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発表からおよそ14年。まずは今作の発売に至るまでの長~い歴史をご紹介します。
『Duke Nukem』は、元は横スクロール2Dアクションとして1991年に発売され、シリーズ3作目となる『Duke Nukem 3D』から現在のFPSスタイルへと変化を遂げていきました。一般的にシリアスな雰囲気で展開していくFPSとは対照的に、ユーモア溢れるギャグが満載の世界観とシューターとしての完成度の高さから話題を呼び、世界中のゲーマーの心を虜にするのでした。
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気に入ったベイブにはチップもあげることが可能。硬派とは正反対を突き進んだ『Duke Nukem 3D』。
98年に公開された『Duke Nukem Forever』の初となるトレイラー映像。
グラフィック、BGM等演出面が大幅にパワーアップ。
グラフィック、BGM等演出面が大幅にパワーアップ。
世界的大ヒットを記録した『Duke Nukem 3D』の発売から一年、ついに待望の続編『Duke Nukem Forever』が発表。翌年98年のE3では初となるトレイラー映像も公開され、誰もが期待の新作に心躍らせていました。
ところが、突如ゲームエンジンの変更が発表され開発は振り出しへ。2000年にはTake-Two Interactiveに今作の全権利が移管される等トラブルが続き開発は難航。
その後、2001年、2007年とトレイラーこそ公開されるも発売のメドは立たず、ファンの不安に追い打ちをかけるように、2009年にはTake-Two Interactiveと開発の3D Realms間に係争問題が発生し、プロジェクトは凍結を余儀なくされる事となります。
2001年E3公開の『Duke Nukem』シリーズ10周年を記念したトイレイラー。エンジン変更後の姿もお披露目。
6年ぶりに公開されたゲームトレイラーでは大分製品版に近い形へ。
プロジェクト休止の発表から翌年2010年、発売は絶望的と思われていた中、Gearboxが今作の全権利を取得し、プロジェクトは再始動へ。
年内にはリリース日も発表され、Gearboxの登場により、このままスムーズに発売を迎えると思いきや、更に一ヶ月間の延期が下される事に。本当に出るのか?というユーザーの疑念とは裏腹に、今度こそ無事発売を迎え、2011年6月10日におよそ14年に渡る長い長い歴史が幕を閉じたのでした。
そして同年2月、国内でも日本語版となる『デューク ニューケム フォーエバー』の発売日を2011年夏と発表。しかし、震災の影響等から7月には発売日が未定に。その後、2012年3月8日と正式に変更されるも、またしても約一ヶ月発売が延期され、国内では本日ついにリリースを迎える事となりました。
ついに発売日も決定!14年でここまで進化した!
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今作のメインとなるシングルプレイモードは、前作から十数年後の未来にエイリアンの2度目の奇襲で壊滅の危機を迎えるラスベガスが舞台。プレイヤーは伝説のヒーロー“デューク・ニューケム”を操作し、エイリアンによって誘拐された愛するベイブ(女の子)達の奪還のついでに地球を救うことが目的となります。
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トイレで用を足すデュークの衝撃的なオープニングシーン(攻撃ボタンで“スッキリ”する事も可能)をはじめ、14年経ってもシリーズのメインとも言えるギャグは勿論健在。序盤からこれでもかという程にデューク節が炸裂していき、最初に遭遇するエイリアンに至っては何故か数人で和気あいあいと筋トレに励んでいる始末。そのシュール過ぎる画にはついついテレビに向かってツッコミを入れてしまいました。
その後、ストーリーはチャプターごとに進行しラスベガスのカジノエリアへ。このステージではエイリアンの罠にかかり人形サイズとなったデュークを操作して攻略していく事となります。ステージは中々凝った作りとなっており、敵の攻撃を避けながらラジコンカーで疾走したり、テーブルやソファーの上をジャンプで乗り継いで進んだりと、その姿はまさに少し下品になった映画『トイ・ストーリー』そのもの。
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また、この“チビデューク”はゲーム全体を通して何度か登場し、ハンバーガーショップのキッチンを探索するステージでは、オーブントースターで出来上がったパンの弾みで大ジャンプをしたり、鉄板で焼かれるミートを足場にしたりと、ユニークな仕掛けが多く見られました。
その他にも、博物館に展示された自分の巨大な人形によじ登って進むシーンを始め、随所にギャグを生かしたギミックがうまく散りばめられており、マンネリしがちな謎解き要素を笑いによって上手くカバーしている印象でした。
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対戦ルールはデュークだらけのバトルロイヤルから、相手チームのベイブを持ち帰るキャプチャー・ザ・ベイブまで様々。
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シリーズ特有の細かいオブジェクトに力を入れるこだわりは健在で、落書きの出来るホワイトボードをはじめ、椅子を回転させたり、蛇口の水を捻ったり、更にはトイレの便器に置かれた“褐色の置土産”をブン投げたりと、細かいところまで非常によく作りこまれていました。
中にはポーカーやピンボール等の遊具も存在し、ちょっとしたミニゲームを楽しむ事も可能で、こうした要素は単なるお遊びに留まらず、EGOと呼ばれる体力ゲージ上昇手段の役目を持つものもあり、コピー機で自分のおしりをコピーしたり、スロットで図柄を揃えたり、更には実際に自分で文字を書いてファンにサインを渡すなど、様々なシチュエーションでボーナスが得られ、一風変わった成長要素としても取り入れられています。
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下手な日本語ですが漢字も使ってデュークが日本へ応援メッセージを書いてくれました。
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ストーリーさながら、ゲーム自体も非常にオーソドックスなFPSを踏襲しており、一足先に発売している海外版でも指摘されているようにFPSとしては特筆すべき目新しさはあまり感じられ無かったのが正直な感想。ゲームは全体を通して昔ながらの“避けながら撃ちまくる”スタイルで進行していくのですが、終盤ではただ戦闘を繰り返すだけの場面も見られ、物語の運びからマップも同じような場面が続き、やや中だるみをする印象でした。
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今作では、主人公デュークから、物語を彩るセクシーなベイブ達は勿論の事、モブキャラ同士の会話に至るまで、全てのセリフが日本語吹き替えに対応していました。主人公デュークには大御所、立木文彦さんが担当し、敵を一体一倒すごとに吐かれる決め台詞や、オブジェクトに反応する様子まで全てを日本語化。また、女性陣には喜多村英梨さんや後藤邑子さんといった人気声優の面々が出演。豪華声優陣がテレビでは絶対に聞けないような放送禁止用語を連発する様はまさに必聴です。
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過激な内容から、規制の状況が気になる方も多いかと思いますが、既に海外でリリースされたPC版と比べてみたところ、何点かの表現規制を確認出来ました。主に露出した女性キャラクターの上半身と、一部の壁の書き込みが海外版に比べてアバウトになっていた他、物語中盤で手に入るアイテムの一つが変更されており、入手時の台詞も「海外版では違かった」と日本版独自のものに差し替えられています。ひと通りエンディングまでプレイしましたが、確認できた変更点は上記の通りで、それ以外のゴア表現や性的描写については一際目立った変更は無いように感じました。
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実のところ、今回のレポートでプレイするまでは海外版も見送っていた作品だったのですが、実際にプレイをしてみると、開始3秒でツッコミを入れたくなるオープニングシーンを初め、日本語のボキャブラリーをフルに生かし、ギリギリの線を攻める吹き替えや、他社関係無しのやりたい放題なパロディの数々、更にセクシーでキュートなベイブ達に魅了され、気づけば駆け足でクリアしてしまいました。
前項でも書いた通り、中盤以降のステージに関しての平凡さや、ローディング面等での不満点はあるものの、それ以上に日本のローカライズの限界に挑んだ意欲作として、また、完成までにまさかの14年を費やした歴史的大迷作として、コアゲーマーならば是非手元に置いておくことをオススメしたい一本です。是非とも14年の歴史の詰まった長い長いスタッフロールまで堪能してみてはいかがでしょうか。