1から作り上げた全く新しい『モンスターハンター3』・・・辻本プロデューサー/藤岡ディレクターインタビュー
カプコンから8月1日に発売された、モンスターハンターシリーズ最新作『モンスターハンター3(トライ)』。
任天堂
Wii

―――僕が印象的だったクエストは、海へ潜ったらいきなりラギアクルスが登場して・・・
辻本: あれは顔見せみたいもので(笑)。
―――すごく怖かったのを覚えています。「モンスターハンター」は音楽の"静と動"も気をつかってますよね? ラギアクルスの箇所も突然音楽が流れてきて、怖さ倍増でした。
藤岡: 「モンスターハンター」はそこに凄くこだわってます。絵と並んで音楽はゲームに感情移入してもらうための大事な演出の一つだと思います。狩りの際に緊張感を出したり、こいつ強いかも、と思わせたり。逆に平和な時は静かな環境音で。音楽と音をどうするかはかなり気をつかって担当者と話をしながら決めたところです。
―――一部はオーケストラで録られたそうですね
藤岡: 今回のテーマ曲である「生命ある者へ」や、シリーズのテーマ曲の「英雄の証」、オープニング曲や狩猟曲など主要なテーマ性の深い音楽はオーケストラで録らせていただきました。生の演奏は、音が周るので広がりが出て、音に丸みが出ます。テーマ性にいっそう気持ちが入ります。本当に素晴らしいですね。オーケストラでやって良かったです。
―――全体的な曲のテーマというのはあったのですか?
藤岡: 曲ごとのテーマはそれぞれありますが、シリーズ全体の「英雄の証」がハンター目線で、ハンターを鼓舞するようなテーマなのに対して、今回は、テーマ曲「生命ある者へ」に代表されるような、生態系を描くというのが全体の曲のテーマでもありました。色々な生き物がいて、その中にハンター達も存在していて、それらが関わり合って世界を作っている。世界は広く、生命も広がり、厳しくも、優しくもある世界、というのが曲のテーマにもなっています。
辻本: 5年間の中で「モンスターハンター」の世界観はある程度浸透してきたと思うんです。モンスターがいる世界にハンターが入ってきて生活をする。ただ、それは主観的な視点で、そこから一歩引いて客観的にこの世界を見たらどうなる、というのが全体を貫く今回のテーマかもしれません。
―――オープニングは圧巻でした
藤岡: やはりオープニングには『モンスターハンター3(トライ)』のテーマ性を込めたいという思いがありました。モンスター同士の迫力のある闘い、追う者がいて、追われる者がいる。強い者がいて、弱い者がいる。あれは大きな生態系の中で日々繰り広げられているエピソードの一面を切り取ったもので、そういう世界に今からハンター達が向かっていくのだというメッセージになっています。ただ、ああいう激しい闘いがある一方で、それが終われば静かな日常が戻ってきて、また時にああいう争いが生まれる。そんな世界ですね。
辻本: 激しい闘いが、一瞬にして引いていく。それが自然界を感じさせるものになっているかなと思います。自然界ではオープニング映像のように、色々な凄い事が起こっていそうですが、特にその結末に何かが待ってるわけじゃなく、意外とすっと終わっていく。そういう結末もリアリティがあるかなと思います。
藤岡: 「モンスターハンター」は映像では極力結末を見せないような作り方をしています。モンスターを狩る結末はプレイヤー自身の手で見て欲しいと思っているからです。
―――Wiiというハードを選んだ理由は?
辻本: 開発チームとしては色んな新鮮なものにチャレンジしたいというのがあります。その中で、操作体系にチャレンジするというのは滅多にない機会です。それは上手くいけば広い可能性を持つチャレンジです。Wiiリモコンを得た時に、これまでの「モンスターハンター」以上の広がりを持って受け入れられるゲームになる可能性がある、それが大きな理由です。結果的には、開発チームの苦労は大きいものでしたが、Wiiリモコン+ヌンチャクという操作は、非常に良い出来で、多くの人に受けられるものになったと思います。もちろん以前からのプレイヤーの皆さんには従来通りの操作も用意しています。操作という意味では色々な選択肢を用意していますが、Wiiリモコン+ヌンチャクは一つオススメです。やりがいのあるチャレンジでしたね。
―――大変だった部分も多いと思います
藤岡: 大変さはどのハードを選んだとしてもあるもので、その対価を払わなければゲームは作れません。その中で、どのようなところを意気に思って作るかという部分でコントローラというのは開発チームとして大きなチャレンジでした。ゲームショウなどの機会を通じてWiiリモコン+ヌンチャクという新しい操作が、受け入れられる実感が得られたのは嬉しかったですね。また、任天堂さんに作っていただいた「クラシックコントローラPRO」も非常に良い結果になったと思います。
辻本: シリーズファンの皆さんはクラシックコントローラで遊ばれている方が多いと思いますが、極めたと思った頃に是非Wiiリモコン+ヌンチャクを触ってみて欲しいですね。無理強いするわけではないですが、もう一つの「モンスターハンター」を垣間見れるんじゃないかと思います。
―――ちなみにお二人は・・・?
辻本・藤岡: 二人ともWiiリモコン+ヌンチャクの操作で遊んでます。
―――Wiiでは最高峰のグラフィックも印象的です
藤岡: 「モンスターハンター」は世界観の作り込みと、絵の作り込みが凄いゲームだとユーザーの皆さんにも思っていただいているシリーズだという自負があります。どんなハードであれ、限界までやろうというのは同じです。ハードが新しくなったというのも良い方に作用していて、グラフィックもゲーム性もまっ白な状態から考え直すことができました。色々な可能性が一度フラットになったことで攻められたところはあります。
辻本: PSPの時もそうでしたが、やるからにはそのハードでナンバーワンのグラフィックにしようと決めています。今回もWiiで最高峰のクオリティは出せたんじゃないでしょうか。
―――夜空に浮かぶ月や星が本当に美しくて・・・
藤岡: ありがとうございます、綺麗ですよね(笑)。本編とは関係ない何気ないところかもしれませんが、絵で気持ちを引き立てる効果は大きいので、細部も気を抜かずにやってますね。
辻本: そういう細部にまで目が行くのも据え置き機ならではかもしれません。
■それぞれの楽しめる場所を見つけて欲しい
この記事の写真
/