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海底都市ラプチャーを舞台に印象深い世界観やストーリーを描き、金字塔と謳われた『BioShock』から6年、カリスマーデザイナーKen Levine氏が再び指揮をとり、ゲーム舞台やキャラクターコンセプトを一新して挑む野心的な続編『BioShock Infinite(バイオショック インフィニット)』。テイクツー・インタラクティブ・ジャパンオフィスにて、4月25日に発売の決まった本作の日本語バージョンをじっくりプレイして、その出来栄えを確かめてきました。
尚、本ハンズオン記事では、ネタバレを避けるため、具体的なストーリー展開には出来る限り触れず、ゲームプレイディテールや筆者の感じた印象を中心にご紹介していきます。
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『BioShock Infinite』のキャンペーンは、雨の降りしきる海岸沖で、主人公である探偵ブッカー・デュイットが、謎めいた男女のカップルに導かれるまま小さなボートに乗って灯台を目指すところからスタートします。手渡された箱には、拳銃と少しの銀貨、そして少女“エリザベス”の写真……。
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この始まりのシーンは、まさに初代『BioShock』のゲーム導入部を連想させるもので、灯台の中に入ったプレイヤーは、ある衝撃的な形で、メインの舞台である空中都市に送り込まれることになります。コロンビアの壮観な景色が目の前に広がった時、バイオショックのファンなら、かつて海底都市ラプチャーを初めて訪れた時の感動がデジャヴのように蘇り、シリーズ未体験のプレイヤーにとってもこれまで見たことのないような全く新しい世界への幕開けとなるはずです。
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主人公のブッカーは、謎の人物から依頼を受けて、コロンビアのどこかにいるエリザベスを連れ出すという目的がありますが、そうしたストーリー背景や彼の過去は、ゲームプレイの進行過程においてキャラクターのセリフやフラッシュバックなどで断片的に描かれており、カットシーンやムービーによってプレイヤーの操作できる体験が中断することはほとんどありません。
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空中都市コロンビアがどのような場所かは、読者の方もトレイラーやスクリーンショットで何度も目にしているはずですが、実際のプレイで散策してみて驚かされたのは、その細部の作り込みと奥行きの深さです。
本作のマップはオープンワールドではなく、進行ルートがある程度定まっているものの、ステージ上にある大部分のオブジェクトは調べたり壊すことが可能で、そこからお金や弾薬、様々なアイテムを手に入れたり、ストーリーを裏付ける音声メッセージが再生されたり、ちょっとした会話やイベントが発生したりと、一回のプレイでは到底調べきれないほどに多くの仕掛けが用意されています。
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真っ暗でじめじめして閉塞感のあったラプチャーとは対照的に、コロンビアは明るく人々で活気づき、20世紀初頭のアメリカをモチーフとした次々移り変わる景観やバックに流れる歌唱曲が、ある種のテーマパークに訪れたかのような気分にさせます。実際にゲーム序盤には、見世物や銃的といった出し物が並ぶカーニバルが存在し、後述するビガーや各種アクション操作のチュートリアル的役目も果たしています。
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ブッカーは、ピストル、ライフル、ロケットランチャーなどバリエーション豊富な銃器から2つを装備できる他、あるイベントを経て、前作『BioShock』のプラスミドと同等の特殊能力であるビガー(Vigor)を習得します。ビガーはソルトと呼ばれるリソースを消費して発動することができ、ゲーム序盤では以下のようなタイプが登場しました。
- 機械系の敵を乗っ取って味方につける“ポゼッション”
- 火の玉を投げつける“デビルズ・キス”
- カラスの群れを放つ“マーダー・オブ・クロウ”
- 敵を空中に持ち上げて無力化する“バッキング・ブロンコ”
ブッカーは腕に装着したスカイフックで近接攻撃を繰り出すこともでき、敵との戦闘時は、銃器ばかりを使うと弾薬が、ビガーを使い過ぎるとソルトがすぐに尽きてしまうため、3つの攻撃方法をバランスよく組み合わせて戦う必要があると感じました。また、ビガーは通常L1/LBボタンで発動しますが、ボタンを長押しして離すことでトラップとして地面に設置することが可能で、戦い方の幅を広げています。
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ビガーや銃器はステージ中のあちこちに設置される特殊な自動販売機で新たなタイプを購入したり、個別にアップグレードしていくことが可能。余談ですが筆者は、“ポゼッション”をアップグレードして人間の敵にも効果を発揮するようにしていなかったため、序盤の戦闘でかなり苦戦するはめになりました。
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さらにゲームを進めることで、ブッカーは“シールド”ビガーを身に付けます。シールドはライフが減少する前にダメージを吸収してくれる能力で、アイテムでしか回復できないライフと異なり、自動回復していくのが特徴。
もうひとつ新たに加わったのが装備アイテム“ギア”の要素。ギアは前作のトニックに似た恒久的能力が得られるアイテムで、攻撃に追加効果を与えるもの、特定タイプの敵に対するダメージ上昇、ブッカーの移動性能を高めるものなど豊富なタイプが用意され、「頭」「胴体」「腕」「腰」の合計4スロットに装備できます。
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こうした多様なシステムに加えて、プレイヤーが“ライフ”“ソルト”“シールド”のいずれかひとつを選んで強化できるポイントが度々登場し、キャラクターカスタマイズ性を強調。『BioShock Infinite』におけるRPGエレメンツは前作よりもいっそう深まったと言えます。
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本作の舞台コロンビアは、1つの大きな浮遊大陸ではなく、細かな島々の集合によって構成されており、ブッカーは“スカイライン”という空中に敷かれたレールにスカイフックで飛び乗り、目のくらむような高速で島から島へと移動することができます。『BioShock Infinite』の世界観を象徴する魅力的な要素であり、文字通りジェットコースター感覚のゲームプレイを味わえます。
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スカイラインは単なる移動の演出シーンではなく、プレイヤーが乗ったまま銃で攻撃でしたり、方向転換したり、速度を上げたり、あるいは任意のタイミングで別のレールや地面に飛び移れたりと、操作可能なゲームプレイにしっかりと組み込まれている点が印象的。ただ、余りにも高速で上へ下へと動きまわるため、進行方向が分からなくなり、視点移動には苦労しました。
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本作のヒロインであるエリザベスは、モニュメント島にある巨大な女神像の内部に子供時代から幽閉されており、救出に向かったブッカーは、別世界への裂け目を開ける彼女の能力“ティア”や、不可思議な光景の数々を目にし、いよいよ二人が出会ったその時からストーリーの歯車が大きく動き出します。
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エリザベスを監視し、彼女と深い繋がりを持った巨大な機械型クリーチャー“ソングバード”は、前作のビッグダディに匹敵する象徴的な敵キャラクターのひとつで、二人の脱出を阻止しようと襲いかかってきます。この場面で直接戦うことはありませんが、耳をつんざくようなその奇声は、プレイヤーの耳から決して離れることはないでしょう。
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追手からからくも逃れた二人は意気投合して行動を共にし、ここから彼女の存在自体が大きなゲームプレイ要素の一部として加わることになります。
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Ken Levine氏は過去にEurogamerのインタビューで、「(Half-Life 2の)Alyx以来、優れたAIコンパニオンは存在していない」と発言しました。NPCのサイドキックが、壁に引っかかったり勝手に死んだりするのは見慣れた光景ですが、本作のエリザベスはしっかりとプレイヤーの後をついて歩き、戦闘中になれば、ヘルスや弾薬をブッカーに放り投げてサポートしてくれます。
それだけでなく、エリザベスはティアの能力を操ってブッカーの戦いを支援。戦闘が発生する場所では、ティアを使って別次元から呼び出せるオブジェクトが半透明に光って複数現れ、プレイヤーがいずれかひとつを選択することになります。筆者が体験した序盤の戦闘スポットでは、敵を攻撃するタレットやスカイフックで飛び移れるフックなどが存在し、選んだオブジェクトによってプレイヤーの戦い方も変わるようです。
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戦闘以外でも、エリザベスは、何かに気を取られて足を止めたり、ブッカーに世間話をしたり、歌ったり、笑ったり、その生き生きとしたリアクションや行動パターンの豊富さに驚かされます。うっとり彼女の姿に見とれていたら、真後ろにいる敵に気づかずに自分が蜂の巣にされていた、ということもあるので油断は禁物です。
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初代『BioShock』では、海底都市ラプチャーの創設者を名乗るアンドリュー・ライアンがゲーム冒頭から強烈な存在感を放っていましたが、今作『BioShock Infinite』でも、同様の存在として、カムストックなる謎のキャラクターが登場します。
カムストックは“コロンビアの預言者”あるいは神として崇められる人物で、町中で見つかる彫像やプロパガンダポスターの多くは彼の姿や思想を描いたもの。どういうわけか、エリザベスを連れ出そうとする主人公ブッカーのことを既に知っており、執拗な手段で妨害してきます。
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モニュメント島から間一髪のところで脱出した二人は、バトルシップベイと名付けられた地区の砂浜に流れ着き、そこから抜け出すために、カムストックの戦争の歴史を記念した“英雄ホール”に足を踏み入れることに。英雄ホールには、カムストックだけでなくブッカーやエリザベスにも深く関わる謎が秘められており、Ken Levine氏が仕組んだ衝撃的なストーリー展開がプレイヤーを待ち受けています。
今回のハンズオンは、英雄ホールの中で強力な敵キャラクターであるモーター・パトリオットがブッカーに襲いかかるところで終了。
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テイクツー・インタラクティブ・ジャパンの担当者によると、日本語のローカライズ作業は大部分が完了しており、筆者がプレイしたバージョンでも、膨大なキャラクターのセリフはもちろんのこと、シリーズおなじみの音声メッセージも日本語で聞くことができました。
現在は細かな部分の調整中で、『BioShock』1作目のローカライズに習って、最終的には壁やポスターなどにゲーム進行に関わる文字が書かれていた場合、プレイヤーの視点を合わせた際にその内容が字幕で表示されるようになるそうです。
表現規制については、既に発表のあった通り、ヘッドショット時などの過激な頭部欠損描写がカットされているのみで、それ以外のコンテンツや表現はすべて海外版オリジナルのものをそのまま収録。
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3時間近くに及ぶプレイセッションで『BioShock Infinite』を一心不乱に体験し、Ken Levineという1人のクリエイターの持ち味や信念が色濃く表現された作品であることが分かりました。ハリウッド大作アクション映画に憧れて量産されるステレオタイプなゲームとは正反対の、アーティスティックかつ意外性に溢れたストーリーテリング、謎や伏線やたっぷり張り巡らされたプロットは、まさに6年前の『BioShock』そのものであり、ゲームデザインにおけるアーティストの創造性が如何に大きな力を持つかを再認識させてくれます。
【製品情報】
タイトル: バイオショック インフィニット
発売元: テイクツー・インタラクティブ・ジャパン/2K Games
ジャンル: アクションアドベンチャー
対応機種: PlayStation3/Xbox360
発売日: 2013年4月25日発売予定
価格: PlayStation3版 7,770円(税込)
Xbox360版 7,770円(税込)
CERO表記: D
公式サイト: http://www.bioshockinfinite.com/ja
タイトル: バイオショック インフィニット
発売元: テイクツー・インタラクティブ・ジャパン/2K Games
ジャンル: アクションアドベンチャー
対応機種: PlayStation3/Xbox360
発売日: 2013年4月25日発売予定
価格: PlayStation3版 7,770円(税込)
Xbox360版 7,770円(税込)
CERO表記: D
公式サイト: http://www.bioshockinfinite.com/ja
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