偏見を持たずにプレイしてほしい…新規IPの難しさと『ヒーローバンク』に秘められた熱い想いとは

なぜ今、セガが子供向けゲームを作るのか。そしてそこに秘められた思いとは。気になる事をTGS2013に来ていたプロデューサーの下里陽一氏にインタビューしていきました。

任天堂 3DS
プロデューサーの下里陽一氏
プロデューサーの下里陽一氏 全 8 枚 拡大写真
その設定や『龍が如く』の名越氏が制作総指揮を務めることで話題となった『ヒーローバンク』。なぜ今、セガが子供向けゲームを作るのか。そしてそこに秘められた思いとは。気になる事をTGS2013に来ていたプロデューサーの下里陽一氏にインタビューしていきました。

――まずは、企画立ち上げの経緯を教えて下さい。

下里:弊社としましては、過去にも『ムシキング』など子供向けゲームを手がけ、その市場の大きさは理解しています。そのため、もう一度立ち上げようとなりました。とはいえ、他社さんからいくつかのタイトルが既に出ているので、後出しなんです。なので、本来なら新規IPとしての立上げは難しく、様々なことを模索しました。そんな最中、小学館のコロコロコミックさんと一緒にタッグを組めるという話があったので、一緒にタイトルを育てて行こうとなりました。

――つまりコロコロコミックさんの存在が大きいと。

下里:そもそも、コロコロコミックさんの話が無かったら、立ち上がってないと思います(笑)それぐらい小学3・4年生をターゲットにすると、コロコロコミックさんでマンガ連載されるというのは絶対条件なんです。ですので、企画段階からコロコロコミックさんに加わってもらって、マンガ連載を始めから視野に入れて始めていきました。

――子供向けゲームを作る上で、外してはいけないコンセプトは何かありましたか。

下里:弊社は大人向けのゲームが主流ではありますが、ターゲットが何であれ、作り方や面白い部分は変わらないと思っています。ただ子供向けというのは、大人向けを作る以上に厳しい目で見られますので、ゲームを丁寧に作ったり、やり応えのあるような仕組みを随所に盛り込むなどの工夫をしています。

これらは、もちろん当然のことですが、子供たちはより長い時間を、それこそ1年単位で遊んだりしますので、それに見合うシステムやゲーム性、ストーリーを入れることを重要視しました。

――そういえば、世界観がぶっ飛んでいますよね。

下里:新規IPなので、キャッチーな何かがないと認知されないと考えました。とはいえ、お金と言うのは大人にとっては当たり前で、子供にとっても身近じゃないですか。ところが、お金を題材とした子供向けゲームがそれほどないので、生々しく身近なところに切り込んでいくチャンスがあるじゃないかなと。

――身近なテーマを扱っているだけに、何か伝えたいことなどがあるのではないでしょうか。

下里:裏設定ではないですが、主人公がお金を稼いで返済していくんですけど、その過程にあるお金の大切さは伝えて行きたいですね。ただ面白いのが前提で、その中で1円の大切さが伝わればいいなと。

――プロローグは既に公開されていますが、その後どうなるのでしょうか。

下里:少年マンガでよくある悪の組織が出てきます。そこはあえて王道を入れていて、プラスでお金という要素をミックスしているんです。なので、「借金返済」と「悪の陰謀の阻止」という2つの目標を目指してストーリーは進んでいきます。

――めちゃくちゃ濃いストーリーになりそうですね。

下里:名越が制作総指揮をしていますので、ストーリーと世界観は、特にこだわっていますし面白いものに仕上がっています。『龍が如く』と同じように、「誰もが知っていることだけど、誰もそこに切り込んで行ってない」という根底にあるゲームの打ち出し方が同じだと思っています。

――様々なイベントで露出されていますが、子供の反応はどうでしたか。

下里:6月に行った「次世代ワールドホビーフェア」の時点ではまだまだ完成度は低く、お金という要素をそれほど出していなかったんですけど、反応はよかったですね。特に、バトルを違和感無く楽しんでくれていて、よかったなぁと。

――逆に親御さんはどうでしたか。

下里:ゲームを立ち上げて少したった時に、子供たちとその親御さんの反応を調査したんです。すると、親御さんからは賛否両論でした。やはりお金のネガティブな部分がダメという人や、まだ早いという人も居ましたが、子供の頃から金銭感覚を養えていいという人もいました。

実はこれ、望んでいた結果なんです。というのも、普通と言われていたり、みんな同じ意見というのが一番いやなんですよ。ですので、手ごたえを感じました。それはコロコロコミックさんも同じで、キャラクター作りなんかも、最初は「何これ!」って思うんですけど、それがどんどんプラスになって感情移入していくんですよ。ですので、調査の結果を見てコロコロコミックさんからも「これはいいよ」と言っていただきました。

――では10代後半以降の反響はどうでしょうか。

下里:「円(¥)」という実在の要素を入れていますが、実はもう1つ、よりリアルに感じる要素が入る予定なんですよ。それによってリアリティーが増して、もっと上の層の方にも魅力を感じてもらえるんじゃないかなと思っています。

――キャラクターの話がでましたが、デザイン上で気をつけた点はありますか。

下里:コロコロコミックさんのマンガに出てくる主人公って、イケメンが多いんですよ。ところが、今回の主人公のキーワードが「80年代・熱血・番長」といった感じなんです。それを今風にアレンジして差別化を図ろう。というのが始まりで、ヒーロー着も面白かっこいいテイストにしようとなりました。パッと見はコミカルなんですけど、いざ戦ってみると決めるところは決めてかっこいいと。

モチーフが職業になっていて、そこは小学3・4年生にも馴染みがあるじゃないですか。なので、こちらが作ったオリジナルのヒーローよりも職業をモチーフにしたキャラクターデザインにすることにより、身近に感じてもらえると考えたのです。

――子供向けゲームに懸ける拘りは何かありますか。

下里:子供向けではあるんですけど、大人も楽しめる作品に仕上げるつもりです。本作は、バトル部分と運営的な部分で稼いでいくんですけど、ヒーロー着を集めたり、売買価格の相場的な要素があったりと、子供も大人も熱中するゲームシステムなんですよ。ですので、親子一緒になって楽しんで欲しいですね。通信対戦もできますし。

――バトルも他にはないシステムですよね。

下里:そこはセガらしいシステムになっているかなと(笑)せっかくの新規IPなので、単純にターンのコマンドバトルにしたくなかったんですよ。これバランス調整がすごく大変なんですけど、リアルタイム要素とターン要素を入れたバトルシステムにチャレンジしています。

――攻撃時にお金が減るのは面白いと思いました。

下里:コストがお金なんですよ。何でもかんでもお金ですね。そこは新しいと思います。

――現段階ではゲームの他にマンガ展開が決まっていますが、ゲームで再現する事とマンガで再現する事の線引きはどの様にしていますか。

下里:最初の立ち上げからクロスメディア展開することは想定していました。ですので、マンガは各キャラクターや世界を掘り下げて、面白おかしく出来ます。特にヒーロー着なんかは、ゲームだとさらっと流されてしまうので、そこを詳しくやったり、ゲームで目立たないキャラクターを立たせる様にしています。またゲームで再現できない、キャラクター同士の関係やバトルの見せ方もマンガならではの表現でお届けできると思います。

――つまり、どちらから入っても新鮮な気持ちで楽しめると。

下里:その通りです。それこそ同時展開なので、ゲームやってマンガ見たときの驚きが無ければ意味が無く、逆もそうだと思うので。

――今後の展開はどうでしょうか。

下里:継続的にやっていきますよ。様々な仕掛けを検討しています。

――最後に読者に向けてメッセージをお願いします

下里:子供向けと思われて欲しくなくて、ゲームは非常に新しい仕掛けを盛りだくさんにしています。ですので、子供から大人まで楽しめる作品です。ぜひ、偏見を持たずにプレイしていただけると幸いです。

3DS用ソフト『ヒーローバンク』は2014年春発売予定。価格は、パッケージ版が5,550円(税込)、ダウンロード版が4,900円(税込)です。

(C)SEGA

《栗本 浩大》

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