【hideのゲーム音楽伝道記】第31回:『がんばれゴエモン ゆき姫救出絵巻』 ― 日本各地をめぐる、旅情感にあふれた冒険を彩る音楽

インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽大好きライターのhideです。ゲーム音楽連載「hideのゲーム音楽伝道記」第31回目となる今回は、『がんばれゴエモン ゆき姫救出絵巻』をご紹介します。

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【hideのゲーム音楽伝道記】第31回:『がんばれゴエモン ゆき姫救出絵巻』 ― 日本各地をめぐる、旅情感にあふれた冒険を彩る音楽
【hideのゲーム音楽伝道記】第31回:『がんばれゴエモン ゆき姫救出絵巻』 ― 日本各地をめぐる、旅情感にあふれた冒険を彩る音楽 全 3 枚 拡大写真
インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽大好きライターのhideです。ゲーム音楽連載「hideのゲーム音楽伝道記」第31回目となる今回は、『がんばれゴエモン ゆき姫救出絵巻』をご紹介します。



『がんばれゴエモン ゆき姫救出絵巻』は、1991年7月19日にKONAMIからスーパーファミコンで発売されたアクションゲームです。1980年代後半から2000年代にかけて人気を博した『がんばれゴエモン』(以下『ゴエモン』)シリーズのスーパーファミコン用第1弾作品となります。 主人公の義賊・ゴエモンと、相棒のエビス丸が日本各地をめぐって事件を解決していく、痛快アクションゲームです。

いつも平和な江戸のはずれのはぐれ町。このところ、町の北にある「ほろほろ寺」に、美人の幽霊が出るという噂が流れていました。ある日ゴエモンの家に駆け込んできたエビス丸の話によると、その幽霊にちょっかいを出そうとした者が、痛い目にあったとのこと。ゴエモンは「幽霊のぶんざいで人間をイタイ目にあわせるたぁ、ふてえ野郎だ!」と怒り、エビス丸を連れて幽霊退治に向かうことになります。ところがゴエモンたちは、幽霊さわぎをきっかけに、大江戸城のお姫様、「ゆき姫」の失踪事件という江戸の一大事に巻き込まれていくのです。はたしてゆき姫様はどこに――? 日本全国を股にかけた、ゴエモン&エビス丸の珍道中が始まります。

本作は、時代設定としては江戸時代をベースにしながらも、ゲームセンターや競馬場といった現代的な要素を織り交ぜた独特の世界観になっています。登場する敵キャラも、幽霊、虚無僧、御用役人、大ダコ、おたふく隊、忍者、天狗、からくりロボなど個性豊かです。また本作のポイントとしては、「2人同時プレイが可能」という点が挙げられますね。発売当時小学生だった僕は、僕の弟や、近所に住んでいたゲーム好きのお兄ちゃんと一緒に、何度も何度も楽しくプレイしていたのを覚えています。

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本作の魅力を一言で言うとするならば、なんといっても“旅情感”です。このゲームは「旅をしている感覚」がきわだって素晴らしいのです! ゴエモンたちを操作して、日本全国を旅してまわっていく楽しさがこの作品には詰まっています。

そして、“旅情感”を大きく引き立たせていた本作の大きな魅力のひとつが、音楽だと思います。風情豊かな音楽が、日本各地を旅する“旅情感”を大いに盛り上げてくれて、プレイヤーが実際に各地を旅行しているかのような気分にさせてくれる魅力があります。僕も実際に、ゲームを通じていろんな土地を訪れて、楽しい旅行をしたような気分になれました。

本作の音楽を手掛けたのは、かつて存在したコナミのサウンドチーム「コナミ矩形波倶楽部」名義となっており、実際の担当者は上高治巳氏と上原和彦氏のお2人です(上高氏は、『ギターフリークス』や『ドラムマニア』シリーズなどに関わっていたJimmy Weckl氏と同一人物です)。ゴエモンの真骨頂といえる情緒豊かな和風サウンドは非常にクオリティが高く、発売から25年が経った今聴いても、まったく色あせていない魅力があります。

◆旅情感にあふれた冒険を彩る楽曲群


このゲームは各ステージ(以下、ゲーム中の表記にあわせて「すてえじ」と表記します)ごとに、「町を探索 → 横スクロールのアクションシーンを攻略 → ボスを倒す → イベントシーン」という流れの繰り返しで進んでいきます(一部、アクションシーンが無いなど例外あり)。各すてえじごとに日本国内の様々な土地を巡っていくのですが、どのすてえじも和風の旅情感ある音楽が流れていて、ゴエモンたちの冒険を風情豊かに彩ってくれますよ!

それでは、本作の中で印象深い楽曲を、各すてえじごとにピックアップしてご紹介していきたいと思います。

【すてえじ一 『謎のおんな幽霊』(江戸)】
●「はぐれ町旅情」 ゴエモンたちの旅の出発点となる、江戸のはぐれ町で流れる楽曲です。ゆったりした旋律が、穏やかな町の雰囲気を表現しています。ちなみに、幽霊さわぎで町にお化けたちが現れると、町の曲は暗~く不気味にアレンジされた「霧のお化け町」という曲に変わってしまいます。

●「謎のほろほろ寺」 すてえじ一のアクションシーン、ほろほろ寺の内部で流れる楽曲です。アップテンポで繰り広げられる、鼓や三味線風の音色による和風サウンドが非常にカッコイイですよ!

●「お化け出現」 ほろほろ寺の奥で待ち受けるボス・女幽霊と戦う時の音楽です。ひゅ~、どろどろ……という怪しい音の後、一転してアップテンポな和風ロックでガンガン展開するのがアツイです! この曲は、すてえじ二以降に待ち受けるボスたちとの戦いでも流れ、ボスとの熾烈な戦いを盛り上げるための大きな役割を果たしています。

●「猫がおんねん」 女幽霊を倒した後のデモシーンで流れる楽曲です。女幽霊を倒した後に明かされる意外な事実――。それを演出する、あたたかみと切なさを合わせもったメロディが素敵です。

【すてえじ二 『こばん猫を探せ』(讃岐、伊予、土佐)】
●「ゴエモン一人旅」 すてえじ二の舞台、讃岐・伊予・土佐(現在の四国地方)の町で流れます。夕暮れの景色と共に流れてくる、太鼓の落ちついた旋律が、聴いていてじつに風情豊かで心地いいですよ。

●「いなせな救世主」 すてえじ二のボス・ちょうちん魔人を倒した後のイベントシーンで流れます。ここではすてえじ一の最後に出てきたとあるキャラクターの首領が登場するのですが、彼はとある悩みを抱えているのです。そんな時、ゴエモンたちが来てくれた!という彼の安心感や希望が表現されているような、穏やかであたたかいメロディが印象的ですね。

【すてえじ三 『からくり遊園地』 (阿波、淡路)】
●「からくりアイランド」 おたふくの仮面をかぶった“おたふく隊”が行き交うちょっと怪しげな遊園地、からくりアイランドで流れる楽曲です。楽しげなメロディがプレイヤーの気分を盛り上げてくれます。この遊園地には楽しい遊戯施設がたくさんあるので、時間を忘れて楽しめますよ!(詳しくは後述します)。

【すてえじ四 『打倒おたふく隊』(播磨、摂津、河内、大和)】
●「黒豆頂戴」 すてえじ四の舞台、播磨(現在の兵庫県)で流れます。笛をメインに奏でられる、爽やかかつ情緒豊かな旋律が、旅を盛り上げてくれます。

●「黒豆くいねえ」 すてえじ四のアクションステージ、おたふく隊総本山で流れます。ゴエモンたちが静かに潜入するようなイメージで奏でられるパーカッションが心地いい、クールなサウンドがたまらなくカッコイイですよ!

●「いいぞ!やえちゃん」 すてえじ四のボスを倒した後のイベントで流れる楽曲です。ここではくノ一(女性の忍者のこと)・ヤエちゃんが登場するのですが、颯爽と駆け抜けていくように涼やかなメロディが、ヤエちゃんの凛とした雰囲気を表現しているように思います。

【すてえじ五 『侵入!伊賀屋敷』(伊賀)】
●「伊賀のカバメロ」 すてえじ五のアクションステージ、忍者屋敷で流れます。怪しく鳴り響く笛とベースライン、そしてリズミカルなパーカッションによるサウンドが、針山や巨大クラッカーなど非常にいやらしい仕掛け満載な忍者屋敷の雰囲気にぴったり合っていますよ。

【すてえじ六 『恐怖天狗山の怪』(山城)】
●「おいでやす」 すてえじ六の舞台、山城(現在の京都府)で流れる楽曲です。個人的には本作の町で流れる音楽の中で一番好きです! 京の都という土地柄を表現した、雅で爽やかな旋律がじつに旅情的で、魅力たっぷりに冒険を彩ってくれますよ。

【すてえじ七 『伝説の白鏡』(出雲)】
●「出雲の白鏡」 すてえじ七の舞台・出雲(現在の島根県)で、白龍に守られた伝説の存在である「白鏡」と対面するシーンで流れる楽曲です。非常に幻想的かつ穏やかな旋律が、すべてを見通すという白鏡の神秘性を描いているように思います。

【すてえじ八 『ゆき姫を救え!』(琉球)】
●「メンソーレ」 すてえじ八の舞台、琉球(現在の沖縄県)で流れる楽曲です。まさに南国といった趣の、にぎやかな音使いで奏でられるサウンドが楽しめますよ!

●「燃える義賊たち」 琉球のシンボル・守礼門のとある隠し通路から、敵の本拠地に向かうアクションシーンで流れます。全編にわたって落ちついたクールなサウンドなのですが、ゴエモンたちの煮えたぎるような正義感が感じられるような、熱い雰囲気も合わせ持っているのが素晴らしいです!

【すてえじ九 『ゆき姫救出絵巻』(江戸)】
●「お江戸でSWING」 最終すてえじの江戸で流れる音楽です。ファミコン版『がんばれゴエモン!からくり道中』の最初のステージで流れる楽曲のアレンジになっています。昔からの『ゴエモン』ファンの方には心ニクい演出ですね!

●「でーやもんどへっど」 本作のクライマックスである、江戸城下町の横スクロールステージで流れます。追いかけてくる役人たちを蹴散らし、ラスボスが待ち受ける浮遊城へと急ぐゴエモンたち。そんな彼らの勇姿を、熱い和風サウンドが盛り上げてくれます。

◆町のお店にはお楽しみがたっぷり!


ここまでご紹介してきたように、本作はゴエモンたちを操作して日本各地をめぐり、立ちはだかる敵を倒していく冒険活劇が魅力なのですが、本作を語るうえでもうひとつ欠かせない要素があります。それは「寄り道」です!

日本各地で訪れる町には、いろんな種類のお店があります。よろず屋、めし屋、占い屋、銭湯、宿屋、道場、見世物小屋など盛りだくさんなので、旅に疲れたら、お店に立ち寄って息抜きができますよ。たとえば敵との戦闘後、減った体力を回復したい時は、めし屋に入って美味しいごはんを食べたり、銭湯に入って汗を流したり、宿屋に入ってぐっすり休んだり……と、本当に旅をしているかのように、その時の気分によって自由気ままに選べます! そんなところも、本作に旅情感がある理由かもしれません。

もちろん、お店で流れる音楽にも素敵なものがそろっているので、ぜひ堪能していただきたいです。個人的には宿屋に泊まった時の音楽「お休み…BABY」が癒されますね。あと、お店ではありませんが、町人が住んでいる民家を訪れた時の音楽「おじゃましまんねやわ」も、温かみのあるのどかな旋律が大好きです。

また、本作で特徴的なのが、ミニゲームの多さです。先ほど挙げたお店の種類はまだまだあって、ざっと挙げていっても、 迷路小屋、サイコロ博打の小屋、競馬場、絵合わせ屋、クイズ小屋、宝くじ屋、アルバイト小屋(もぐらたたき、ペンキ塗り、 鬼退治がプレイできます)、ゲームセンター(エアホッケー、ブロックくずし、そしてKONAMIの名作シューティングゲーム『グラディウス』を実際にプレイできます!)といった遊戯施設がたくさん登場し、多くのミニゲームをプレイできます。娯楽の充実っぷりが尋常ではありません! ……というか冷静に考えると、「なんで江戸時代にゲーセンがあるんだ!?」とツッコミたくなりますが(笑)、細かいことは気にせず楽しむのが吉です! 特に、すてえじ三で登場する遊園地「からくりアイランド」の中には、たくさんの遊戯施設があるので、冒険の目的を忘れてしまうくらいたっぷり楽しめると思いますよ。なお、ミニゲームの音楽もコミカルかつ印象的なものが多いので、遊ぶ際の楽しさをより一層盛り上げてくれると思います。個人的には、ペンキ塗りのアルバイトをする時に流れる「術使いの奥義」という曲が特に好きです!

この作品はジャンルとしてはアクションゲームに分類され、難易度もそれなりに歯ごたえがあるのですが、正直言って、最後までクリアしなくても充分に楽しめます。もう本当に、本筋以外のお楽しみ要素がてんこ盛りですから! 人によっては、「からくりアイランド」から先に進まずに、ずーっとミニゲームで遊んじゃうという方もいらっしゃるのではないでしょうか(笑)。こんなにバラエティ豊かな遊びがぎっしり詰まった作品も、なかなか無いんじゃないかなと思いますね。

本作はWiiおよびWiiUのバーチャルコンソールで配信されているので、現在でもプレイすることができます。また、今後Newニンテンドー3DSのバーチャルコンソールでも配信予定とのことです。ご興味をお持ちの方は、旅情感と楽しさにあふれるゴエモンたちの冒険をぜひ体験してみてください!

◆最後はCDをご紹介!



本作『ゆき姫救出絵巻』は『ゴエモン』シリーズの生誕5周年の時に作られたのですが、その記念に、当時歌謡界の大御所だった演歌歌手の故・三橋美智也氏を起用して、「ゴエモン音頭(おとがしら)」というCMソングが制作されました。三橋氏の名義でシングルCDが発売され、後述のサウンドトラックCDにも三橋氏の歌が収録されています。三橋氏の味わい深い歌声が楽しめる楽しい音頭なので、ご興味をお持ちの方は聴いてみてくださいね。

ちなみに本作のタイトル画面で流れる楽曲は、「ゴエモン音頭」のインストアレンジ曲です。 ゆったり晴れ晴れとした旋律が、プレイヤーを『ゴエモン』の世界にいざなってくれますよ。



本作のサントラCDは、ゲームと同時期に発売されました。収録曲数は76曲で(うち2曲は三橋氏のボーカル曲)、とてもスーパーファミコン初期に発売された作品とは思えないほどの大ボリュームです。ただし現在は廃盤になっていて、数万円ほどのプレミアがついています。残念なことに、現在は正規の価格で手軽に購入することができません。重ねて残念なことに、スーパーファミコン時代の『ゴエモン』作品でサントラが発売されたのは、この『ゆき姫救出絵巻』のみになります。

また機会があればご紹介したいと思っていますが、『ゴエモン』シリーズには、今回ご紹介した『ゆき姫救出絵巻』以外にも数多くの名作、そして名曲群が存在します。今年は『ゴエモン』シリーズの生誕30周年ですし、サントラが復刻されたり、ダウンロード配信されたり、『ゴエモン』シリーズの音楽を集めたサントラBOXが発売されたりするとファンとしては非常に嬉しいのですが…!

というか、そもそも『ゴエモン』シリーズは、2005年発売のニンテンドーDS版『がんばれゴエモン 東海道中大江戸天狗り返しの巻』以来、11年もゲームの新作が出ていないのがファンとしては非常に寂しいところです。『ゴエモン』制作チームは、株式会社グッド・フィール(Wii『毛糸のカービィ』や、WiiU『ヨッシー ウールワールド』などを制作)としてKONAMIから独立しているので、新しく『ゴエモン』を作るのはなかなか難しいとは思いますが…。『ゴエモン』シリーズは、僕の中では特に思い入れが深い大好きなゲームなので、いつかまた『ゴエモン』の新作を遊んでみたいですね。

【筆者プロフィール】
 hide / 永芳 英敬


ゲーム音楽ライター&ブロガー。ゲーム音楽作曲家さんへのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会のレポート記事など、主にゲーム音楽関係の記事を執筆しています。一度、『ゴエモン』シリーズを語りまくるオフ会をやってみたいです。一晩中飲みながら語り明かせそうな気がする(笑)。

[Twitter] @hide_gm [ブログ] Gamemusic Garden

(C)Konami Digital Entertainment

《hide/永芳英敬》

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