■「ファミコンとその時代」

・著者: 上村雅之、細井浩一、中村彰憲
・出版社: エヌティティ出版
・発売日: 2013年6月
・頁数: 279ページ
「ファミコンとその時代」は、1983年に発売されたファミコンの開発史やその盛り上がりを解説する書籍。全5章で構成され、前半の3章までは主に日米におけるコンソール機の盛り上がりを説明。任天堂がコンソール機を開発するまでの過程やアイデアの基になった出来事などを描き出しています。後半の4章はファミコンの開発史を扱っており、仕様や半導体メーカー、ROMカセット、CPUと音源、コントローラー、TVとの接続方法、そしてキーボード装備の是非などです。
また、5章ではハードだけでなく、ユーザーコミュニティなどの側面、ゲームの販売本数をはじめとするデータが掲載されています。特に地や巻末にあるデータは、国内と海外のサードパーティー参入年や販売タイトル数があるので、日米での取り組み方の違いを数字で知りたい読者には注目の内容です。しかし、本書で扱っている時代はスーパーファミコンが登場する前の80年代後半までで、後継機登場や生産終了までの経緯が言及されていません。将来、内容を補強した改訂版が出るのを期待したいところ。かなり分かりやすく書かれているので、興味あるユーザーは今からでも読んでみるのも悪くはないと言えます。
■「それは『ポン』から始まった―アーケードTVゲームの成り立ち」

・著者: 赤木真澄
・出版社: アミューズメント通信社
・発売日: 2005年9月
・頁数: 530ページ
「それは『ポン』から始まった―アーケードTVゲームの成り立ち」は、アーケードゲーム機以前のピンボールゲーム機から3Dポリゴン描写が普及した90年代までのアーケードゲームを中心としたゲーム史を解説する書籍です。全31章で構成。内容はATARIやサービスゲームス(SEGA)など各メーカーの歴史やゲームタイトルの開発経緯からゲームの著作権やコピー問題までを取り扱っています。取り上げているタイトルと写真が多いため資料性の高いカタログとしても機能する他、ゲームにおける社会問題の一覧を俯瞰出来るのも特徴の一つです。
その中で異色を放っているのがコンソール機に関する第28章。全体で1つしかありませんが、メーカーの収益などを具体的な数字を用いて解説しているため、アーケードを含めた事業展開が各メーカーにどのような影響を与えたかを知ることが出来ます。アーケードゲームに関しては、ほぼ完璧な内容と言えますが、日米のPCゲームや家庭用ゲームに関しての記述は少なめ。ページ数は多いものの、アーケードゲーム史が気になるユーザーには注目の本と言えるでしょう。
■「ダンジョンズ&ドリーマーズ」

・著者: ブラッド・キング、ジョン・ボーランド
・翻訳: 平松徹
・出版社: ソフトバンククリエイティブ
・発売日: 2003年12月
・頁数: 395ページ
「ダンジョンズ&ドリーマーズ」は、リチャード・ギャリオットのOrigin Systemsと、ジョン・カーマックのid SoftwareにおけるPCゲームの発展を解説する書籍。全10章で構成され、『Ultima』シリーズや『DOOM』の開発史の他、マルチプレイヤーを通じたファンコミュニティの成長などが取り上げられています。
第2章では、先日GOGにて無料配信されたリチャード・ギャリオット制作の世界初となるコンピューターRPG『Akalabeth』の開発経緯やパッケージも掲載されており、初期のコンピューターゲームがどのような注目を浴びていたのかを知ることが出来ます。また、QuakeConなどのイベントや『Counter-Strike』などのMOD作品によるコミュニティの発展にも目を向けているため、海外におけるPCゲーム文化やその歴史が気になる読者にオススメです。
■「マイクロソフトの蹉跌―プロジェクトXboxの真実」

・著者: ディーン・タカハシ
・翻訳: 永井 喜久子
・監修: 元麻布 春男
・出版社: ソフトバンククリエイティブ
・発売日: 2002年10月
・頁数: 487ページ
「マイクロソフトの蹉跌―プロジェクトXboxの真実」は、Microsoftが2001年秋に北米で発売した初代Xboxをめぐる開発史です。全29章で構成。Xbox開発の初期段階から関わった一人であるシェーマス・ブラックリー氏を中心に、PCに近い第1案とセットトップボックス寄りの第2案の選定や、Bungieの買収と『Halo』の開発などの内容が盛り込まれています。
前半の第1章から第5章まではXboxの基礎となる、グラフィックAPIのDirectXとブラックリー氏が関わった物理エンジン搭載の『Jurassic Park: Trespasser』の制作秘話、Microosftから見たPCゲームなどを取り上げています。また、MicrosoftによるSEGAを筆頭とした各メーカーの買収の話や、小型コントローラーなどの制作過程なども詳細に記載されており、Microsoftが本格的に展開するまでのいきさつを知ることができます。後書きには2002年に発売した欧州と日本での反響についても言及しているので、Xbox初期の時代背景を学べる重要な一冊です。
■「漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち」

・著者: 西田 宗千佳
・出版社: 講談社
・発売日: 2012年8月
・頁数: 322ページ
「漂流するソニーのDNA」は、1993年から2011年までのPlayStationに関連した出来事を解説する本です。全5章で構成されており、初代PSやPS2の開発史、PSXの不振、前途多難なPS3の制作、久夛良木健氏退陣後のSCEといった時代ごとの経緯を振り返っています。本書の中で第4章はPS3開発に焦点を当てており、なかなか決定しない仕様や高騰する開発費、難航するOS制作など、説明しています。
CPUなどのハードウェア解説は比較的簡潔に書かれていますが、グラフィック関連の話は多少わかりづらい部分も。また、内容的に同著者の「美学vs.実利 “チーム久夛良木”対任天堂の総力戦15年史 チーム」を大幅に追加改定したものであるとのこと。本書は、Amazon Kindleストアなどで販売されており、入手が容易です。2014年12月に20周年を迎えた初代PSの歴史を振り返ってみるには、簡潔で読みやすい本です。
■まとめ
今回取り上げた5冊の書籍は主にハードウェア方面に注目したものです。取り上げた本以外にもゲーム関連の本は、著名なゲーム開発者に焦点当てたものや大型タイトルのメイキングなどがあります。読者の皆さんもオススメの書籍をコメント欄で教えてください。
記事提供元: Game*Spark