ユーザーが盛り上げるゲーム業界 パッケージソフト、ソーシャルゲーム、eスポーツの将来・・・黒川塾(七) レポート

黒川塾は数々のエンターテイメント業界を遍歴した黒川文雄氏が開催する毎月、恒例のイベント。今回も豪華なゲスト陣が招かれ、「僕らのゲーム業界ってなんだ・・・!?」と題し、ユーザー主体でゲーム業界を盛り上げていく方法が議論されました。

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さて話はeスポーツからジンガジャパンの代表取締役社長を務めていた松原氏に移りました。昨年、突然の事業縮小に伴い、日本のスタジオが閉鎖された内幕を松原氏は語りました。

松原氏がジンガに入社したのは、ちょうど2年前の震災直後。もともとコーエーテクモにおいてもソーシャルゲームに取り組みたかったところ、アメリカでジンガにインタビューする機会に恵まれました。そこで率直に「ソーシャルゲームを作るのは物足りないんじゃないか?」と質問したところ、Facebookを通して何億人ものユーザーに楽しんでもらえることは、従来のゲームではありえなかったことであり、楽しくてしょうがないと応えられたといいます。

結果として、それがきっかけとなって松原氏はジンガに入社しました。去年、ジンガジャパンからソーシャルゲームをリリースすると共に、日本でのソーシャルゲームも大流行しました。しかしながら、日本のカードバトル型ソーシャルとジンガのゲームのシステムは異なり、「ガチャ」と呼ばれるクジ引き方式の課金制度も海外ではあまり理解が得られなかったといいます。そうこうしている間に、ジンガの成績が急下降、結果として世界中のスタジオを閉鎖して事業縮小となりました。

この原因は基本的には急速な事業拡大に成績が追いつかなかったことにあると、松原氏は説明しています。実際にはジンガジャパンの成績は悪くはなかったが、会社全体としての縮小として撤退した形だといいます。しかしながら、一気にグローバルに進出するアメリカらしいジンガの社風には学ぶところが多かったといいます。

日本企業はまず本国での事業を固めてから各国に展開するのに対して、ジンガでは最初からグローバルにスケールする事業を立ち上げ、ゲームの開発と同時にローカライズ、カスタマーサービス、マーケティングを行なっているそうです。そのため、ある地域に進出するのも、ゲーム開発の1つのオプションとしてかなりフットワーク軽く始めるといいます。

しかしながら、日本市場は世界全体からみると特殊であり、そのことを本社に説明することが松原氏の仕事としては大きかったといいます。例えば、「ガチャ」といった課金、ブラウザゲームという形式など、アメリカ人にはわかりづらいといいます。課金の方式としては、ガチャよりもシンプルな体力の回復が一般的です。結果として、日本のソーシャルゲームの方が利益率は高い一方、ジンガは1ヶ月のアクティブユーザーが3億人という規模を生かして薄く広く利益をあげています。

また松原氏がジンガジャパンで開発した『あやかし陰陽録』は、現在でもサービスは継続されており、台湾や中国では日本のゲームの中で一番流行っているそうです。それらの活躍を見るのは嬉しい半面、残念だと松原氏は振り返っています。

■ユーザーフレンドリーな課金システム

松原氏のジンガでの奮闘を振り返った後、話題はユーザーにとって一番気持ちの良い課金システムに移りました。平井氏はオンラインゲームなどでは、協力してくれたユーザーにお礼をするような「粋な方法」で課金をもっとしたいと述べています。

それに応えて、筧氏は阿佐ヶ谷ロフトで行われている「Tokyo Game Night!!」というイベントの「奢られ君」というシステムを紹介しました。ゲームなどのストリーミング配信を行なうこのイベントでは、視聴者が気に入ったプレイヤーなどにネットを通して「奢る」ことが可能だそうです。例えば、プロゲーマーの梅原大吾氏が出演した時は、世界中から視聴者が集まりましたが、良いプレイを見せた瞬間、多くの視聴者が「奢り」を選択した結果、ロフトの売上が尋常ではないほと上がったそうです。

それに対して松原氏も、ギフトという仕組みは面白く、人間はプレゼントを送られたら送り返したくなると述べています。そういったコミュニケーションを通した課金のあり方は健全で今後はもっと検討するべきだと提起しています。実際にネット上では、そのような小さなギフトを手軽に送るサービスが人気を集めており、現在のソーシャルゲームがガチャという課金システムに頼りすぎていることは考えなおす必要があると述べています。もっとユーザーが楽しめる形の課金システムが理想だといいます。

またゲームのチューニングのプロである橋本氏は、ゲームバランスという面でも課金システムの決定は重要だと述べています。課金すればするほど強くなるようなゲームはゲームとして成立しない一方で、課金要素がないとビジネスとしてはやっていけません。そのバランスを取ることが今後の課題だと述べています。

■ユーザーと開発者のより良い関係
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《今井晋》

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