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E3はVR元年という勢い
土本
もう今年の半分が過ぎようとしています。6月もいろいろな出来事がありました。今回はどんなテーマを取り上げましょうか。安田さんはE3 2015に行ってらっしゃいましたし、6月といえば株主総会シーズンでもありますが……
安田
おかげさまで角川ゲームスは最高益を更新することができました。
平林
おお。おめでとうございます!
安田
自分で言っておいてナンですが、自社の話はさらっと流しまして、やはりゲーム業界、ど真ん中の話題を。E3の話をしましょうか。
平林
E3というイベントを語るのって難しいですよね。起きたできごとや、発表された内容を平板に追いかけていくと毎年同じような内容に見えてしまいます。というわけで今年らしいポイントに絞って考えてみたいと思います。まず、日本にいるとVR関連のニュースが目立っていましたが、現地にいらした安田さんはどう感じられましたか?
安田
確かにOculusやProject Morpheusの新規タイトルがたくさん発表されていましたね。ところでVRに関していえば、印象に残ったことがあったんですよ。
平林
何ですか?
安田
今回のE3は角川歴彦会長(株式会社KADOKAWA取締役会長)と同行していました。会長がVRを体験してみて「想像していた以上に可能性を感じる」と大変ポジティブな感想を述べられていたのが印象的でした。また「B to CよりもB to Bのほうが有望」とも述べられていました。この点については僕も同意見ですね。
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※Project Morpheusブースの様子
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※Project Morpheusブースの様子
平林
私のVRに対しての所感ですが、まずはものすごく期待しています。未来のゲームの希望の星だとも思っています。今から約10年前から広がったタッチデバイスに匹敵する、あるいはそれ以上のインパクトがあるでしょう。しかしそのいっぽうで一般ユーザーにとってハードルが高いとも思うんです。頭に何かをかぶって遊ぶことへの抵抗感は根強いです。というわけで、VRについては超ポジティブな予測と超ネガティブな予測が同居しています。で、それを突破するひとつの方法として、ハードを売るだけではなく、使ってもらう道もあると思うんですね。
土本
使ってもらう?
平林
はい。家庭用ゲーム機が売れるまえにはゲームセンターという地ならしがあったわけですよね。どこかの場所でまずはVRを体験する、というところから地道に普及していってほしいと思います。
安田
ところで、日本のゲームは盛り上がってましたよ。カンファレンスで、『ファイナルファンタジーVII』『シェンムー3』『人喰いの大鷲トリコ』といったタイトルが発表されると、スタンディングオベーションで迎えられていました。やはり日本のゲームは世界のゲーム業界の人からリスペクトされています。
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※大歓声で迎えられた『シェンムー3』の鈴木裕氏
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※大歓声で迎えられた『シェンムー3』の鈴木裕氏
平林
昔のE3といえば、日本のゲームの独壇場だったイメージがあります。それが2000年以降になると、海外タイトルに押されて、はっきり言ってナンバーワンの地位からずり落ちたわけです。そこで自信を失った日本のゲームですが、どうなんでしょう、今年のE3を見てみると独自のポジションを得ている気がします。
安田
そういう見方はできるでしょうね。
平林
ベタな言い方ですがナンバーワンではないけどオンリーワンの居場所が見つかった、ととらえることにしました。
安田
で、今までナンバーワンの地位を占めていたアメリカのゲームに変化を感じましたね。E3会場を見ていると気づくのですが、スポーツゲーム、音楽ゲームが激減しています。
平林
そうでしたか? E3といえばアメリカ三大スポーツのゲームに音楽、ダンスのゲームがズラーっと並んでいるイメージがありますが、それらがあまり目立たなかったということですね。
安田
はい。そのかわりにアメリカらしくて「撃つゲーム」。FPSがどんどん進化してバリエーションが増えてきています。物語と映像描写が充実してきていて……ざっくりとした言い方になりますが、シューターと映画が合体しています。
平林
確かにその通りですね。で、映画的なアメリカのゲームですが相変わらず男臭いですよね。それに引き換え日本のゲームは子供っぽいです。マッチョな大人が登場するゲームと幼い子供が登場するゲーム、この差はますます広がっているように思えます。
安田
やはり日本の伝統なんでしょう。日本の神話やおとぎ話は子供が成長していく英雄譚が基本形です。この基本形はハイレゾのゲームになっても変わらないんですね。