今回は私と社長の魂のぶつかり合い!
『ひゅ~ストン』をどうするかについての激論です。
社長の思う『ひゅ~ストン』、私の思う『ひゅ~ストン』。
どちらが正しくてどちらが間違っているという問題ではありません。
だからとてもむずかしい。
そんな作り手同士の思いのぶつかり合いをお楽しみ下さいませ。
・・・とその前に、この記事は前に投稿した記事との連作ですので、ここから読み始めると、話がよくわからないと思います。
そんな方は是非、ページ下部の関連記事から古い記事を御覧くださいませ。
さあ、社長と私との間での意見の相違が表面化し始めた前章の続き。
第五章、はじまりますよ!
■第五章 社長と激論!
開発も進み、『ひゅ~ストン』がほぼ今の形になってきたところで、社長が「ゲームに対して意見がある」とおっしゃられました。
私はその話の内容を聞いて、うーむとうなりました。
いわば『ひゅ~ストン』というゲームをどんなゲームにしたいのか?という問題でした。
二人の意見は以下のように異なっていました。
社長:
石をもっと操作出来るようにしたい。
ボタンを押してなにかアクションが起きてほしい。(アクセルとかブレーキとか)
私:
石は挙動が完全に思うままにならない歯がゆさが大事ではないか。
操作はスライドパッドのみのシンプルがよい。
お互いシンプルなゲーム性については共通認識があったものの、私が落下に身を任せつつ少しだけ石の挙動に介入するゲーム、という認識に対して、社長はレースゲームらしさを求めていたというところでしょうか。
私としては、石が自発的に動くのはスライドパッドでの移動だけ、という最小限の状態にしたいと思っていました。
それに対して社長からの、
「石がもっと自由に動かせたほうが難易度がさがるし敷居が下がる」
「ボタン操作を追加したくらいではシンプルなゲーム性は損なわないと思う」
という意見にも一理あって、たしかになあとも思ったのです。
その後長い時間、社員全体で議論を交わしました。
その結果、私がディレクターとして下した判断は、「ボタン操作はゲームのシンプルさを損なうと思うので社長案は不採用」でした。
この判断についてはおそらく、正しいと思う人も間違っていると思う人もいるのではないかと思います。
ですが、これがその時のディレクターとしての私の判断でした。
ここでお気づきになった方もいるかも知れませんが、ポイソフトの不思議なところはここにあったりします。
ポイソフトではゲームの企画内容に関しては社長がなんと言おうとディレクターの決定が優先されるのです。
これも社長の懐が深いからこういうことができてしまうわけですが。
(社長はプロデューサーですからね)
さすがに誰でもわかるようなおかしな事をしようとした場合は強権を発動するかもしれませんが、こういったゲームに込める思想や仕様の決定に関わる部分は全てディレクターに任せてもらえます。
そんな懐の深い、優しい、情のある、愉快で素敵な社長(これくらい言っておけばいいかな・・・?)に、大変申し訳ないですが折れてもらい、今の『ひゅ~ストン』の形でのリリースが決まりました。
しかし、本当の苦難は更に遅れてやってくるのです・・・!
【続く】
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【著者プロフィール】
中川晃宏(なかがわあきひろ)株式会社ポイソフト/プログラマー
最近、アレとかナニとかが口をついて出て、具体的な名称が出てこない33歳。
こうやって人は老いていくのか・・・と実感しつつ、老いに抗おうと努力する今日この頃。詰まってもいいから、思い出すまでちゃんと考えてしゃべるよ!