「ハイ☆スピード!」武本康弘監督インタビュー、映画の魅力はキャラクターのピュアなかわいらしさ
『映画 ハイ☆スピード!-Free! Starting Days-』が12月5日より全国公開。武本康弘さんが監督を務めた。その武本監督に作品の魅力やみどころをうかがった。
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アニメーション制作は、『たまこまーけっと』や『境界の彼方』などの数々のヒット作を届けてきた京都アニメーションである。こちらも大ヒットになったテレビアニメ『Free!』『Free!-Eternal Summer-』の原点にあたる作品。
公開を前に監督を務めた武本康弘さんに、『映画ハイ☆スピード!』の作品とキャラクターの魅力、みどころを伺った。話題の映画は一体どのように作られたのだろうか。
[取材・構成:高瀬司]
「映画 ハイ☆スピード!-Free! Starting Days-」
12月5日全国ロードショー
http://movie-highspeed.com/
■ 変わらない遙たちの姿を見つけていった『映画 ハイ☆スピード!』
――高校生時代を描いたTVシリーズ『Free!』『Free!-Eternal Summer-』に対する、中学生時代の遙たちを描いた『映画 ハイ☆スピード!-Free! Starting Days-』ですが、作品の見どころから教えていただけますか。
武本康弘(以下、武本)
まず何より、テレビシリーズのファンの方々に「おもしろかった!」「観てよかった!」と喜んでいただける作品を目指しました。そのためテレビシリーズで作り上げられてきた世界観やキャラクターを大切にして、映画でもそのままの彼らを引き継げるよう細心の注意を払っています。
――そのために気をつけられた点は?
武本
僕はテレビシリーズには各話演出としてしか関わっていなかったので、メインに携わってきたスタッフにアドバイスをもらいながら議論を重ねることで、変わらない遙たちの姿を見つけていくようにしました。
――映画では中学時代を描くことで、キャラクターも変化させなければいけないところがあったのでは。
武本
過去の物語だからといって人格が大きく変わるかというとそんなことはないと思うんですね。中学生でも遙は遙、真琴は真琴で、本質は変わらないのではないかと。
ただ置かれた環境は違っているので、そのとき彼らがどう感じて、どう行動するのか、という部分は真剣に議論して考えていきました。
――今回の物語は原作小説『ハイ☆スピード!』の第2巻をベースとしつつも、キャラクターや展開などの変更点も興味深かったのですが、何か理由があったのでしょうか。
武本
原作をリスペクトしつつも、『Free!』の時点で原作からは少しキャラクターを変化させているところがありました。映画ではテレビシリーズのほうをベースにして、ストーリーもそれに沿って軌道修正させていただいています。
僕が男のほうが描きやすい点も大きかったですね。
――それはなぜなのでしょう。
武本
あくまで個人的な感覚なのですが、男女には全然違うところ、お互いに理解の難しいミステリアスなところがあるように感じるんですね。とはいえそれは悲しいことではなくて、そうであることによっておもしろさが生まれるものだと思います。
ただ描く側からすると、男のキャラクターのほうがより深く理解できている感覚が強いですし、そのぶんかわいく思えるから……というあたりが理由ですね。
■ キャラクターの魅力はピュアなかわいらしさ
――脚本は京都アニメーションの西岡麻衣子さんですが、打ち合わせではどのような相談を?
武本
雑談も含めて色々なことを話しましたが、一番多かったのは『Free!』という作品をどう捉えているか、どう理解しているかという話でしょうか。表現物に対しては十人十色の見方があるもので、同じシリーズを観ていたはずなのに、僕と西岡ではずいぶん理解が違っていて(笑)、そのすり合わせからはじめました。
ただ実際の脚本会議にはもっとたくさんの人が参加していて、そこで出た様々な意見を反映させながら作っているので、僕や西岡の意見はあくまでその中のひとつでしかありません。いまあるかたちは、みんなで議論しながら練り上げていったものです。
――キャラクターデザインの西屋太志さんとはいかがでした?
武本
映画を作る前段階として、すでに西屋が原作の扉絵で描いた各キャラクターのビジュアルがあったので、基本的にはそれを踏襲しています。ただそれらを描いたときからはずいぶん時間が経っているので、西屋の中でもキャラクターへの理解が進んだ部分があり、彼のほうから少し調整させてほしいという話を受けました。
なのでそこはやりやすいように修正してもらい、あと僕からお願いしたことと言えば郁弥の髪型くらいですね。原作では片目が完全に隠れているのですが、そこは両目が見えたほうがかわいいだろうと変えてもらいました。
――遙、真琴、そして新キャラである椎名旭、桐嶋郁弥を加えた今回のメインキャラクター4人について、監督から見た魅力を教えていただけるでしょうか。
武本
僕から見ると『映画 ハイ☆スピード!』に登場するキャラクターは全員ピュアでかわいらしいですね。
まず遙は融通の利かなさがかわいい。自分の信条に対して揺らがないというか、たとえ相手が誰であっても自分のポリシーを貫いていくところは、幼さが含まれているとしてもうらやましく感じます。
そして、その側に寄り添う真琴は果てしなく良い奴。ただそのぶん、底が見えないところがあって、そういう点では描くのが一番難しいキャラでもありました。ただこの2人のずっと変わらない関係性は本当に眩しいですね。
――新キャラクターの旭と郁也のほうは?
武本
郁弥はひねくれ者で皮肉屋なのですが、根っこのところは純粋で純真なんだと思います。人と向き合うときには、心に壁を作り、ダメージを負わないように最大限に警戒したうえで、その壁の向こうからこそっと覗いてくるようなところがかわいらしいなと。
それに対して椎名旭は逆に、他人に対して壁を一切作らないところがかわいい。真っ直ぐでわかりやすくて、次に何を言うのか、どう行動するのかが、傍目から見て予想がつけやすい。そういうわかりやすくて真っ直ぐなところが気持ちいいですね。
――ちなみに4人の先輩として登場する新キャラクターの桐嶋夏也と芦沢尚も、かわいいという見方になるのでしょうか?
武本
このふたりに関してはかっこよく描いています。遙たちより少しだけ多い経験を積んでいて、もう少し広い視点からアドバイスを送ったり、怒ったりということがちゃんとできる子たちとして。細かく口を出すわけではないけれども、ちゃんと見守っている先輩……でも僕からすれば、やっぱりこのふたりもかわいいと感じます(笑)。
■ 一番大事なのは、遙が遙であること。
――キャラクターを表現するにあたって、キャストの方へはどういったオーダーを出されたのでしょうか。
武本
僕からキャストのみなさんにお願いしたのは、ただ一言、テレビシリーズと同じ気持ちで演じてくださいということだけでした。というのも、はじめに『Free!』を立ちあげるとき、キャストのみなさんと音響監督の鶴岡さんで、ゼロベースからキャラクターを作り上げていった経緯を伺っていたので、映画から監督になった僕が手をつけるべきところではないなと思ったからです。実際、『映画 ハイ☆スピード!』の演技もものすごくいいものに仕上がりました。キャストのみなさんと鶴岡さんのおかげですね。
――映像面についても伺わせてください。『映画 ハイ☆スピード!』は映画であるということで、画作りの面でテレビシリーズとの違いもあるのではないかと思うのですが。
武本
テレビシリーズと分けて、映画だからこうしようということは考えませんでした。作品にとって一番大事なのは、遙が遙であること、真琴が真琴であることだと思うので、彼らのドラマを伝えるうえで最適な演出を探るという点で、映画とテレビシリーズで違いはないですね。
――テレビシリーズでは競泳における筋肉や水の美しさが印象的でしたが、その点はいかがですか。
武本
筋肉に関しては、高校生から中学生に遡ったぶん、テレビシリーズからは変わってしまった部分です。ただ、『Free!』の肉体美が完成されたものの美しさだとすれば、『映画 ハイ☆スピード!』のそれは不完全なものの美しさではないかと思っています。欠けたるものがあればこその、危うさを含めた美しさがあるのではないかと。
また水の描写は『Free!』から変わらずこだわった要素のひとつです。撮影のセクションで処理を加えているのですが、スタッフも意欲的にブラッシュアップを重ねた部分で、テレビシリーズよりもさらに洗練された表現をお見せできる自信があります。楽しみにしていてください。
――最後にあらためて、これから鑑賞するファンの方々へのメッセージをお願いします。
武本
映画で描かれるのは、中学1年生の短い期間ではありますが、その時間を生きる遙たちの姿をものすごく真剣に追いかけています。そこで彼らが何を思い、何を語り、どう行動したのか、『Free!』を観るときと同じ感覚で味わっていただけたらうれしいです。
「映画 ハイ☆スピード!-Free! Starting Days-」
12月5日全国ロードショー
http://movie-highspeed.com/
「映画 ハイ☆スピード!-Free! Starting Days-」武本康弘監督インタビュー 映画の魅力はキャラクターのピュアなかわいらしさ
《高瀬司》
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