【hideのゲーム音楽伝道記】第9回:『ゼルダの伝説』シリーズに登場する楽器の歴史

インサイドをご覧の皆さま、こんにちは。ゲーム音楽好きライターのhideです。ゲーム音楽の連載記事「hideのゲーム音楽伝道記」第9回目となる今回は、『ゼルダの伝説』シリーズの音楽について書いてみようと思います。

その他 音楽
【hideのゲーム音楽伝道記】第9回:『ゼルダの伝説』シリーズに登場する楽器の歴史
【hideのゲーム音楽伝道記】第9回:『ゼルダの伝説』シリーズに登場する楽器の歴史 全 11 枚 拡大写真
インサイドをご覧の皆さま、こんにちは。ゲーム音楽好きライターのhideです。ゲーム音楽の連載記事「hideのゲーム音楽伝道記」第9回目となる今回は、『ゼルダの伝説』シリーズの音楽について書いてみようと思います。

『ゼルダの伝説』は、1986年に任天堂から発売されたアクションアドベンチャーゲームです。主人公・リンクが、ハイラル王国を舞台に冒険を繰り広げます。(タイトルが「ゼルダ」なので誤解されがちなのですが、主人公の名前は「リンク」ですよ!) 現在に至るまで多数の続編が発売されている任天堂の代表的な作品で、日本のゲームファンはもちろん、海外のファンからも高い人気を誇っています。

なにを隠そう、僕は大の『ゼルダ』好きで、初代から最新作『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面 3D』まで、本編作品はすべてクリアしています。『ゼルダ』好きが高じて、時々『ゼルダ』ファンの皆で集まるオフ会を開催しているほどです。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

さて、僕がなぜ『ゼルダ』の音楽を好きなのかをお話ししていきましょう。『ゼルダ』の音楽は、近藤浩治氏、永田権太氏、峰岸透氏らをはじめとした任天堂の音楽スタッフ陣が手掛けていますが、とにかくメロディが美しく、楽曲としての質が高いです。冒険心をかきたててくれる勇壮なフィールド音楽、不安さをあおるダンジョンの音楽、熱い戦いを盛り上げるバトル音楽など、さまざまな楽曲群が、『ゼルダ』の世界を存分に盛り上げてくれます。

また、『ゼルダ』の大きな特徴としては、「ゲーム中に楽器が登場する」ことが挙げられます。シリーズのほとんどの作品に何かしらの楽器が出てきて、作品によってはその楽器を実際に演奏することもできます。楽器を演奏することで何らかの特別な効果があらわれ、それを謎解きで使うことも多いのですが、「自分で楽器を演奏できる」、そして「楽器を使って謎を解く」というのはとても面白くて、僕は大好きですね。

『ゼルダ』シリーズには、実にたくさんの楽器が登場します。こんなに多種多様な楽器が登場するゲームシリーズは他にまず無いでしょう。今回は、歴代の『ゼルダ』作品を、ゲーム中に登場する楽器の数々とともにご紹介していきたいと思います。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆



初代『ゼルダの伝説』(1986年、ディスクシステムで発売)には、アイテムの1つとして笛が登場しました。使用すると、竜巻を呼んで、各ダンジョンの入口にワープすることができます。ちなみに『スーパーマリオブラザーズ3』にも他のワールドにワープできる笛が登場するのですが、この笛の音は、『ゼルダ』に登場する笛の音とメロディが同じです。ちょっとしたパロディですね(笑)。

続く第2弾『リンクの冒険』(1987年、ディスクシステムで発売)にも、第五神殿の宝物として笛が登場。不思議な音色で古き力を呼び起こすというこの笛は、ゲーム中のとある場所を通せんぼしているモンスターを退治するために使います。



『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』(1991年、スーパーファミコンで発売)には、アイテムとしてオカリナが登場します。『ゼルダ』シリーズをご存じの方は、『ゼルダ』の楽器といえばまずオカリナを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、実はオカリナが初めて登場したのは『神々のトライフォース』なのです。本作では、オカリナを使用すると鳥を呼ぶことができ、ハイラルの各地に飛んで移動することができます。移動する地点は自分で選べるので、移動がだいぶ楽になるスグレモノです!



続く『ゼルダの伝説 夢をみる島』(1993年、ゲームボーイで発売)にもオカリナが出てきます。本作では、眠っているものを起こす「かぜのさかなのうた」、フィールドのとある場所にワープできる「マンボウのマンボ」、とある生き物を生き返らせたり、命を吹き込むことができる「カエルのソウル」の3曲を演奏できます。

さらに本作では、各ダンジョンをめぐって8つの楽器を集めていくのですが、全ての楽器が集まったとき、とある場所でそれらの楽器を使って「かぜのさかなのうた」の合奏をするのです。ネタバレを避けるため多くは語りませんが、この合奏からのエンディングの展開に、僕は衝撃を受けました。ゲームボーイのあの小さな画面で、あの3和音で、あんなに感情を揺さぶられるなんて思いませんでしたね。個人的には『ゼルダ』シリーズの中で一番印象的な作品です。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆



初期の『ゼルダ』作品では、楽器はゲーム中のいちアイテムという色合いが強かったのですが、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』(1998年、NINTENDO64で発売)では楽器がより前面に押し出されました。サブタイトルにもなっている「時のオカリナ」が、ゲーム中に非常に重要な役割を果たします。

本作では、プレイヤーがオカリナを実際に演奏できるようになりました。コントローラのボタンを押すことで、1音ずつオカリナの音色を奏でることができるのです。12曲にもおよぶオカリナ曲が登場し、それぞれの楽曲には、ハイラルの各所にワープしたり、嵐を呼んだり、昼夜を逆転させたり、愛馬エポナを呼んだりといったさまざまな効果があります。また、用意されているメロディだけでなく、ボタンをうまく組み合わせれば、自由にオカリナを演奏することも可能です(笑)。



続く『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』(2000年、NINTENDO64で発売)には、オカリナに加えて、ラッパ、コンガ、ギターが登場します。リンクが仮面をかぶると、デクナッツ族、ゴロン族、ゾーラ族という各種族の姿に変身できるのですが、それぞれの姿によって、使う楽器も変わるのです。各楽器で演奏できる楽曲は10曲あり、さらに隠し曲も2曲存在します。各楽曲には、時間を戻したり、魂をいやしたり、眠っている人を起こしたり、自分自身のぬけがらを生みだしたりと、さまざまな効果があります。


『ゼルダの伝説 ふしぎの木の実 大地の章』(2001年、ゲームボーイカラーで発売)には、アイテムとして笛が登場。カンガルーのリッキー、羽根の生えたクマのムッシュ、恐竜のウィウィという動物たちのいずれかを呼ぶことができます。

また、同時発売された『ゼルダの伝説 ふしぎの木の実 時空の章』には、「時のたてごと」という楽器が登場。時を移動するゲートである”時の穴”に力を与える「やまびこのしらべ」、昔の時代から今へと移動できる「ながれのしらべ」、昔と今を自在に移動できる「ときのしらべ」の3曲を奏でることができます。


『ゼルダの伝説 風のタクト』(2002年、ニンテンドーゲームキューブで発売)には、不思議な力を持ったタクト(指揮棒)が登場。リズムにあわせてコントローラを操作し、タクトを振り、メロディを演奏します。本作の舞台は大海原で、船を使って移動するのですが、風がないと航海ができません。そんなときに演奏するのが「風の唄」。このメロディで自由に風向きを変えて、航海を行うのです。そのほかにも、特定の場所にワープする「疾風の唄」、特定の人や物に乗り移る「操りの唄」、昼夜を逆転する「昼夜の唄」などがあります。

ちなみに、発売当時のインタビュー記事によると、開発当初にはタクトではなく、電子楽器のテルミンを使いたかったのだそうです! もしテルミンが採用されていたら、どんなゲームシステムになっていたのか気になりますね。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

その後『ゼルダの伝説 ふしぎのぼうし』(2004年、ゲームボーイアドバンスで発売)、『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』(2006年、Wiiで発売)、『ゼルダの伝説 夢幻の砂時計』(2007年、ニンテンドーDSで発売)と続きますが、しばらく『ゼルダ』に楽器は出てきませんでした。


次に楽器が登場したのは、『ゼルダの伝説 大地の汽笛』(2009年、ニンテンドーDSで発売)です。本作には「大地の笛」という、DSのマイクに実際に息を吹きかけて演奏する楽器アイテムが登場。眠っているものを起こすことができる「目覚めの唄」、隠された物を見つける事ができる「発掘の唄」などの5曲を演奏できます。

また、本作には「セッション」という要素があり、各地のほこらにいるロコモ族という人々と、楽器を使って一緒に演奏を行います。セッションを成功させると、新たな神殿への道を開くことができるのです。



『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』(2011年、Wiiで発売)には、女神ハイリアが使っていたとされる神器「女神のハープ」が登場します。このハープは、Wiiリモコンを振ることで演奏するのですが、手の動きにあわせて美しい音色が鳴り響き、実際にハープを演奏しているような感覚が味わえますよ! 作中の重要な場所”詩島“の方向を指し示す「女神の詩」や、リンクの心身を鍛える精神世界「サイレン」への入口を開く効果がある「フロルの勇気」などのメロディを演奏することができます。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

……と、『ゼルダ』シリーズに登場する楽器を駆け足でご紹介してきましたが、『ゼルダ』には実にさまざまな楽器が登場するのです。もはや『ゼルダ』と楽器は切っても切り離せない関係にある、と言っても過言ではないと思います。楽器が作品中にこれほど多く組み込まれているゲームは、そうそう無いのではないでしょうか。

僕は『ゼルダ』の音楽にはとても印象深いものが多いのですが、それは単にメロディの良さだけではなく、「自分で楽器を演奏することで謎を解き、冒険する」という、濃いゲーム体験ができることが理由のひとつなのかなと思っています。ゲームと音楽が、とても密接に関係しているんですね。

特に『時のオカリナ』は、初めてプレイした当時、夢中になって遊んだのを覚えています。その革新的な3Dアクションゲーム体験もさることながら、コントローラのボタンを押してオカリナを演奏できるシステムは、まさに自分自身が実際にオカリナを演奏しているかのような感覚を味わうことができました。また、自分が演奏したメロディが、物語に大きく関わっていることにも深い感動を覚えたものです。

僕は実際の楽器を演奏することはできませんが、「楽器をさわって音を出す」というのはとても楽しいことなんですよね。それを疑似的に体験できるのも、『ゼルダ』というゲームが持つ魅力のひとつだと思います。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

今回は楽器にスポットを当ててご紹介しましたが、『ゼルダ』シリーズのサウンドは、音楽も効果音も、非常に印象的なものが多いです。特に、謎を解いた時の効果音によって得られる快感は、『ゼルダ』でしか味わえないものだと思います。あれこれ悩んだ後に、ふとひらめいて試してみて、謎が解ける。そして流れるあの効果音を聴くと、脳がとろけるくらいの気持ち良さを得られるんですよね。『ゼルダ』は、この効果音を聴くためにプレイしてるんじゃないかな、と思うこともあるくらいです(笑)。

『ゼルダ』を、「謎解きが難しそうだし、私には無理かも……」という理由で敬遠している方も少なくないのではないかと思います。でも、近年の『ゼルダ』は、ゲーム中に任意で謎解きのヒントを見られるようになって、初心者の方にも遊びやすい作りになってきていますよ。謎が解けた時の快感は本当に気持ちいいですし、リンクを操作しているだけでも楽しい作品なので、ご興味をお持ちの方はぜひプレイしてみてもらえたらと思います。

あと、『ゼルダ』はたくさんの作品が出ているので、「どの作品から遊んだらいいのか分からない!」という方もいらっしゃるかもしれません。でもご安心ください。それぞれの作品には物語上の直接的なつながりは無いので、気になる作品から自由な順番でプレイして大丈夫です!



個人的には『ゼルダの伝説 夢をみる島』をおすすめします。全体的には明るいお話なのですが、先に進むにつれて意外な真実が明らかになっていく物語が魅力です。プレイすると、きっと心に何かが残ると思いますよ。3DSのバーチャルコンソールで、ゲームボーイカラー版の『ゼルダの伝説 夢をみる島DX』が配信されていますので、ご興味があれば遊んでみてください。

『ゼルダ』シリーズには、ゲームという娯楽が持つ楽しさが、たっぷりと詰めこまれています。どれも面白くて、かつ名曲も数多い作品群なので、ぜひ遊んでみてくださいね。今回は『ゼルダ』シリーズ全体を駆け足でご紹介しましたが、また機会があれば、個別に各作品のご紹介もできればと思っています。

【筆者プロフィール】
 hide / 永芳 英敬


ゲーム音楽ライター&ブロガー。ゲーム音楽作曲家さんへのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会のレポート記事など、主にゲーム音楽関係の記事を執筆しています。『夢をみる島』で最強なのは、道具屋の主人な気がする…(笑)。

[Twitter] @hide_gm [ブログ] Gamemusic Garden

《hide/永芳英敬》

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]

特集

関連ニュース