環状線をつくると、最後に何マスがズレてやりなおし、なんてことがあったかと思います。でもDS版はUnDo機能がありますから、失敗したなと思っても、確定させるまでは資金を減らさずにやり直せます。

―――ボタンの使い方はどうですか?

タッチペンですべての操作はできますが、ボタンにはショートカット機能が付いていますから、組み合わせると効率よく操作できますよ。LRボタンの「マップ回転」も便利でしょ?

―――さきほど「全マップをクリアすると……」というお話しがありました。ゲームモードも新しいですね。クリア目標があるんですか?

はい。いままでは資金いくらを達成、という指標がありました。今回はマップがチュートリアルを含めて12面ありまして、それぞれに特定の勝利条件を設定しています。「産業の比率を何パーセントにせよ」とか「借金を全額返して上場せよ」とかですね。

―――まさに現実の第三セクター鉄道会社のような話ですね。

条件設定をすることで、遊び応えがあると思います。それとは別に、A列車ユーザーには「ゲームオーバーがないところがいい」という人もいます。

―――両極端ですよね。

なので、マップごとに条件を付けたほか、難易度設定を調節できるようにしました。易しい設定にすると、資本金が多かったり、クリアの期限が延びたりします。ゆるくプレイしたい人は難易度を下げるといいと思います。

―――クリアした後もそのマップを使えますか。

はい。そのまま末永く遊べます。

―――フリーモードもあるとのことですが、ユーザーが作ったマップはいくつまで保存できますか。

プレイデータのセーブに関しては3マップ分を保存できます。フリーモードか初期マップかの区別はないです。

―――4つめのデータを保存したい時は……

もう一本買ってください。

―――inside:えー(笑)

あ、そうだ。DS版の面白い機能としては、車窓モードですね。列車からの前方の眺めが見られるだけではなくて……駅で降りちゃう。

―――あ、すごい。

好きな視点で定点観測ができます。

―――これは嬉しいです。お気に入りの風景をずっと眺められる。

電車に合わせると乗れちゃう。

―――面白い!

電車の中は再現できませんでしたが、電車に乗る気分は楽しめます。何で列車の正面しか眺められないの、という疑問があったんですよ。

―――これは楽しいです。A列車って「ながらゲーム」する人も多いと思うんですよ。ある程度発展させると、時々街に手を入れるだけで、発展するまでマンガ読んだり、ネットサーフィンしたり、仕事したり(笑)。ちらちらと眺めながら。

そういう人にはオートモードがオススメです。オススメの視点に自動的に切り替わって、次々にシーンが変わっていきます。

―――自分の街のプロモーションビデオみたいですね。このモード中も建物は増えますか?

はい。増えます。『A4レボリューション』の時は時間が止まっていましたが、今回は時間も発展も進行しています。

―――PC版の『A列車でいこう 21st Century』と同じですね。でも、21stのときは「3Dでグリグリしているときも町を発展させるって、とてもたいへん」とお伺いしました。ハードとソフトの技術の進歩を感じます。

実はこの機能を実装する時には結構苦労しているんですよ。

―――往年のA列車ファンの期待にも充分に応えられる内容ですね。

良かったです。サウンドも今までのファンには懐かしい曲が入ってますし、ご褒美の新幹線もありますから、ぜひ楽しんでください。今回、もうひとつのアピールポイントは、経営ゲームや箱庭ゲームファンを意識して、チュートリアルにこだわっています。

自動カメラモードは自分の街のPRビデオ凝りに凝ったサウンド設定も見もの


―――この作品をきっかけに、A列車ファンが増えそうですね。筋金入りファンもさることながら、A列車を初めて触る人にも受け入れられそうな、わかりやすい緻密さがハマりポイントに思えます。

あとは、A列車ってひとりで遊ぶゲームですが、誰かと競いたい気持ちもあると思うんですね。でも多人数プレイはシステム的に合わない。そこで、競う楽しみとして、「会社沿革」を表示できるようにしました。総延長が○○キロ達成、というような節目を記録しています。あとで同じマップをプレイする時に自分の前回のプレイと比較できます。

―――ネットで公開する人が増えそうですね。

自分がやってきたことが残っていると嬉しいですよ。

―――今日はたくさんお話を頂きました。ありがとうございました。
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《杉山淳一》

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